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妊活前にするべきことがある?生殖医療専門医が検査・体づくり・年齢別対策を詳しく解説します。

  • 公開日:2025.10.16
  • 更新日:2025.12.04
妊活前にするべきことがある?生殖医療専門医が検査・体づくり・年齢別対策を詳しく解説します。|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

「そろそろ子供がほしい」と思い始めると、多くの方が期待と不安が入り混じった気持ちになってしまいます。

妊活を始める前に「何から準備すればいいの?」「本当に妊娠できるかな?」と悩む気持ちはとてもよくわかります。

生殖医療専門医としてこれまで数多くのご夫婦の妊活をサポートしてきた経験から、医学的根拠に基づいた「妊活前に本当にすべきこと」をわかりやすくお伝えします。

妊活前の体づくり|妊娠しやすい体質への第一歩

適正体重の維持と栄養管理

妊活を始める前に最も重要なのは妊娠しやすい体質となることです。

中でも適正体重を維持することはとても重要です。

BMI(体重kg ÷ (身長m)2)が18.5未満の「やせ」や25以上の「肥満」はどちらも妊娠率を低下させることが医学的にわかっています。

中でもBMI22前後が最も妊娠しやすいことがわかっています。

ただしBMIが25を超えている場合でも急激なダイエットは逆効果です。

月に1-2kg程度の緩やかな体重調整を心がけましょう。

特に過度な糖質制限は卵子の質を低下させる可能性があるため、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

さらに栄養面ではタンパク質や鉄分およびビタミンDやオメガ3脂肪酸を意識的に摂取しましょう。

最新の研究ではビタミンD不足が不妊症と関連することが明らかになっていますので、サプリメントでの補充を検討するといいでしょう。

葉酸サプリメントの正しい選び方と摂取時期

葉酸は妊娠前から摂取すべき最重要栄養素です。

葉酸が不足すると神経管閉鎖障害などの胎児の成長に影響を及ぼすことが知られており、妊娠1か月以上前から1日400μgの摂取を推奨しています。

葉酸には「合成葉酸」と「天然葉酸」があり吸収率が異なります。

サプリメントに含まれる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の方が吸収率が高く確実に必要量を摂取できます。

一方で食事から摂取する天然葉酸は吸収率が約50%と低いため、サプリメントでの補充がいいでしょう。

また葉酸と一緒にビタミンB12やビタミンB6も配合されているものを選ぶとより効果的です。

これらは葉酸の働きを助けホモシステインという物質の代謝に関わり着床率の向上にも寄与することが知られています。

運動習慣と睡眠の質の改善

適度な運動は血流を改善し卵巣機能を向上させます。

週3-4回で30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ヨガ、水泳など)がおすすめです。

ただし激しい運動は逆に排卵障害を引き起こす可能性があるため避けましょう。

睡眠については7-8時間の確保だけでなく「質」が重要です。

メラトニンという睡眠ホルモンは実は強力な抗酸化作用を持ち卵子の質を守る働きがあります。

就寝前のスマートフォン使用を控え寝室を暗くすることでメラトニンの分泌を促進できます。

最新の研究では睡眠時無呼吸症候群が不妊症のリスクを高めることも分かっています。

いびきが気になる方は早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。

必須の検査と健康チェック|見落としがちな重要項目

妊活する前にすること

基本的な婦人科検査

妊活前の婦人科検査は単なる健康チェックではありません。

隠れた疾患を発見し妊娠の障害となる要因を事前に取り除くための重要な検査です。

検査項目としては子宮頸がん検診や超音波検査(子宮筋腫や卵巣嚢腫の有無)およびホルモン検査や性感染症検査(クラミジア、淋病)があります。

特にクラミジア感染症は自覚症状がないことが多く放置すると卵管閉塞の原因となるため、必ず検査を受けることをおすすめしています。

またAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で卵巣予備能を評価することも重要です。

AMHは卵巣に残っている卵子の数を推定するホルモン検査であり、特に35歳以上の方には強くおすすめします。

数値が低い場合は早めの妊活開始や治療の検討が必要になります。

感染症検査とワクチン接種

妊娠中に感染すると胎児に影響を与える可能性がある感染症があります。

風疹や麻疹および水痘やムンプス(おたふくかぜ)の抗体検査を推奨しています。

特に風疹は妊娠初期に感染すると先天性風疹症候群のリスクがあります。

これらの抗体がない場合は妊娠前にワクチン接種が必要ですが、接種後2ヶ月間は避妊が必要となるため早めに接種を完了させましょう。

さらに最近ではB型肝炎ワクチンの接種も推奨されています。

パートナーがB型肝炎キャリアの場合や医療従事者など感染リスクの高い職業の方は特に接種を検討してください。

またインフルエンザワクチンは妊娠中でも接種可能ですが、妊活前に接種しておくとより安心です。

歯科検診の重要性

意外に思われるかもしれませんが、歯周病は早産や低体重児出産のリスクを高めることが科学的に証明されています。

妊娠するとホルモンバランスの変化により歯肉炎になりやすくつわりで歯磨きが困難になることもあります。

妊活前に歯科検診を受け虫歯や歯周病の治療を完了させておくことが大切です。

特に親知らずの抜歯が必要な場合は妊娠前に済ませておきましょう。

妊娠中は使用できる薬剤が限られるため治療の選択肢が狭まります。

また歯科金属アレルギーがある方は金属の詰め物をセラミックなどに交換することも検討してください。

全身の炎症反応を抑えることで着床環境の改善につながる可能性があります。

年齢別の妊活戦略|30代・40代それぞれの対策

30代前半の妊活準備

30代前半はまだ妊孕力(妊娠する力)が比較的保たれている時期ですが、油断は禁物です。

この時期の特徴は仕事のストレスが最も高い時期と重なることです。

仕事と妊活のバランスを上手に取ることが成功の鍵となります。

統計的には30歳の女性が1年以内に妊娠する確率は約80%ですが、これは「健康な状態」での話です。不規則な生活やストレスはこの確率を大きく下げる要因となります。

まずは3か月間基礎体温などを記録し排卵の有無を確認しましょう。

この年代ではタイミングを3-4か月試して妊娠しない場合は早めに専門医を受診することをおすすめします。

原因の早期発見・早期治療がその後の妊活をスムーズにします。

35歳以降の妊活で知っておくべきこと

35歳は医学的に「高齢出産」の境界線とされていますが、これは決して「妊娠できない」という意味ではありません。

ただし卵子の質の低下や染色体異常のリスク上昇など知っておくべき現実があります。

35歳以降ではAMH検査に加えて月経3日目のFSH(卵胞刺激ホルモン)検査も重要です。

FSHが10以上の場合は卵巣機能の低下が始まっている可能性があります。

この場合は自然妊娠を待つ期間は3-4か月程度に留め早めに不妊治療を検討すべきです。

またこの年代では抗酸化対策が特に重要になります。

ビタミンCやビタミンEおよびコエンザイムQ10などのサプリメントや抗酸化作用の高い食品(ブルーベリー、トマト、緑茶など)を積極的に摂取しましょう。

最新の研究ではレスベラトロールという成分が卵子の質を改善する可能性も示唆されています。

40代の妊活における現実と可能性

40代での妊活は確かに困難ですが、決して不可能ではありません。適切な治療により40代半ばで出産された方々もいらっしゃいます。ただし現実的な期待値を持つことが大切です。

40歳の自然妊娠率は1周期あたり約5%で45歳では1%未満となります。

そのためこの年代では最初から体外受精を視野に入れた治療計画を立てることが重要です。

パートナーと一緒に取り組むこと

男性側の検査と準備

不妊の原因の約半数は男性側にあることをご存知でしょうか?

しかし多くの場合は男性の検査は後回しにされがちです。

妊活は夫婦二人三脚で行うものですので、男性も積極的に検査を受けることが大切です。

精液検査は最も基本的な検査です。精子濃度や運動率および正常形態率などを評価します。

WHO基準では精子濃度1500万/ml以上で運動率40%以上が正常とされていますが、実際には濃度4000万/ml以上で運動率60%以上あると妊娠しやすいことがわかっています。

男性の生活習慣改善も重要です。禁煙は必須であり過度の飲酒も控えましょう。

また精巣を温めすぎないことも大切です。

サウナや長風呂および膝上でのノートパソコン使用は避けボクサーパンツよりトランクスを選ぶなど日常の小さな工夫が精子の質を改善します。

亜鉛やセレンおよびビタミンEなどのサプリメントも有効です。

最近AGAの薬を内服している方がいらっしゃいますが、AGAの薬の中には妊活に影響を及ぼすものもあるため注意が必要です。

夫婦でのコミュニケーション

妊活において最も重要でありながら最も難しいのが夫婦間のコミュニケーションです。

「排卵日だから」というプレッシャーは男性にとって大きなストレスとなりEDの原因にもなります。

おすすめは定期的に「妊活会議」を開くことです。

お互いの気持ちや不安および今後の方針について話し合う時間を設けましょう。

このとき責めたり追い詰めたりせず「私たちの目標」として共有することが大切です。

また妊活以外の時間も大切にしてください。

デートや旅行など夫婦の絆を深める時間は結果的に妊活にも良い影響を与えます。

実際に不妊治療を一時休止して旅行に行った際に自然妊娠したという例も少なくありません。

治療方針の共有

不妊治療を開始する前にどこまでの治療を行うかや費用はどの程度かけるかおよび期限はいつまでかなど具体的な方針を共有しておくことが重要です。

治療が進むにつれて当初の想定と異なる状況に直面することもあります。

特に体外受精については肉体的・精神的・経済的負担が大きいため事前の話し合いが不可欠です。何回まで挑戦するかや養子縁組という選択肢はあるかなどデリケートな話題も避けずに話し合いましょう。

また治療中のサポート体制も重要です。

採卵や移植の際の付き添いや自己注射のサポートおよび精神的な支えなど具体的な役割分担を決めておくと治療がスムーズに進みます。

ストレス管理とメンタルケア

妊活ストレスの正体

妊活中のストレスは単なる精神的な問題ではありません。

慢性的なストレスは視床下部-下垂体-卵巣軸というホルモン分泌システムを乱し排卵障害や着床不全の原因となることが科学的に証明されています。

妊活ストレスの特徴は「結果が見えない不安」と「周囲からのプレッシャー」および「自己否定感」の3つです。特に生理が来るたびに感じる絶望感は多くの女性が経験します。

このような感情は決して異常ではなくむしろ自然な反応です。

重要なのはストレスを「ゼロにしよう」とすることではなく「上手に付き合う」ことです。

完璧主義を手放し「今できることをやっている自分」を認めることから始めましょう。

効果的なストレス解消法

医学的に効果が証明されているストレス解消法は睡眠を十分にとることや適度な運動に加えて「マインドフルネス瞑想」の効果が報告されています。

「マインドフルネス瞑想」は1日10分の実践でコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルを有意に低下させストレスが軽減するもので、スマートフォンアプリを使えば簡単に始めることができます。

また東洋医学である「鍼灸治療」も有効です。

特に不妊専門の鍼灸院ではホルモンバランスを整え子宮内膜の血流を改善する効果が期待できます。

週1-2回の施術で体外受精の成功率が向上したという研究報告もあります。

専門的なサポートの活用

妊活が長期化するとうつ症状が現れることがあります。

「朝起きられない」「何をしても楽しくない」「涙が止まらない」などの症状が2週間以上続く場合は専門医の診療が必要です。

またうつ症状が強くなる前に不妊カウンセラーや心理士によるカウンセリングを受けることも非常に有効です。

特に認知行動療法はネガティブな思考パターンを変え前向きな気持ちを取り戻すのに役立ちます。

多くの不妊治療施設ではカウンセリングサービスを提供しています。

また不妊ピアサポートグループへの参加もおすすめです。

同じ経験をしている仲間との交流は孤独感を和らげ有益な情報交換の場にもなります。

オンラインでも多くのコミュニティが活動しています。

生殖医療専門医への相談タイミング

受診の目安となる期間

「いつ病院に行けばいいか」は、多くの方が悩むポイントです。

一般的には、3か月妊娠しない場合に受診を推奨していますが、これはあくまで目安です。

以下の場合は、期間に関わらず早めの受診をおすすめします:月経不順(周期が25日未満または38日以上)、無月経、激しい月経痛、性交痛、過去の骨盤内感染症や手術歴、男性側の精巣の手術歴や外傷歴などです。

また、「とりあえず検査だけ」という受診も歓迎です。

AMH検査や精液検査で現状を把握することで、今後の妊活計画を立てやすくなります。

早期受診のメリットは、問題の早期発見だけでなく、将来に向けての家族計画をイメージでき安心感を得られることも大きいです。

初診時に準備すること

初診を有意義なものにするため、以下を準備しておきましょう。

まず、基礎体温表(最低2-3か月分)は、排卵の有無や黄体機能を評価する重要な情報源です。

スマートフォンアプリでも構いません。

過去の検査結果(健康診断、婦人科検診、感染症検査など)も持参してください。

他院での治療歴がある場合は、紹介状をもらうか、治療内容をメモしておきましょう。

重複検査を避け、効率的な診療につながります。

また、質問リストを作成しておくことをおすすめします。

診察室では緊張して聞きたいことを忘れがちです。

「検査の流れ」「費用の概算」「仕事との両立方法」など、気になることは遠慮なく質問してください。

治療の選択肢を知る

不妊治療には段階があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

まず「タイミング法」は、超音波で卵胞の成長を確認し、最適な性交渉のタイミングを指導する方法です。

自然に近い形で、費用も抑えられますが、卵管や精子に問題がある場合は効果が限定的です。

「人工授精(IUI)」は、精子を子宮内に直接注入する方法です。

精子の運動率が低い場合や、性交障害がある場合に有効です。成功率は1回あたり10%程度で、通常3-4回を目安に行います。

「体外受精(IVF)」は、卵子と精子を体外で受精させ、受精卵を子宮に戻す方法です。

卵管閉塞や重度の男性不妊、原因不明不妊などに適応されます。
1回あたりの妊娠率は年齢により異なりますが、35歳で約40%、40歳で約20%程度です。

最新技術により、成功率は年々向上しています。

まとめ

妊活前の準備は、単に「妊娠しやすくなる」だけでなく、「健康な妊娠・出産」そして「元気な赤ちゃん」につながる大切なステップです。

焦る気持ちもあるかもしれませんが、一つひとつ着実に準備を進めていきましょう。

何より大切なのは、ご自身の心と体の健康です。

完璧を求めすぎず、できることから始めてください。

そして、一人で抱え込まず、パートナーや医療者と協力しながら進んでいきましょう。

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