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不妊治療のステップ

不妊治療のステップ

不妊治療を始める前に知っておきたい基礎知識

不妊の定義と主な原因

日本産科婦人科学会では、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交渉を行っているにもかかわらず、1年以上妊娠しない場合を「不妊症」と定義しています。不妊の原因は女性側、男性側、または両方にある場合があり、約3分の1は原因不明とされています。女性の場合は年齢が大きな要因となり、35歳を過ぎると妊娠率が低下し始め、40歳を超えるとさらに困難になります。そのため、30代後半以降の方は、1年を待たずに早めに専門医を受診することが推奨されています。不妊治療は原因を特定し、それに応じた適切な治療法を選択することから始まります。まずは夫婦で検査を受け、原因を明らかにすることが、効果的な治療への第一歩となります。

女性側の不妊要因

女性側の不妊要因は大きく分けて、排卵因子、卵管因子、子宮因子、頸管因子の4つがあります。排卵因子は、月経不順やストレス、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などによって排卵がうまくいかない状態を指します。卵管因子は、クラミジア感染症や子宮内膜症により卵管が詰まったり癒着したりすることで、卵子と精子が出会えなくなる状態です。子宮因子には、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮奇形などがあり、受精卵の着床を妨げます。頸管因子は、子宮頸管の粘液分泌が少なく、精子が子宮内に進入しにくくなる状態を指します。これらの要因は複数が重なることもあり、検査によって特定することで、適切な治療法を選択できるようになります。

男性側の不妊要因

男性不妊は全体の約半数に関与しているとされ、決して珍しいものではありません。主な原因として、精子の数が少ない乏精子症、精子の運動率が低い精子無力症、精子の形態異常である奇形精子症などがあります。また、精液中に精子が全く存在しない無精子症もあり、この場合は精巣から直接精子を採取する手術(TESE)が必要になることがあります。男性不妊の原因には、精索静脈瘤、ホルモン異常、生活習慣(喫煙、過度の飲酒、肥満)なども関係しています。最近では、男性の年齢も精子の質に影響することがわかってきました。精液検査は比較的簡単に行えるため、不妊治療を始める際は、必ず夫婦で検査を受けることが重要です。早期に男性側の問題を発見できれば、適切な治療選択が可能になります。

不妊治療前の必須検査

女性の基本検査

不妊治療を始める前に、女性は複数の検査を受ける必要があります。血液検査では、FSH、LH、プロラクチンなどのホルモン値を測定し、卵巣機能や排卵の状態を評価します。特に重要なのがAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で、卵巣に残っている卵子の数を推定できます。AMH値が低い場合は、早めのステップアップを検討する必要があります。超音波検査では、卵胞の発育状態や子宮内膜の厚さ、子宮筋腫や卵巣嚢腫の有無を確認します。月経周期に合わせて複数回行うことで、排卵の時期を正確に把握できます。その他、子宮卵管造影検査で卵管の通過性を確認したり、子宮鏡検査で子宮内腔の状態を詳しく調べたりします。これらの検査結果を総合的に判断して、最適な治療方針を決定します。

男性の精液検査

精液検査は男性不妊の診断において最も基本的かつ重要な検査です。検査では、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などを評価します。WHO(世界保健機関)の基準では、精液量1.5ml以上、精子濃度1500万/ml以上、総精子運動率40%以上、正常形態率4%以上が正常値とされています。検査前は2~7日間の禁欲期間を設けることが推奨されており、体調やストレスによって結果が変動するため、通常2回以上検査を行います。異常が見つかった場合は、ホルモン検査や染色体検査、精巣の超音波検査などの追加検査を行うこともあります。最近では、精子のDNA損傷率を調べる検査も注目されています。男性因子が見つかった場合、薬物療法や手術療法、生活習慣の改善などの治療を行いながら、不妊治療のステップを検討していきます。

その他の専門検査

基本検査で原因が特定できない場合や、より詳しい情報が必要な場合は、専門的な検査を追加で行います。子宮卵管造影検査は、造影剤を使って卵管の通過性や子宮の形態を確認する検査で、軽度の卵管閉塞であれば検査により改善することもあります。フーナーテスト(性交後試験)は、排卵期に性交渉を持った後、子宮頸管粘液中の精子の状態を観察する検査で、精子と頸管粘液の相性を確認できます。また、抗精子抗体検査では、女性の体内で精子を異物として攻撃する抗体の有無を調べます。子宮内膜症が疑われる場合は、腹腔鏡検査を行うこともあります。これらの検査結果を踏まえて、タイミング法から始めるか、人工授精や体外受精から開始するかなど、不妊治療のステップを決定していきます。

不妊治療の4つのステップを詳しく解説

ステップ1:タイミング法

タイミング法は、最も自然に近い不妊治療のステップです。超音波検査や尿中LH検査により排卵日を正確に予測し、最も妊娠しやすいタイミングで性交渉を持つよう指導する方法です。基礎体温表だけでなく、医療機関での検査により、より正確な排卵日を特定できます。必要に応じて、排卵誘発剤(クロミッドやレトロゾールなど)を使用して、卵胞の発育を促すこともあります。タイミング法のメリットは、体への負担が少なく、保険適用で費用も抑えられることです。デメリットは、成功率が1周期あたり5~10%程度と低く、両側卵管閉塞や重度の男性不妊がある場合は適応になりません。一般的に、35歳未満の方は4〜6周期、35歳以上の方は2~3周期試みて妊娠しない場合は、次のステップへの移行をお勧めさせていただいております。

ステップ2:人工授精(AIH)

人工授精は、採取した精液を洗浄・濃縮処理し、排卵時期に合わせて子宮内に直接注入する治療法です。精子が子宮頸管を通過する過程をスキップすることで、より多くの運動良好精子を卵子の近くに届けることができます。軽度の男性不妊、頸管因子、原因不明不妊、タイミング法で妊娠しなかった場合などが適応となります。処置自体は数分で終わり、痛みもほとんどありません。成功率は1周期あたり5~15%程度で、累積妊娠率は5〜6回で頭打ちになる傾向があります。保険適用により費用は1回あたり5千円~2万円程度となりました。人工授精を4~6回行っても妊娠しない場合は、体外受精へのステップアップを検討します。特に女性が35歳以上の場合は、早めの判断をお伝えさせていただいております。人工授精は比較的簡便な治療ですが、両側卵管閉塞がある場合は適応になりません。

ステップ3:体外受精(IVF)

体外受精は、卵巣から採取した卵子と精子を体外で受精させ、受精卵(胚)を子宮に戻す高度生殖医療です。
治療の流れは、
①卵巣刺激(排卵誘発剤で複数の卵胞を育てる)
②採卵(成熟した卵子を採取)
③受精(卵子と精子を培養液内で自然に受精させる)
④胚培養(受精卵を3~5日間培養)
⑤胚移植(良好胚を子宮に戻す)
となります。余剰胚は凍結保存し、次回以降の移植に使用できます。成功率は年齢により大きく異なり、35歳未満で約40%、40歳で約20%、43歳以上では5%程度となります。保険適用により、1回の治療費は約20~50万円となりましたが、年齢と回数に制限があります(40歳未満は通算6回まで、43歳未満は通算3回まで)。体外受精は両側卵管閉塞、重度の男性不妊、原因不明不妊などに有効な治療法です。

ステップ4:顕微授精(ICSI)

顕微授精は、細いガラス管を使って1個の精子を直接卵子に注入する方法で、体外受精の中でも最も高度な技術を要する治療です。重度の乏精子症、精子無力症、受精障害、体外受精で受精しなかった場合などが適応となります。通常の体外受精では精子が自力で卵子に侵入しますが、顕微授精では人為的に受精を成立させるため、精子が極端に少ない場合でも妊娠が可能になります。成功率は体外受精とほぼ同等で、年齢が最も重要な因子となります。費用は体外受精より若干高くなりますが、保険適用の対象です。最近では、精子の選別技術も進歩し、IMSI(高倍率で精子を観察して選別)やPICSI(成熟精子を選別)などの技術も導入されています。顕微授精は男性不妊の究極的な治療法といえますが、すべての不妊症例に適応があるわけではないため、まずは医師とご相談ください。

ステップアップのタイミングと判断基準

年齢別のステップアップ目安

不妊治療のステップアップのタイミングは、女性の年齢が重要な判断基準となります。35歳未満の場合、タイミング法を4〜6周期、人工授精を4~6回試みてから体外受精を検討するのが一般的です。しかし、35歳以上40歳未満の場合は、タイミング法2〜3周期、人工授精2〜3回で次のステップを考慮します。40歳以上の場合は、さらに早期のステップアップをおすすめしており、場合によってはタイミング法を省略して人工授精や体外受精から開始をご提案することもございます。AMH値が低い場合も、年齢に関わらず早めのステップアップを検討します。また、不妊原因によってもステップアップの時期は変わります。両側卵管閉塞がある場合は最初から体外受精、重度の男性不妊では顕微授精が第一選択となることもあります。個々の状況に応じた最適なタイミングについてご提案させていただきますのでまずは当院へお気軽にご相談ください。

各段階での切り替え基準

タイミング法から人工授精への切り替えは、一般的に4~6周期試みても妊娠しない場合に検討します。特に、軽度の男性因子がある、頸管粘液が少ない、性交障害があるなどの場合は、早めに人工授精へ移行することがあります。人工授精から体外受精への切り替えは、4~6回の人工授精で妊娠しない場合が目安となります。累積妊娠率は5~6回でほぼ頭打ちになるため、それ以上続けても効果が期待しにくくなります。体外受精から顕微授精への切り替えは、通常の体外受精で受精率が低い(30%未満)、または全く受精しない場合に検討されます。初回から顕微授精を選択する場合は、精子濃度が100万/ml未満、運動率が極端に低い、抗精子抗体強陽性などが基準となります。ただし、これらはあくまで目安であり、個々の状況や希望を考慮して柔軟に対応することが大切です。不明点があればなんでもご相談ください。

ステップダウンという選択肢

不妊治療では「ステップアップ」が一般的ですが、状況によっては「ステップダウン」という選択肢もあります。例えば、体外受精で妊娠・出産した後、第二子を希望する際に、まずはタイミング法や人工授精から再開することがあります。体外受精により卵管の通過性が改善したり、出産により体質が変化したりすることで、より自然に近い方法で妊娠できる可能性があるためです。また、体外受精の心理的・身体的負担が大きく、一時的に治療強度を下げたい場合もステップダウンを検討します。さらに、凍結胚がある場合は、新たな採卵を行わずに凍結胚移植を繰り返すこともステップダウンの一種といえます。治療を休憩する期間を設けることで、心身のリフレッシュを図り、次の治療に向けて準備を整えることも重要です。不妊治療は必ずしも一方向に進むものではなく、柔軟な対応が求められます。

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