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排卵誘発(卵巣刺激)

排卵誘発(卵巣刺激)とは?

「排卵誘発(卵巣刺激)」という言葉、治療を始めるとよく耳にしませんか?
これは、一般的に「排卵誘発剤」と呼ばれるお薬を使って、卵巣の中にある「卵胞(らんほう)」の発育をコントロールする大切な治療法です。健康な女性の体では、毎月いくつかの卵胞が育ち始めますが、最終的に排卵するのはたった1つの「主席卵胞」だけだということをご存知でしょうか?
排卵誘発は、この体に備わった自然なメカニズムを医療の力で少し手助けし、卵胞の発育を促したり、排卵のタイミングを調整したりします。

なぜ排卵誘発が必要なのでしょう?治療段階による「2つの異なる目的」

一言で「排卵誘発」と言っても、実は治療のステップによってその「目的」が全く異なることはご存知でしたか?この違いを理解することが、治療への第一歩です。

排卵障害を改善し、タイミングを合わせるため

タイミング法や人工授精(AIH)においては、主に「排卵障害の改善」が目的となります。
月経不順や無排卵症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などで、排卵がうまくいかない場合に適しています。
この段階では、「質の良い卵胞を1つだけ確実に育てる」ことが目標だと思いませんか?
お薬を使って排卵を促すことで、タイミングも合わせやすくなり、妊娠の可能性を高めることができるのです。

多くの質の良い卵子を採卵するため

一方で、体外受精における目的はガラリと変わり、「複数個の良好な卵子を採取すること」になります。自然な状態では1つしか得られない卵子を、お薬を使って同時に複数個育てていきます。一度に多くの卵子が得られれば、それだけ多くの受精卵(胚)を育てることができ、その中から一番良い状態の胚を選んで移植できますよね?
そうすることで移植のチャンスが増え、結果として妊娠への近道となるのです。

あなたの状態に合うのは?卵巣刺激法の主な分類と特徴

排卵誘発の方法は、お薬の種類や量によって「高刺激」「中刺激」「低刺激」「自然周期」の4つに大きく分けられます。「自分にはどれが合っているの?」と迷われるかもしれませんが、年齢や卵巣予備能(AMH)、そして治療の目的によって医師が最適な方法をご提案させていただきます。まずはそれぞれの特徴を比べてみましょう。

【卵巣刺激法の比較早見表】

刺激レベル主な目的・採卵数目安身体的負担OHSSリスク
高刺激法多くの卵子を採りたい (8~15個以上)
中刺激法中程度の数を採りたい (5~8個程度)
低刺激法体に優しく少数を採りたい (1~5個)
自然周期法自然な排卵で1個採りたい最小ほぼゼロ

高刺激法(調節卵巣刺激法)の種類

高刺激法は、注射薬を使って一度に10個前後の卵胞を育てる積極的な方法です。
しかし、ただ卵胞を育てるだけではうまくいかないことをご存知ですか?
たくさんの卵胞が育つと、体が勘違いをして、採卵日よりも前に排卵の指令を出してしまうことがあるのです。
それを防ぐために、必ず「排卵を抑える薬」を使います。このブレーキの使い方の違いで、
以下の種類に分かれています。

アンタゴニスト法(現在の主流)
現在、多くのクリニックで主流となっている方法です。
卵胞がある程度育ってきた段階で、「GnRHアンタゴニスト」という即効性のあるブレーキ役の注射を足して排卵を抑えます。最後の仕上げにhCG注射を使わず、点鼻薬を使うことができるため、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを大幅に下げられるのが嬉しいポイントですね。

ロング法
採卵をする周期の「前の周期」から準備を始める方法です。高温期から点鼻薬を使い始め、脳からの指令を一度しっかりお休みさせてから刺激を行います。排卵してしまうリスクが極めて低く、スケジュールが立てやすいというメリットがあります。

ショート法
月経が始まったらすぐに点鼻薬を使い始める方法です。点鼻薬の使い始めにホルモン分泌が一時的に増える現象(フレアアップ)を利用して、卵胞の発育を後押しします。ロング法よりも期間が短くて済むのが特徴です。

PPOS法(黄体ホルモン併用)
比較的新しい方法をご存知でしょうか?高価な注射の代わりに、「黄体ホルモン(プロゲスチン)」という飲み薬をブレーキ役として使う方法です。費用を抑えやすく、自己注射の負担も減らせる場合があります。ただし、この周期での移植(新鮮胚移植)はできず、「全胚凍結」が前提となる点は覚えておいてくださいね。

低刺激法・自然周期法の種類

「なるべく体への負担を減らしたい」とお考えの方には、飲み薬を中心としたマイルドな方法もあります。

クロミフェン法(クロミッドなど)
不妊治療で最もよく使われる、基本となる飲み薬です。脳に「ホルモンが足りていないよ」と錯覚させることで、間接的に卵巣を刺激する仕組みだということをご存知でしたか?ただ、副作用として子宮内膜が薄くなったり、おりものが減ったりすることがあるので注意が必要です。

レトロゾール法(フェマーラなど)
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方や、クロミフェンが効きにくい方に適しています。こちらはクロミフェンのような「子宮内膜が薄くなる」という副作用が出にくいとされており、使いやすいお薬と言えるでしょう。

自然周期法・完全自然周期法
お薬をほとんど使わず、体の中で自然に育つ1つの卵胞を採卵する方法です。
体への負担は最小限ですが、採卵できる卵子は1つ(または0個)ですし、排卵済みでキャンセルになってしまう可能性も高くなります。「薬を使いたくない」という方や、「自然な形での採卵」を希望される方に選ばれています。

排卵誘発(卵巣刺激)で使われる薬剤の役割

「たくさん薬があって難しい…」と感じていませんか?
実は、治療に使われるお薬は大きく3つの役割に分けられます。

卵胞を育てる薬(アクセル役)飲み薬(クロミフェンなど)や、卵巣に直接働いて強力に育てる
注射薬(hMG/FSH製剤)がこれにあたります。
排卵をコントロールする薬(ブレーキ役)勝手に排卵してしまうのを防ぐ大切なお薬です。
点鼻薬や注射、最近では飲み薬(黄体ホルモン)も使われます。
仕上げの薬(トリガー役)採卵の直前(約36時間前)に使い、卵子を成熟させて排卵できる状態に仕上げる「最後のひと押し」です。

知っておきたい副作用とリスク

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)

お薬によって卵巣が頑張りすぎてしまい、大きく腫れ上がってしまう状態です。
おなかが張ったり、痛くなったり、急に体重が増えたりすることはありませんか?重症化するとお腹に水がたまることもあります。リスクが高い方(PCOSの方や若い方など)には、医師が安全な方法(アンタゴニスト法や全胚凍結など)を提案させていただきますのでご安心ください。

よくある質問(Q&A)

質問と回答

Q1. 排卵誘発剤を使うと、閉経が早まるって本当ですか?

A1. いいえ、そんなことはありませんのでご安心ください。

女性の体では、毎月たった1つの卵子が排卵される裏で、実は多くの卵胞が消えてなくなっているのをご存知でしたか?排卵誘発は、この「消えていくはずだった卵胞」を救い出して育てているだけなのです。将来の卵子を前借りしているわけではないので、医学的に閉経が早まることはありません。

Q2. 刺激法が合わなかった場合、変更できますか?

A2. はい、もちろん変更できます。

一度の治療でうまくいかなくても、その時の「薬への反応」は、次回の成功に向けたとても重要なデータになります。もし結果が出なかったとしても、あなたにより合った方法をご提案させていただきます。

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