
ERA(子宮内膜着床能検査)とはどのような検査か
ERA検査はスペインのIGENOMIX社が開発したもので、子宮内膜の「着床能(受精卵を受け入れる能力)」を調べる検査です。従来、胚移植のタイミングは「月経開始から〇日目」あるいは「黄体ホルモン投与から〇日目」といった一般的な基準で行われてきましたが、近年の研究で約30%の女性においてはこの標準的な着床のタイミングがズレていることが明らかになりました。ERA検査では子宮内膜の組織を採取して236個の関連遺伝子の発現を解析します。これにより子宮内膜が胚を受け入れる準備ができている状態(受容期)なのか、まだ早いのかもしくは遅いのかを分単位で正確に診断することが可能です。
着床のカギを握る「着床の窓(Implantation Window)」
子宮内膜には受精卵を受け入れることができる特定の期間が存在しており、これを専門用語で「着床の窓(Implantation Window)」と呼びます。
この「窓」が開いている時間は非常に短いうえに個人差があります。通常は黄体ホルモン(プロゲステロン)の投与開始から約120時間後前後が開くタイミングとされていますが、この窓が開いている時に胚移植を行わなければ、どれほど良好な胚であったとしても着床することはできません。つまりERA検査は、あなただけの「窓が開く時間」を特定するための検査と言えます。
なぜ着床のタイミングがズレてしまうのか
着床の窓がズレる原因は明確には特定されていないものの、遺伝的な体質ならびにホルモンバランスへの感受性の違いなどが関係していると考えられています。例えば標準的なタイミングよりも「窓」が早く開いてしまう人もいれば一方で遅れて開く人もいます。このズレは1日(24時間)あるいは12時間程度のズレであることもあります。ここで重要なのは、このズレは「不妊の原因」ではなく「体質」であることから、移植のタイミングさえ調整すれば妊娠が可能になるケースが多いという点です。これまで原因不明とされていた着床障害の方にとって、ERA検査は画期的な解決策となり得ます。
ERA検査はどんな人におすすめ?
ERA検査はすべての方に必須の検査ではないものの、特定の状況にある方にとっては妊娠率を向上させる可能性があります。主に推奨されるのは以下のような方です。
良好な胚を移植しても妊娠に至らない方(反復着床不全)
最も推奨されるのは、形態的に良好な胚(グレードの良い胚盤胞など)を複数回(一般的には3回以上)移植したにもかかわらず妊娠反応が出ない、もしくは化学流産を繰り返してしまう「反復着床不全(RIF)」の方です。
子宮の形やポリープといった器質的な問題がないうえに卵の質も良い場合には、着床のタイミング(窓)が合っていない可能性が疑われます。実際に反復着床不全の方の約3割に「着床の窓のズレ」が見つかっています。
貴重な胚を無駄にしたくない方
採卵数が少ないために確保できた良好胚が残り1つしかないといった場合も適応となります。「失敗できない移植」の前に万全を期すためにあらかじめERA検査を行ったうえで、最適なタイミングを確認してから本番の移植に臨むという戦略です。また年齢が高いことや採卵が難しくなってきている方をはじめ、一つひとつの胚を最大限に活かしたいと考える方にも選ばれています。
ERA検査の具体的な流れとスケジュール
ERA検査は、実際の胚移植と同じ環境(ホルモン補充周期または自然周期)を再現して行います。ここでは一般的な「ホルモン補充周期」での流れを解説します。
ホルモン補充周期での検査スケジュール
検査周期は、基本的に「胚移植をするつもり」で薬を使用していきます。
1.月経開始~: エストロゲン製剤(テープや内服薬)を使用し、子宮内膜を厚く育てます。
2.排卵抑制・内膜確認: 超音波検査で内膜の厚さを確認し、排卵していないことを確認します。
3.黄体ホルモン開始(P+0): 医師の指示した日時から、黄体ホルモン(膣座薬や注射など)を開始します。この開始時間が非常に重要です。
4.組織採取(P+5): 黄体ホルモン開始から約120時間後(約5日後)を目安に、子宮内膜の組織採取を行います。
5.結果説明: 採取した組織を海外(IGENOMIX社など)のラボへ送り解析します。結果が出るまで通常2~3週間かかります。
もし検査結果で「ズレ(Non-Receptive)」が見つかった場合、次回の本番の移植では、そのズレの分だけ黄体ホルモンの開始時間を調整して移植を行います。
子宮内膜の採取方法について
内膜採取(バイオプシー)は、通常の内診台で行います。 細いピペット(吸引器具)のようなものを子宮口から挿入し、子宮内膜の組織を一部吸引・採取します。所要時間は5分程度です。 採取後は少量の出血が見られることがありますが、数日で治まることがほとんどです。当日はシャワーのみとし、感染予防の抗生剤が処方されるのが一般的です。
検査の痛みやリスクについて
これからERA検査を受ける方にとって、一番の心配事は「痛み」かもしれません。
痛みはどの程度?麻酔は必要?
痛みの感じ方には個人差がありますが、正直にお伝えすると「重い生理痛のような痛み」や「チクッとする痛み」を感じる方が多い検査です。 子宮の入り口が狭い方(未経産婦の方など)や、子宮の屈曲が強い方は痛みを感じやすい傾向にあります。
基本的には無麻酔で行われますが、痛みに極端に弱い方や不安が強い方は、事前に鎮痛剤(座薬や内服)を使用することで痛みを和らげることができます。心配な方は事前に医師へご相談ください。
検査周期は避妊が必要か
ERA検査を行う周期は、子宮内膜を採取してしまうため、妊娠することはできません。 検査を行った周期にタイミング法などを併用することは避け、必ず避妊をするか、性交渉を控える必要があります。検査の目的はあくまで「最適な時期を調べること」ですので、この1周期はお休み期間と捉えましょう。
同時に検討される「EMMA検査」「ALICE検査」との違い
ERA検査について調べると、「EMMA(エマ)」や「ALICE(アリス)」という言葉もよく目にすると思います。これらはERAと同じ検体(子宮内膜組織)を使って行える別の検査です。
| ERA検査 | 着床の「タイミング(いつ)」を調べる。 |
| EMMA検査 | 子宮内の「細菌バランス(乳酸菌の割合など)」を調べる。 |
| ALICE検査 | 慢性子宮内膜炎の原因となる「悪い菌」の有無を調べる。 |
子宮内環境を網羅的に調べる「TRIO検査」とは
ERA・EMMA・ALICEの3つをまとめて行うことを「TRIO(トリオ)検査」と呼びます。 着床しない原因が「タイミング」なのか、「子宮内環境(菌)」なのかは、検査してみないと分かりません。一度の内膜採取ですべて解析できるため、患者様の負担(痛みや通院回数、時間的ロス)を減らすために、3つの検査を同時に行うことが推奨されています。
ERA検査の費用と保険適用について
ERA検査は医療保険の適用外であり、全額自費診療(先進医療として扱われる場合を含む)となります。ただし、EMMA/ALICE検査と同じように先進医療の適応です。決して安い検査ではありませんが、不確かな状態で高額な体外受精・胚移植を繰り返すコストや、精神的な負担、時間の経過を考慮すると、早めに原因を特定できるERA検査は、費用対効果の高い投資であるとも言えます。 お住まいの自治体によっては、先進医療に対する助成金が出る場合もありますので、確認してみてください。
まとめ:着床のタイミングを知り、妊娠への近道へ
ERA検査(子宮内膜着床能検査)について解説しました。
ERAは「あなただけの着床の窓(最適な移植時期)」を特定する検査。
反復着床不全の方の約30%に「窓のズレ」が見つかっている。
検査は生理痛のような痛みを伴うが、短時間で終わる。
TRIO検査で子宮内環境も同時に調べることが推奨される。
大切な受精卵を確実に着床へ導くために、ERA検査という選択肢があることを知っておいてください。