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化学流産とは?「私のせい?」と悩むあなたに伝えたい原因と次の一歩【生殖医療専門医監修】

  • 公開日:2026.10.26
  • 更新日:2026.10.27
化学流産とは?「私のせい?」と悩むあなたに伝えたい原因と次の一歩【生殖医療専門医監修】|不妊治療・体外受精・卵子凍結なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院
この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
松見 泰宇学術顧問(医師)

生殖医療クリニック錦糸町駅前院の学術顧問を拝命いたしました、松見泰宇(まつみ ひろたか)と申します。

わたくしはこれまで、東京大学関連の大学病院や基幹病院において、尊敬する同窓の諸先輩方のもとで研鑽を積んでまいりました。その一方で、著名なプライベートクリニックに勤務する機会にも恵まれ、クリニックならではの、身近できめ細やかな診療も学んでまいりました。

これまでに培った知見が、当クリニックの患者さまのお役に少しでも立てば幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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妊娠検査薬にうっすらと線が浮かび胸が高鳴ったのもつかの間。数日後に生理のような出血が来て、「化学流産かもしれない」とこのページにたどり着いた方もいるのではないでしょうか。

不妊治療を続けている方なら判定日に「陽性ですが、hCGの値が少し低めです」と告げられ、次の採血までの数日間を祈るような気持ちで過ごした経験があるかもしれません。

「せっかく来てくれたのに、私の何がいけなかったのだろう」。診察室でそう涙を流される方に、私たちは何度もお会いしてきました。

最初にお伝えしたいのは、化学流産のほとんどは受精卵側に起こる偶然の出来事であり、あなたの行動や努力不足のせいではないということです。

この記事では不妊治療に携わる生殖医療専門医の立場から、化学流産の基本、体外受精での見え方、繰り返すときに考えたい検査、そして心のケアまでを2025年に公表された最新の提言もふまえて丁寧に解説します。

化学流産とは?まず知ってほしい基本

まずは「化学流産とは何か」を言葉の意味と医学的な位置づけから整理しましょう。

化学流産(生化学的妊娠)の定義

化学流産とは、尿や血液の検査で妊娠ホルモン(hCG)が検出されて妊娠反応は陽性になったものの、超音波検査で子宮の中に赤ちゃんの袋(胎嚢:たいのう)が見える前に妊娠が終わってしまう状態です。

hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、受精卵が子宮内膜にもぐり込む「着床」が起こり、のちに胎盤になる組織(絨毛)がつくられ始めると分泌されるホルモンです。つまりhCGが検出されたということは、受精卵が一度は着床できたサインでもあります。

胎嚢が超音波で見えるようになるのは一般に妊娠5週前後です。それより前に発育が止まり、月経のような出血とともにhCGが下がっていくのが典型的な経過です。国際的にも、生殖補助医療の国際組織ICMARTとWHOが「hCGは検出されるが超音波で胎嚢が確認されない妊娠」と定義しています。

「化学流産」「生化学的妊娠」「生化学的流産」呼び方の違い

医学的には「生化学的妊娠(biochemical pregnancy)」が従来の正式な用語で「化学流産」「化学的流産」「ケミカルアボーション」は一般に広く使われている呼び名です。

ただ「生化学的妊娠」という言葉そのものには妊娠が終わったという意味が含まれていません。そこで日本不育症学会は、英語のbiochemical pregnancy lossに対応する言葉として「生化学的流産」を提唱しており、日本産科婦人科学会の「産科婦人科用語集・用語解説集」第5版で採用される予定とされています。

呼び方は違っても指している状態は同じです。クリニックで「生化学的妊娠でしたね」と言われたら、この記事でいう化学流産のことだと理解していただいて大丈夫です。

化学流産は流産回数に含まれる?

「化学流産は流産に数えるの?」はとても多いご質問です。実は国内と海外で考え方が少し異なります。

日本の考え方

日本では、化学流産は流産回数に含めないのが原則です。日本産科婦人科学会の用語集には、生化学的妊娠を習慣流産や不育症の診断根拠にしないことが明記されており、2025年5月に公表された「不育症管理に関する提言2025」(こども家庭行政推進調査事業の研究成果)でもこの方針が維持されました。

ただし提言2025は一歩踏み込み、臨床的な流産回数とは別に「生化学的妊娠◯回」と付記すること、そして3回以上繰り返す場合は「反復生化学的妊娠(流産)」として不育症に準じた原因検索を行うことを推奨しています。「回数に入らない=気にしなくてよい」ではなく「別枠で記録し、繰り返すなら調べる」というのが最新の考え方です。

海外の考え方(ESHRE・ASRM)

海外では立場が分かれています。欧州生殖医学会(ESHRE)は2022年の不育症ガイドラインで、化学流産も回数が増えるほど出産に至る確率が下がるという報告をもとに、不育症(2回以上の妊娠の喪失)の定義に含めるとしています。一方、米国生殖医学会(ASRM)は臨床的流産のみを数える立場です。

国際的にも議論が続いているテーマだと知っておくと、ネット上の情報が食い違っていても混乱せずにすみます。

化学流産はどれくらい起こる?

「私だけがこんな経験をしているのでは」と感じている方にこそ知ってほしいデータがあります。

全妊娠の約8〜33%と決して珍しくない

化学流産は決して珍しい出来事ではありません。全妊娠の8〜33%と比較的高い頻度でみられ、本人が気づかないまま終わっていることも多いと報告されています。

数字に幅があるのは、化学流産が気づかれにくいうえ妊娠回数にも流産回数にも数えられないため、正確な統計がとりにくいからです。

参考までに、超音波で妊娠が確認されたあとの流産(臨床的流産)も、妊娠の10〜15%前後に起こります。妊娠のごく初期にはこうした「自然なふるい分け」が誰の体の中でも日常的に起きているのです。

妊娠検査薬の高感度化で「気づく人」が増えた

化学流産という言葉が広く知られるようになった背景には、市販の妊娠検査薬の高感度化があります。以前は陽性にならなかったわずかなhCGも検出できるようになり「一度陽性が出たのに生理が来た」という体験をする方が増えました。

ひと昔前なら「少し遅れて来た生理」として過ぎていた妊娠が見えるようになったともいえます。国内の一般的な妊娠検査薬は生理予定日の約1週間後から使用するよう設計されていますが、それより早く検査すると化学流産に気づく機会はさらに増えます。

体外受精では化学流産に気づきやすい理由

体外受精や顕微授精で胚移植を受けている方は化学流産に気づきやすい環境にあります。移植から決まった日数後に血液中のhCGを測る「妊娠判定」を行うため、ごくわずかな上昇も数値で捉えられるからです。

医学誌でも、生殖補助医療(ART)の実施例では生化学的妊娠と診断される率が高いと指摘されています。これは体外受精で化学流産が「起こりやすい」というより「見つかりやすい」側面が大きいと考えられます。

判定日に陽性でも数値が低めの場合は、数日後に再検査してhCGが順調に増えているかを確認します。結果を待つ数日間がどれほど長く感じられるか私たちもよく理解しています。

化学流産の原因

化学流産の原因を正しく知ることは、自分を責める気持ちを手放す第一歩になります。

最も多いのは受精卵の染色体異常

化学流産の主な原因は、受精卵(胚)の染色体の数の異常など、受精卵そのものに偶然起こる変化と考えられています。自然流産の検体の約50〜70%に染色体異常が見つかることが知られており、さらに早い段階で終わる化学流産も同じ背景をもつと考えられています。

それを裏づけるのが、日本産科婦人科学会が行った着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の臨床研究です。染色体の数が正常な胚を選んで移植すると生化学的妊娠の率が下がったと報告されています。一方で差がなかったとする海外の報告もあり、すべての化学流産が染色体異常だけで説明できるわけではありません。

年齢と流産率の関係

受精卵の染色体異常は女性の年齢が上がるほど起こりやすくなります。そのため流産の頻度も年齢とともに上昇します。日本産科婦人科学会の生殖補助医療データ(2022年)にもとづく年齢別の流産率は次のとおりです。

年齢流産率(ART妊娠)
20〜24歳19.3%
25〜29歳15.8%
30〜34歳18.9%
35〜39歳25.1%
40〜44歳39.0%

35歳を過ぎると上昇し40代前半では約4割に達します。化学流産も同じように年齢の影響を受けると考えられますが、これは卵子に起こる自然な変化であり努力で防げるものではありません。

日常生活が原因になることはほとんどない

「仕事で無理をしたから」「妊娠に気づかずお酒を飲んでしまったから」「重い荷物を持ったから」。化学流産のあと多くの方がご自身を責めます。けれども、着床直後の受精卵の発育が止まる原因がこうした日常の行動であることはほとんどありません。

染色体の異常の多くは受精の瞬間かそれ以前に決まっており、その後の生活で変えられるものではないのです。喫煙や過度の飲酒は流産全体のリスクとして知られているため控えるに越したことはありませんが、それは「次の妊娠に向けた準備」のお話です。どうか過去のご自分を責めないでください。

化学流産の時期と症状

化学流産は自覚症状が少なくいつもの生理と区別がつきにくいのが特徴です。

起こりやすい時期は妊娠4〜5週ごろ

妊娠週数は、最終月経が始まった日を「妊娠0週0日」として数えます。月経周期が28日の方なら、次の生理予定日がちょうど妊娠4週0日にあたります。

化学流産はこの生理予定日の前後から1〜2週間以内、つまり妊娠4〜5週ごろに起こることがほとんどです。生理が数日遅れて来たと感じる方も少なくありません。

体外受精の場合は施設ごとに決められた判定日に血液検査を行い、その後の再検査でhCGが下がってきたことで化学流産とわかるのが一般的です。

主な症状は月経のような出血

化学流産の主な症状は月経のような出血です。量はいつもの生理と同じかやや多い程度のことが多く、軽い下腹部痛を伴うこともあります。数日から1週間ほどで落ち着くのが一般的です。

胸の張りや眠気といった「妊娠初期症状かな」と感じていた変化がすっと消えていくように感じる方もいます。ただし、こうした症状は生理前の黄体期にも起こるため症状だけで妊娠の継続を判断することはできません。

ほとんどの場合は自然に経過し体に後遺症が残る心配はまずありません。

いつもの生理との見分け方

正直にお伝えすると症状だけで化学流産と生理を見分けることは難しいです。手がかりになるのは「出血の前に妊娠検査薬で陽性が出ていたか」と「出血後に陰性へ戻ったか」の2点です。

出血が始まってから1〜2週間ほどして妊娠検査薬が陰性になれば、hCGが下がりきったと考えられます。反対に、出血後も陽性が続く場合は念のため医療機関を受診してください。

なお、体外受精後に黄体ホルモンの補充(腟剤・内服・注射など)を続けている方は、出血があっても自己判断で中止せず必ず主治医に連絡してください。出血しても妊娠が続いているケースがあるためです。

臨床的流産・異所性妊娠との違い

専門医として特にお伝えしたいのがこのパートです。化学流産と「よく似た経過」をとる、注意が必要な状態があります。

臨床的流産との違い

超音波で胎嚢が確認できたあとに妊娠が終わる場合は「臨床的流産」と呼ばれ、化学流産とは区別されます。主な違いは次のとおりです。

項目化学流産臨床的流産
時期胎嚢確認前(妊娠4〜5週ごろ)胎嚢確認後(多くは妊娠12週未満)
診断の根拠hCGの推移超音波検査
流産回数含めない(別枠で記録)含める
処置基本的に不要経過観察・薬・手術を選択
体への負担生理と同程度が多い出血や痛みが強いこともある

胎嚢確認後の流産には、子宮の中で発育が止まる「稽留流産」、出血とともに内容物が出てくる「進行流産」などがあり状態に応じて処置を検討します。

専門医が注意する「異所性妊娠」との見分け

異所性妊娠(子宮外妊娠)とは、受精卵が卵管など子宮以外の場所に着床してしまう状態です。妊娠のごく初期は、異所性妊娠でもhCGは陽性になり子宮の中に胎嚢は見えません。つまり、一時的に化学流産とまったく同じように見える時期があるのです。

医学的には、hCGは陽性なのに妊娠の場所が確認できない状態を「部位不明の妊娠(PUL)」と呼び、この中には化学流産のほか、一部の臨床的流産や異所性妊娠が含まれます。

異所性妊娠は進行すると卵管が破れて大量出血を起こすことがあり、命に関わります。だからこそ私たちは、「たぶん化学流産でしょう」で終わらせず、hCGが陰性になるまで確認することを大切にしています。体外受精で子宮に胚を戻した場合でも異所性妊娠は起こりえます。

すぐに受診してほしいサイン

次のような症状があるときは化学流産だろうと自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。夜間や休日であれば救急外来の利用もためらわないでください。

  • 片側の下腹部に強い痛みがある、痛みがだんだん強くなる
  • 夜用ナプキンが短時間でいっぱいになるほど出血が多い
  • 出血が2週間以上続く
  • めまい、ふらつき、冷や汗、肩の痛みがある
  • 出血が落ち着いたあとも妊娠検査薬の陽性が続く

化学流産の診断と治療

化学流産の診断は1回の検査ではなく「経過」を見て行います。

hCG値の推移で判断する

順調な妊娠のごく初期には、血液中のhCGはおよそ2日前後で約2倍に増えていきます。判定日の値が低い、数日後の再検査で増え方が乏しい、あるいは下がっている場合に化学流産を疑います。

最終的には、胎嚢が見えないままhCGが下がり陰性になることで化学流産と判断します。異所性妊娠でないことを確かめるためにも陰性化までの確認が欠かせません。

一方で、判定日の値が低めでもその後順調に増えて出産に至る方もいらっしゃいます。1回の数値だけで悲観しすぎず主治医と一緒に推移を見守りましょう。

基本的に手術や薬は不要

化学流産では、子宮の中の組織はごく小さく月経と一緒に自然に排出されます。そのため、手術や流産のための薬が必要になることは基本的にありません。

不妊治療で黄体ホルモンの補充をしている場合は、主治医がhCGの値を確認したうえで中止の時期を判断します。出血が落ち着けば多くの方は次の生理も通常どおりに来ます。体への後遺症や子宮が傷つくことを心配する必要はほとんどありません。

化学流産のあと、次の妊娠はいつから?

「次はいつから挑戦していいの?」というご質問も診察室でとても多くいただきます。

自然妊娠・タイミング法の場合

化学流産のあとに医学的な理由で長く避妊する必要は一般的にありません。出血が終わり、体調が戻っていれば次の周期から妊活を再開できることが多いです。

ただし、化学流産のあとは排卵の時期が少しずれることがあります。基礎体温や排卵検査薬を参考にしながら焦らず進めましょう。タイミング法で通院中の方は次の周期の予定を主治医と確認してください。

そして何より大切なのは、心の準備です。「すぐに次を」と思える方もいれば、少し時間が必要な方もいます。どちらも自然なことです。

体外受精・胚移植の場合

凍結胚が残っている場合、hCGが陰性になり月経が来れば次の周期から移植を再開できることが多いです。子宮内膜の状態や心身の回復を考えて1周期お休みしてから再開する選択もあります。

化学流産を経験した周期のデータ(hCGの値、内膜の厚さ、胚のグレードなど)は、次の治療計画を立てるうえで大切な情報になります。気になることは遠慮なく主治医に質問してください。

次の妊娠への影響

1回の化学流産が次の妊娠のしやすさや妊娠の継続に悪い影響を与える心配は基本的にありません。

むしろ化学流産は、「受精し着床するところまでは進めた」という情報でもあります。とくに長く妊娠反応が出なかった方にとっては、治療の方向性を考える手がかりになることもあります。

ただし、何度も繰り返す場合は話が別です。次の章で詳しく解説します。

化学流産を繰り返すときに考えること

「また化学流産だった」。2回、3回と続くと不安が大きくなるのは当然です。ここでは最新の提言にもとづく考え方をお伝えします。

3回以上なら原因検索を検討(提言2025)

「不育症管理に関する提言2025」では化学流産を3回以上繰り返す場合を「反復生化学的妊娠(流産)」と呼び、不育症に準じた原因検索を行うことを推奨しています。

背景には、不育症の方で化学流産が2回以上あると次の妊娠の経過がよくない傾向があるという報告や、化学流産を繰り返す方でも不育症と同じ程度にリスク因子が見つかるという報告があります。ただし、この分野の研究はまだ十分ではないため検査や治療は研究的な位置づけで十分な説明と同意のもとで行うとされています。

なお、不育症は「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義され、日本では妊娠歴のある女性の約5%にみられます。化学流産とは別に胎嚢確認後の流産も経験している方は、そちらの回数でも評価を検討します。

主な検査の内容

提言2025で「推奨検査」とされている主な項目は次のとおりです。

  • 子宮の形の検査:経腟3D超音波などで、中隔子宮などの形態異常がないかを調べます
  • 抗リン脂質抗体の検査:血液が固まりやすくなる自己抗体の有無を調べます
  • 夫婦の染色体検査:遺伝カウンセリングを受けたうえで、ご夫婦の意思で行います
  • 甲状腺の検査:TSH、FT4などで甲状腺機能を確認します

検査をしても、約65%の方ははっきりしたリスク因子が見つかりません。その多くは、受精卵の染色体異常が偶然重なったものと考えられています。リスク因子が見つからなかった方でも、薬を使わずに次の妊娠で出産に至る方が多いことがわかっています。「異常がない」という結果は決して無駄ではありません。

PGT-Aという選択肢

PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精で育てた胚から一部の細胞を採取し、染色体の数が正常かどうかを調べてから移植する方法です。

日本では日本産科婦人科学会の見解(2022年1月)にもとづき認定施設で行われ、2023年4月からは「先進医療B」として実施されています。臨床研究では、胚移植あたりの妊娠率が上がり、生化学的妊娠の率が下がったと報告されています。

一方で、患者さんあたりの出産率が上がるか、出産までの期間が短くなるかはまだはっきりしていません。移植できる胚が見つからないこともあり費用や体への負担も増えます。検査前後の遺伝カウンセリングも必要です。対象や条件は施設によって異なるため、メリットとデメリットを主治医とよく話し合って決めましょう。

知っておきたい公的支援

検査や治療を考えるとき、費用や相談先の情報も大切です。

  • 不育症検査費用助成事業(こども家庭庁):先進医療として行う不育症検査の費用の一部を、自治体が助成する制度です。対象検査には、流死産検体を用いた遺伝子検査(2022年12月〜)や、抗ネオセルフβ2グリコプロテインI複合体抗体検査(2025年6月〜)があります。対象は「2回以上の流産・死産の既往がある方」などで、化学流産のみでは対象外となるのが一般的です。要件はお住まいの自治体でご確認ください。
  • 保険診療:2022年4月から、2回目以降の流産で流産手術を受けた場合の絨毛染色体検査が保険適用になっています(提言2025)。
  • 性と健康の相談センター:都道府県・指定都市・中核市に設置され、不妊症・不育症の専門相談を受けられます(旧・不妊専門相談センター)。窓口一覧は厚生労働省が公開しています。
  • Fuiku-Labo(フイク-ラボ):不育症の研究班が運営する情報サイトで、メンタルサポートの動画なども公開されています。

つらい気持ちを抱えたあなたへ(心のケア)

体の回復は早くても心の回復には時間がかかることがあります。

悲しみは自然な反応

「医学的には流産に数えません」と説明されて「数えないほど小さなことなのだから悲しんではいけない」と感じてしまう方がいます。でも、陽性の線を見た瞬間から思い描いた未来を失った悲しみはまぎれもなく本物です。

提言2025でも、流産や死産のあとの悲嘆(グリーフ)は正常な反応であるとされています。一方で、一部は不安症やうつにつながることもあると指摘されています。

眠れない、食欲が戻らない、何も手につかないといった状態が2週間以上続くときは、ひとりで耐えずに主治医や心の専門家に相談してください。

パートナーと気持ちを分かち合う

化学流産は周囲に妊娠を伝える前に起こることが多く、悲しみをひとりで抱え込みやすい出来事です。パートナーは実感が持ちにくく気持ちの温度差にさらに傷つくこともあります。

「悲しい」「怖い」「次が不安」。うまく言葉にならなくても今の気持ちをそのまま伝えてみてください。提言2025では、医療者が話をよく聴き不安を和らげる「テンダー・ラビング・ケア(TLC)」を、女性だけでなくカップル単位で行うことが勧められています。ぜひおふたりで診察に来てください。

ひとりで抱えずに相談できる場所

相談先は、主治医だけではありません。多くの不妊治療クリニックには、看護師や、日本不妊カウンセリング学会が認定する不妊カウンセラー、心理士など気持ちの面を相談できるスタッフがいます。

通院先以外では、各地の「性と健康の相談センター」で医師や助産師に無料で相談できます。同じ経験をした人同士で支え合うピア・サポートの場も、心の支えになることがあります。

「こんなことで相談していいのかな」と思う必要はありません。話すことで、気持ちが少し軽くなることがあります。

化学流産についてよくある質問

質問と回答

Q1. 化学流産は防げますか?

A1. 化学流産の多くは受精卵の染色体の偶然の変化によるため、残念ながら確実に防ぐ方法はありません。

そのうえで、次の妊娠に向けてできることはあります。禁煙、過度の飲酒を控えること、カフェインをとりすぎないこと(1日300mg以上、コーヒー3杯以上で流産が増えるとの報告もあります)、適正体重を保つこと、甲状腺の病気など持病があればきちんと治療しておくことです。これらはパートナーの方にも大切です(提言2025)。

効果が確かめられていないサプリメントや民間療法に高額な費用をかける必要はありません。

Q2. 早めの妊娠検査(フライング検査)はやめたほうがいい?

A2. 禁止ではありませんが早すぎる検査は化学流産を「知る」機会を増やし、心の負担になることがあります。陽性に喜んだあとで出血が来ると落ち込みも大きくなりがちです。

体外受精や人工授精で治療中の方はクリニックの判定日を待つことをおすすめします。自己判断の検査結果で一喜一憂したり、黄体ホルモンの薬をやめてしまったりするのは避けてください。

Q3. 化学流産のあとは妊娠しやすいって本当?

A3. 「化学流産のあとは妊娠しやすい」という話をよく耳にしますが、はっきりした科学的根拠があるわけではありません。

ただ、化学流産は「受精し、着床するところまでは進めた」という事実を示しています。妊娠反応がまったく出なかった周期とは意味が異なり過度に悲観する必要はありません。次の周期に向けて、体と心を整えていきましょう。

参考文献・引用元

この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
学術顧問(医師)
HIROTAKA MATSUMI

資格・専門医

  • 東京大学医学博士
  • 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
  • 日本生殖医学会生殖医療専門医
  • 日本抗加齢医学会専門医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 難病指定医
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
  • 新生児蘇生インストラクターAコース修了
  • 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
  • 日本臨床免疫学会
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本生殖医学会
  • 日本生殖免疫学会
  • 日本不育症学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本再生医療学会
  • 日本産婦人科乳腺医学会
  • 日本スポーツ協会
  • 産婦人科PRP研究会

経歴

  • 東京大学医学部卒業
  • 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
  • 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
  • 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
  • 日本学術振興会特別研究員
  • スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
  • 成育医療研究センター特別研究員
  • 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
  • 帝京大学溝口病院講師
  • 帝京大学非常勤講師
  • 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
  • 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
  • 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務
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