予約24時間受付可)

ホルモン検査

不妊治療のスタートライン「ホルモン検査」とは

なぜホルモン検査が必要なのか?

妊娠という奇跡的なプロセスは、脳と卵巣の間で行われる「ホルモンのキャッチボール」によってコントロールされています。脳からの指令で卵子が育ち、排卵し、子宮内膜が厚くなり、着床の準備が整います。

もし、このホルモンの分泌量が少なすぎたり、あるいは多すぎたり、分泌されるタイミングがずれていたりすると、うまく排卵できなかったり、受精卵が着床しにくくなったりします。これが「不妊」の原因の一つとなります。 ホルモン検査を行うことで、「卵巣がきちんと働いているか」「排卵の準備ができているか」「排卵後に妊娠を維持する力があるか」といった、外見からはわからない体内の状況を数値化して把握することができます。

検査は「採血」のみ。痛みや時間は?

「検査」と聞くと、痛い思いをするのではないかと不安になる方もいるかもしれませんが、ホルモン検査の基本は「採血(血液検査)」です。内診台に上がって器具を入れるような検査ではありませんので、精神的・身体的な負担は比較的少ない検査と言えます。

採血にかかる時間は数分程度です。ただし、ホルモン値は日内変動(1日の中で数値が変わること)があるものや、食事の影響を受けるものもあるため、午前中の採血を推奨されたり、空腹時を指定されたりする場合があります。 痛みは通常の健康診断の採血と同じ程度ですが、血管が見えにくい方や採血が苦手な方は、事前に医師や看護師にご相談ください。

ホルモン値は生理周期によって変化する

ここがホルモン検査の最も重要なポイントです。女性ホルモンは1ヶ月(生理周期)の中で劇的に変動します。そのため、「いつ測っても同じ」ではありません。

例えば、「卵を育てるホルモン」は生理中に測る必要があり、「着床を助けるホルモン」は排卵後に測らなければ意味がありません。 そのため、不妊検査におけるホルモン検査は、一度の通院で全て終わるわけではなく、生理周期に合わせて月経期(低温期)、排卵期、黄体期(高温期)と、数回に分けて通院し、その時期に合わせたホルモン値を測定する必要があります。 「何度も通うのは大変」と思われるかもしれませんが、それぞれの時期の数値を正しく知ることが、妊娠への近道となります。

【時期別】検査のタイミングと調べられるホルモン

女性のホルモン周期

1. 低温期(月経中):卵巣の予備能と排卵の準備

この検査は、生理開始から2日目〜5日目頃(月経期)に行います。この時期は新しい卵胞(卵子の入った袋)が育ち始めるスタート地点です。

ここで主に調べるのは、FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体形成ホルモン)E2(エストラジオール)、そしてPRL(プロラクチン)です。 この時期の数値を見ることで、「脳から卵巣へ『卵を育てろ』という指令が正しく出ているか」「卵巣がその指令に反応できているか」といった、卵胞発育の基礎力を確認します。特にFSHの数値は、卵巣機能の若さや予備能を推測する重要な指標となります。生理中の通院は億劫かもしれませんが、この時期のデータは治療方針を決める上で非常に重要です。

2. 排卵期:排卵の直前予兆

卵胞が十分に育ち、排卵が起こる直前の時期に行う検査です。基礎体温表や超音波検査での卵胞チェックと合わせて判断します。

ここで重要になるのがLH(黄体形成ホルモン)の急激な上昇(LHサージ)と、E2(エストラジオール)のピーク値です。 排卵直前になると、LHが一時的に爆発的に分泌されます。これをLHサージと呼び、このピークから約24〜36時間後に排卵が起こるとされています。 この検査を行うことで、正確な排卵のタイミングを予測し、性交渉の指導(タイミング法)や人工授精の最適な日時を決定します。排卵の兆候を逃さないため、数日連続で通院が必要になることもあります。

3. 高温期(黄体期):着床環境の確認

排卵が終わってから約5〜7日後、基礎体温が高温期に入ってから行う検査です。 この時期に調べるのは、主にP4(プロゲステロン/黄体ホルモン)とE2(エストラジオール)です。

P4は、受精卵が子宮内膜に着床しやすいようにふかふかのベッドを整え、妊娠を維持するために体温を上げる働きをします。この数値が低いと「黄体機能不全」と診断され、せっかく受精しても着床しにくかったり、流産しやすくなったりするリスクがあります。 この時期の検査によって、黄体ホルモンの補充が必要かどうかを判断します。着床環境を整えることは、妊娠成立の最後のカギを握る重要なステップです。

4. 時期を問わない検査(AMH・甲状腺など)

生理周期に関係なく、いつでも測定できる項目もあります。代表的なものがAMH(アンチミューラリアンホルモン)甲状腺ホルモンテストステロン感染症検査などです。

これらは周期による変動が少ないため、初診時や低温期の採血と合わせて行うことが一般的です。特に甲状腺ホルモンは、数値に異常があると排卵障害や流産の原因になることがあるため、不妊治療の初期段階で必ずチェックしておきたい項目です。 また、AMHについては後ほど詳しく解説しますが、ご自身の「卵巣年齢」を知るための指標として、近年非常に重視されています。

まとめ
低温期(月経中):卵巣の予備能と排卵の準備FSH(卵胞刺激ホルモン)
LH(黄体形成ホルモン)
E2(エストラジオール)
PRL(プロラクチン)
排卵期:排卵の直前予兆LHの急激な上昇(LHサージ)
E2(エストラジオール)のピーク値
高温期(黄体期):着床環境の確認P4(プロゲステロン/黄体ホルモン)
E2(エストラジオール)
時期を問わない検査AMH(アンチミューラリアンホルモン)
甲状腺ホルモン
テストステロン
感染症検査

主なホルモンの種類と役割・数値の見方

FSH(卵胞刺激ホルモン)

脳下垂体から分泌され、卵巣に「卵胞を育てなさい」と命令するホルモンです。 【基準値の目安】 低温期で3〜10mIU/mL程度。 数値が高すぎる場合(例えば10以上)、卵巣機能が低下し、卵胞が育ちにくくなっている可能性があります。逆に低すぎる場合は、脳からの指令が弱く、排卵障害の原因になることがあります。閉経が近づくと数値が上昇する傾向があります。

LH(黄体形成ホルモン)

FSHと同じく脳下垂体から分泌されます。卵胞を成熟させ、排卵を促す引き金となるホルモンです。 【基準値の目安】 低温期には低い値ですが、排卵直前には急激に上昇します。 低温期にLHがFSHよりも異常に高い場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の疑いがあります。PCOSは排卵しにくい体質の一つで、不妊治療においてよく見られる症状です。

E2(エストラジオール/卵胞ホルモン)

卵巣で育っている卵胞から分泌されるホルモンです。「女性らしさ」を作るホルモンとも呼ばれます。 【役割】 子宮内膜を増殖させ、精子が子宮に入りやすいように頸管粘液(おりもの)を増やします。 卵胞が大きくなるにつれて数値が上昇するため、E2の値を見ることで卵胞の成熟度を測ることができます。不妊治療での採卵のタイミングを決める際にも重視される数値です。

P4(プロゲステロン/黄体ホルモン)

排卵後の卵胞(黄体)から分泌されます。 【役割】 子宮内膜を着床しやすい状態に変化させ、妊娠を維持します。基礎体温を上げるのもこのホルモンの作用です。 高温期の中頃に測定し、数値が10ng/mL以上あれば良好な黄体機能と考えられます。数値が低いと着床障害の原因となるため、お薬での補充療法が行われます。

PRL(プロラクチン)

脳下垂体から分泌される、乳汁分泌を促すホルモンです。 授乳中に生理が止まるのは、このホルモンが高くなり排卵を抑制するためです。 授乳期でないのにこの数値が高い状態を「高プロラクチン血症」と呼び、排卵障害や黄体機能不全の原因になります。ストレスや特定の胃薬などの影響で一時的に上がることもあります。

テストステロン(男性ホルモン)

女性の体内でも副腎や卵巣から微量の男性ホルモンが分泌されています。 この数値が高すぎると、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のリスクが高まり、卵胞の発育が邪魔されたり、排卵しにくくなったりします。ニキビが増えたり多毛傾向がある場合は、この数値が高い可能性があります。

甲状腺ホルモン(TSH・FT3・FT4)

のどぼとけの下にある甲状腺から分泌されるホルモンです。全身の代謝をコントロールしています。 不妊治療では特にTSH(甲状腺刺激ホルモン)の値が重要視されます。TSHが高すぎても低すぎても、排卵障害や流産率の上昇に関わることがわかっています。潜在性甲状腺機能低下症などは自覚症状がないことも多いため、血液検査でのスクリーニングが必須です。

注目される「AMH(アンチミューラリアンホルモン)」検査

AMH検査でわかる「卵巣予備能」とは

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。この数値を測ることで、「卵巣の中に、これから育つ可能性のある卵子がどれくらい残っているか」という在庫の目安を知ることができます。これを「卵巣予備能」と呼びます。

AMH値は年齢とともに低下しますが、個人差が非常に大きいのが特徴です。実年齢が若くてもAMH値が低い(卵巣年齢が高い)人もいれば、その逆もいます。ご自身の残りの時間を予測し、ライフプランや治療のステップアップの早さを決めるための非常に重要な羅針盤となります。

数値が低い=妊娠できない、ではない理由

ここで誤解してはいけないのが、「AMHが低い=妊娠率が低い」ではないということです。 AMHはあくまで「卵子の在庫数」の目安であり、「卵子の質」を表すものではありません。

AMHが低くても、質の良い卵子が排卵されれば自然妊娠も十分に可能です。逆にAMHが高くても、排卵障害(PCOSなど)でなかなか妊娠に至らないケースもあります。 「AMHが低いからもうダメだ」と悲観する必要はありません。「残りの時間が限られているかもしれないから、効率よく治療を進めよう」という前向きな判断材料として活用するのが正しい捉え方です。

ホルモン検査の費用と保険適用について

保険診療と自費診療の違い

2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大され、基本的なホルモン検査の多くは健康保険が適用されるようになりました。 LH、FSH、E2、P4、PRL、テストステロンなどの基本的な内分泌学的検査は、医師が必要と認めた場合、保険診療(3割負担)で受けることができます。

ただし、ブライダルチェックのように「現在不妊ではないが、将来のために調べておきたい」という場合や、特定の高度な検査と組み合わせる場合などは、全額自己負担(自費診療)となります。

検査費用

検査結果が悪かった場合どうする?

数値は「個性」。治療方針を決めるための材料

検査結果の数値が基準値から外れていたとしても、過度に落ち込む必要はありません。ホルモン値は体調やストレスでも変動しますし、あくまであなたの体の「現在の傾向(個性)」を示しているに過ぎません。

例えば、FSHが高いなら「卵巣への刺激を調整して質の良い卵子を採ろう」、プロラクチンが高いなら「薬で下げて排卵しやすくしよう」、黄体ホルモンが低いなら「着床期に補充しよう」といったように、弱点をカバーするための対策を立てるためのデータなのです。

薬や注射によるホルモン補充療法

ホルモンバランスの乱れが見つかった場合、最も一般的な治療法は、飲み薬や注射によるコントロールです。

排卵誘発剤卵胞を育て、排卵を促す(クロミッド、レトロゾール、hMG注射など)
カウフマン療法一度卵巣を休ませて、ホルモン環境をリセットする
黄体ホルモン補充高温期に薬や注射で着床をサポートする

このように、現代の医療ではホルモン値を調整する手段がたくさんあります。検査で見つかった課題を一つひとつクリアしていくことが、妊娠への着実な一歩となります。

よくある質問(Q&A)

Q-A

Q1: ホルモン検査は痛いですか?

A1: ホルモン検査は採血による検査のため、針を刺す際の軽い痛みはありますが、通常の健康診断の採血と同程度です。検査自体は5分程度で終了し、当日の入浴や運動も問題ありません。

Q2: 検査結果はいつ分かりますか?

A2: 一般的なホルモン検査の結果は、検査から3-7日程度で判明します。ただし、緊急性が高い場合や体外受精の周期では、当日または翌日に結果が出る迅速検査も可能です。

Q3: ホルモン値が異常でも妊娠できますか?

A3: ホルモン値に異常があっても、適切な治療により妊娠は可能です。排卵障害があってもクロミッドなどの排卵誘発剤で排卵を促せますし、黄体機能不全もホルモン補充で改善できます。重要なのは、原因を正確に把握し、個々に合った治療を選択することです。

CONTACT

ご予約・お問い合わせ