予約24時間受付可)

染色体検査(Gバンド法)

染色体検査「Gバンド法」の基礎知識

Gバンド法(G-Banding)とはどのような検査か?

「Gバンド法(G分染法)」は、染色体検査の中で最も一般的かつ基本的な検査方法です。採血した血液中の白血球(リンパ球)を培養し、細胞分裂の途中で特殊な処理を行って染色体を観察しやすい状態にします。 その後、「ギムザ染色(Giemsa stain)」という染色液を使うことで、染色体に濃淡の縞模様(バンド)を浮かび上がらせます。この縞模様は染色体ごとに決まったパターンを持っており、まるでバーコードのように見えます。専門家がこの縞模様を顕微鏡下で観察し、染色体の本数や、欠けたり入れ替わったりしている部分がないかを分析します。

検査でわかること・わからないこと(微細欠失など)

Gバンド法でわかるのは、染色体の「数」の異常(多い・少ない)と、大きな「構造」の異常(転座・逆位・欠失など)です。顕微鏡で見えるレベルの大きな変化を見つけるのに適しています。 一方で、Gバンド法には限界もあります。顕微鏡で目視確認できないレベルの極めて小さな遺伝子の欠損(微細欠失)や、特定の遺伝子病(単一遺伝子疾患)までは分かりません。あくまで、染色体という「大きな設計図の巻物」に、抜け落ちや入れ替わりがないかを確認する検査であり、遺伝子の文字配列をすべて読む検査ではないことを理解しておく必要があります。

血液検査で調べられる「核型(カリオタイプ)」の意味

検査結果は「核型(カリオタイプ)」という世界共通の記述法で表されます。これは、染色体の総数、性染色体の種類、そして異常がある場合はその詳細を記号で示したものです。 通常、ヒトの染色体は22対の常染色体と1対の性染色体の計46本で構成されています。 核型は、これらを大きさの順に並べ替え、Gバンドの縞模様を頼りにペアリングして作成されます。この核型図を作成することで、例えば「1番染色体の一部がちぎれて、5番染色体にくっついている」といった複雑な構造の変化(転座)を正確に診断することが可能になります。

不育症における染色体異常の種類とメカニズム

染色体の「数」の異常と「構造」の異常

染色体の異常は大きく分けて「数の異常」と「構造の異常」があります。 「数の異常」で有名なのは、21番染色体が3本あるダウン症候群(21トリソミー)などです。不育症の検査においては、ご夫婦自身に数の異常が見つかることは稀ですが、性染色体の数に変化があるケース(クラインフェルター症候群など)が見つかることがあります。 不育症の原因としてより重要なのは「構造の異常」です。染色体の数は46本揃っているものの、一部が切れたり、他の染色体とくっついたりしている状態を指します。その代表が「転座(てんざ)」です。

最も重要な「均衡型転座」とは(相互転座・ロバートソン転座)

不育症カップルの約3〜5%に見つかるとされるのが「均衡型転座(きんこうがたてんざ)」です。 これは、2本の染色体が途中で切れて、お互いの断片を交換して再結合している状態(相互転座)や、2本の染色体が根元でくっついて1本になっている状態(ロバートソン転座)などを指します。 重要なのは、「遺伝情報の総量には増減がない(=均衡が保たれている)」という点です。場所が入れ替わっているだけで、必要な遺伝子はすべて揃っているため、ご本人には病的な症状は全くなく、健康に生活しています。検査をするまで気づかないことがほとんどです。

「均衡型転座」でも健康上の問題がない理由

なぜ場所が入れ替わっているのに健康なのでしょうか。 例えるなら、染色体は「本(遺伝情報)が入った本棚」です。均衡型転座は、「1巻の内容が2巻の本棚に紛れ込み、2巻の内容が1巻の本棚に入っている」ような状態です。本棚の整理整頓は乱れていますが、図書館全体(体全体)として見れば、本(遺伝情報)は一冊も失われておらず、内容もすべて読むことができます。 そのため、ご本人の身体機能には全く問題がありません。しかし、お子さんを作るために精子や卵子(配偶子)を作る際、この「本の入れ違い」が原因で、遺伝情報が過不足した受精卵ができやすくなってしまうのです。

検査の流れと費用・保険適用について

検査の具体的な手順

Gバンド法の検査自体は、通常の血液検査と同じく、腕からの採血(約5〜10ml程度)のみで行われます。食事制限や生理周期によるタイミングの指定も特にありませんので、いつでも受けることが可能です。 ただし、採取した血液中の細胞を生きたまま培養し、細胞分裂をさせてから染色するため、検体の取り扱いには注意が必要です。

検査結果が出るまでの期間(培養にかかる時間)

通常の血液検査とは異なり、細胞を培養して増やす工程が必要なため、結果が出るまでには時間がかかります。 一般的には2週間〜3週間程度を要します。 培養の進み具合によっては、細胞がうまく増えずに再検査が必要になるケースも稀にあります。次の治療スケジュール(採卵や移植)が決まっている場合は、結果判明までのタイムラグを考慮して、早めに検査を受けておくことが重要です。

保険適用になる条件と検査費用

2022年4月から不妊治療の保険適用が拡大されましたが、染色体検査については以前から「習慣流産(流産を3回以上繰り返す)」などの診断がついた場合に保険適用となるケースがあります。

一方で、流産回数が2回以下の場合や、まだ流産経験はないが念のために調べたい場合は「自費診療(全額自己負担)」となります。

検査結果の見方と解釈

正常型の結果(46,XX / 46,XY)の見方

検査結果のレポートには、専門的な記号が並びます。 異常が認められない正常な核型は以下のように表記されます。

女性:46,XX染色体数46本、性染色体がXX
男性:46,XY染色体数46本、性染色体がXY

異常が見つかった場合の記述(転座・逆位などの表記法)

構造異常が見つかった場合、以下のような表記になります。

  • 相互転座の例:46,XX, t(4;11)(q35;q13)
    • t はTranslocation(転座)を意味します。
    • (4;11) は4番染色体と11番染色体の間で入れ替わりがあることを示します。
    • (q35;q13) は具体的にどのバンド(位置)で切れているかを示します。
  • ロバートソン転座の例:45,XY, der(13;14)…
    • 染色体数が45本になり、13番と14番が結合している状態などです。 これらは専門的な知識がないと正確な解釈が難しいため、必ず医師や遺伝カウンセラーからの説明を受けてください。

「異数性」や「モザイク」が見つかった場合

構造異常以外に、性染色体の数の異常(例:47,XXY クラインフェルター症候群)や、正常な細胞と異常な細胞が混在している「モザイク」という状態が見つかることもあります。 モザイクの場合、血液中のリンパ球では異常が見られても、卵巣や精巣(生殖細胞)では正常である可能性もあります(逆もまた然りです)。これらの結果が出た場合、それが不妊や流産の直接的な原因になっているかどうかは、出現頻度や染色体の種類によって慎重に判断する必要があります。

染色体異常が見つかった場合の今後の選択肢

「均衡型転座」保因者の自然妊娠の可能性と流産率

もしご夫婦のどちらかに「均衡型転座」が見つかった場合でも、決して妊娠をあきらめる必要はありません。これが最も伝えたい真実です。 転座保因者のカップルでも、最終的に60〜80%以上の方が元気な赤ちゃんを授かっているというデータがあります。 ただし、受精卵ができる際に染色体の過不足(不均衡型)が生じる確率が高まるため、どうしても流産率は高くなります(転座の種類によりますが30〜60%程度)。「流産を繰り返す可能性はあるが、くじけずに妊娠を繰り返せば、いずれ正常(または均衡型)の受精卵に出会える」というのが、自然妊娠を目指す場合の基本的な考え方になります。

着床前検査(PGT-A / PGT-SR)という選択肢

繰り返す流産による心身の負担(手術の痛み、時間的ロス、精神的苦痛)を避けたい場合、体外受精の技術を用いた「着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)」や、構造異常に特化した「PGT-SR」という選択肢があります。 これは、お腹に戻す前の受精卵(胚)の染色体を調べ、染色体の数や構造に過不足がない胚を選んで移植する方法です。これにより、流産率を下げ、妊娠までの時間を短縮することが期待できます。

誰のせいでもないということ(罪悪感を持たないために)

検査結果が陽性(異常あり)だったとき、多くの方が「私のせいで流産してしまった」「夫(妻)に申し訳ない」と強い罪悪感を抱きます。 しかし、染色体の転座は、その人が生まれ持った「体質」のようなものであり、誰のせいでもありません。ご両親から受け継いだものかもしれないし、受精した瞬間にたまたま起きた変化かもしれません。 「原因が分かったことは、対策への第一歩」です。

遺伝カウンセリングの重要性

遺伝カウンセリングとは?何をする場所なのか

染色体検査を受ける前後には、「遺伝カウンセリング」を受けることが推奨されます。 遺伝カウンセリングとは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが、科学的な根拠に基づいて情報を整理し、患者様ご夫婦が自律的にどうしたいかを決める手助けをする場です。 単に結果を説明するだけでなく、「この結果が何を意味するのか」「将来の子どもにどう遺伝する可能性があるのか」「どのような選択肢があるのか」を、ご夫婦の価値観に寄り添いながら話し合います。

検査を受ける前に知っておくべき倫理的な側面

染色体検査は、単なる「不妊検査」以上の意味を持ちます。自分自身の遺伝情報を知ることは、「知らなくてよかったことを知ってしまう」可能性も含んでいます。 例えば、結果によっては将来生まれてくるお子さんへの遺伝リスクだけでなく、ご自身のきょうだいにも同じ転座がある可能性が示唆される場合があります。 「もし異常が見つかったらどうするか」「どこまで情報を知りたいか」を、検査を受ける前にご夫婦でしっかりと話し合っておくことが必要です。心の準備なしに検査を受けることは避けましょう。

家族や血縁者への影響をどう考えるか

均衡型転座は親から子へ50%の確率で遺伝することがあります(遺伝しても健康上は問題ありません)。 ご自身に転座が見つかった場合、ご自身の親や、兄弟姉妹も同じ転座を持っている可能性があります。もし兄弟姉妹も不妊や流産で悩んでいる場合、その情報を伝えるべきかどうか、非常にデリケートな問題が生じます。 こうした血縁者への対応についても、遺伝カウンセリングで相談することができます。一人で抱え込まず、専門家と一緒に考えることが大切です。

CONTACT

ご予約・お問い合わせ