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なぜ「淋病」が不妊の原因になるのか?そのメカニズム

気づかないうちに進行する「骨盤内炎症性疾患(PID)」とは

淋菌は、性行為によって膣から侵入し、子宮の入り口(子宮頸管)に感染します。ここで食い止められれば良いのですが、治療せずに放置すると、菌は時間をかけて子宮の奥へと侵入していきます。子宮内膜、そして卵管を通って、最終的にはお腹の中(腹腔内)へと感染が広がります。これを上行感染と呼びます。感染が広がると、子宮や卵管、卵巣周辺で激しい炎症が起こります。これを総称して「骨盤内炎症性疾患(PID)」と言います。

PIDの恐ろしい点は、感染していても自覚症状が乏しいケースがあることです。「少しお腹が痛いかな?」程度の違和感で見過ごしてしまい、気づいたときにはお腹の中で炎症が広範囲に及んでいることも珍しくありません。

卵管が詰まる?「卵管閉塞」と「癒着」の恐怖

妊娠するためには、卵巣から排卵された卵子が「卵管」を通って子宮にたどり着き、そこで精子と出会う必要があります。しかし、淋菌による炎症が卵管に及ぶと、卵管の内側が腫れたり、膿がたまったりします。炎症が治まった後も、傷ついた組織が治る過程で「癒着(ゆちゃく)」が起こることがあります。癒着とは、本来離れているべき組織同士がくっついてしまうことです。 これにより、卵管が狭くなったり、完全に塞がったりしてしまいます。これが「卵管閉塞(らんかんへいそく)」や「卵管狭窄(らんかんきょうさく)」です。

通り道が塞がれてしまえば、精子と卵子は出会うことができず、自然妊娠は極めて難しくなります。また、通り道が狭い状態で無理に受精卵が通ろうとすると、子宮外妊娠(異所性妊娠)のリスクも高まります。

過去の感染も影響する?完治後も残る不妊リスク

「昔、淋病にかかったけど薬で治したから大丈夫」と思っている方も注意が必要です。 確かに菌そのものは抗生物質で消滅しますが、一度激しい炎症によって生じた卵管の癒着や傷跡は、菌がいなくなっても自然には元に戻りません。

つまり、現在は「陰性」であっても、過去の感染によってすでに「不妊の原因(卵管因子)」が形成されている可能性があるのです。 不妊治療において、過去の性感染症の既往歴(かかったことがあるか)を医師が重視するのはこのためです。もし過去に感染経験がある場合は、早めに卵管造影検査などを受け、卵管の通り具合を確認することをお勧めします。

女性だけじゃない!男性不妊の原因にもなる淋病

不妊の原因は、約半数が男性側にあると言われています。淋病に関しても同様で、パートナーである男性が感染している場合、男性自身が不妊症になってしまうリスクがあります。

精子の通り道が塞がる「精路閉塞」のリスク

男性が淋菌に感染すると、まずは尿道炎を起こしますが、放置すると菌は尿道の奥へと進み、精巣(睾丸)の横にある「精巣上体(副睾丸)」という場所に炎症を起こします(精巣上体炎)。精巣上体は、作られた精子が成熟し、通り抜けていくための重要な場所です。ここで激しい炎症が起きると、女性の卵管と同じように、治癒する過程で管が癒着し、詰まってしまうことがあります。

これを「精路閉塞(せいろへいそく)」と呼びます。両側の精巣上体が詰まってしまうと、精巣で精子は作られているのに外に出てこられない「閉塞性無精子症」となり、自然妊娠は不可能になります。

精子の質が低下する?炎症による造精機能への影響

完全に通り道が塞がらなくても、慢性的な炎症が続くことは精子にとって悪影響です。 炎症によって発生する活性酸素や白血球の影響で、精子の運動率が低下したり、DNAが損傷を受けたりする可能性があります。また、前立腺炎などを併発することで、精液の成分が悪化し、精子の寿命が短くなることも考えられます。 「精液検査の結果が悪い」という場合、その背景に隠れた性感染症(淋病やクラミジアなど)が存在するケースも少なくありません。男性も「自分は元気だから」と過信せず、カップルで検査を受けることが重要です。

「自分は大丈夫」は危険!淋病の症状と感染経路

淋病の最大の問題点は、男女で症状の現れ方が大きく異なり、特に女性は発見が遅れやすいという点です。ここでは具体的な症状と、意外な感染経路について解説します。

【女性の症状】おりものの変化や腹痛(実は無症状が多い)

女性が淋菌に感染した場合、以下のような症状が出ることがあります。

おりものの量が増える

おりものの色が黄緑色っぽくなる、膿のようなにおいがする

不正出血がある

下腹部に鈍い痛みがある

性交時に痛みを感じる

しかし、最も注意すべきは「無症状」であることです。 女性の約70〜80%は、感染していても自覚症状がないと言われています。そのため、感染に気づかないままパートナーにうつしてしまったり、不妊の原因となるまで放置してしまったりするケースが後を絶ちません。 「症状がない=健康」ではないことを、強く認識しておく必要があります。

【男性の症状】排尿痛や膿(うみ)が出る

一方、男性が感染して尿道炎を発症した場合、比較的強い症状が出ることが多いです。

おしっこをする時に激しい痛みがある

尿道から黄色や白濁した膿(うみ)が出る

尿道にかゆみや熱感がある

男性の場合、こうした激しい症状が出るため比較的早期にクリニックを受診することが多いですが、中には症状が軽いケースもあります。パートナーが「おしっこするとき痛い」と言っていたり、下着の汚れを気にしている様子があれば、すぐに泌尿器科の受診を勧めてください。

主な感染経路とオーラルセックスのリスク

淋菌は非常に弱い菌で、粘膜から離れると数時間で死滅します。そのため、お風呂やトイレの便座、タオルなどを介して感染することは、ごく稀です。 主な感染経路は、性行為(セックス)による粘膜同士の接触です。

ここで盲点となりやすいのが「のど(咽頭)」への感染です。 オーラルセックスによって、性器から喉へ、あるいは喉から性器へと感染します。これを「咽頭淋病」と言います。 喉に感染しても、軽い喉の痛みや腫れがある程度で、風邪と勘違いされやすく、発見が非常に困難です。しかし、喉に菌がいれば、性器への感染源となります。 不妊治療前の検査では、性器だけでなく「のど」の検査も合わせて行うことを推奨しております。

不妊治療・妊活前の「性感染症検査」が必須な理由

「まずはタイミング法から始めたいから、検査はまだいいかな」と考える方もいますが、それは非常に危険です。なぜ治療や妊活の『前』に検査が必要なのか、その医学的な理由を解説します。

卵管造影検査などで感染を広げてしまうリスク

不妊治療の検査の一つに「子宮卵管造影検査」や「通水検査」があります。これは子宮の入り口から造影剤や水を流し込み、卵管の通りを調べる検査です。

もし、子宮の入り口(子宮頸管)に淋菌がいる状態でこの検査を行うとどうなるでしょうか? 検査によって注入される液体と一緒に、菌をお腹の奥(腹腔内)へと押し流してしまうことになります。これにより、人工的にPID(骨盤内炎症性疾患)を引き起こし、逆に不妊の原因を作ってしまうことになりかねません。 そのため、これらの検査を行う前に必ず性感染症検査を行い、陰性を確認してから処置を進める手順をとっています。

母子感染(新生児結膜炎など)を防ぐために

万が一、淋病に感染したまま妊娠し、出産を迎えると、赤ちゃんに重大な影響が及びます。 出産時、赤ちゃんが産道を通る際に淋菌に感染してしまうのです(産道感染)。

特に有名なのが「淋菌性結膜炎(新生児結膜炎)」です。赤ちゃんの目に菌が入り、激しい炎症を起こします。最悪の場合、角膜に穴が開き、失明に至ることもあります。 現代の日本では、出産直後に予防的な点眼を行うため失明は稀ですが、赤ちゃんを危険に晒さないためにも、妊娠前の治療が絶対条件です。また、妊娠中の感染は、早産や前期破水のリスクを高めることも分かっています。

検査の方法(痛みはある?タイミングは?)

検査自体は非常にシンプルで、痛みもほとんどありません。

女性(性器)子宮の入り口の粘液を綿棒で軽くぬぐい取ります。内診台で行いますが、一瞬で終わります。
女性(のど)うがい液を提出するか、綿棒で喉をぬぐいます。
男性(性器)尿検査で行います(最後の排尿から1時間以上空ける必要があります)。
男性(のど)女性と同様です。

検査のタイミングは、生理期間中を避ければいつでも可能です。

もし淋病と診断されたら?治療方法と期間

検査の結果「陽性」だったとしても、過度に落ち込む必要はありません。適切な治療を行えば、淋病は治る病気です。ただし、自己判断は禁物です。

抗生物質による点滴・注射治療が主流

かつては飲み薬で治る病気でしたが、近年、淋菌は薬に対する抵抗力(耐性)を強めています。そのため、現在日本で推奨されている標準的な治療法は、「セフトリアキソン」などの抗生物質による点滴または筋肉注射です。基本的には1回の投与で治療は完了しますが、症状が重い場合などは数日間通院が必要になることもあります。 市販薬や、個人輸入した海外の薬で治そうとするのは大変危険です。効果がないばかりか、菌をさらに強く(耐性化)させ、治りにくくしてしまう恐れがあります。必ず医師の指示に従ってください。

近年増加する「耐性菌」と完治の確認

「スーパー淋菌」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。あらゆる抗生物質が効かない強力な淋菌が世界的に問題視されています。 幸い、適切な注射治療を行えば多くの場合は治癒しますが、中には効きにくいケースも出てきています。

そのため、「薬を使ったから終わり」ではありません。 治療後(通常は2週間後など)に、必ず「治癒確認検査(再検査)」を受け、菌が完全にいなくなったことを確認する必要があります。この「陰性確認」をもって、初めて完治となります。それまでは性行為は禁止です。

必ずパートナーと一緒に治療することが絶対条件

あなたが治療して完治しても、パートナーが感染したままであれば、再び性行為をした瞬間にまた感染してしまいます。これを「ピンポン感染」と呼びます。

不妊治療や妊活は二人三脚です。どちらか一方だけが検査・治療を受けても意味がありません。 もし陽性が判明したら、恥ずかしがらずにパートナーに伝え、必ず二人同時に検査と治療を受けてください。これが、赤ちゃんを迎えるための最初の共同作業とも言えます。

よくある質問(FAQ)

Q-A

Q1: 淋病は自然治癒しますか?

A1: いいえ、自然治癒はしません。 風邪とは違い、免疫力だけで淋菌を体から排除することはできません。放置すればするほど、菌は体の奥へと侵入し、卵管や精路に不可逆的な(元に戻らない)ダメージを与え続けます。「症状が消えた」としても、それは菌が消えたわけではなく、慢性化して潜んでいるだけの可能性が高いです。必ず医療機関で抗生物質による治療を受けてください。

Q2: 妊娠中に淋病にかかったらどうなりますか?

A2: 妊娠中でも治療は可能です。お腹の赤ちゃんへの影響が少ない抗生物質を選んで投与します。 最も怖いのは、未治療のまま出産を迎えること(赤ちゃんへの感染)や、炎症による流産・早産です。 妊娠初期の妊婦健診には必ず性感染症検査が含まれていますが、妊娠中にパートナーから感染するケースもあります。妊娠中におりものの異常やかゆみを感じたら、すぐにご相談ください。

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