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流産の確率は何%?!生殖医療専門医が解説する原因と予防できること|年齢別の流産確率一覧

  • 公開日:2025.12.24
  • 更新日:2025.12.25
流産の確率は何%?!生殖医療専門医が解説する原因と予防できること|年齢別の流産確率一覧|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

妊娠を望む多くの女性にとって、流産は最も心配な出来事の一つではないでしょうか。「もし流産してしまったら…」という不安を抱えながら、インターネットで情報を検索される方も多いと思います。これまでの診療経験から申し上げたいのは、正確な知識を持つことで、不必要な不安を軽減し、前向きに妊娠に向き合えうことができるのではないかということです。

この記事では、流産の確率について医学的根拠に基づいた情報をお伝えするとともに、リスクを下げるためにできることや、万が一流産を経験された場合の次のステップについても詳しく解説します。数字だけでなく、その背景にある医学的な理由や、実際の臨床現場での経験も交えながら、皆様の不安に寄り添い、希望を持って妊娠に臨めるような情報提供を心がけています。

流産の確率について知っておくべき基本知識

流産とは?医学的な定義と種類

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が終了することを指します。医学的には、妊娠12週未満を「早期流産」、12週以降22週未満を「後期流産」と分類しています。実は流産の約80%は早期流産で、その多くは受精卵の染色体異常が原因です。

流産には、完全流産(胎嚢が完全に排出される)、不全流産(一部が子宮内に残る)、稽留流産(胎児の心拍がないが自覚症状がない)など、いくつかの種類があります。特に稽留流産は、出血などの症状が出にくいため、ご自身では気づきにくく、定期健診で初めて判明することが多いのが特徴です。

これらの分類を知ることで、もし流産と診断された場合でも、医師の説明をより理解しやすくなり、適切な治療選択ができるようになります。また、流産の原因の多くは母体側の問題ではなく、受精卵の偶発的な異常であることを理解しておくことも大切です。

全妊娠における流産の一般的な確率

医学的に確認された妊娠のうち、約15%が流産に至るとされています。これは決して珍しいことではなく、妊娠を経験する女性の約40%が生涯で一度は流産を経験するという統計もあります。ただし、この数字には化学流産(妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、胎嚢が確認される前に流産となる場合)は含まれていません。

実際の臨床現場では、胎嚢が確認された後の流産率は約10-12%、心拍が確認された後では約3-5%まで低下します。つまり、妊娠が進むにつれて流産のリスクは段階的に下がっていくことが一般的です。妊娠8週で心拍が確認できれば、その後の流産率は大幅に低下し、12週を過ぎるとさらに流産の確率は減少します。

このような統計を知ることで、妊娠初期の不安な時期を乗り越える心の支えになればと思います。そして、多くの妊娠は無事に継続し、健康な赤ちゃんの誕生につながることを忘れないでください。

年齢別の流産確率と最新データ

20代・30代前半の流産確率

20代から30代前半は、生物学的に最も妊娠・出産に適した年齢とされています。25歳以下の流産率は約10%、26-30歳では約11%、31-34歳では約12%と、この年代では比較的低い確率で推移します。この時期の流産の多くは、染色体異常による偶発的なものが中心で、母体の健康状態が良好であれば、次回の妊娠では問題なく出産に至ることがほとんどです。

ただし、若い年代でも生活習慣の乱れやストレス、喫煙、過度の飲酒などは流産リスクを高める要因となります。特に最近では、仕事のストレスや不規則な生活により、20代でも月経不順や排卵障害を抱える方が増えています。年齢が若いからといって油断せず、妊娠を希望される場合は、早めに生活習慣を整えることが大切です。

また、この年代で流産を経験された方は、「まだ若いのになぜ?」と自分を責めてしまうことがありますが、年齢に関係なく一定の確率で起こりうることを理解し、必要以上に自分を責めないようにしていただきたいと思います。

35歳以降の流産確率の変化

35歳を境に、流産率は徐々に上昇し始めます。35-39歳では約20-25%と、30代前半と比べて約2倍に増加します。この変化の主な原因は、加齢による卵子の質の低下に伴う染色体異常の増加です。女性は生まれた時から卵子の数が決まっており、年齢とともに卵子も減少し、質の低下が起こります。その結果、受精しても正常に発育できない受精卵の割合が増えたり、成長が止まってしまう割合が増えたりします。

しかし、35歳以降でも約75-80%の妊娠は無事に継続することを忘れてはいけません。35歳以降で初産を迎える方は年々増えており、適切な管理のもとで多くの方が無事に出産されています。

最新の生殖医療技術の進歩により、35歳以降でも妊娠の可能性を高める治療法が確立されています。例えば、着床前診断(PGT-A)により染色体正常な胚を選択することで、流産率を大幅に下げることも可能になってきています。

40代以降の妊娠と流産リスク

40代になると流産率はさらに上昇し、40-44歳で約35-40%、45歳以上では50%を超えるとされています。この年代では、染色体異常だけでなく、子宮内膜の機能低下や血流不全など、複合的な要因が流産リスクを高めます。また、高血圧や糖尿病などの合併症リスクも増加し、妊娠管理により慎重さを求められるようになります。

しかし、40代での妊娠・出産は決して不可能ではありません。実際、40代で健康な赤ちゃんを出産される方は少なくありません。重要なのは、個々の状態を詳しく評価し、最適な治療計画を立てることです。

最新の統計データから見る年齢との関係

2024年の日本産科婦人科学会の最新データによると、体外受精における年齢別の流産率は、30歳で15.7%、35歳で22.4%、40歳で36.5%、43歳で51.2%となっています。このデータは、自然妊娠よりも正確に妊娠初期から管理されているため、実際の流産率をより正確に反映していると考えられます。

興味深いことに、同じデータでは、凍結融解胚移植の方が新鮮胚移植よりも流産率が低いことも示されています。これは、子宮内膜の準備を最適化できることや、より質の良い胚を選択できることが要因と考えられています。

流産の回数と今後の妊娠への影響

初回流産後の妊娠成功率

初めて流産を経験された方の多くが「次も流産してしまうのではないか」という不安を抱えます。しかし、医学的データは希望を示しています。初回流産後の次回妊娠での出産成功率は約85%と、一般的な妊娠とほぼ同等です。つまり、1回の流産だけでは次の妊娠に大きな影響を与えないということです。

流産後は、通常1-2回の月経を待ってから次の妊娠を試みることが推奨されています。この期間は子宮内膜が回復し、ホルモンバランスが整うために必要な時間です。ただし、最近の研究では、流産後すぐに妊娠しても問題ないという報告もあり、個々の状況に応じて判断することが大切です。

初回流産後は、特別な検査や治療は通常必要ありません。ただし、35歳以上の方や、流産時に何か異常が指摘された場合は、次回妊娠前に詳しい検査を受けることをお勧めすることがあります。また、葉酸の摂取を継続し、規則正しい生活を心がけることで、次回の妊娠に向けて最良の準備ができますので、心がけていただくといいでしょう。

反復流産・習慣流産の確率と対策

2回連続で流産することを反復流産、3回以上を習慣流産(不育症の一部)と呼びます。反復流産の頻度は約4%、習慣流産は約1%と、決して多くはありません。しかし、経験された方にとっては非常に辛い経験であり、専門的な検査と治療が必要になることがあります。

反復流産・習慣流産の原因は多岐にわたります。染色体異常(夫婦どちらかの均衡型転座)、子宮形態異常、内分泌異常、血液凝固異常、免疫異常などが主な原因として挙げられます。これらの原因を特定するために、血液検査、子宮卵管造影検査や子宮鏡検査、夫婦の染色体検査などの検査があります。検査により、原因が特定できれば、それぞれに応じた治療が可能です。

例えば、血液凝固異常の1つである、抗リン脂質抗体症候群などが原因の場合は、低用量アスピリンやヘパリン療法により流産率を大幅に下げることができます。また、原因不明の場合でも、精神的なサポートにより、次回妊娠の成功率が向上することも知られています。

不育症検査を考えるタイミング

受診のタイミング

一般的には2回以上の流産を経験した場合に不育症検査を検討します。さらに、流産でも、妊娠12週以降の後期流産の場合は、詳しい検査を行うことをお勧めします。

検査により約50-60%の症例で何らかの原因が見つかり、適切な治療により次回妊娠の成功率を高めることができます。原因不明の場合でも、次回妊娠では約70%が無事に出産に至るというデータがあり、決して希望を失う必要はありません。

流産の確率を下げるためにできること

生活習慣の改善ポイント

流産リスクを下げるために、日常生活で実践できることがいくつかあります。まず、禁煙は必須です。喫煙により流産リスクは約2倍に増加します。受動喫煙も同様にリスクとなるため、パートナーの協力も重要です。アルコールも、特に妊娠初期は控えることが推奨されています。カフェインについては、1日200mg以下(コーヒー2杯程度)であれば問題ないとされています。

適正体重の維持も重要です。BMI18.5未満の痩せすぎ、BMI30以上の肥満は、いずれも流産リスクを高めます。急激なダイエットは避け、バランスの良い食事と適度な運動により、徐々に適正体重に近づけることが大切です。運動については、激しい運動は避け、ウォーキングやヨガなど、軽度から中等度の運動を継続することが推奨されています。

睡眠の質も見逃せない要因です。不規則な睡眠や慢性的な睡眠不足は、ホルモンバランスを乱し、流産リスクを高める可能性があります。理想的には、毎日同じ時間に就寝・起床し、7-8時間の睡眠を確保することです。寝る前のスマートフォンの使用を控え、リラックスできる環境を整えることも大切です。

栄養管理と葉酸摂取の重要性

葉酸は、流産予防において最も重要な栄養素の一つです。妊娠前から1日400μgの葉酸サプリメントを摂取することで、神経管閉鎖障害だけでなく、流産リスクも低下させることができます。食事からの摂取も大切ですが、調理により失われやすいため、サプリメントでの補充が確実です。

その他の重要な栄養素として、ビタミンD、鉄分、オメガ3脂肪酸があります。ビタミンD不足は流産リスクを高めることが知られており、日光浴や魚類の摂取、必要に応じてサプリメントで補充します。鉄分は貧血を防ぎ、胎児への酸素供給を維持するために重要です。オメガ3脂肪酸は、炎症を抑え、胎盤機能を改善する効果が期待されています。

一方で、ビタミンAの過剰摂取は避ける必要があります。レバーやうなぎなどビタミンAを多く含む食品の過剰摂取は、胎児奇形のリスクを高める可能性があります。また、生肉、生魚、非加熱のチーズなど、食中毒リスクのある食品も避けることが推奨されています。

ストレス管理と心のケア

慢性的なストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を増加させ、免疫機能や胎盤機能に悪影響を与える可能性があります。実際、高ストレス状態にある女性は、流産リスクが約1.4倍高いという研究結果もあります。しかし、妊娠への不安がストレスとなる悪循環に陥ることも多く、適切なストレス管理が重要です。

効果的なストレス管理法として、マインドフルネス瞑想、ヨガ、深呼吸法などがあります。これらは自律神経のバランスを整え、心身のリラックスを促進します。また、趣味の時間を確保したり、信頼できる人と話をしたりすることも大切です。パートナーとのコミュニケーションを深め、不安や期待を共有することで、精神的な負担を軽減できます。

必要に応じて、不妊カウンセラーや臨床心理士などの専門家のサポートを受けることも検討してください。特に、流産を経験された方や、不妊治療中の方は、専門的な心理的サポートにより、ストレスを軽減し、前向きに治療に取り組むことができます。

不妊治療における流産予防の取り組み

不妊治療では、流産リスクを下げるための様々な取り組みが行われています。まず、良質な卵子と精子を得るための準備が重要です。採卵前の数ヶ月間、抗酸化サプリメント(コエンザイムQ10、ビタミンE、レスベラトロールなど)の摂取により、卵子の質を改善できる可能性があります。

体外受精では、胚盤胞培養により、より発育能力の高い胚を選択できます。さらに、着床前診断(PGT-A)により染色体正常な胚を移植することで、流産率を約50%から10%程度まで低下させることができます。ただし、PGT-Aは全ての方に必要なわけではなく、年齢や流産歴などを考慮して適応を決定します。

移植周期の管理も重要です。子宮内膜の厚さや血流を最適化し、ホルモン補充を適切に行うことで、着床率を高め、流産リスクを低減できます。最近では、ERA検査により個々の患者様の着床の窓を特定し、最適なタイミングで移植を行う個別化医療も進んでいます。

流産を経験された方へ|次の妊娠に向けて

身体の回復期間と次の妊娠時期

流産後の身体の回復には個人差がありますが、一般的には1-3ヶ月程度かかります。完全流産の場合は比較的早く回復しますが、手術を要した場合はもう少し時間が必要です。通常、流産後2-6週間で月経が再開し、ホルモンバランスも徐々に正常化していきます。

WHO(世界保健機関)は流産後6ヶ月待つことを推奨していましたが、最新の研究では、流産後3ヶ月以内に妊娠した方が、むしろ妊娠継続率が高いという報告もあります。ただし、これは身体的な側面だけの話であり、心理的な準備ができているかどうかも重要な判断基準となります。

医学的には、hCG値が正常化し、月経が1-2回来れば、次の妊娠を試みても問題ありません。ただし、後期流産や反復流産の場合は、原因検索や治療が必要な場合があるため、医師と相談して適切な時期を決めることが大切です。

心のケアとパートナーとの向き合い方

流産は女性だけでなく、パートナーにとっても辛い経験です。しかし、悲しみの表現方法や回復のペースは人それぞれ異なります。女性は感情を表に出すことが多い一方、男性は内に秘めてしまう傾向があります。この違いが、時にすれ違いを生むこともありますが、お互いの気持ちを尊重し、支え合うことが大切です。

流産後の悲嘆反応は正常な心理プロセスです。悲しみ、怒り、罪悪感、不安など、様々な感情が波のように押し寄せることがあります。これらの感情を無理に抑え込まず、自然に表現することが回復への第一歩です。必要であれば、グリーフケアやカウンセリングを受けることも検討してください。

パートナーとは、率直に気持ちを共有し、今後の方向性について話し合うことが重要です。次の妊娠への期待と不安、治療をすぐに再開するかどうかなど、時間をかけて話し合っていただくといいでしょう。

専門医療機関でのサポート体制

生殖医療専門施設では、流産を経験された方への包括的なサポート体制を整えています。また、流産を経験された方同士のサポートグループも、多くの施設で開催されています。同じ経験をした方々と思いを共有することで、孤独感が和らぎ、前向きな気持ちを取り戻すきっかけになることがあります。オンラインでの交流会も増えており、遠方の方でも参加しやすくなっています。

最新の医療技術により、流産リスクを低減する選択肢も増えていますので、一人で悩まず、専門家のサポートを受けながら、自分に合った方法を見つけていただくといいでしょう。

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