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全妊娠の約15%?!流産の原因を徹底解説|年齢別リスクと最新の予防法【専門医監修】

  • 公開日:2025.12.24
  • 更新日:2025.12.25
全妊娠の約15%?!流産の原因を徹底解説|年齢別リスクと最新の予防法【専門医監修】|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

流産を経験された方、あるいは流産への不安を抱えている方へ。

流産は決して珍しいことではなく、全妊娠の約15%で起こるとされています。

流産の原因の多くは、実は母体側の問題ではありません。この記事では、最新の医学的知見に基づいて流産の原因を詳しく解説し、次の妊娠に向けて前向きに進んでいただけるような情報をお伝えします。

流産の基礎知識 – 種類と頻度について

流産の定義と分類

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が終了することを指します。医学的には、流産してしまう時期によって「早期流産」(妊娠12週未満)と「後期流産」(妊娠12週以降22週未満)に分類されます。実は、全妊娠の約10-15%で流産が起こり、そのうち約80%が妊娠12週未満の早期流産です。

また、「化学流産」と呼ばれる、妊娠検査薬で陽性反応が出た後、超音波検査で胎嚢が確認される前に流産となるケースもあります。妊娠検査薬の感度が向上した現在では、以前は気づかれなかったこうした超早期の流産も認識されるようになり、流産を経験する女性が増えたように感じられることがありますが、これは医学の進歩により「見えるようになった」だけで、流産自体が増えているわけではありません。

流産の症状と診断

流産の症状は、出血や下腹部痛が代表的ですが、「稽留流産」のように自覚症状がないまま、健診で初めて判明するケースも少なくありません。出血があっても必ずしも流産とは限らず、「切迫流産」として妊娠が継続することも多くあります。

診断は主に超音波検査で行われ、胎児心拍の消失や胎嚢の成長停止などから判断されます。近年では、血中hCG値の推移を追跡することで、より早期に診断が可能になっています。ただし、妊娠初期は胎児の成長に個人差があるため、1回の検査だけで判断せず、1-2週間後に再検査を行うことが一般的です。

流産の主な原因

染色体異常による流産(約70%)

流産の最大の原因は、受精卵の染色体異常です。早期流産の約70%がこれに該当し、これは「自然淘汰」とも呼ばれる生命の仕組みの一部です。染色体異常には、数の異常(トリソミーやモノソミー)と構造の異常があります。最も多いのは常染色体トリソミーで、特に16番染色体のトリソミーが流産胎児の約30%を占めます。

重要なのは、これらの染色体異常の多くは偶発的に起こるもので、両親の染色体が正常でも発生するということです。受精時や初期の細胞分裂の過程で偶然起こるエラーであり、母親の行動や生活習慣が原因ではありません。ただし、母体年齢の上昇とともに卵子の染色体異常リスクは増加します。35歳で約25%、40歳で約40%、45歳では約80%の流産リスクがあるとされています。

母体側の要因

子宮の形態異常

子宮の形態異常は流産の原因の約10-15%を占めます。中隔子宮、双角子宮、単角子宮などの先天的な形態異常や、子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの後天的な異常が含まれます。特に中隔子宮は、反復流産の原因とされ、手術による治療で妊娠予後が改善することが知られています。

最近の3D超音波検査やMRI検査の進歩により、より正確な診断が可能になりました。子宮鏡下手術の技術も向上し、以前は開腹手術が必要だった症例も、体への負担が少ない内視鏡下手術で治療できるようになっています。

内分泌異常

黄体機能不全、甲状腺機能異常、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの内分泌異常も流産の原因となることがあります。特に甲状腺機能低下症は、軽度でも流産リスクを上昇させることが分かっており、TSH値2.5mIU/L以上では治療が推奨されます。

糖尿病については、HbA1c値が7%以上の場合、流産リスクが2-3倍に上昇します。妊娠前からの血糖コントロールが極めて重要で、計画的な妊娠が推奨される理由の一つです。最近では、インスリン抵抗性と流産の関連も注目されており、メトホルミンなどの薬剤の有効性が研究されています。

免疫学的要因

抗リン脂質抗体症候群は、習慣流産の原因される免疫学的要因です。血液が固まりやすくなることで胎盤の血流が障害され、流産に至ると考えられています。診断には、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、抗β2グリコプロテインI抗体などの測定が必要で、抗凝固療法による治療が行われます。

その他、NK細胞活性の異常、Th1/Th2バランスの異常なども注目されていますが、これらについては研究段階のものも多く、標準的な治療法は確立されていません。免疫グロブリン療法や免疫抑制剤の使用については、専門施設での慎重な判断が必要です。

父親側の要因

従来、流産は母体側の問題と考えられがちでしたが、最近の研究で父親側の要因も重要であることが分かってきました。精子のDNA断片化率が高い場合、流産リスクが上昇することが報告されています。加齢、喫煙、肥満、精索静脈瘤などが精子DNAの質を低下させる要因として知られています。

また、精子の染色体異常も流産の原因となります。特に、均衡型転座保因者の場合、外見上は正常でも、配偶子形成時に不均衡な染色体を持つ精子が作られ、流産を繰り返すことがあります。男性の生活習慣の改善や、場合によっては泌尿器科的治療が必要となることもあります。

環境要因とライフスタイル

避けるべき環境要因

職業性の化学物質曝露、放射線被曝、重金属への暴露などは流産リスクを上昇させます。特に、有機溶剤、農薬、鉛などへの曝露は注意が必要です。医療従事者では、抗がん剤の取り扱いや、麻酔ガスへの曝露も問題となることがあります。

日常生活では、受動喫煙も含めたタバコの煙、過度なアルコール摂取(1日2ドリンク以上)、カフェインの過剰摂取(1日200mg以上)が流産リスクを上昇させることが知られています。違法薬物はもちろん、一部のサプリメントや漢方薬も注意が必要ですので、判断に迷うであれば主治医に相談することをお勧めします。

ストレスと流産の関係

慢性的な強いストレスは、視床下部-下垂体-副腎系を介してホルモンバランスを乱し、流産リスクを上昇させる可能性があります。ただし、日常的なストレスが直接流産を引き起こすという明確な証拠はありません。むしろ、流産への過度な不安がストレスとなる悪循環を避けることが大切です。

適度な運動、十分な睡眠、バランスの良い食事といった基本的な生活習慣の維持が、ストレス管理にも妊娠継続にも重要です。ヨガ、瞑想、鍼灸などの補完代替医療も、ストレス軽減に有効とされています。

年齢別にみる流産リスクと原因の違い

20代・30代前半の流産

20代から30代前半では、流産率は10-15%程度です。この年代の流産の多くは偶発的な染色体異常によるもので、次回妊娠での成功率は高くなります。ただし、若年でも子宮形態異常や免疫異常などの器質的要因がある場合は、適切な検査と治療が必要です。

この年代で注意すべきは、やせすぎ(BMI18.5未満)による栄養不足です。過度なダイエットは、ホルモンバランスを乱し、流産リスクを上昇させます。また、性感染症の既往による卵管や子宮内膜への影響も、この年代特有の問題として挙げられます。

35歳以上の高齢妊娠における流産

35歳を過ぎると流産率は急激に上昇し、40歳で約40%、43歳で約50%、45歳では約80%に達します。主な原因は加齢に伴う卵子の染色体異常の増加です。特に、染色体の不分離が起こりやすくなり、トリソミーのリスクが上昇します。

しかし、高齢だからといって諦める必要はありません。着床前診断(PGT-A)により染色体正常胚を選択することで、流産率を低下させることが可能です。また、卵子の質を改善するとされるサプリメント(CoQ10、DHEA、ビタミンDなど)の研究も進んでいます。個々の卵巣予備能を評価し、最適な治療戦略を立てることが重要です。

反復流産・習慣流産の原因と検査

定義と頻度

2回以上の流産を「反復流産」、3回以上を「習慣流産」と定義します。反復流産は全カップルの約5%、習慣流産は約1%に見られます。偶然の積み重ねである可能性もありますが、2回流産後の検査で約50%に何らかの原因が見つかります。

最新のガイドラインでは、2回流産をした場合から積極的な検査を推奨しています。特に、35歳以上や不妊治療中の方は、早期の原因検索が重要です。原因が特定できれば、多くの場合で有効な治療法があり、次回妊娠の成功率を向上させることができます。

必要な検査項目

反復流産の原因検索には、以下の検査が推奨されます:

基本検査

  • 染色体検査(夫婦両方)
  • 子宮形態評価(超音波、子宮卵管造影、MRI)
  • 内分泌検査(甲状腺機能、プロラクチン、黄体ホルモン)
  • 抗リン脂質抗体検査
  • 血糖値、HbA1c

追加検査

  • 流産絨毛染色体検査
  • 血栓性素因検査(プロテインS、プロテインC、第V因子ライデン変異など)
  • 免疫学的検査(NK細胞活性、Th1/Th2比など)
  • 精液検査(DNA断片化率を含む)
  • ビタミンD、ホモシステイン値

これらの検査により、約50-60%で原因が特定でき、適切な治療につながリます。

治療可能な原因への対処法

原因が特定された場合、以下のような治療が可能です

子宮形態異常子宮鏡下中隔切除術、子宮筋腫核出術など 
内分泌異常甲状腺ホルモン補充、黄体ホルモン補充、血糖コントロール 
抗リン脂質抗体症候群低用量アスピリン+ヘパリン療法 
染色体構造異常着床前診断(PGT-SR) 
血栓性素因抗凝固療法

原因不明の場合でも、tender loving care(精神的サポート)により妊娠継続率が向上することが知られています。また、プロゲステロン補充療法、免疫グロブリン療法なども、症例により検討されます。

流産後の心のケアと次の妊娠に向けて

グリーフケアの重要性

流産は、身体的な喪失だけでなく、深い精神的な傷を残します。「赤ちゃんを失った悲しみ」は、周囲に理解されにくく、孤独を感じる方が多くいらっしゃいます。この悲しみ(グリーフ)は正常な反応であり、十分な時間をかけて向き合うことが大切です。

パートナーとの温度差に悩む方も多くいます。男性は女性に比べて感情を表に出さない傾向がありますが、それは悲しんでいないということではありません。お互いを尊重し、対話を重ねることが、夫婦の絆を深める機会にもなります。必要に応じて、カウンセリングやサポートグループの利用も検討してください。

次の妊娠のタイミング

WHO は流産後6か月以上の避妊を推奨していましたが、最新の研究では、流産後3か月以内の妊娠でも予後は変わらないことが分かっています。むしろ、6か月以内の妊娠の方が、生児獲得率が高いという報告もあります。

ただし、これは身体的な回復の話であり、心の準備ができているかは別問題です。流産の処置方法(自然排出、薬物療法、手術)によっても回復期間は異なります。また、原因検索や治療が必要な場合は、それらを優先すべきです。主治医と相談しながら、ご自身のペースで次のステップに進むことが大切です。

妊娠前の準備とケア

次の妊娠に向けて、以下の準備をお勧めします:

身体面の準備

  • 葉酸サプリメント(400-800μg/日)の摂取開始
  • 適正体重の維持(BMI 18.5-25)
  • 禁煙・節酒
  • 基礎疾患のコントロール
  • 歯科治療の完了

精神面の準備

  • 流産への不安との向き合い方を学ぶ
  • ストレス管理法の習得
  • パートナーとのコミュニケーション強化
  • サポート体制の構築

特に、「また流産するのでは」という不安は、次の妊娠中も続くことがあります。この不安を完全になくすことは難しいですが、正しい知識を持ち、医療者との信頼関係を築くことで、不安を和らげることができます。

最新の検査技術と予防的アプローチ

着床前診断(PGT)の適応と限界

着床前診断(PGT)は、体外受精で得られた胚の染色体や遺伝子を調べる技術です。PGT-A(異数性検査)により、染色体数の異常がない胚を選択して移植することで、流産率を大幅に低下させることができます。特に、35歳以上の方や反復流産の方には有効とされています。

ただし、PGT-Aにも限界があります。モザイク胚(正常細胞と異常細胞が混在)の判定や、検査による胚へのダメージリスクなどの課題もあります。また、日本では適応も限定されており、現状は自費での診療となるため、費用も高額であり、すべての方に推奨されるわけではありません。

新しい治療法の可能性

現在、以下のような新しい治療法が研究されています:

再生医療アプローチ

  • PRP(多血小板血漿)療法による子宮内膜改善
  • 幹細胞治療による卵子の質改善

薬物療法の進歩

  • G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)による着床改善
  • メトホルミンによるインスリン抵抗性改善
  • ビタミンD補充による妊娠予後改善

個別化医療

  • 遺伝子多型に基づく葉酸代謝能評価
  • 免疫プロファイリングによる個別化免疫療法

これらの治療法の多くはまだ研究段階ですが、将来的には流産予防の選択肢が大きく広がることが期待されます。

まとめ

流産の原因は多岐にわたりますが、最も多いのは偶発的な染色体異常であり、これは自然の摂理とも言えます。決してご自身を責める必要はありません。2回以上流産を経験された場合は、原因検索により治療可能な要因が見つかることも多く、適切な治療により次回妊娠の成功率を高めることができます。

医学の進歩により、以前は原因不明とされていた流産の原因が解明され、新しい検査法や治療法も開発されています。一人で悩まず、信頼できる医療機関で相談することをお勧めします。

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