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胚移植を終えて、判定日までの期間をお過ごしの皆さま。「お腹がチクチクする」「これは着床のサイン?」「何も症状がないけど大丈夫?」そんな不安な気持ちを抱えていらっしゃることでしょう。私も生殖医療専門医として、多くの患者さまから同じようなご質問を受けてきました。この期間の不安や期待が入り混じる複雑な心境、本当によく分かります。
この記事では、胚移植後に起こりうる症状について、医学的根拠に基づいて分かりやすく解説していきます。症状の有無に一喜一憂せず、安心して判定日を迎えられるよう、正しい知識をお伝えします。
胚移植とは?基本的な流れと体の変化
胚移植の方法と種類
胚移植は、体外受精で得られた受精卵(胚)を子宮内に戻す処置です。新鮮胚移植と凍結融解胚移植の2種類があり、それぞれ移植のタイミングや準備が異なります。
新鮮胚移植では、採卵周期にそのまま移植を行うため、卵巣刺激によるホルモン値の上昇が続いている状態です。一方、凍結融解胚移植では、ホルモン補充周期または自然周期で子宮内膜を整えてから移植します。この違いにより、移植後の症状の現れ方にも差が生じることがあります。
移植自体は5分程度の処置で、カテーテルを使って胚を子宮内に注入します。多くの場合、痛みはほとんどありませんが、子宮の形や位置により軽い違和感を感じる方もいらっしゃいます。
移植後のホルモン変化のメカニズム
胚移植後の体内では、着床に向けて複雑なホルモン変化が起こります。黄体ホルモン(プロゲステロン)は子宮内膜の厚さを保ち、柔らかくすることで着床しやすい環境を作ります。このホルモンの作用により、体温上昇、乳房の張り、眠気などの症状が現れることがあります。
着床が成立すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌され始めます。このホルモンは妊娠を維持する重要な役割を果たし、妊娠検査薬が陽性となるホルモンでもあります。hCGの分泌開始は移植後7~10日頃とされていますが、個人差が大きいのが特徴です。
また、エストロゲンも妊娠の維持に重要で、これらのホルモンバランスの変化が、いわゆる「妊娠初期症状」として現れることがあります。ただし、ホルモン補充を行っている場合は、薬剤の影響で似たような症状が出ることもあります。
胚移植直後(当日~3日目)に現れやすい症状
下腹部の違和感・軽い痛み
移植直後から数日間、下腹部に軽い違和感や鈍痛を感じる方がいらっしゃいます。これは主に、移植時のカテーテル挿入による物理的な刺激や、子宮の軽い収縮によるものです。一般的に痛みの程度は月経痛よりも軽く、「チクチク」「ズーン」といった表現をされる方が多いです。
医学的には、この時期の軽い痛みは正常な反応とされています。子宮は異物(この場合はカテーテル)の侵入に対して軽い防御反応を示すことがあり、これが違和感として感じられるのです。通常は安静にしていれば数日で改善します。
ただし、激しい痛みや、痛みが日増しに強くなる場合は注意が必要です。非常にまれですが、子宮の過度な収縮や移植によって感染を起こすことがありますので、痛みが強い場合には、我慢せずに相談することが大切です。
少量の出血(着床出血との違い)
移植後1~3日目に、ごく少量の出血やピンク色のおりものを認めることがあります。これは移植時のカテーテル操作により、子宮入り口や内膜の表面に軽い傷がついたことによる出血がほとんどです。着床出血と混同されやすいですが、時期的に着床出血とは異なります。
着床出血は、胚が子宮内膜に潜り込む際に起こるとされ、理論的には移植後1週間程度で起こる可能性があります。しかし、実際に着床出血を経験する方は全体の約20%程度です。
また、移植直後の出血は、ほぼ100%が移植の処置に関連したものと考えてよいでしょう。出血量は、通常おりものシートで対応できる程度です。鮮血でも茶色い古い血でも、少量であれば心配ありません。ただし、月経2日目のような量の出血や血の塊が出る場合は、診察が必要となりますので医療機関に連絡することをおすすめします。
だるさ・眠気などの全身症状
移植後、強い眠気や全身のだるさを訴える患者さまが多くいらっしゃいます。これは主に黄体ホルモンの影響によるもので、特にホルモン補充周期の方に顕著に現れることが多いです。黄体ホルモンには体温を上昇させ眠気を誘発する作用があるため、まるで風邪の初期症状のように感じることもあります。
また、移植に対する精神的な緊張や期待感も、身体的な疲労として現れることがあります。不妊治療は心身ともに大きな負担がかかるため、移植という大きなイベントの後に疲労感が出るのは自然な反応といえます。この時期は無理をせず、ゆっくりと休息を取ることも大切です。
さらに、採卵周期から続けて移植を行う新鮮胚移植の場合は、卵巣刺激による影響も残っている可能性があります。OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある方は、腹部膨満感や吐き気などの症状がないかなど観察することも必要です。症状が強い場合は、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
着床期(4日目~7日目)の特徴的な症状
着床痛の真実:医学的に証明されているか
「着床痛」という言葉を耳にすることがありますが、医学的にその存在は証明されていません。着床は細胞レベルで起こる現象であり、理論的には痛みを感じるほどの刺激にはならないと考えられています。しかし一方で、妊娠を経験した方の中には「着床痛があった」と振り返る方がいるのも事実です。
考えられる説明として、着床時期に一致してホルモンバランスが大きく変化し、それに伴う子宮の軽い収縮や充血が痛みとして感じられる可能性があります。また、プロゲステロンの作用により腸の動きが鈍くなり、ガスが溜まることによる腹部の違和感を着床痛と感じている可能性もあります。
重要なのは、痛みの有無で着床の成否を判断できないということです。経験上でも、まったく症状がなかった方が妊娠されることも多く、逆に痛みを感じた方が妊娠に至らないこともあります。症状は個人差が大きく、着床の確実なサインとはいえないことを理解して、過度な不安を抱かないようにしてください。
基礎体温の変化パターン
胚移植後の基礎体温は、黄体ホルモンの影響で高温期が続きます。通常、36.7℃以上の体温が維持されますが、これは妊娠の有無に関わらず、黄体ホルモンが分泌されている限り続きます。そのため、高温期が続いているからといって、必ずしも妊娠しているとは限りません。
着床が成立した場合、さらに0.1~0.2℃程度体温が上昇する「着床時の体温上昇」が見られることがあります。これは移植後7~10日目頃に起こるとされていますが、全ての方にみられるわけではありません。また、測定誤差や体調による変動もあるため、あまり神経質になる必要はありません。
基礎体温測定を続けている方は、判定日まで記録を続けることをおすすめしますが、一喜一憂しないことが大切です。特に、一時的な体温低下があってもそれだけで妊娠の可能性がなくなったと判断するのではなく、ストレスや睡眠不足、測定時刻のずれなども体温に影響することを覚えておきましょう。
おりものの変化と観察ポイント
正常なおりものの特徴
着床期のおりものは、黄体ホルモンの影響で通常より粘性が高く、白っぽいクリーム状になることが多いです。おりものの量は個人差がありますが、一般的には排卵期より少なめです。においはほとんどなく、あっても軽い酸っぱいにおい程度が正常です。
妊娠が成立すると、おりものの量が徐々に増加することがあります。これは膣内の自浄作用を高め、感染から守るための生理的な変化です。透明~白色で、さらさらとした水っぽいおりものが増えることもあります。ただし、この変化も個人差が大きく、変化を感じない方も多くいらっしゃいます。また、ホルモン剤を使用している場合は、これらの変化が分かりにくくなります。
注意が必要なおりもの
黄緑色や灰色のおりもの、強い悪臭を伴うおりもの、かゆみや痛みを伴うおりものは、感染症の可能性があります。特に、カッテージチーズ状の白いおりものはカンジダ膣炎、黄緑色のおりものは細菌性膣炎の可能性があります。
移植後は免疫力が低下しやすく、また移植前後の感染予防に服用する抗生剤の影響で、カンジダなどにもなりやすくなります。異常なおりものに気づいたら、早めに担当医に相談しましょう。軽い感染症であれば、適切な治療を受けることで妊娠への影響はほとんどないと考えられます。また、自己判断で市販薬を使用するのは避け、必ず専門医に相談することをおすすめします。
判定日前(8日目~14日目)の症状と過ごし方
妊娠初期症状との類似点
この時期は、「これは妊娠初期症状なのかな?」と期待と不安が入り混じる時期です。実際、この時期に現れる症状の多くは妊娠初期症状と酷似しています。倦怠感、吐き気、胸の張り、頻尿、味覚の変化、においに敏感になるなど、さまざまな症状が報告されています。
医学的には、これらの症状はhCGとプロゲステロンの相互作用により起こります。着床が成立していれば、hCGの分泌が始まり、それがプロゲステロンの分泌を促進します。この相乗効果により、いわゆる「つわり」の前駆症状が現れることがあります。特に、急激な吐き気や食欲の変化は、hCG値の上昇と相関することが知られています。
しかしここで注意したいのは、ホルモン補充を行っている場合、薬剤の影響でも似たような症状が出ることです。経験上、「絶対に妊娠している」と確信するほど強い症状があったのに、残念ながら妊娠に至らなかったケースもあります。症状だけで判断せず、医療機関で正式な判定を待つことが大切です。
薬の影響による症状
ホルモン補充療法を受けている方は、使用している薬剤による副作用と妊娠症状の区別が困難です。プロゲステロン製剤(膣錠、注射、内服薬)は、眠気、だるさ、胸の張り、便秘などを引き起こします。エストロゲン製剤は、吐き気、頭痛、乳房痛の原因となることがあります。
特に、プロゲステロンの膣錠を使用している場合、薬剤の一部が溶け残って排出されることがあり、これを異常な出血やおりものと勘違いすることがあります。白っぽい塊が出ても、薬剤の可能性が高いので心配いりません。
これらの薬剤は、妊娠判定が陽性の場合、妊娠初期まで継続することが一般的です。副作用が強い場合には、薬剤の種類や投与方法の変更が可能なこともあるので、担当医に相談してみてもいいでしょう。
ストレスによる身体症状との見分け方
判定日が近づくにつれ、期待と不安からくるストレスは相当なものです。このストレスが身体症状として現れることも少なくありません。倦怠感、不眠、食欲不振、動悸、めまい、胃痛などは、ストレス性の症状の代表例です。これらが妊娠症状と混同されることもあります。
ストレス性の症状の特徴は、精神的な状態と連動することです。例えば、何かに集中している時は症状が軽くなり、一人で考え込んでいる時に症状が強くなるなどです。また、リラックスすると改善する傾向があります。一方、ホルモンによる症状は、活動状態に関わらず持続的に現れることが多いです。
この時期は、できるだけストレスを軽減する工夫が大切です。好きな音楽を聴く、軽い散歩をする、友人と会話を楽しむなど、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。また、SNSなどで調べすぎないことも重要です。情報過多やSNSからの間違った情報は不安を増幅させることがありますので、注意が必要です。
注意が必要な症状:すぐに受診すべきサイン
強い腹痛・大量出血
移植後のどの時期であっても、激しい腹痛や大量の出血は緊急受診が必要なサインです。「激しい」の目安は、鎮痛剤を飲んでも改善しない、歩行が困難、冷や汗が出るなどです。このような痛みは、子宮内感染症、子宮外妊娠、卵巣茎捻転、重度のOHSSなどの可能性がありますので、必ず医療機関に相談をしてください。
出血については、月経2日目以上の量、1時間に1枚以上ナプキンを交換する必要がある量、レバー状の血塊が出る場合は要注意です。これらは着床していないというだけでなく、子宮内膜からの異常出血、ホルモンバランスの急激な変化などを示唆する可能性があります。
夜間や休日でも、これらの症状がある場合は我慢せずに受診しましょう。受診時は、症状の始まった時刻、痛みの部位と程度、出血量や使用している薬剤名などを正確に伝えることが、適切な診断と治療につながります。
発熱・悪寒
一般的には、黄体ホルモンの影響により平熱が0.3~0.5℃程度上昇することは正常範囲です。36.8~37.2℃程度の微熱で、他の症状がない場合は、経過観察で問題ありません。
ただし、37.5℃以上の発熱は、感染症の可能性を示唆します。特に、悪寒、震え、下腹部の圧痛を伴う場合は、骨盤内感染症の可能性があり、早急な診断と治療が必要です。移植後や妊娠初期は免疫力が低下しやすく、通常なら問題にならない場合でも感染が重症化することがありますので、必ず医療機関に相談をしてください。
その他の異常症状
以下の症状がある場合も、早めの受診をおすすめします。
呼吸困難・胸痛
重度のOHSSや、非常にまれですが肺塞栓症の可能性があります。特に息切れが急に悪化した場合は要注意です。
激しい頭痛・視覚異常
ホルモン剤の副作用の可能性もありますが、血圧上昇や血管性の問題の可能性も否定できません。
下肢の腫れ・痛み
片側だけの場合、深部静脈血栓症の可能性があります。長時間の安静により血栓リスクが高まることがあります。
持続する嘔吐
水分摂取も困難な場合は、脱水症状に陥る危険があります。点滴治療が必要なことがあります。
これらの症状は頻度としては稀ですが、見逃すと重篤な結果につながる可能性があります。「大げさかも」と思わずに、不安な症状があれば医療機関に相談をし、専門的な判断に委ねてください。
症状がない場合も心配しないで
症状の有無と妊娠成立の関係
「何も症状がないから妊娠していない」と落ち込む必要はまったくありません。実際のデータでは、妊娠初期に明確な自覚症状がない方は約30~40%にのぼります。つまり、3人に1人以上は、判定日まで特別な症状を感じないということです。
医学的に見ても、症状の有無と妊娠率に有意な相関関係はありません。経験上も、「今回は全然症状がなかったから期待していなかった」という方が妊娠されることは珍しくありません。逆に、強い症状があったのに妊娠に至らなかったケースも多く経験しています。
症状がない理由として、hCGの上昇が緩やかな場合、もともとホルモン変化に対する感受性が低い体質、ストレスが少なく体調が安定している場合などが考えられます。これらはいずれも妊娠の成否とは関係なく、個人差の範疇ですので、症状がないことを前向きにとらえていただくとよいでしょう。
個人差が大きい理由
症状の現れ方に個人差が大きい理由は、複数の要因が関係しています。まず、ホルモンに対する感受性は遺伝的に決まっている部分があり、同じホルモン濃度でも感じ方が人により大きく異なります。また普段の月経前症候群(PMS)が軽い方は、妊娠初期症状も軽い傾向があります。
年齢も症状に影響します。一般的に、年齢が若い方がホルモン変化に敏感で、症状を強く感じる傾向があります。また、初めての妊娠では症状に敏感になりやすく、経産婦さんでは慣れもあって症状を感じにくいことがあります。ストレスレベル、睡眠状態、栄養状態なども症状の感じ方に影響します。
胚移植後の過ごし方:症状を和らげる工夫
日常生活での注意点
胚移植後の日常生活は、基本的に普段通りで問題ありません。「安静にしすぎる」ことで、かえって血流が悪くなり、ストレスも増加します。適度な活動は、子宮への血流を促進し、精神的にも良い影響があります。家事、デスクワーク、軽い買い物などは、体調がよければ、制限する必要はありません。
避けるべきことは、激しい運動、重い物を持つこと、長時間の立ち仕事、高温環境(サウナ、熱い風呂)などです。これらは子宮の過度な収縮や、体温上昇による悪影響の可能性があります。また、自転車やバイクなど、振動の多い乗り物も、移植直後は控えめにすることをおすすめしますが、その後は日常生活の一部として利用する分には制限をする必要はないでしょう。
入浴については、ぬるめのお湯(38~40℃)での入浴は問題ありません。むしろ、リラックス効果や血行促進効果が期待できます。ただし、膣錠を使用している場合は、入浴のタイミングを考慮した方がいいでしょう。また、性生活についてはクリニックにより方針が異なりますので、治療している医療機関で確認することをおすすめします。
リラックス法とストレス管理
ストレス管理は、この時期の最重要課題といっても過言ではありません。科学的に効果が証明されているリラックス法として、深呼吸法、漸進的筋弛緩法、マインドフルネス瞑想などがあります。また、音楽療法も効果的と考えられており、クラシック音楽、特にモーツァルトの楽曲は、自律神経を整える効果があるとされています。また、自然音(波の音、鳥のさえずりなど)も、リラックス効果が高いです。アロマテラピーを取り入れる場合は、ラベンダーやカモミールなど、妊娠中も安全とされる精油を選びましょう。
趣味の時間を大切にすることも重要です。ご自身の趣味の世界に没頭することができると、不安を感じにくくなる効果があります。また、信頼できる友人や家族と話すことも、ストレス軽減につながります。
食事と栄養管理のポイント
胚移植後の食事は、バランスの良い食事を心がけることが基本です。特に重要な栄養素として、葉酸、鉄分、カルシウム、ビタミンD、オメガ3脂肪酸などがあります。葉酸は1日400μg以上の摂取が推奨されており、緑黄色野菜、レバー、納豆などに多く含まれます。
避けるべき食品として、生肉、生魚(刺身)、生卵、ナチュラルチーズ、アルコール、カフェイン過多などがあります。これらは食中毒のリスクや、胎児への悪影響の可能性があるためです。カフェインについては、1日200mg以下(コーヒー2杯程度)であれば問題ないとされています。
水分摂取も重要です。1日1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂りましょう。便秘予防にもなり、血流改善にも効果的です。つわりのような症状がある場合は、少量頻回の食事にし、空腹時を避けることで症状が軽減することがあります。サプリメントを利用する場合は、必ず医師と相談してから始めましょう。
よくある質問と生殖医療専門医からの回答

Q1: 自宅でのフライング検査について
A1:「判定日前に妊娠検査薬を使いたい」というお気持ちは、よく分かります。しかし、医学的にはフライング検査はおすすめしません。理由として、偽陰性による不要な落胆、偽陽性による期待とその後の失望、化学流産の認識による精神的ダメージなどがあります。
市販の妊娠検査薬は尿中hCG濃度が25~50IU/Lで陽性となりますが、着床直後のhCG値は個人差が大きく、判定日前では正確な結果が得られないことが多いです。また、hCG注射を使用している場合、薬剤の影響で偽陽性となることもあります。
もしフライング検査をする場合は、以下の点を理解しておいてください。
- 陰性でも妊娠の可能性は残っている
- 陽性でも化学流産や正常妊娠ではない可能性がある
- 結果に一喜一憂しない心の準備が必要。
最終的な判断は病院での血液検査によるものです。個人的には、正確な判定ができる日まで待つことで、無用な心理的ストレスを避けることができると考えています。
Q2: 仕事や運動の制限
A2: 仕事については、通常のデスクワークや接客業などは問題ありません。ただし、重労働、夜勤、長時間の立ち仕事、ストレスの多い業務は、職場と相談可能な範囲で調整することをおすすめします。多くの報告では、適度な活動を続けた方が、完全に安静にしているよりも妊娠率が高いことが示されています。
運動に関しては、激しい運動は避けるべきですが、ウォーキング、ヨガ、軽いストレッチなどは推奨されます。目安として、会話ができる程度の強度、心拍数が平常時の1.5倍を超えない程度が適切です。特にヨガは、リラックス効果も高く骨盤周囲の血流改善にも効果的です。
職場への配慮依頼については、信頼できる上司には事情を説明し、急な体調不良時の対応を相談しておくと安心です。「不妊治療連絡カード」や診断書などを活用することで、医師からの指示を職場に伝えることもできます。無理は禁物ですが、過度に神経質になる必要もないことを覚えておいてください。
Q3: パートナーとの関わり方
A3: この時期、パートナーとの関係性は非常に重要です。女性は症状に敏感になり、感情の起伏も激しくなりがちです。一方、パートナーは何をしていいか分からず、戸惑うことも多いでしょう。大切なのは、お互いの気持ちを率直に伝え合うことです。
パートナーができるサポートとして、家事の分担、マッサージ、一緒に散歩する、話を聞く、病院への付き添いなどがあります。また、「症状はどう?」と頻繁に聞くよりも、「何か手伝えることはある?」と聞く方がプレッシャーを与えません。
性生活については、医師により見解が異なりますが、一般的には判定日まで控えることが推奨されます。これは子宮収縮を避けるためと感染予防のためです。ただし、スキンシップは精神的な安定につながるため、積極的に行うといいでしょう。この期間を二人で乗り越えることで、絆がより深まることも多いです。
まとめ
胚移植後の期間は、希望と不安が交錯する特別な時間です。様々な症状に一喜一憂することもあるでしょう。しかし、医学的には症状の有無と妊娠の成否に明確な相関はありません。大切なのは、自分の体を信じ、適切な生活を送りながら判定日を迎えることです。
もし不安な症状があれば、遠慮なく医療機関に相談してください。私たち生殖医療専門医は、皆さまの不安に寄り添い、最善のサポートをする準備ができています。どんな結果であっても、この経験があなたの人生にとって意味のあるものとなることを心から願っています。
最後に、頑張っているあなた自身を褒めてあげてください。不妊治療は肉体的にも精神的にも大変な道のりです。ここまで来られたこと自体が素晴らしい勇気と強さの証です。リラックスして、希望を持って判定日をお迎えください。