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精液検査どこで受ける?胚培養士が教える5つの選択肢と失敗しない選び方を徹底解説【2025年最新版】

  • 公開日:2025.12.24
  • 更新日:2025.12.25
精液検査どこで受ける?胚培養士が教える5つの選択肢と失敗しない選び方を徹底解説【2025年最新版】|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

皆さんこんにちは。生殖医療クリニック錦糸町駅前院の「胚培養士」川口優太郎です。

「妊活を始めたけれど、精液検査ってどこで受ければいいの?」

「パートナーに精液検査を受けてもらいたいけど、どこがおすすめ?」

こんなお悩みをお持ちではありませんか?

実のところ、精液検査自体は、受けられる施設は結構多いのですが、では「どこで受けても同じなのか?」と問われると、そこには大きな疑問を感じます。

私自身、不妊治療専門クリニックに従事する胚培養士として、ほぼ、毎日患者様の精液検査を行っている立場ですが、その検査精度やクオリティについては施設によって違いがあるということを十分に理解した上で検査を受けていただきたいと常々考えています。

今回のコラムでは、精液検査を受けられる場所とその特徴、そして胚培養士だからこそお伝えできる「クオリティの高い検査」を受けるためのポイントを詳しく解説します。あなたとパートナーにとって最適な選択ができるよう、専門的な視点から分かりやすくお伝えしていきます。

精液検査はどこで受けられる?胚培養士が解説する5つの選択肢

精液検査を受けられる場所は、大きく分けて5つあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

綜合病院・大学病院の泌尿器科・産婦人科

まず、挙げられるのが総合病院や大学病院の泌尿器科や産婦人科です。

検査を受けられる施設は多い‥‥といっても、やはり検査を行うためには最低限の設備が必要です。一般的な街中のクリニックなどではなかなかこのような設備を整えている施設は少ないですが、総合病院や大学病院であれば設備が整っている可能性が高く、どんな地域でも必ず一ヶ所はあるため、まず間違いなく受けられると思います。

また、なにか問題が見つかった場合に、泌尿器科がついていれば、同じ病院内でより専門的な治療や検査を受けられる“医療連携”という側面でメリットがあります。

人間ドック・検診センター

最近では、検診センターや人間ドックでも、オプションとして精液検査を提供している医療機関が増えてきています。健康診断のついでに受けられる手軽さがメリットかと思います。

検診センターでの精液検査は、基本的な項目のみに限定されることが多いですが、定期的な健康チェックの一環として受けるには便利です。ただし、専門的な不妊検査というよりは、一般的な健康状態の確認といった位置づけになります。

結果に異常が認められる場合には、専門医療機関での詳細な検査が必要になります。

費用は、10,000~20,000円程度のことが多いようですが、企業検診の場合には一部を負担してもらえることもあるようです。

不妊治療専門クリニック

不妊治療専門クリニックは、精液検査において最も充実した設備と専門性を持つ施設であると言えます。私が勤務するクリニックでも、毎日多くの精液検査を実施していますが、その精度とクオリティの高さには自信を持っています。

特に他施設との明確な違いは、精子の形態的な評価を詳細に行えるという点です。というのも、

精子の形態が正常か異常かは、泌尿器を専門とする医師か、細胞や病理を専門とする検査技師、あるいは顕微授精を高い水準で修得しているレベルの胚培養士でなければ、正確に判断するのは極めて難しいです。

不妊治療専門クリニックでない場合、形態を詳細に確認することはまず不可能であるため、精子の数や運動性のある程度の数字しかわからないということも多いです。

オンライン診療対応クリニック

コロナ禍以降、オンライン診療に対応するクリニックが増えています。初回の問診をオンラインで行い検査キットを自宅に送付してもらう形式や、先にクリニックで精液検体の提出だけを行い、後日オンラインで結果を聞くという形式をとっている施設が多いです。

オンライン診療対応クリニックのメリットは、自宅にいながら医師の診察を直接受けることが出来る点で、結果の説明もオンラインで受けられるため、仕事で忙しい方や遠方に住まわれている方にも便利です。

ただし、すべての実際に治療を行う場合には通院することが必要不可欠となるため、妊活や治療の導入として利用するのによいサービスだと思います。

自宅採取+郵送検査

比較的最近出てきた新しいサービスとして挙げられるのが、自宅で採取して郵送する検査キットです。コロナ禍で人との接触を避けるのには最適で、プライバシーを重視する方や、クリニックへの通院が難しい方に選ばれています。

しかしながら、不妊治療の現場に携わる胚培養士という立場から正直なところをお伝えすると、その検査精度や信憑性にはかなり大きな疑問を感じます。

例えば、輸送中の温度変化や時間経過により精子の運動率は低下していくため、クリニックで検査をする場合でも採精から1時間以内にクリニックに持ってくるように指導しているほどです。

採精してから、郵送して検査機関に届き、実際に検査が行われるまでどのくらいの時間がかかるのか?ということを考慮しても、医学的に正確な検査結果が得られるとは考えにくいのではないかと思います。

精液検査を受ける場所を選ぶときに重視するべきポイント

精液検査を受ける場所を選ぶ際、以下のポイントに考慮しましょう。

検査のクオリティや設備が充実しているか

検査のクオリティは、検査に使用する機器と検査をする技師のレベルに大きく影響されます。

SMASやCASA、SQAなどの自動解析システムを導入している施設では、精子の動きやスピードを詳細に解析することが可能で、治療に有効な精子の割合を算出することもできます。

このような解析システムの有無に加えて、精子の形態を正確に評価できる“知識”と“目”を持った技術者が施設にいるかどうかは、高いクオリティの検査を受けるためには重要なポイントです。

体外受精・顕微授精以上の治療を行っている施設であれば、形態評価を高い精度で行うことができる胚培養士が必ず在籍しているはずです。

プライバシーへの配慮があるか

精液検査は、多くの男性にとってデリケートな検査です。特に、初めて受けられる方にとっては緊張や不安を感じることもあり、プライバシーへの配慮が十分でない環境では、精神的なストレスから良好な検体が採取できないこともあります。

不妊治療専門クリニックであれば『採精室』という精液を採取するための専用の部屋を持っていることが多いですが、総合病院や大学病院の中にはこのような設備が無く、トイレで採取するように促される施設も実際にあります。

自宅からのアクセスはよいか

精液は、採取してから時間の経過とともにその性状が変化していきます。特に精子運動率は、時間が経過するほど低下していきます。クリニックで採精する分には特に問題は無いのですが、自宅で採精してクリニックに持ち込む場合には、自宅からアクセスのよい施設を選ぶことも重要なポイントになります。理想は、採取から遅くとも1時間以内に提出し、検査を始められる距離感が望ましいです。

費用と保険適用について

精液検査の費用は、実施する施設や検査内容により異なりますが、基本的な精液検査は保険適用されることが多く、おおよそ2,000~3,000円程度です。ただし、不妊症の診断がついていない初回検査や、詳細な機能検査は自費診療となります。

また、費用面で注意したいのは、精液検査の費用だけでなく、初診料や再診料も含めた総額です。精液検査では、複数回の検査が必要になることもよくあるため、継続的に通える価格設定の施設を選ぶことも重要なポイントです。

結果説明とアフターフォローを受けられるか

精液検査を受ける際には、結果をただ渡してもらうだけでなく、それぞれの項目の意味や対応についても丁寧に説明してくれる施設を選ぶことも重要なポイントです。精液検査の結果は日によって変動しやすく、1回の検査だけで判断することは適切ではありません。もしも、基準値を下回るような結果であった場合に、再検査を検討し、結果に基づいた生活指導やパートナーの状態との総合的な評価など、包括的なフォローを受けられる施設で検査を行うようにしてください。

胚培養士が教える!精液検査に影響を与える3つの要因

精液検査の結果は、精液を採取した時の環境や、採取後の検体の取り扱い方に大きく影響されます。日々精液検査を行う中で、正確に検査結果を出すためには、特に注意していただきたいことが3つあります。

精液検体の採取から検査までの時間

精液は、射精直後にはゼリー様の性状をしていますが、時間の経過とともにサラサラの状態に液化していきます。そして、時間の経過とともに精子の運動性は低下していきます。精液中に白血球が混在している場合には、運動性を低下させる影響をより受けやすくなります。

理想は、採取から遅くとも1時間以内に提出し、検査を始められることが望ましいです。

自宅で採精してクリニックに持ち込まれる場合には、交通渋滞や天候などの不測の事態も考慮し、余裕を持った計画を立てていただけるとよいかなと思います。

検体の温度管理

精子は温度変化に非常に敏感です。高温環境に晒され続けると精子の運動性が失われ、低温環境下では運動性が鈍くなり、前進性が減少します。採取後は一般的な室温(20~30℃)の範囲で保持することが理想的ですが、夏場などは測定値よりも高い温度環境になることもあるため注意が必要です。

冬場に自宅で採精して持ち込む場合は、容器をタオルで包み、外からの温度変化を受けにくくして運ぶことをお勧めします。特に電車の移動だと、外は雪が降って寒い、電車内は空調が利いていて暑いといった具合に、極端な温度変化に晒されると精液データは悪くなってしまいます。

ストレスフリーな環境での採精

緊張や不安などの精神的なストレスは、精液データに影響を与える可能性があります。リラックスできる環境で精液を採取することで、より正確な検査結果が得られます。

不妊治療専門施設の場合では『採精室』という、精液採取専用の部屋が設計されていることがほとんどですが、病院内のトイレや倉庫のような空き部屋で採取するように促された‥‥という患者様も実際にいらっしゃいます。

自宅や職場がクリニックに近いという場合には、自分の慣れている環境で採精してから、クリニックに持ち込むというのもよいかもしれません。

精液検査の結果を正しく理解するために

精液検査の結果を受け取ったとき、数字の羅列をただぼんやりと眺めるだけでは無く、それぞれの数値や意味を正しく理解することが重要です。

WHO(世界保健機関)が示す基準値

精液検査によって調べる項目には、『精液量』、『精子濃度』、『精子運動率』、『奇形率』の大きく4つがありそれぞれに基準値(下限値)が設けられています。

精液量1.4ml以上
精子濃度1,600万/ml以上(総精子数3,900万以上)
運動率42%以上(前進運動率30%以上)
奇形率96%未満(正常4%以上)

WHOは、2021年に精液検査の基準値を更新し、それまでは一般的には2010年度版が広く使われていました。

この基準値は、世界中の妊娠に至った男性の精液データから算出された「下位5パーセンタイル値」を示しています。つまり、妊娠に至った男性の95%はこの基準値以上の数値を示していたということです。

複数回検査の必要性

精液所見は、その時の体調やストレスなどにより大きく変動します。1回の検査結果だけで判断することは適切では無く、WHOでも複数回の検査を以て判断することが望ましいと規定しています。

私自身の経験として、臨床おいては初回検査で基準値を下回っていた患者様でも、2回目、3回目の検査では正常な値を示すこともまったく珍しくありません。反対に、検査をした時は正常な値であったにも関わらず、人工授精や採卵の当日に精子の状態が悪かったというケースも非常に多いです。特に、基準値ギリギリの値と言う方は、定期的に検査を受けることが望ましいでしょう。

結果が思わしくない場合の次のステップ

一度目の検査結果で基準値を下回っていても、その時点ではまだ落ち込む必要はありませんが、複数回の検査でも基準値以下となった場合には具体的な治療や、より詳しい検査を検討していく必要があります。

また、生活習慣の見直しも必須です。喫煙や飲酒といった習慣がある場合には即座に禁止し、適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理などが精液所見の改善につながることがあります。

精子の数や運動率が低くても、生殖補助医療により妊娠が可能な場合も多くあります。専門医と相談しながら、最適な治療法を選択していくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

質問と回答

精液検査に関してよくいただく質問にお答えします。

Q1.精液検査をする前はどのくらい禁欲期間を置いたほうがいいですか?

A1.WHOが推奨している禁欲期間は2~7日ですが、2~4日のペースで普段から射出しておくことが理想です。禁欲期間が短すぎると精液量と精子濃度が低下し、長すぎると運動率低下や奇形率の増加を引き起こします。また、例えば精液検査をする3日に一度射出していたとしても、その前の禁欲期間が著しく長い場合では精液所見が悪くなる可能性があります。

Q2.パートナーと一緒に受診すべきですか?

A2.不妊症の原因は、男性側・女性側でおおよそ半々であるとされているため、ご夫婦(カップル)で一緒に受診した方がベターだと思います。

また、保険で不妊治療を受ける場合、ご夫婦が揃っていて双方が同意した上で治療計画を立てていかなければならないため、治療を進める上では必ず一緒に受診しなければならないタイミングがあります。

Q3.精液検査の結果はどのくらいで分かる?

A3.検体を提出してから検査結果が出るまでの時間は、施設やその時の状況によっても異なりますが、当日中には必ず結果が出ています。場合によっては30分~1時間程度で結果を聞けることもあります。

郵送検査の場合、検体到着から3~7営業日程度で結果が通知されることが一般的です。急ぎの場合は、事前に結果通知のタイミングを確認しておくことをお勧めします。

まとめ

今回のコラムでは、精液検査をどこで受けるか迷っている方に向けて、精液検査を受けられる5つの場所とそれぞれの特徴、そして胚培養士の視点から見た「クオリティの高い検査」を受けるためのポイントをお伝えしてきました。

それぞれに長所と短所があり、あなたの状況や優先事項によって最適な選択は変わってくるかと思いますが、やはりクオリティの高い検査や、その後の治療までを考慮されるのであれば不妊治療の専門クリニックで検査を受けられるのがベストではないかなと思います。

精液検査は、妊活の第一歩として、あるいは男性の健康状態を知るための指標として、とても価値のある検査です。

「もしも結果が悪かったらどうしよう‥‥」という不安もあるかもしれませんが、少しでも早い段階で自分の状態を知ることが出来れば、それだけ選択肢も広がります。

私自身、胚培養士としての長いキャリアの中で数多くの患者様を受け持ってきましたが、『もっと早く検査を受けておけばよかった』とおっしゃる患者様に山ほど出会ってきました。

あなたとパートナーの未来のために、まずは精液検査から始めてみませんか?このコラムがその一歩を踏み出すご夫婦の助けになれば幸いです。

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