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卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは?基本を理解しよう

卵巣嚢腫の定義と特徴

卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)とは、通常は親指大ほどの大きさである卵巣に液体が溜まった袋状の腫瘍ができる病気です。卵巣腫瘍全体の約80~90%を占めそのほとんどが良性腫瘍です。20~30代の若い女性に多く見られますが年齢を問わず発症する可能性があります。
「沈黙の臓器」とも呼ばれる卵巣にできる腫瘍のため初期段階では自覚症状がほとんどありません。妊娠時の検査や他の病気の検査で偶然発見されることも多く、定期的な婦人科検診が早期発見の鍵となります。腫瘍は小さいものから20~30cmの大きさまで成長することがあり、大きくなると様々な症状が現れます。

卵巣腫瘍の分類と卵巣嚢腫の位置づけ

嚢胞性腫瘍(卵巣嚢腫)内部に液体が溜まった袋状の腫瘍。触るとやわらかいのが特徴。
充実性腫瘍硬い塊状の腫瘍で良性・境界悪性・悪性(卵巣がん)に細かく分類される

卵巣腫瘍全体の約10%が悪性(卵巣がん)で、残りの約90%が良性腫瘍です。卵巣嚢腫は良性腫瘍の代表的なものですが、まれにがん化することもあるため定期的な経過観察が重要です。また、時間の経過とともに自然に消える「機能性卵巣嚢胞」と呼ばれるものもあり、ホルモン周期に関連して一時的に発生することがあります。

卵巣嚢腫の4つの種類と特徴

漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)

漿液性嚢胞腺腫は、卵巣から分泌されるサラサラとした透明な液体(漿液)が溜まってできる嚢腫です。10~30代の若い女性に多く見られ卵巣嚢腫の中で最も発症頻度が高いタイプの一つです。年齢を問わず発症する可能性があり両側の卵巣に発生することもあります。
ほとんどが良性ですが、まれに悪性化することがあるため定期的な経過観察が必要です。超音波検査では内部が均一な液体として映し出され比較的診断しやすい嚢腫です。小さいうちは無症状ですが大きくなると下腹部の違和感や圧迫症状が現れることがあります。

粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ)

粘液性嚢胞腺腫は、ネバネバとしたとろみのある粘液が卵巣内に溜まってできる嚢腫です。黄色や淡白色のゼラチン状の内容物が特徴で閉経後の女性に多く見られます。放置すると他の卵巣嚢腫よりも大きく成長する傾向があり、時には30cm以上の巨大腫瘍になることもあります。
多くは良性ですが、がん化する可能性もあるため注意が必要です。超音波検査やMRI検査で内部に隔壁(仕切り)が見られることがあり、多房性(複数の袋が連なった状態)を示すことが特徴的です。大きくなると腹部膨満感や腹痛、腰痛などの症状が現れやすくなります。

成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫・デルモイド)

成熟嚢胞性奇形腫は、皮様嚢腫やデルモイドとも呼ばれ内部に皮脂、毛髪、歯、骨、軟骨などの様々な組織成分を含む特殊な嚢腫です。生殖細胞が分裂する際に成熟途中の細胞が混入することで発生すると考えられています。10代から30代の若い女性に多く卵巣嚢腫の中でも比較的頻度の高いタイプです。
両側の卵巣に発生することがあり多くは良性ですが、40歳以降ではまれに悪性化することがあります。超音波検査やMRI検査で特徴的な所見が見られるため比較的診断しやすい嚢腫です。茎捻転(卵巣がねじれる)を起こしやすいという特徴があり突然の激しい腹痛で緊急手術が必要になることがあります。

チョコレート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)

チョコレート嚢胞は子宮内膜症が卵巣に発生してできる嚢腫で、正式には子宮内膜症性卵巣嚢胞といいます。月経のたびに卵巣内で出血が繰り返され、古い血液が溜まってチョコレート色に変色することからこの名前がつけられました。20~40代の生殖年齢の女性に多く見られます。
他の卵巣嚢腫と異なり小さくても月経困難症や慢性的な下腹部痛、性交痛、排便痛などの症状が現れることがあります。また、卵巣・子宮・直腸などと癒着しやすく不妊症の原因となることもあります。45歳以上で6cm以上の大きさになるとがん化のリスクが高まることが報告されており、慎重な経過観察や適切な治療が必要です。

初期は無症状?卵巣嚢腫の症状について

初期症状と発見のきっかけ

卵巣嚢腫は初期段階では自覚症状がほとんどないことから、「沈黙の病気」とも呼ばれています。そのため月経も順調であり、日常生活に支障をきたすことはほとんどないものの、妊娠時の超音波検査や子宮がん検診、あるいは他の病気での腹部検査などで偶然発見されることが一般的です。
しかし腫瘍が5~6cmを超えて大きくなってくると、下腹部の違和感や軽い痛み、さらにはスカートやパンツのウエストがきつくなるといった変化に気づくことがあります。 また下腹部を触った際に、やわらかいしこりのような膨らみを感じることもあります。これらの微妙な変化を見逃さないことが早期発見につながります。

腫瘍が大きくなった時の症状

卵巣嚢腫が10cm以上に大きくなると、様々な症状が現れてきます。最も多いのは腹部膨満感(お腹の張り)であり、実際に下腹部が膨らんで見えることもあります。また大きくなった腫瘍が周囲の臓器を圧迫することで、頻尿や便秘、さらには腰痛といった症状が現れるケースもあります。
腫瘍の重みにより下腹部の重だるさや引っ張られるような感覚を感じる方もいるほか、歩行時や運動時に下腹部の不快感、あるいは痛みを感じることもあります。 これらの症状は徐々に進行するため、慣れてしまって放置されることもありますが、症状が現れた時点で速やかに婦人科を受診することが重要です。

緊急受診が必要な危険な症状

卵巣嚢腫における最も危険な合併症としては、「茎捻転」ならびに「破裂」が挙げられます。
茎捻転(けいねんてん) 茎捻転とは、大きくなった卵巣嚢腫がお腹の中でねじれてしまう状態であり、突然の激しい下腹部痛をはじめ、吐き気や嘔吐、さらには冷や汗といったショック症状が現れます。 これを放置した場合には卵巣が壊死してしまう危険があるため、緊急手術が必要です。
破裂(はれつ) 一方で破裂とは、嚢腫の壁が破れて内容物が腹腔内に漏れ出す状態を指し、茎捻転と同様に突然の強い腹痛が起こります。 また腹膜炎を引き起こす可能性もあることから、こちらも緊急手術が必要となります。
早期発見と治療の重要性 これらの症状は腫瘍が5cm以上になった場合に起こりやすくなるため、定期的な検診で大きさを確認したうえで適切な時期に治療を受けることが大切です。

なぜ起こる?卵巣嚢腫の原因

卵巣嚢腫の発生メカニズム

卵巣嚢腫の明確な原因は現在のところ完全には解明されていません。卵巣は毎月の排卵や女性ホルモンの分泌を行って活発に働く臓器であるため、その過程で様々な変化が起こりやすい環境にあります。この頻繁な細胞分裂や組織の変化が嚢腫形成の一因となっていると考えられています。
チョコレート嚢胞に関しては子宮内膜症が原因であることが明らかになっています。本来子宮内にあるべき子宮内膜組織が卵巣に迷入して月経のたびに出血を繰り返すことで嚢胞を形成します。その他の卵巣嚢腫についてはホルモンバランスの変化や遺伝的要因、環境要因などが複合的に関与していると推測されているものの、詳細なメカニズムは研究が続けられています。

【H3】リスク要因と好発年齢

卵巣嚢腫は年齢によって発生しやすいタイプが異なります。漿液性嚢胞腺腫や成熟嚢胞性奇形腫は10~30代の若い女性に多い一方で、粘液性嚢胞腺腫は閉経後の女性に多い傾向があります。チョコレート嚢胞は20~40代の生殖年齢の女性に好発して月経がある期間に限定されます。
遺伝的要因も一部関与していることが知られているため、家族歴がある場合は注意が必要です。また排卵誘発剤の使用やホルモン補充療法、肥満や未産婦などがリスク要因として挙げられることがあるものの、これらは必ずしも直接的な原因ではなく発症リスクをわずかに高める可能性がある要因として考えられています。

卵巣嚢腫の検査・診断方法

子宮の検査

基本的な検査(問診・内診・超音波検査)

卵巣嚢腫の診断はまず詳細な問診から始まります。月経周期や症状の有無、家族歴などを確認したうえで内診(触診)を行います。内診では膣から指を挿入して卵巣の大きさや硬さ、可動性などを確認するとともに、経膣超音波検査を行うことが一般的です。
経膣超音波検査は膣内に細い超音波プローブを挿入することで卵巣を詳しく観察する検査です。嚢腫の大きさや内部の性状(液体か固体か)に加え、隔壁の有無や血流の状態などを確認できます。この検査は痛みもほとんどないうえに外来で簡単に行えることから、卵巣嚢腫の診断において最も基本的で重要な検査となっています。小さな嚢腫も発見できるほか、種類の推定も可能です。

精密検査(MRI・CT・腫瘍マーカー)

超音波検査で卵巣嚢腫が疑われた場合、より詳しい情報を得るためにMRI検査を行います。MRIは磁気を使って体内を画像化する検査で嚢腫の種類や性質をより正確に診断できます。特にチョコレート嚢胞や成熟嚢胞性奇形腫はMRIで特徴的な所見を示すため確定診断に有用です。

腫瘍が大きい場合や悪性の可能性がある場合はCT検査も併用されます。CTは上腹部まで広範囲を確認でき、リンパ節の腫大や他臓器への転移の有無を評価できます。また、血液検査で腫瘍マーカー(CA125、CA19-9、HE4など)を測定することもあります。これらのマーカーは悪性腫瘍で上昇することがありますが良性でも軽度上昇することがあるため総合的な判断が必要です。

確定診断と良性・悪性の判断

卵巣嚢腫の最終的な確定診断は、手術で摘出した組織を顕微鏡で調べる病理組織検査によって行われます。画像検査や腫瘍マーカーである程度の推定はできますが、100%の確実な診断は病理検査でのみ可能です。そのため、悪性の可能性が否定できない場合は診断と治療を兼ねて手術が選択されることがあります。

良性と悪性を見分けるポイントとして画像検査では充実性部分(固い塊)の有無、隔壁の不規則な肥厚、腫瘍内の血流増加などが重要な所見となります。また、両側性、腹水の存在、急速な増大なども悪性を疑う所見です。これらの情報を総合的に評価し患者さまの年齢や症状も考慮して最適な治療方針を決定していきます。

卵巣嚢腫の治療法と選択基準

経過観察が選択される場合

卵巣嚢腫が3~4cm以下で無症状の場合は多くが経過観察となります。特に若い女性では機能性卵巣嚢胞の可能性もあることから、2~3か月後に再検査を行って自然消失するかどうかを確認します。良性と考えられる小さな嚢腫については、3~6か月ごとの定期検査で大きさや性状の変化を観察しつつ手術の必要性を判断していきます。
経過観察中は超音波検査で嚢腫のサイズを測定して増大傾向や内部の性状に変化がないかを確認するほか、症状の出現にも注意を払います。経過観察は手術による卵巣機能への影響を避けることができるメリットがある一方で、定期的な通院が必要となるため患者さまの理解と協力が不可欠です。

手術適応となる基準

卵巣嚢腫が5~6cmを超える場合は将来的な茎捻転や破裂のリスクが高まることから、手術が検討されます。また画像検査で悪性の可能性が否定できない場合や症状がある場合、妊娠を希望している場合なども手術適応となります。チョコレート嚢胞で不妊症を合併しているケースでは、手術によって妊娠率の向上が期待できることもあります。
手術のタイミングは患者さまの年齢や妊娠希望の有無、嚢腫の種類や大きさなどを総合的に考慮して決定されます。緊急性がない場合には患者さんのライフプランに合わせて手術時期を調整することも可能ですが、悪性の可能性がある場合や急速に増大している場合には早期の手術が推奨されます。

薬物療法の適応と限界

チョコレート嚢胞に対してはホルモン療法が有効な場合があり、低用量ピルやGnRHアゴニスト(偽閉経療法)などを用いて月経を止めることで嚢胞の縮小や症状の改善が期待できます。また手術後の再発予防としても、これらのホルモン療法が用いられることがあります。
しかし漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫、成熟嚢胞性奇形腫などの他の卵巣嚢腫には有効な薬物療法がなく、薬では小さくならないことから大きさや症状に応じて経過観察か手術かを選択することになります。薬物療法には副作用もあるため適応は慎重に判断し、定期的な効果判定と副作用のモニタリングを行う必要があります。

腹腔鏡手術による治療の特徴とメリット

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡手術はお腹に0.5~1.5cm程度の小さな穴を3~4か所開け、細いカメラ(腹腔鏡)や手術器具を挿入して行う低侵襲手術です。カメラの映像をモニターで見ながら精密な操作によって卵巣嚢腫を摘出します。炭酸ガスでお腹を膨らませて手術操作のスペースを確保するほか、高画質なカメラで患部を拡大して観察できることから繊細な手術が可能となります。
現在では卵巣嚢腫の手術の多くが腹腔鏡手術で行われており、技術の進歩に伴って以前は開腹手術が必要だった大きな嚢腫でも腹腔鏡手術で対応できるようになってきました。手術時間は通常1~2時間程度であり全身麻酔下で行われますが、術後の回復が早いために多くの場合で手術翌日から歩行が可能となります。

腹腔鏡手術のメリット・デメリット

腹腔鏡手術の最大のメリットは傷が小さく目立たないことであり、美容的な観点から特に若い女性に好まれる術式です。また術後の痛みが少なく回復が早いために入院期間は通常2~4日程度と短期間で済むほか、社会復帰も早く通常は術後1~2週間で日常生活に戻ることができます。
さらに開腹手術と比較して術後の癒着(臓器同士がくっつくこと)が起こりにくいという利点もあり、これは将来の妊娠を希望する女性にとって重要なメリットといえます。一方デメリットとしては、巨大な腫瘍や癒着が強い場合には適応とならないことや術中に開腹手術への移行が必要になる場合があるほか、高度な技術を要するために施設や術者が限られることなどが挙げられます。

妊娠への影響と妊娠中の対応

卵巣嚢腫が妊娠に与える影響

卵巣嚢腫があっても多くの場合は自然妊娠が可能であり、片側の卵巣に嚢腫があってももう片方の卵巣が正常に機能していれば排卵や女性ホルモンの分泌に大きな影響はありません。ただしチョコレート嚢胞の場合は卵巣機能の低下や卵管との癒着によって不妊症の原因となることがあります。
両側に大きな卵巣嚢腫がある場合や嚢腫により卵巣機能が著しく低下している場合には妊娠しにくくなる可能性があります。また手術が必要な大きさの嚢腫を放置すると将来的に卵巣を失うリスクもあることから、妊娠を希望する場合は早めの治療が推奨されますが、手術により嚢腫のみを摘出して正常な卵巣組織を温存することで妊娠の可能性を保つことができます。

妊娠中に発見された場合の管理

妊娠中の超音波検査で卵巣嚢腫が発見されることは珍しくなく、妊娠初期に発見される嚢腫の多くは妊娠に伴うホルモン変化による機能性嚢胞(黄体嚢胞など)であるため、妊娠16週頃までに自然消失することが多いです。そのためまずは経過観察を行いつつ、妊娠中期以降も残存する場合に治療を検討します。
6cm以上の嚢腫が妊娠中期以降も残存する場合には分娩時の障害となったり茎捻転や破裂のリスクがあることから、手術が検討されることがあります。妊娠中の手術は胎児への影響を最小限にするために妊娠16~20週頃に腹腔鏡手術で行うことが理想的であり、経験豊富な施設であれば母子ともに安全に手術を行うことが可能でその後の妊娠継続や出産にも影響はありません。

不妊治療との関係

チョコレート嚢胞は不妊症の原因となることがあるうえ、不妊治療を受ける女性の約30~40%に認められるといわれています。嚢胞による卵巣機能の低下や卵管采の癒着による卵子のピックアップ障害、腹腔内の炎症による受精・着床障害などが不妊の原因となりますが、手術により嚢胞を摘出して癒着を剥離することで自然妊娠率の向上が期待できます。
不妊治療中に卵巣嚢腫が発見された場合には嚢腫の種類や大きさ、不妊の原因などを総合的に評価したうえで手術を先行するか不妊治療を優先するかを決定します。体外受精を行う際に大きな嚢腫があると採卵が困難になることがあるため事前の手術が推奨されることもありますが、手術後は卵巣機能の回復を待ってから不妊治療を再開することが一般的です。

卵巣がんとの関係性について

卵巣嚢腫のがん化リスク

卵巣嚢腫の多くは良性であるものの一部にがん化のリスクがあることが知られており、特にチョコレート嚢胞については45歳以上かつ6cm以上の大きさになると年率0.7~1.0%程度でがん化することが報告されています。また粘液性嚢胞腺腫や漿液性嚢胞腺腫もまれに悪性転化することがあるほか、成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)でも40歳以降で1~2%程度の悪性転化率があるとされています。
これらのがん化は徐々に進行するため定期的な検査による早期発見が可能ですが、画像検査で充実性部分の出現や隔壁の肥厚、血流の増加などの変化が見られた場合には悪性転化を疑って速やかに精密検査や手術を検討する必要があります。

【H3】境界悪性腫瘍について

境界悪性腫瘍は良性と悪性の中間的な性質を持つ腫瘍であり、卵巣腫瘍の約10~15%を占めています。組織学的には悪性の特徴を示しつつも浸潤や転移をきたしにくいため予後は良好です。若年女性に多いことから、妊孕性温存(妊娠能力を保つこと)を考慮した治療が可能な場合があります。
境界悪性腫瘍の診断は術前の画像検査では困難なことが多く、手術で摘出した組織の病理検査によって確定診断されます。治療は手術が基本であり、若年者では嚢腫摘出術や片側付属器切除術などの温存手術が選択されることもあるほか、術後の再発率は約10~30%とされているものの再発した場合でも再手術により良好な予後が期待できます。

悪性との鑑別ポイント

卵巣嚢腫が悪性かどうかを見分けるポイントとしてはいくつかの特徴が挙げられます。画像検査では充実性部分(固い塊)を伴う嚢胞性腫瘍や不規則で厚い隔壁、腫瘍内の豊富な血流、両側性の腫瘍、腹水の存在などが悪性を疑う所見であり、短期間での急速な増大も悪性の可能性を示唆します。
血液検査では腫瘍マーカー(CA125、CA19-9、CEA、AFP、HE4など)の著明な上昇が見られることがあるものの、これらのマーカーは良性でも軽度上昇することがあるため単独では診断できません。年齢も重要な要因であり閉経後の女性では悪性の可能性が高くなることから、これらの所見を総合的に評価したうえで悪性の可能性が否定できない場合には診断的治療として手術が選択されます。

定期検診の重要性と予防について

早期発見のための定期検診

卵巣嚢腫は初期には無症状であることが多いことから、定期的な婦人科検診が早期発見の鍵となります。年に1回の子宮がん検診の際に経膣超音波検査を追加して卵巣の状態も同時に確認することが可能です。特に20歳以降の女性は症状がなくても年1回の婦人科検診を受けることが推奨されています。
検診では超音波検査により卵巣の大きさや内部の状態を確認して小さな嚢腫も発見することができます。早期に発見できれば経過観察で済む場合も多いほか、仮に手術が必要になっても腹腔鏡手術などの低侵襲な治療が選択可能です。また悪性腫瘍の早期発見にもつながるため、予後の改善が期待できます。

リスクが高い人の管理方法

家族歴がある方や子宮内膜症の既往がある方、不妊症の方などは卵巣嚢腫のリスクが高いとされているため、通常よりも頻回な検診(6か月ごと)が推奨されることがあります。特に遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の家系の方については、遺伝カウンセリングを受けることも考慮されます。
チョコレート嚢胞がある方はがん化のリスクを考慮し、40歳以降は3~6か月ごとの経過観察が必要です。画像検査に加えて腫瘍マーカーの定期的な測定も行うほか、低用量ピルの服用によって子宮内膜症の進行抑制やがん化リスクの低減が期待できる場合もあることから、個々の状況に応じた管理方法が選択されます。

日常生活での注意点

卵巣嚢腫の明確な予防法は確立されていませんが、健康的な生活習慣を心がけることは重要です。適度な運動やバランスの良い食事、適正体重の維持、ストレスの管理などは全身の健康維持に役立ちます。また喫煙は卵巣機能に悪影響を与える可能性があることから禁煙が推奨されます。
卵巣嚢腫と診断された場合であっても通常の日常生活に制限はありませんが、大きな嚢腫がある場合には激しい運動や重い物を持つなどの腹圧がかかる動作は避けることが望ましいです。また下腹部の痛みや違和感などの症状が現れた場合は早めに受診することが大切であり、定期検診を忘れずに受けて医師の指示に従いつつ適切な管理を続けることが健康維持につながります。

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