子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)とは?
子宮にできる良性の「こぶ」|がんと子宮肉腫の違い
子宮筋腫とは子宮の壁にある「平滑筋(へいかつきん)」という筋肉組織から発生する良性の腫瘍(しゅよう)であり、分かりやすく言えば子宮の筋肉にできる“こぶ”のようなものです。
最も重要なことは子宮筋腫は「良性」であるためそれ自体が命を脅かすものではなく、がん(悪性腫瘍)のように他の臓器に転移して増殖していくことはありません。
ただし多くの女性が心配される「がんとの違い」については正確な理解が必要となります。子宮筋腫が「がん(子宮体がんや子宮頸がん)」に“変身”することはないものの、ごく稀(約0.5%程度)に子宮筋腫と見た目が非常によく似た「子宮肉腫(しきゅうにくしゅ)」という悪性の腫瘍が存在します。両者は画像検査だけでは区別が難しい場合もあることから、医師は常にこの子宮肉腫の可能性を念頭に置きながら診断を進めます。この点が後述する詳しい検査(MRI)や定期的な経過観察が重要となる理由の一つです。
発生頻度と発症しやすい年齢
子宮筋腫は婦人科系の腫瘍の中で最も頻度が高いものです。決して珍しい病気ではありません。
| 成人女性 | 4人に1人 |
| 30歳以上の女性 | 20%~30%(約3~5人に1人) |
特に発症・発見されやすいのは30代から40代のいわゆる性成熟期(妊娠・出産が可能な年齢)の女性です 。ごく小さなものまで含めると実際にはさらに多くの女性が筋腫を持っていると考えられています。多くの女性が経験する病気であるためもし診断されても悩みすぎる必要はありません。
なぜできる?女性ホルモン(エストロゲン)との関係
子宮筋腫が発生する明確な原因は残念ながらまだ完全には解明されていないものの、筋腫が「発育する(大きくなる)」メカニズムについては女性ホルモンの一つである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が深く関与していることが分かっています。
この「エストロゲン依存性」こそが子宮筋腫のライフサイクルを決定づける最大の要因となっており、エストロゲンの分泌が活発な性成熟期(30代~40代)に筋腫は大きくなりやすい一方で、逆にエストロゲンの分泌が停止する「閉経」を迎えると筋腫はそれ以上大きくなることなく自然と縮小していく傾向にあります。
この性質を理解することが治療法を考える上で非常に重要となります。例えば薬で一時的に閉経状態を作って筋腫を小さくする治療法(偽閉経療法)や閉経が近い年齢であれば手術をせずに閉経まで待つ「逃げ込み療法」という選択肢が存在するのは、すべてこのホルモン依存性に基づいているためです。
子宮筋腫の3つの種類|症状は「できた場所」で決まる
子宮筋腫の症状は、筋腫の「大きさ」以上に「できた場所」によって大きく左右されます。このため、子宮筋腫は発生した場所(子宮壁のどの層にできたか)によって大きく3つのタイプに分類されます 。なぜ人によって症状が全く違うのか(無症状の人から重度の貧血になる人まで)を理解するために、この分類は非常に重要です。
粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ)|小さくても症状が強い
「粘膜下筋腫」は子宮の最も内側、つまり妊娠時に受精卵が着床する「子宮内腔」に向かって飛び出すようにできるタイプです。
このタイプはたとえサイズが小さくても症状が強く出やすいという最大の特徴があり、子宮の内側(粘膜面)を直接刺激して変形させることから、月経量が一気に増える「過多月経」や不正出血の主な原因となります。
さらに受精卵が着床するベッド(子宮内膜)そのものに“こぶ”ができている状態であるため、着床を物理的に妨げて不妊症や流産の原因として最も関係が深いタイプでもあります。
筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)|最も多いタイプ
「筋層内筋腫」はその名の通り子宮の筋肉の「中」にできるタイプであり、すべての子宮筋腫の中で最も多く見られます。
症状の出方は筋腫の大きさや内側に近いか外側に近いかによって様々です。小さなうちは無症状のことも多いものの、筋腫が筋肉の中で大きくなるにつれて子宮全体が引き伸ばされて子宮内膜の面積も広がります。その結果、月経量が多くなったり(過多月経)子宮が収縮する際の痛み(月経痛)が強くなったりします。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)|大きくなるまで無症状も
「漿膜下筋腫」は子宮の「外側」に向かって発育していくタイプであり、子宮を覆う漿膜(しょうまく)という薄い膜の下にできます。
このタイプは子宮の内腔には直接影響を与えないために過多月経などの月経トラブルは起こりにくいのが特徴です。そのため筋腫がかなり大きくなるまで症状が全く出ない(無症状)ことも少なくありません。
症状が出るとすれば筋腫がこぶし大やそれ以上に大きくなって子宮の周囲にある他の臓器を「圧迫」することによるものであり、例えば前にある膀胱を圧迫すれば頻尿に、後ろにある腸を圧迫すれば便秘になります。また稀に筋腫の根元(茎)がねじれて激痛を起こすこと(茎捻転)があります。
| 粘膜下筋腫 | 妊娠時に受精卵が着床する「子宮内腔」に向かって飛び出すようにできるタイプ |
| 筋層内筋腫 | 子宮の筋肉の「中」にできるタイプ |
| 漿膜下筋腫 | 子宮の「外側」に向かって発育していくタイプ |
子宮筋腫の主な症状(セルフチェックリスト)
子宮筋腫の症状は前述した筋腫の「種類(できた場所)」や大きさ、数によって千差万別です。ご自身の体調不良が子宮筋腫と関係あるかセルフチェックしてみましょう。
最も多い症状「過多月経」と「月経痛」
子宮筋腫の最も代表的な症状は月経(生理)に関するトラブルです。特に「月経量が多くなる(過多月経)」と「月経痛がひどくなる(月経困難症)」が挙げられます 。
「過多月経」と言われてもピンとこないかもしれませんが、以下のような目安があります。
- 昼間でも、夜用のナプキンを使わないと不安
- ナプキンが1時間ももたないことがある
- 生理の時に、レバーのような大きな血の塊(凝血塊)が出る
- 月経(出血)が8日以上だらだらと続く(過長月経 )
これらは、特に「粘膜下筋腫」や、大きく成長した「筋層内筋腫」でよく見られるサインです。月経痛も、以前より鎮痛剤が効きにくくなったり痛む期間が長くなったりといった変化が見られることがあります。
貧血による症状(めまい・立ちくらみ・動悸)
過多月経が長期間続くと体は慢性的な鉄不足に陥り、「鉄欠乏性貧血」を引き起こします 。ご本人は月経量の多さに慣れてしまっていても体は悲鳴を上げているケースが少なくありません。
貧血が進行すると以下のような婦人科系以外の症状が前面に出てくることがあります。
- 階段を上ると息切れがする
- ちょっとしたことで動悸がする
- 朝、なかなか起き上がれない(倦怠感)
- 立ちくらみや、めまいが頻繁に起こる
- 顔色が悪く、爪が白っぽくなったり、スプーン状に反ったりする
「最近疲れやすいのは年のせい」などと思っていた不調が、実は子宮筋腫による過多月経とそれに伴う貧血が原因だったというケースは非常に多いのです 。
圧迫による症状(頻尿・便秘・腰痛)
筋腫が(特に「漿膜下筋腫」などで)大きく成長すると、子宮の周囲にある臓器を物理的に圧迫し始めます。これにより月経とは関係のない時期にも症状が現れます。
| 頻尿・排尿困難 | 子宮の前方にある膀胱が圧迫されると、尿を溜められる量が減りトイレが近くなります(頻尿)。さらに圧迫が強くなると尿が出にくくなることもあります。 |
| 便秘 | 子宮の後方にある直腸が圧迫されると便の通りが悪くなり便秘になることがあります 。 |
| 腰痛 | 筋腫が骨盤内の神経を圧迫することで、腰痛の原因となる場合もあります 。 |
症状がほとんどない(無症状)場合も
上記のような症状が全くなくご自身では子宮筋腫があることに全く気づいていないケースも多くあります 。
特に子宮の外側にできる「漿膜下筋腫」 や、まだ小さな「筋層内筋腫」 の場合は症状が出にくいため、会社の健康診断や、妊娠時の妊婦健診、あるいは別の理由で婦人科を受診した際に超音波検査などで偶然発見されることも少なくありません。症状がないからといって異常がないとは限らないのです。
子宮筋腫が心配な時の検査・診断方法

「もしかして子宮筋腫かも?」と不安になった時、婦人科ではどのような検査が行われるのでしょうか。受診のハードルを下げるためにも実際の検査の流れを知っておきましょう。
婦人科で最初に行う検査(内診・超音波検査)
婦人科を受診するとまずは問診(月経の状態、自覚症状、妊娠希望の有無など)をします。その後、基本的な検査として「内診」と「超音波(エコー)検査」を行います。
| 内診 | 医師が腟内に指を入れ、もう一方の手でお腹を押さえながら子宮の大きさ、硬さ、可動性(動きやすさ)、痛みの有無などを直接触って確認します。子宮が全体的に大きい場合は内診である程度の大きさの筋腫を推測できます。 |
| 超音波(エコー)検査 | 腟内にプローブと呼ばれる細い器具を挿入する「経腟超音波検査」を行います。子宮や卵巣の状態をモニターに映し出し、筋腫の有無、位置、大きさ、数などを画像で客観的に確認します 。痛みはほとんどなく子宮筋腫の診断において最も基本的で重要な検査となります。 |
より詳しく調べるためのMRI検査
超音波検査で子宮筋腫が確認されたり、その疑いが強かったりした場合にはさらに詳しい情報を得るために「MRI検査」が追加されることがあります 。
超音波検査で十分なのになぜ高額なMRI検査が必要なのかと疑問に思われるかもしれません。その理由は、主に2つあります。
| 治療方針(特に手術)の決定のため | MRIは超音波よりも鮮明な「断面図」を撮影できます。筋腫の正確な位置、数、大きさ、そして子宮内膜(着床する場所)との距離感を立体的に把握できます。これは、特に子宮を残す「筋腫核出術」を行う場合の手術の難易度を判断し、安全な計画を立てるために不可欠な情報となります。 |
| 悪性腫瘍との鑑別のため | 冒頭で触れたごく稀な悪性腫瘍「子宮肉腫」でないことをより詳細に調べるためです。 |
鑑別が重要な「子宮肉腫(悪性)」との違い
子宮筋腫(良性)と子宮肉腫(悪性)は残念ながら超音波検査やMRI検査の画像所見だけでは100%確実に見分けることが難しい場合があります 。
そこで画像所見に加えていくつかの「危険因子(レッドフラグ)」を総合的に見て判断します。
| 年齢 | 閉経が近い、あるいは閉経後の年齢か |
| 増大スピード | 短期間(例:半年)で急激に筋腫が大きくなっていないか |
| 閉経後の増大 | エストロゲンがなくなる閉経後に小さくなるはずの筋腫が逆に大きくなっていないか |
特に閉経後に筋腫が大きくなる場合は子宮肉腫を強く疑うサインとなります 。良性か悪性かの最終的な確定診断は手術で摘出した組織を顕微鏡で調べる「病理検査」でしか行えません。だからこそ症状がなくても定期的に検診を受け「大きさや状態が変化していないか」をチェックするための「経過観察」が重要になるのです 。
子宮筋腫の治療法|手術は必要?
子宮筋腫と診断されたからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。治療法には経過観察から薬物療法、手術まで様々な選択肢があります。
治療の選択肢は「症状」「年齢」「妊娠希望」で決まる
どの治療法が最適かは全員一律ではありません。あなたにとってのベストな治療法は主に以下の3つの要素の組み合わせによって決まります 。
| 症状の強さ | 過多月経・重い月経痛・重度の貧血・圧迫症状などがあり日常生活に支障が出ているか? |
| 年齢(閉経までの期間) | 閉経(平均50歳前後)まであと何年くらいか? |
| 妊娠の希望 | これから妊娠や出産を希望しているか? |
例えば、症状が重く妊娠も希望している30代の女性と、症状は軽いが閉経が近い50代の女性とでは推奨される治療法は全く異なります。この3つの軸を医師と共有し相談しながら治療方針を決めていくことになります。
治療法1:経過観察(定期検診)
筋腫が見つかってもサイズが小さく症状が全くない(無症状)場合や、症状がごく軽く日常生活に支障がなく筋腫の位置が妊娠の妨げになっていない場合には、積極的な治療は行わずに「経過観察(けいかかんさつ)」となることが最も多いです。
これは「何もしない(放置)」ということではありません。「定期的に(3ヶ月~1年に1回程度)婦人科を受診して超音波検査などで筋腫が急激に大きくなっていないかや症状に変化はないか、悪性の所見(子宮肉腫)が出てきていないかを確認する」という積極的な“監視”です。特に症状がなくても医師から指示された間隔で検診を受け続けることが大切です。
治療法2:薬物療法(ホルモン治療)
薬物療法は主に「症状の緩和」や「一時的に筋腫を小さくすること」を目的として行われます。ここで重要なのは、現在のところ薬で子宮筋腫を根本的に消し去る治療法はないということです。あくまで対症療法や一時的な治療として位置づけられます。
症状を和らげる対症療法(鎮痛剤・鉄剤・ピルなど)
これは、筋腫そのものではなく筋腫によって引き起こされる「症状」を抑える治療です。
| 鎮痛剤 | 月経痛が主な悩みの場合は鎮痛剤で痛みをコントロールします。 |
| 鉄剤 | 過多月経によって貧血になっている場合は、鉄剤を内服し貧血を改善します。 |
| 低用量ピル(OC/LEP) | 月経量を減らしたり、月経痛を軽くしたりする目的で低用量ピル(経口避妊薬)やLEP(月経困難症治療薬)が用いられることがあります 。ただし、ピル服用中も筋腫が大きくなる可能性はあるため定期的なチェックが必要です。 |
| ホルモン放出子宮内器具(IUS/ミレーナ) | 子宮内に小さな器具を挿入し、そこから放出されるホルモンの働きで子宮内膜を薄くし月経量を劇的に減らす治療法です。 |
筋腫を小さくする偽閉経療法(GnRHアゴニスト)
これは子宮筋腫がエストロゲンで大きくなる性質を利用したより積極的なホルモン治療です。
注射や点鼻薬、内服薬(GnRHアゴニストやアンタゴニスト)を使って脳から卵巣への指令をブロックすることでエストロゲンの分泌を強力に止め、体を一時的に「閉経状態(偽閉経)」にするのです。これによってエストロゲンという“栄養”が断たれるため、筋腫は小さくなって月経も止まります。
しかしこの治療には大きな制約があり、エストロゲンを止めることから「ほてり」や「のぼせ」、「発汗」といった更年期障害様の症状が副作用として出やすいのです。また長期間続けると骨密度が低下(骨粗しょう症)するリスクがあることから、保険診療で連続使用できるのは原則6ヶ月以内と定められています。
そして治療をやめればエストロゲンは再び分泌されて筋腫も元の大きさに戻ってしまうことがほとんどであるため、この治療は「一時的な治療」として以下の目的で使われます。
| 手術への橋渡し | 手術前に筋腫を小さくして手術をしやすくしたり、月経を止めて貧血を改善したりする目的 。 |
| 閉経への橋渡し | あと数年で閉経を迎えそうな方が手術を回避するために、一時的に症状を抑えて閉経まで「逃げ込む」目的(逃げ込み療法)。 |
治療法3:手術療法
薬物療法では症状のコントロールが難しい場合、筋腫が非常に大きい場合、不妊の原因となっている場合、あるいは悪性(子宮肉腫)が疑われる場合には筋腫を取り除く「手術療法」が検討されます 。
手術療法には大きく分けて「子宮を残すかどうか」で2つの方法があります。これは、前段でふれた「妊娠希望の有無」によって選択がほぼ決まります 。
子宮を残す「筋腫核出術」
「筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ)」は、子宮本体は残し筋腫の“こぶ”だけをくり抜いて取り除く手術です 。
| 対象 | これから妊娠・出産を希望する方、または妊娠希望はなくても子宮を残したいという強い希望がある方が対象となります。 |
| メリット | 子宮を温存できるため、手術後に妊娠・出産する可能性を残すことができます。 |
| デメリット | 子宮筋腫は多発しやすい性質があるため、手術時に取り残した小さな筋腫や新たに発生した筋腫が数年後に再び大きくなる「再発」の可能性があります。また、子宮の筋肉を切開・縫合するため子宮全摘術に比べて手術中の出血量が多くなる傾向があります。術後の妊娠・出産は子宮破裂のリスクを避けるため「帝王切開」が推奨されることが多くなります。 |
根治を目指す「子宮全摘術」
「子宮全摘術(しきゅうぜんてきしゅつじゅつ)」は筋腫ができた子宮そのものを摘出する手術です 。
| 対象 | 今後、妊娠の希望がない方で症状が重い方、筋腫が多発している方、再発を繰り返している方、悪性が疑われる方などが対象となります。 |
| メリット | 子宮ごと取り除くため筋腫が「根治(こんち)」し、将来的な再発の心配が完全になくなります。また、毎月の月経(過多月経や月経痛)からも解放され 子宮頸がんや子宮体がんの心配もなくなります。 |
| デメリット | 子宮を失うため手術後に妊娠することはできなくなります。 |
ここで多くの方が誤解されがちな点ですが、通常、子宮全摘術を行ってもホルモンを分泌する「卵巣」は残します。そのため手術によってホルモンバランスが崩れたり、手術直後から更年期障害が始まったりするわけではありません。
体への負担が少ない手術方法(腹腔鏡・子宮鏡)
「何を取るか(核出術か全摘術か)」とは別に「どうやって取るか(手術のアプローチ)」にもいくつかの選択肢があり、これにより体への負担(侵襲)が異なります。
| 開腹手術 | 従来から行われている方法でお腹を縦または横に大きく切開して手術します。筋腫が非常に大きい場合や癒着がひどい場合などに選択されます。 |
| 腹腔鏡(ふくくうきょう)手術 | お腹に3~4ヶ所の小さな穴(5mm~12mm程度)を開け、そこからカメラや細い手術器具を挿入して行う手術です。傷が小さく術後の痛みが少なく回復が早いのが最大のメリットです。近年多くの施設で主流となっています。 |
| 子宮鏡(しきゅうきょう)手術 | 腟から子宮の入り口(子宮頸管)を通して細いカメラ(子宮鏡)を子宮内に挿入し、子宮の内側に飛び出た「粘膜下筋腫」を電気メスなどで削り取る手術です。お腹に一切傷がつかず、最も体への負担が少ない手術法ですが適応となるのは粘膜下筋腫の一部のみです。 |
どの術式が選択できるかは筋腫の「場所」「大きさ」「数」によって決まります 。
子宮筋腫の治療法別メリット・デメリット比較
複雑な治療法の選択肢を理解するために、それぞれの特徴を一覧表にまとめます。ご自身が「症状」「年齢」「妊娠希望」のどれを優先するかを考えながらご覧ください。
| 治療法 | 主な目的 | メリット | デメリット・注意点 |
| 経過観察 | 現状維持 | 体への負担がない。 | 症状悪化や筋腫増大の可能性。定期検診が必須。 |
| 薬物療法(対症) | 症状緩和 | QOL(生活の質)の改善。手術回避の可能性。 | 根本治療ではない。ピルの血栓症リスクなど 。 |
| 薬物療法(偽閉経) | 一時的縮小・止血 | 筋腫が小さくなる。手術前の貧血改善。 | 根本治療ではない。副作用(更年期症状)。6ヶ月の期間制限。 |
| 筋腫核出術 | 筋腫のみ除去(子宮温存) | 妊娠の可能性を残せる 。 | 再発の可能性あり。手術の出血リスク。 |
| 子宮全摘術 | 根治(子宮除去) | 再発の心配がない。月経がなくなる。 | 妊娠不可。喪失感の可能性。 |
| UAEなど | 筋腫の壊死・縮小 | 体への負担が少ない(傷が小さい)。 | 妊娠希望者には非推奨 。実施施設が限定的。 |
子宮筋腫と妊娠・不妊への影響
婦人科の受診を検討される方、特にこれから妊娠を考えている方にとって、子宮筋腫が妊娠や不妊にどう影響するかは最大の関心事の一つです。
子宮筋腫が不妊の原因になるケースとは?
子宮筋腫があるからといって、必ずしも不妊になるわけではありません。しかし、筋腫が不妊の原因となっているケースは確かに存在します 。
不妊の原因となり得るのは筋腫が「機械的(物理的)に」妊娠のプロセスを妨害してしまう場合です。
| 着床障害 | 「粘膜下筋腫」や子宮内腔を圧迫・変形させるほど大きな「筋層内筋腫」 があると、受精卵が子宮内膜に着床することを物理的に妨げてしまいます。 |
| 卵管の圧迫・閉塞 | 筋腫が卵管の入り口や通り道を圧迫すると、精子や卵子が通過できなくなり受精の妨げになることがあります。 |
逆に言えば、子宮の外側にできる「漿膜下筋腫」など、子宮内腔や卵管に影響を与えないタイプの筋腫は、それ自体が不妊の直接の原因になる可能性は低いと考えられています。不妊治療に際して筋腫の手術(核出術)を先に行うべきかどうかは、まさにこの「筋腫の場所と大きさ」によって判断されます 。
妊娠中・出産時に注意すべきリスク
子宮筋腫を持ったまま妊娠した場合、多くの場合は無事に出産に至りますが、筋腫がない場合に比べていくつかのリスクが伴う可能性があります 。
| 流産・早産 | 筋腫が子宮の収縮を引き起こしたり胎盤の形成に影響したりすることで、流産や早産のリスクがやや高まる可能性が指摘されています。 |
| 胎位異常 | 子宮内が筋腫で変形していると赤ちゃんがうまく動けず、逆子(骨盤位)などになりやすくなることがあります。 |
| 分娩時の影響 | 筋腫が産道を塞いで赤ちゃんの下降を妨げたり、分娩時に子宮がうまく収縮できずに弛緩出血(分娩後の大量出血)の原因となったりすることがあります。 |
| 常位胎盤早期剥離 | 胎盤が筋腫の近くに付着した場合などに、出産前に胎盤が剥がれてしまうリスクが上がるとも言われています。 |
これらのリスクがあるため筋腫を持ったまま妊娠した場合は、通常よりも慎重な周産期管理(妊婦健診)が必要となります。
子宮筋腫に関してよくある質問

Q1. 子宮筋腫はがんに変わりますか?
A1. いいえ、変わりません。
子宮筋腫は「良性」の腫瘍であり、この良性腫瘍が時間経過とともに悪性腫瘍(がん)に「変身」することはないと考えられています。
ただし、繰り返しになりますが最初から悪性である「子宮肉腫」が、良性の子宮筋腫と区別がつきにくいことがあります 。医師が「経過観察」を勧めるのは、この子宮肉腫の可能性を常に監視するためでもあります。
Q.2 子宮筋腫は自分で治せますか?(食事・運動など)
A2. 現状、医学的根拠(エビデンス)はありません。
残念ながら特定の食事療法、運動、健康食品、サプリメントなどで子宮筋腫を小さくしたり、治したりするという確かな医学的根拠は現在のところ存在しません。
子宮筋腫の発育には女性ホルモン(エストロゲン)が関わっているため、肥満の是正やバランスの取れた食事を心がけることはホルモンバランスを整える上で有益である可能性はあります。しかし、それが子宮筋腫の積極的な「治療」になるわけではないという線引きを理解しておくことが重要です。
Q3. 閉経したら治療は不要になりますか?
A3. その可能性は非常に高いです。
子宮筋腫は女性ホルモン(エストロゲン)を“栄養”にして大きくなる腫瘍で 。そのため閉経して卵巣からのエストロゲン分泌がなくなると、筋腫はそれ以上大きくなることはなく逆に自然と縮小していく傾向にあります 。
したがって、閉経が近い年齢(40代後半~50代前半)の方で過多月経や貧血の症状が薬物療法などでコントロール可能である場合は、あえて手術を選択せず閉経まで症状を抑えながら「逃げ込む(逃げ込み療法)」 という治療方針が有力な選択肢となります。
ただし万が一、閉経したはずなのに筋腫が大きくなるような場合は「子宮肉腫」を強く疑うサインとなります。気になることがありましたらお気軽に当院にご相談ください。