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骨盤臓器脱

骨盤臓器脱とは?女性の3人に1人が経験する病気

骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)は子宮や膀胱、直腸などの骨盤内臓器が膣から体外に脱出してくる女性特有の病気であり、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉や靭帯が弱くなることで本来あるべき位置に臓器を支えきれなくなって下垂してしまいます。
欧米の研究によると出産を経験した女性の約30〜40%に骨盤臓器脱が見られると報告されているほか、日本でも同様の頻度で発症すると考えられており実に3人に1人という高い確率で起こる病気です。しかし「恥ずかしい」や「どこに相談すればよいかわからない」といった理由によって、多くの女性が一人で悩みを抱えているのが現状です。
骨盤臓器脱は直接生命に関わる病気ではないものの日常生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があり、「股に何か挟まっている感じ」や「お風呂でピンポン玉のようなものが触れる」といった不快感から排尿・排便障害まで様々な症状を引き起こします。適切な治療によって症状は改善可能であることから、早めの受診が大切です。

骨盤臓器脱の主な原因|出産・加齢・生活習慣

出産による骨盤底筋群のダメージ

骨盤臓器脱の最も大きな原因は経膣分娩(普通分娩)による骨盤底筋群へのダメージにあり、出産時に赤ちゃんが産道を通る際に骨盤底の筋肉や靭帯、神経が引き伸ばされて損傷を受けます。特に難産や吸引・鉗子分娩、巨大児の出産や多産(2回以上の出産)の場合には骨盤底へのダメージが大きくなります。
出産直後は若さと筋力でカバーできても加齢とともに筋力が低下して40代以降になってから症状が現れることが多いのが特徴であり、出産から数十年経って初めて骨盤臓器脱に気づくケースも珍しくありません。

加齢と閉経による影響

加齢により全身の筋力が低下するのと同様に骨盤底筋群も弱くなっていくほか、特に閉経後は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで膣壁や骨盤底の組織が薄く弱くなります。このため閉経年齢以降の50〜60代で骨盤臓器脱を発症する方が多くなる傾向にあります。
また子宮筋腫や卵巣腫瘍などで子宮を摘出した方についても、子宮を支えていた靭帯がなくなることから膣断端脱(膣が裏返しになって下がる状態)を起こすリスクが高くなります。

腹圧を高める生活習慣

日常的に腹圧がかかる生活習慣も骨盤臓器脱の重要な危険因子であり、慢性的な便秘でいきむ習慣や重い荷物を持つ仕事(介護職、農業、配送業など)、肥満や慢性的な咳(喘息、COPD、花粉症など)は骨盤底に継続的な負担をかけます。
立ち仕事が多い方も要注意で、長時間の立位は重力の影響によって骨盤内臓器が下垂しやすくなるためです。これらの生活習慣は単独でも骨盤臓器脱の原因となるものの、出産経験がある方の場合はさらにリスクが高まります。

こんな症状があれば要注意!骨盤臓器脱のセルフチェック

初期症状|違和感から始まる自覚症状

骨盤臓器脱の初期症状は「股に何か挟まっている感じ」や「膣に異物感がある」といった違和感から始まり、入浴時に膣口付近にピンポン玉のような柔らかい塊を触れることで気づく方も多くいます。これらの症状には朝は軽く夕方になると悪化したり、長時間の歩行や運動後に強くなったりするという特徴があります。
初期の段階では横になると症状が改善することが多いために「疲れているだけ」と見過ごされがちですが、この段階で適切な対処をすることで症状の進行を遅らせることができます。

進行すると現れる排尿・排便障害

症状が進行すると下垂した臓器が尿道や直腸を圧迫することで様々な排尿・排便障害が現れます。排尿障害としては頻尿や尿意切迫感、尿が出にくいといった症状や残尿感、尿失禁などが起こり、特に脱出した膀胱を手で押し戻さないと排尿できない状態になることもあります。
排便障害においても便秘や残便感、便が出にくいといった症状のほか便失禁などが現れ、直腸瘤の場合には膣の後壁を押さえないと排便できないこともあります。これらの症状は単なる加齢による変化と勘違いされやすいことから注意が必要です。

日常生活に支障をきたす症状

重度になると常に臓器が脱出した状態となって下着との摩擦による出血や痛み、歩行困難などが生じます。下腹部の引っ張られるような痛みや腰痛も伴うことがあるため、外出や運動を控えるようになって生活の質が著しく低下してしまいます。
性生活にも影響が出ることがあり、性交時の違和感や痛みやパートナーへの羞恥心から性生活を避けるようになる方もいます。これらの症状によって社会生活や対人関係にも支障をきたす可能性があります。

骨盤臓器脱の種類と特徴

子宮脱・膣断端脱

子宮脱は子宮が正常な位置から下垂して膣口から脱出する状態です。軽度では子宮頸部が膣内に下がる程度であるものの、重度では子宮全体が体外に脱出します。子宮を摘出した方については、膣の頂部(断端)が下垂する膣断端脱が起こることがあります。
症状としては下腹部の重だるさや引っ張られる感覚、腰痛などが特徴的であり、立位や歩行時に症状が強くなる一方で横になると改善する傾向があります。

膀胱瘤(膀胱脱)

膀胱瘤は膀胱が膣の前壁から突出する状態であり、骨盤臓器脱の中で最も頻度が高いタイプです。膣の前壁が弱くなることによって、膀胱が膣内に落ち込んできます。
主な症状は排尿障害で、頻尿や尿意切迫感、排尿困難や残尿感などが現れます。重度になると脱出した膀胱を手で押し戻さないと排尿できない状態になることもあるほか、咳やくしゃみ、運動時の尿失禁(腹圧性尿失禁)を合併することも多くあります。

直腸瘤・小腸瘤

直腸瘤は直腸が膣の後壁から突出する状態です。排便障害が主な症状として便秘や残便感、排便困難などが現れ、膣の後壁を指で押さえながら排便する必要がある場合もあります。
小腸瘤は小腸が膣の上部から下垂する比較的まれなタイプですが、子宮摘出後の方に起こりやすく下腹部の膨満感や不快感が主な症状となります。これらの脱は単独で起こることもあるものの、複数の臓器が同時に脱出する複合型も多く見られます。

婦人科での診断方法と検査

子宮を調べる

問診と内診による基本的な診断

骨盤臓器脱の診断はまず詳しい問診から始まり、症状の内容や発症時期、出産歴や手術歴、生活習慣などを確認します。恥ずかしさから症状を正確に伝えられない方もいるものの、適切な診断のためには具体的な症状を医師に伝えることが大切です。
内診では膣鏡を用いて脱出の程度や部位を確認するほか、腹圧をかけた状態(いきんだ状態)での観察も重要であることから立位や座位での診察を行うこともあります。骨盤臓器脱の診断は基本的に問診と内診で可能ですが、症状の程度を客観的に評価するためにPOP-Q分類という国際的な分類法を用いることもあります。

画像検査による詳細な評価

複雑な骨盤臓器脱や手術を検討する場合には、MRI検査や超音波検査などの画像検査を行います。MRIでは骨盤底の筋肉や靭帯の状態、各臓器の位置関係を詳細に評価できるうえ、動態MRIといういきんだ状態での撮影によって実際の脱出の様子を確認することも可能です。
超音波検査は簡便で痛みもなくリアルタイムで骨盤底の動きを観察できる利点があり、経膣超音波や経会陰超音波によって膀胱頸部の位置や尿道の可動性なども評価できます。

合併症の検査

骨盤臓器脱では排尿障害や排便障害を合併することが多いため、これらの機能評価も重要となります。尿流量測定や残尿測定、膀胱内圧測定などの尿流動態検査により排尿機能を詳しく調べます。
便秘や便失禁がある場合には直腸肛門機能検査や排便造影検査を行うこともあるほか、膣壁の炎症や感染の有無を確認するために膣分泌物の検査も必要に応じて実施します。これらの検査結果を総合的に評価したうえで、個々の患者さまに最適な治療方針を決定します。

骨盤臓器脱の治療法

保存的治療(手術以外の方法)

骨盤底筋体操(骨盤底筋トレーニング)

骨盤底筋体操は骨盤底筋群を鍛えることで臓器の下垂を予防・改善する運動療法です。軽度の骨盤臓器脱や予防目的に有効であるうえに腹圧性尿失禁の改善効果も期待できます。肛門と膣を締める動作を繰り返し行い、1日3セット、各10〜15回を目安に継続します。
効果を実感するまでには2〜3か月程度かかることが多いため継続が重要となります。理学療法士による専門的な指導を受けることでより効果的なトレーニングが可能になるほか、最近ではバイオフィードバック装置を用いて正しく筋肉を収縮できているかを確認しながら行う方法もあります。

ペッサリー療法

ペッサリーはシリコン製のリング状の器具を膣内に挿入して下垂した臓器を物理的に支える治療法です。手術を希望しない方や手術のリスクが高い高齢者、妊娠を希望する方などに適応となります。外来で簡単に装着できるうえ即効性があるのが利点です。
ただし根本的な治療ではなく対症療法であることや定期的な交換(2〜3か月ごと)が必要なこと、膣壁のびらんや感染のリスクがあることなどのデメリットもあります。自己着脱が可能な方であれば、夜間は外すことで合併症のリスクを減らせます。

サポート下着(フェミクッション)

サポート下着はクッション部分で会陰部を支えて臓器の脱出を防ぐ特殊な下着です。軽度〜中等度の骨盤臓器脱に対して使用することで日常生活での不快感を軽減します。ペッサリーと異なり自分で着脱できるほか、洗濯して繰り返し使用可能です。
運動時や外出時のみ使用することも可能であるため、生活スタイルに合わせて使い分けできます。ただし重度の脱出には効果が限定的であり、根本的な治療にはならないことを理解しておく必要があります。

手術による治療

経膣メッシュ手術(TVM手術)

TVM手術は膣壁を切開してメッシュ(人工繊維の網)を挿入することで下垂した臓器をハンモック状に支える手術です。膀胱瘤や直腸瘤に対して有効であり子宮を温存することも可能です。手術時間が1〜2時間と比較的短いうえに腹部に傷がつかないのが利点です。
再発率は5〜10%と低いことから従来の膣壁形成術より治療成績が良好です。ただしメッシュによる異物反応や感染、メッシュ露出などの合併症リスクがあるほか、性交時の違和感を訴える方もいるため、2014年から専門的な講習を受けた医師のみが施行できるようになりました。

腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)・ロボット支援手術

腹腔鏡下仙骨膣固定術は腹腔鏡を用いて膣をメッシュで仙骨に固定する手術であり、最も根治性が高いうえ性生活への影響が少ないとされています。腹部に5mm程度の小さな傷が4〜5か所できるものの、開腹手術に比べて体への負担が少ないため術後の回復も早いのが特徴です。
最近ではロボット支援手術(ダビンチ手術)も保険適用となったことでより精密な手術が可能になりました。手術時間は2〜3時間とやや長めですが、術後の臓器の位置が生理的であり長期成績も良好であることから、比較的若い方や性生活を維持したい方に推奨されます。

従来の膣式手術(子宮摘出+膣壁形成術)

膣式子宮全摘術と膣壁形成術は膣から子宮を摘出して緩んだ膣壁を縫い縮める従来からの手術法です。メッシュを使用しないため異物反応の心配がないうえ感染リスクも低いのが利点です。手術時間も1時間程度と短いことから高齢者にも施行可能です。
ただし再発率が30〜40%と高いことが最大の欠点であり、最近では仙骨子宮靭帯固定術を追加して膣断端を靭帯に固定することで再発率を下げる工夫がされています。性生活を望まない高齢者については、膣を完全に閉鎖する膣閉鎖術を選択することもあります。

日常生活でできる予防法

生活習慣の改善ポイント

骨盤臓器脱の予防には腹圧を上げない生活習慣が重要であり、特に便秘の改善は大切であるため食物繊維や水分を十分に摂取して規則正しい排便習慣を心がけます。強くいきむことなく自然な排便を促すことが骨盤底への負担軽減につながります。
肥満は骨盤底に常に圧力をかけることから適正体重の維持が重要です。重い物を持ち上げる際は膝を曲げて腰を落として腹圧がかかりにくい姿勢で行い、慢性的な咳がある場合は原因疾患の治療を優先するほか禁煙も重要な予防策となります。

定期的な婦人科検診の重要性

骨盤臓器脱は徐々に進行する病気であるため、早期発見・早期対応が大切です。40歳を過ぎたら年に1回は婦人科検診を受けて骨盤底の状態をチェックすることをお勧めします。特に、出産経験がある方や閉経後の方は定期的な受診が重要です。
初期の段階で発見できれば保存的治療で進行を抑制できる可能性があります。恥ずかしさから受診を躊躇する方も多いものの、婦人科では日常的に診療している病気であり、女性医師による診察を希望する方は是非当院にお気軽にご相談ください。

よくある質問(Q&A)

質問と回答

Q1. 骨盤臓器脱は自然に治りますか?

A1. 残念ながら骨盤臓器脱は自然に治ることはありません。一度緩んだ骨盤底筋群や靭帯は自然に元の状態に戻ることなく加齢とともに症状は進行していきますが、初期段階であれば骨盤底筋体操により症状の改善や進行の抑制が期待できます。
症状が軽度のうちに適切な対処を行うことで手術を回避できる可能性もあります。「様子を見る」のではなく早めに婦人科を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。

Q2. 手術後の再発率はどのくらいですか?

A2. 手術方法により再発率は異なります。従来の膣壁形成術では30〜40%と比較的高い再発率である一方、メッシュを使用するTVM手術では5〜10%、腹腔鏡下仙骨膣固定術では5%以下と報告されています。
再発を防ぐためには術後も骨盤底筋体操を継続して腹圧がかかる動作を避けることが重要です。便秘の改善や体重管理、禁煙なども再発予防に役立つほか、定期的な術後フォローアップを受けて早期に異常を発見することも大切です。

Q3. 性生活への影響はありますか?

A3. 骨盤臓器脱があっても軽度であれば性生活は可能です。ただし臓器が脱出した状態での性交は避けるべきであり、ペッサリーを使用している場合は事前に外す必要があります。手術を受ける場合には術式により性生活への影響は異なります。
腹腔鏡下仙骨膣固定術は膣の自然な形態を保つことから性生活への影響が最も少ないとされています。一方でTVM手術では膣壁が硬くなることがあり、膣閉鎖術では性交が不可能になります。性生活を重視する方は医師と十分に相談したうえで術式を選択することが重要です。

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