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体外受精の移植後はどう過ごす?生殖専門医が教える着床率を下げない生活と「症状なし」の真実

  • 公開日:2026.02.15
  • 更新日:2026.02.15
体外受精の移植後はどう過ごす?生殖専門医が教える着床率を下げない生活と「症状なし」の真実|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

移植を終えた皆様へ。「小さな変化にも敏感になってしまう」その不安に寄り添うメッセージ

胚移植、本当にお疲れさまでした。採卵という大きな山を乗り越え、受精卵が育つのを祈るように待ち、やっとお腹の中に迎えることができた…。今は、安堵感とともに、「無事に着床してくれるだろうか」という大きな不安と期待が入り混じった、特別な時間を過ごされていることと思います。

診察室で患者様とお話ししていると、「移植後にお腹がチクチクしたから着床したかも」「全く症状がないからダメだったかもしれない」と、日々の体の些細な変化に一喜一憂され、検索魔になってしまっている方が本当に多くいらっしゃいます。特に30代、40代の方にとって、一回の移植に掛ける想いは計り知れないものがあります。

生殖医療専門医としてまずお伝えしたいのは、「移植後の症状だけで妊娠の成否は判断できない」ということです。そして、過度な不安やストレスは、血管を収縮させ、着床にとってマイナスになることもあります。この記事では、移植後の体の中で起きている変化、医学的に正しい過ごし方、そして不安な心との向き合い方について、専門的な知見を交えて詳しく解説します。あなたが少しでも心穏やかに、判定日までの時間を過ごせるよう、正しい知識をお守りとしてお持ち帰りください。

【基礎知識】移植された受精卵はいつ着床する?体内タイムスケジュール

「初期胚」と「胚盤胞」で異なる着床のタイミング

移植してから「いつ」着床するのかは、移植した胚のステージによって異なります。
ここを正しく理解しておくと、無駄な焦りを減らすことができます。

胚盤胞移植の場合:
受精から5~6日目まで育った「胚盤胞」を移植した場合、移植後1~2日以内に着床が始まります。
胚盤胞はすでに着床直前の状態まで育っているため、子宮に入るとすぐに着床の準備に入ります。

初期胚(分割期胚)移植の場合:
受精から2~3日目の「初期胚」を移植した場合、子宮の中であと2~3日成長し、胚盤胞になってから着床します。
そのため、実際の着床は移植から4~5日後になります。

「移植した瞬間から安静にしなきゃ!」と思われるかもしれませんが、
実際に胚が内膜に潜り込み始めるまでには少しタイムラグがあるのです。

着床のプロセス(接近・接着・侵入)と「着床の窓」の重要性

着床は、胚が子宮内膜に「ポン」と置かれて終わりではありません。非常に精巧なプロセスを経て成立します。

接近(アポジション)胚と子宮内膜がお互いを認識し、引き寄せ合います。
接着(アドヒージョン)胚が内膜の表面にピタリとくっつきます。
侵入(インベーション)胚が内膜の中に潜り込み、完全に埋没します。

このプロセスが成功するためには、子宮内膜が胚を受け入れられる状態になっている必要があります。
これを「着床の窓(インプランテーションウィンドウ)」と呼びます。通常は排卵後5~7日目頃に開きますが、
人によってはこの窓が開くタイミングがずれていることがあり、これが着床不全の一因となることもあります。

30代・40代の着床率リアルデータと年齢の壁

年齢は着床率に大きく影響します。日本産科婦人科学会のデータや当院の実績を見ると、
胚盤胞移植あたりの妊娠率(着床率)は以下のようになります。

30歳未満約50~60%
30~34歳約45~55%
35~39歳約30~45%
40~42歳約20~30%
43歳以上約10~15%

年齢とともに着床率が下がる主な原因は、卵子の質の低下(染色体異常の増加)です。
しかし、これは「確率」の話であり、40代でも良好な胚であれば着床し、出産に至るケースは多々あります。
数字に囚われすぎず、ご自身の胚の力を信じることが大切です。

「チクチク痛」「出血」は着床のサイン?移植後の症状の正体

医学的に「着床痛」は存在するのか?痛みの主な原因

インターネットなどでよく目にする「着床痛」ですが、
実は医学的に「着床痛」というものは証明されていません。受精卵は顕微鏡レベルの大きさであり、それが内膜に触れたり潜り込んだりする程度の刺激で、痛みを感じることは理論的に考えにくいのです。

では、なぜ多くの方が「チクチク」「ズキズキ」を感じるのでしょうか? 主な原因は以下の通りです。

カテーテルの刺激移植時の処置による軽い刺激が残っている。
子宮の収縮異物(胚やカテーテル)が入ったことによる生理的な反応。
ホルモン補充の影響黄体ホルモン剤によって腸の動きが鈍くなり、ガスが溜まって圧迫感を感じている。
意識の集中「妊娠したい」という強い思いから、普段なら気にならない些細な感覚を痛みとして認識している(心因性)。

つまり、痛みの有無は妊娠の成否とは関係がありません。
痛くても妊娠している方もいれば、無痛でも妊娠している方もいます。

茶色いおりものや出血は大丈夫?着床出血と処置による出血の違い

移植後の出血も不安の種ですが、大きく分けて2つの可能性があります。

処置による出血(移植直後~翌日): 移植時に器具が子宮の入り口や腟壁に触れて傷つき、少量出血することがあります。これはすぐに止まりますし、着床には影響しません。

着床出血(移植から4~7日後): 胚が内膜に潜り込む際、小さな血管を傷つけて出血することがあります(月経様出血とは異なります)。全妊娠の20~30%程度に見られ、茶色っぽいおりものや薄いピンク色の出血として現れます。

少量の出血であれば、慌てず様子を見て大丈夫です。ただし、生理2日目のような鮮血が続く場合は、
ホルモン値の不足や別のトラブルの可能性があるため、クリニックへ連絡してください。

胸の張り・眠気・ほてりは「妊娠超初期」か「薬の副作用」か

「胸が張ってきた!」「眠気がすごい、妊娠したかも!」 移植後にこれらの症状を感じると期待が高まりますが、実はこれらは黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によるものであることがほとんどです。

体外受精では、膣座薬や内服薬、注射などで強力にホルモン補充を行います。黄体ホルモンには、体温を上げる、胸を張らせる、眠気を誘う、腸の動きを鈍くするといった作用があります。つまり、これらの症状は「薬がしっかりと効いている証拠」ではありますが、必ずしも「妊娠した証拠(つわりの始まり)」ではありません。症状があってもなくても、判定日まで結果は分からないというのが真実です。

【危険信号】すぐに受診すべき腹痛や出血のレベル

ほとんどの症状は様子見で大丈夫ですが、以下のような場合は速やかに受診が必要です。

激しい腹痛: 動けないほどの痛み、冷や汗が出るような痛み。子宮外妊娠(異所性妊娠)や卵巣出血、卵巣茎捻転の可能性があります(特に採卵周期の新鮮胚移植の場合)。

大量の出血: ナプキンがすぐに一杯になるような出血。

38度以上の発熱: 感染症の可能性があります。

急激な体重増加やお腹の張り: 採卵後の新鮮胚移植の場合、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)が悪化している可能性があります。

判定日までの「正しい過ごし方」Q&A|安静・仕事・生活習慣

質問と回答

「姫生活(絶対安静)」は逆効果?血流と着床の関係

一昔前は「移植後は絶対安静(いわゆる姫生活)」と言われることもありましたが、最新の研究では「移植後の安静時間は妊娠率に影響しない、むしろ過度な安静はマイナスになる」ことが分かっています。

ずっと寝たきりでいると、骨盤内の血流が悪くなり、子宮に十分な栄養や酸素が届きにくくなります。また、血栓症のリスクも高まります。移植直後から、普通に歩いて帰宅して問題ありません。家事やデスクワーク程度の日常的な動きは、血流を良くし、ストレス発散にもなるため推奨されます。「普通に過ごす」が正解です。

お風呂・自転車・重いもの…日常生活のOK/NGライン

入浴:
移植当日は感染予防のためシャワーのみが推奨されますが、翌日からは湯船に浸かってもOKです。
ただし、長時間の高温浴やサウナは避け、ぬるめのお湯でリラックスしましょう。

自転車・振動:
日常的な自転車の使用や、電車・車の振動で胚が落ちることはありません。子宮は筋肉で守られており、内膜は密着しているので、胚は「ピーナッツバターサンドのパンに挟まれたピーナッツ」のようにしっかりと保持されています。ただし、転倒リスクのある激しいサイクリングは控えましょう。

重いもの:
日常の買い物程度なら問題ありませんが、腹圧が強くかかるような引越しの荷運びや筋トレ(ウェイトリトレーニング)は念のため控えましょう。

運動:
激しいスポーツ(マラソン、ホットヨガなど)は避け、ウォーキングや軽いストレッチ程度に留めましょう。

仕事は休むべき?ストレス管理と両立のコツ

「仕事のストレスが着床に悪影響を与えるのでは?」と心配して仕事を休まれる方もいますが、
基本的には仕事を続けても妊娠率に差はないとされています。むしろ、仕事を休んで一日中家で「着床したかな…」と考え続けてしまう方が、精神的なストレスが大きくなる場合もあります。

ただし、重労働や夜勤、極度のプレッシャーがかかる環境の場合は、可能であれば業務内容の調整を相談するのも一つです。無理のない範囲で、普段通りの生活リズムを保つことが、メンタル安定の鍵です。

性生活(夫婦生活)はいつから可能?感染リスクと子宮収縮

一般的には判定日までの性交渉は控えるよう指導しています。 理由は2つあります。

子宮収縮:
オーガズムや乳頭刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌され、子宮が収縮して着床を妨げる可能性があります。

感染リスク: 膣内環境が変化し、感染症のリスクがわずかながら上がります。

パートナーとのスキンシップは大切ですが、この時期は挿入を伴う行為は避け、ハグや会話などでコミュニケーションをとることをお勧めします。

食事とサプリメントで着床をサポートできる?

着床環境を整える栄養素(ビタミンD・亜鉛・葉酸)

着床をサポートするために、以下の栄養素を意識して摂りましょう。

ビタミンD:
着床に必須の栄養素で、不足すると着床率が下がるというデータがあります。日光浴や魚・キノコ類から摂取、またはサプリメントで補いましょう。

亜鉛: 細胞分裂を促すミネラルです。牡蠣や牛肉に多く含まれます。

葉酸: 妊娠初期の胎児の成長に不可欠です。妊娠前から継続して摂取しましょう。

鉄分: 子宮内膜の血流維持に重要です。

避けるべき食べ物と飲み物(カフェイン・アルコール・生もの)

アルコール:
妊娠の可能性がある時期ですので、禁酒が原則です。「一杯くらいなら」と思わず、赤ちゃんのために控えましょう。

カフェイン:
1日1~2杯程度のコーヒーなら問題ありませんが、大量摂取は血管を収縮させるため控えめに。ノンカフェイン飲料を活用しましょう。

生もの:
免疫力が下がっている時期なので、食中毒のリスクがある生肉、生卵、ナチュラルチーズなどは避けましょう。お刺身も新鮮なものを選び、頻度は控えめに。

「渡り蟹のパスタ」「パイナップル」ジンクスの医学的根拠は?

SNSなどで「移植後に渡り蟹のパスタを食べると着床する」「パイナップルが良い」「マックのポテトを食べる」といったジンクスが話題になります。これらに医学的な根拠は全くありません。しかし、好きなものを食べてリラックスしたり、「これを食べたから大丈夫!」というポジティブな気持ちになったりすることは、精神衛生上とても良いことです。栄養バランスを崩さない範囲で、イベントとして楽しむ分には大いにありだと思います。

禁断の「フライング検査」と判定日までのメンタルケア

なぜ医師はフライング検査を推奨しないのか?hCG注射の偽陽性問題

「気になって判定日まで待てない!」と、市販の検査薬でフライング検査をする方は多いです。
しかし、専門医としては以下の理由から推奨しません

hCG注射の影響(偽陽性):
移植時やその後にhCG注射(着床サポート用)を打っている場合、その成分が尿中に残り、妊娠していなくても陽性反応が出ることがあります(注射後7~10日程度残ります)。これでぬか喜びしてしまい、後の判定で落ち込むケースが多いです。

感度の問題(偽陰性):
市販薬の感度ではまだ反応しない時期に検査をしてしまい、本当は着床しているのに陰性と出て、勝手に薬をやめてしまうリスクがあります。これが一番危険です。

化学流産の検知:
着床したけれど育たなかった「化学流産」の場合、病院の判定日には数値が下がって陰性となりますが、フライングだと一瞬陽性が出てしまいます。「知らなくていい悲しみ」を知ることになりかねません。

「検索魔」になってしまうあなたへ。不安との付き合い方

「移植後 症状なし 陽性」「BT5 フライング」… 毎日スマホで検索し続けていませんか? 不安になる気持ちは痛いほどわかりますが、ネット上の誰かの体験談は、あなたの体の状態とは関係がありません。検索すればするほど、ネガティブな情報が目に入り、不安が増幅する「ノシーボ効果」で体調を崩すこともあります。 この時期はあえてスマホを置き、映画を見たり、本を読んだり、没頭できる趣味の時間を持つことを強くお勧めします。「検索しない時間」を作ることが、心の安定につながります。

症状が全くない(無症状)でも妊娠している可能性

「無症状でも妊娠している人は山ほどいる」ということです。 つわりのような症状が出るのは、もっとhCGが高くなってからです。判定日付近では何も感じないのがむしろ普通です。「症状がない=ダメだった」と決めつけて落ち込む必要は全くありません。信じて判定日を待ちましょう。

もし今回うまくいかなかったら…次に向けて考えること

着床不全の検査(ERA・EMMA・ALICE)という選択肢

もし良好な胚盤胞を複数回移植しても着床しない場合、「着床不全」の可能性があります。
その場合、以下のような検査を検討します。

ERA検査
ERPeak検査
着床の窓(タイミング)がずれていないか調べる。
EMMA/ALICE検査子宮内の善玉菌(ラクトバチルス)の割合や、慢性子宮内膜炎の原因菌を調べる。
子宮鏡検査ポリープや癒着がないか確認する。

35歳以上の方へ推奨されるPGT-A(着床前診断)とは

年齢とともに増加する「流産」や「着床しない」原因の多くは、受精卵の染色体異常です。 PGT-Aは、移植前に胚の染色体数を調べ、正常な胚を選んで移植する技術です。35歳以上の方や反復流産の方にとって、流産率を下げ、妊娠への近道となる可能性があります。ただし費用や倫理的な側面もあるため、医師とよく相談してください。

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