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採卵後に生理が来ない・遅れる原因は?生殖医療専門医が採卵後の生理について徹底解説!

  • 公開日:2025.12.04
  • 更新日:2025.12.05
採卵後に生理が来ない・遅れる原因は?生殖医療専門医が採卵後の生理について徹底解説!|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

採卵を終えられた皆さまお疲れさまでした。「採卵後の生理はいつ来るの?」「いつもと違う生理になるのでは?」といった不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、生殖医療専門医として採卵後の生理について医学的な観点から分かりやすく解説し皆さまの不安を少しでも和らげられればと思います。個人差があることを前提に一般的な経過や注意すべきポイントよくあるご質問への回答まで詳しくお伝えしていきます。


 採卵後の生理はいつ来る?通常のタイミングと個人差

一般的な生理再開のタイミング

採卵後の生理は多くの場合採卵日から10~14日後に始まります。これは採卵によって排卵が起こったと同じような状態になるためです。通常の月経周期と同じようなメカニズムが起こるため排卵後約14日で生理が来ることが一般的です。

ただし、採卵時に使用した排卵誘発剤の種類や量や採卵できた卵子の数などによってこのタイミングは前後することがあります。また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防のために使用する薬剤により生理が早まることもあります。経験上早い方で採卵後数日後、遅い方では20日以上かかるケースも見られます。

特にHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を使用して最終的な卵胞成熟を促した場合は、体内にHCGが残存するため通常より数日遅れることがあります。これは正常な反応ですので過度に心配する必要はありません。

生理が早まる・遅れる要因

生理のタイミングに影響を与える要因はいくつかあります。まず採卵数が多かった場合(15個以上)は、卵巣への負担が大きくホルモンバランスの回復に時間がかかるため生理が遅れやすくなります。

逆に採卵数が少なかった場合(3個以下)は、卵巣への刺激が少ないため比較的早く生理が来ることがあります。また、採卵後の体調不良やストレス急激な体重変化なども生理のタイミングに影響します。

使用した排卵誘発法によっても差があり、自然周期や低刺激法では通常の月経周期に近いタイミングで生理が来やすく高刺激法では遅れる傾向があります。また前述の通り、OHSSの予防のために使用する薬剤により生理が早まることもあります。これらは全て治療による一時的な変化ですので次の周期には通常のリズムに戻ることがほとんどです。

年齢や卵巣機能による違い

年齢や卵巣予備能(AMH値)によっても採卵後の生理の時期に違いが見られます。35歳未満で卵巣機能が良好な方は採卵後も比較的規則正しく生理が来ることが多いです。

一方40歳以上の方や、AMH値が低い方では採卵による卵巣への影響が大きく生理が遅れたり量が少なくなったりすることがあります。これは卵巣機能の回復力の違いによるものです。

ただし、年齢が高くても適切な排卵誘発法を選択し卵巣に過度な負担をかけない治療を行えば採卵後の生理も順調に来ることが多いです。

採卵後の生理の特徴|いつもと違う症状は正常?

経血量の変化について

採卵後の生理ではいつもより経血量が多くなることがよくあります。これは排卵誘発剤の影響で子宮内膜が通常より厚くなっているためです。特に初日から3日目にかけて普段の1.5~2倍程度の量になることも珍しくありません。

逆に経血量が少なくなるケースもあります。これは使用薬剤の種類によったり、採卵による一時的なホルモンバランスの変化や採卵時のストレスが影響している可能性があります。どちらの場合も1~2周期で通常の量に戻ることがほとんどです。

ただし1時間に1回以上ナプキンを交換しなければならないほどの大量出血や、レバー状の大きな血塊が頻繁に出る場合は念のため担当医に相談することをお勧めします。これらは稀ですが治療が必要な場合もあります。

生理痛や腹部症状

採卵後の生理では通常より強い生理痛を感じる方が多くいらっしゃいます。これは採卵による卵巣の腫れが完全に回復していない状態で生理が来ていることと、子宮内膜が厚くなっているために起こります。

特に、採卵数が多かった方は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の軽い症状として下腹部の張りや痛みを感じることがあります。市販の鎮痛剤で対処できる程度の痛みであれば問題ありませんが、日常生活に支障をきたすような強い痛みがある場合は受診をお勧めします。

また、採卵後の生理中は腹部膨満感や軽い吐き気を感じることもあります。これらの症状はホルモンの急激な変化によるもので生理が終わると共に改善することがほとんどです。温かいお風呂にゆっくり浸かったりお腹を温めたりすることで症状が和らぐことが多いです。

生理期間の長さの変化

採卵後の生理期間は通常より長くなることがあります。普段5日程度で終わる方でも7~10日続くことがあります。これは厚くなった子宮内膜が剥がれ落ちるのに時間がかかるためです。

初めの3~4日は量が多くその後徐々に減少していくパターンが一般的です。茶色いおりもののような出血が長く続く場合もありますがこれも採卵による影響で心配する必要はありません。

ただし、2週間以上出血が続く場合や生理が終わったと思ったらすぐにまた出血が始まるような不正出血がある場合は、ホルモンバランスの乱れや他の原因が考えられるため必ず受診してください。適切な検査と治療により早期に改善することができます。

採卵後に生理が来ない場合の対処法

生理が遅れる主な原因

採卵後20日以上経っても生理が来ない場合はいくつかの原因が考えられます。最も多いのは採卵による卵巣への負担が大きくホルモン分泌の回復に時間がかかっているケースです。

また採卵後のストレスや体調不良、急激な体重減少なども生理を遅らせる要因となります。不妊治療中は精神的なプレッシャーも大きくそれがホルモンバランスに影響することもあります。

稀ではありますが採卵後に自然妊娠するケースもあります。特に、採卵時に全ての卵胞を穿刺できなかった場合や採卵後に夫婦生活があった場合は妊娠の可能性も考慮する必要があります。生理予定日から1週間以上遅れている場合は念のため妊娠検査薬で確認することをお勧めします。

受診の目安とタイミング

採卵後の生理について以下のような場合は受診をお勧めします。

採卵から3週間経っても生理が来ない場合は一度診察を受けることが望ましいです。超音波検査や血液検査でホルモン値を確認し必要に応じて治療を行います。

微量の出血が続いているが本格的な生理が始まらない・下腹部痛が続いている・基礎体温が高温期のまま下がらないなどの症状がある場合も早めの受診をお勧めします。これらは卵巣機能の回復が遅れているサインかもしれません。

特に次の移植や治療を控えている方は生理が順調に来ることが重要です。治療スケジュールに影響が出る可能性があるため、採卵後2週間を過ぎても生理が来ない場合は担当医に相談し今後の治療方針を確認しておくことをおすすめします。

ホルモン療法について

生理が来ない場合の治療としてホルモン療法を行うことがあります。これはプロゲステロン製剤やピルを10日間程度服用し服用終了後に生理を起こす方法です。多くの場合、服用終了から3~7日以内に生理が始まります。

この治療は子宮内膜をリセットし次の周期を整える効果があります。特に採卵による卵巣機能の一時的な低下で生理が来ない場合に有効です。

ただしホルモン療法を行う前に必ず妊娠の可能性を除外する必要があります。また、卵巣の腫れが残っている場合はそれが改善してから治療を開始することもあります。

採卵周期と次の治療計画

採卵後の卵巣の回復期間

採卵後の卵巣が完全に回復するまでには通常1~2ヶ月かかります。採卵数や使用した排卵誘発剤の種類によって回復期間は異なります。ただし診察上問題なければ連続して採卵周期の治療を行なうことは可能です。連続採卵周期はホルモンバランスに影響することもありますので心配な方は回復してから再度治療するなど主治医と相談することをお勧めしています。

卵巣の回復状態は超音波検査や血液検査で確認できます。FSH(卵胞刺激ホルモン)やE2(エストラジオール)の値が正常範囲に戻り超音波で卵巣の腫れが改善していることを確認してから次の治療を開始することが理想的です。

移植周期への移行タイミング

凍結胚移植を予定している場合、採卵後いつから移植周期に入れるかは重要な問題です。一般的には採卵後1~2回生理を見送ってから移植周期に入ることをお勧めしています。これは子宮内膜の状態を最適化し着床率を高めるためです。

ただし年齢や卵巣予備能、凍結胚の数などを考慮して個別に判断する必要があります。例えば40歳以上の方で凍結胚が1個の場合は早めの移植を検討することもあります。一方、凍結胚が複数ある場合は体調を整えることを優先できます。

移植周期の準備として採卵後の生理中から葉酸やビタミンDなどのサプリメントを開始したり、規則正しい生活リズムを心がけたりすることも大切です。また、子宮内膜の状態を良好に保つため適度な運動や血流を改善する生活習慣も重要です。

連続採卵を検討する場合

連続採卵が可能かどうかは、採卵後の生理の状態やホルモン値や超音波所見などを総合的に判断して決定します。一般的には刺激法によらず連続採卵も可能ですが、診察上卵巣の回復が思わしくない場合には1周期休息をおいてからの治療再開をおすすめすることもあります。

よくある質問と専門医からのアドバイス

Q-A

Q1: 採卵後の生理で妊娠の可能性は?

A1.「採卵後の生理が来たら妊娠の可能性はないですか?」というご質問をよくいただきます。基本的に本格的な生理が来た場合は妊娠の可能性は低いですが、稀に着床出血を生理と勘違いすることがあります。

特にいつもより軽い出血や短期間で終わる出血の場合は、念のため妊娠検査薬で確認することをお勧めします。採卵時に全ての卵胞を穿刺できなかった場合や採卵後に排卵が起こった可能性がある場合は特に注意が必要です。

経験上でも採卵後に自然妊娠された方が数名いらっしゃいます。不妊治療中であっても自然妊娠の可能性はゼロではありません。生理の様子がいつもと違う場合は遠慮なく担当医にご相談ください。

Q2: 生理中の過ごし方と注意点は?

A2.採卵後の生理中は普段以上に体を労わることが大切です。特に最初の3日間は無理をせず十分な休息を取るようにしてください。激しい運動は避け軽いストレッチやヨガ程度に留めることをお勧めします。

食事面では鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草、ひじきなど)を意識的に摂取し、貧血を予防することが重要です。また、体を温める食べ物(生姜、根菜類など)を取り入れることで血流改善にも効果があります。

入浴については湯船に浸かっても問題ありません。ただし、長湯は避け38~40度程度のぬるめのお湯で15分程度に留めることが望ましいです。

心のケアも大切に

採卵後の生理は治療のひと段落を意味しています。良好胚が凍結でき一安心している方もいらっしゃいます。一方で採卵を頑張ったのにうまくいかずもう一度採卵周期を頑張らなくてならないと思っていらっしゃる方もいらっしゃいます。

いづれにしても「生理が来たことは、次のチャンスに向けて体がリセットされた証拠」です。今回うまくいかなった方は得られた情報を次の治療に活かすことができます。パートナーとの対話も重要です。お互いの気持ちを共有し、支え合うことで治療を続ける力になります。また必要に応じて不妊カウンセラーや心理士のサポートを受けることも検討してください。心身ともに健康な状態で治療に臨むことが良い結果につながることも多くの患者さまを通じて実感しています。

まとめ

採卵後の生理について専門医の立場から詳しく解説させていただきました。採卵後の生理は個人差が大きくいつもと違う症状があっても多くの場合は正常な反応です。

ただし、異常な出血や長期間生理が来ない場合は適切な対処が必要です。不安なことがあれば遠慮なく担当医に相談してください。私たち医療者は皆さまの不安に寄り添い最適な治療を提供するためにいます。

不妊治療は長い道のりかもしれませんが一歩一歩着実に前進していきましょう。採卵後の体調管理をしっかり行い次の治療に向けて心身ともに準備を整えることが良い結果につながると信じています。

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