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アシステッドハッチング意味ないって本当?|現役胚培養士が明かす本当の効果と必要な人の特徴|成功率UPの真実

  • 公開日:2025.11.24
  • 更新日:2025.11.29
アシステッドハッチング意味ないって本当?|現役胚培養士が明かす本当の効果と必要な人の特徴|成功率UPの真実|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

「アシステッドハッチングを勧められたけど、本当に必要なの?」

「ネットで『意味がない』って書いてあったけど‥‥」

アシステッドハッチング(Assisted Hatching;AHA)について色々調べてみると、さまざまな情報が掲載されており、戸惑ってしまう方も多くいらっしゃるかと思います。

やったほうがいいのか‥‥。本当に意味がないのか‥‥。私自身、これまでに数千個を超える胚のアシステッドハッチングを行ってきましたが、その経験から言えるのは「アシステッドハッチングは、適切な症例では確実に妊娠の可能性を高める技術である」ということです。

今回の記事では、アシステッドハッチングが「意味がない」という声の理由や、実際の効果などを、専門家の立場から分かりやすくお伝えします。

アシステッドハッチングとは?胚培養士が解説する基本知識

アシステッドハッチングの仕組みと目的

アシステッドハッチング;Assisted Hatching(AHA)とは、受精卵(胚)を取り囲む透明帯と呼ばれる卵の殻に、人工的に穴を開ける『開孔』や、薄くする『菲薄化』を行う技術のことをいいます。

人間の卵子・受精卵も、ニワトリの卵と同じように殻に包まれています。この殻は、透明帯と呼ばれます。通常、卵子と精子が受精すると、受精卵(胚)は発育を進めながら卵管の中を子宮に向かって移動していきます。この時、胚は胚盤胞と言うステージまで成長すると、拡張と収縮を繰り返しながら細胞の数を増やして更にサイズを大きくしていきます。最終的に、透明帯に包まれている赤ちゃんになる細胞が大きく膨らみきると、拡張する力でこの透明帯を破り、赤ちゃんになる細胞が殻の外に出てきます。この現象を孵化;Hatchingといいます。胚は、透明帯から完全に孵化した状態(完全孵化胚盤胞)になることではじめて子宮内膜に着床ができるようになります。裏を返せば、胚は孵化という過程を経なければ、どんなに良好な状態であっても子宮と着床することは出来ません。

自然妊娠の場合では、当然ながら胚は母体のお腹の中で成長が進んでいくのですが、この時、母体由来から分泌されるいくつかの因子によって、胚の孵化が助けられていると考えられています。しかしながら、高度生殖医療を介した場合、胚は体外で受精・培養が行われるため、これらの母体由来の因子を受け取ることが出来ず、胚自身の力だけでは孵化することが難しくなると考えられています。

そこで行われるのがアシステッドハッチングで、日本語では人工的孵化補助と呼ばれます。人の手によって透明帯に穴を開けたり、薄くしたりすることで、胚が透明帯から孵化しやすくするためのアシストを行います。

この技術は、1990年代から臨床でも広く応用されており、現在では多くの不妊治療施設で実施されています。特に、透明帯が厚い、硬いといった特徴を持つ胚や、凍結融解胚移植の際には積極的に選択されることが多い治療法です。

施術方法の種類と特徴

アシステッドハッチングと呼ばれる技術には複数の方法があります。

レーザー開孔法レーザー照射によって、透明帯を開孔または菲薄化する方法です。
透明帯切開法
(PZD;Partial Zona Dissection pipette法)
PZD pipetteと呼ばれる透明帯のカッティング用ピペットを使って透明帯を切開する方法です。
Piezo開孔法Piezoマイクロマニピュレーターを用いて透明帯を開孔する方法です。
酸性タイロード溶液を用いる方法pH2.5ほどの酸性溶剤を使用して、透明帯を溶かすことで開孔または菲薄化する方法です。

などが一般的に行われています。

上記のどの方法を採用しているのか、実施しているのか、は施設により大きく異なります。

どの方法を選択するかは、クリニックの設備や胚培養士の技術などによって決定され、中には、そもそもアシステッドハッチングを行っていないという施設もあります。

「アシステッドハッチングが意味ない」と言われる理由

[理由①]

アシステッドハッチングが「意味がない」と言われてしまう最大の理由は、全ての患者さんに一律に効果があるわけではないという点です。

というのも、実際のところ、アシステッドハッチングを実施しなくても妊娠・出産される患者様もいらっしゃいます。

そのため、アシステッドハッチングを実施して妊娠の反応が得られた場合に、アシステッドハッチングの効果によるものなのかどうか(アシステッドハッチングをしたから妊娠したのか、アシステッドハッチングをしなくても妊娠できたのか)を、一つ一つのそれぞれのケースにおいて検証することが非常に難しいというところにあります。

つまり、アシステッドハッチングを実施して妊娠にいたったとしても、『アシステッドハッチングをしたから妊娠することができたのだ!』ということを証明することが難しいことから、「意味ない」という印象を持たれてしまっているわけです。

[理由②]

アシステッドハッチングの費用は、保険診療の場合では3,000円程度ですが、自費診療の場合ではクリニックによって異なりおおよそ10,000~50,000万円程度の費用が移植費用とは別に追加でかかります。

自費診療となると、ただでさえ高度生殖医療は高額であるにも関わらず、さらに費用が上乗せされることに抵抗を感じる方も多くいらっしゃり、[理由①]のような、効果の証明が難しいものに対してこれ以上お金をかけても「意味がないのではないか?」と考える患者様も少なくないようです。

限られた予算の中から、治療のオプションを選択していく際の優先順位として、アシステッドハッチングが下位にされてしまうことも理由として挙げられます。

胚培養士の視点からアシステッドハッチングが本当になるケースとは

最新の研究データから見る妊娠率

では、本当にアシステッドハッチングは「意味がない」のか?ということですが、そんなことはまったくありませんので、是非、認識を改めていただけたらと思っています。

最新のデータでいうと、私自身が2023年にギリシャ・アテネで開催された国際不妊学会学術集会(IFFS 2023)において発表したアシステッドハッチングに関する研究発表があります。

この研究では、30~39歳の患者様で良好胚盤胞(胚盤胞グレードAA・AB・BA)を移植した症例を抽出し、A:そのままの状態で移植したグループ、B:アシステッドハッチングを実施して移植したグループ、での妊娠率の比較を行いました。

グループA胚移植対妊娠率:50.0%(41/82)
グループB胚移植対妊娠率:65.9%(58/88)

アシステッドハッチングを実施したグループの方が有意に妊娠率が高いという結果となりました。

また、この結果は、適応となる症例を適切に選択すればその有効性がより明確になることが示されました。

効果が期待できる具体的な症例

適応は、主に以下のような方が対象となります。

治療(採卵)時の年齢が高齢の方

加齢に伴って、卵子の透明帯は硬化する傾向があります。これは、避けられない生理学的な変化で、高齢によって自然妊娠が難しくなる要因の一つであるとも考えられています。

凍結融解胚移植をする方

胚を凍結する際の作業によって、透明帯が硬化することが知られています。これは、凍結保護剤の影響や、凍結・融解時、あるいは細胞の水分を抜く脱水時の物理的ストレスによるものと考えられています。実際に、凍結融解胚移植でのアシステッドハッチングは、新鮮胚移植と比較して有効性が高いことが多くの研究で示されています。私たちのクリニックでも、凍結融解胚移植の際は積極的にアシステッドハッチングの適応を検討しています。

過去に良好胚盤胞を移植したにも関わらず着床しなかった方

透明帯から孵化できなかったことで着床にいたらかなった可能性があるため、次周期以降に移植を行う際にアシステッドハッチングが有効になる可能性があります。

FSH(卵胞刺激ホルモン)値が高い方

卵巣機能が低下し、卵子の獲得が難しくなってきているため、少しでも移植の成功率を上げるためにアシステッドハッチングを行った方がよい場合があります。

AMH値が低い方

卵巣内の卵子の残存数が少ないため、治療の回数や妊娠までの期間が限られていることから、少ない治療回数で、少しでも移植の成功率を上げるためにアシステッドハッチングを行った方がよい場合があります。

透明帯が厚い方・厚い卵子

患者様によっては採卵によって採れる卵子の透明帯が顕著に厚い方や、普段は異常が認められないという方でも透明帯の厚い卵子が採れるあることがあり、これは遺伝的要因や、卵巣刺激法の影響などが考えられています。卵子・胚の観察時に、明らかに透明帯が厚い(15μm以上)場合は、年齢に関わらずアシステッドハッチングの適応となります。私たち胚培養士は、顕微鏡下で透明帯の厚さを測定し、客観的なデータに基づいて判断しています。

アシステッドハッチングの可否はどのように判断するべきか

ただし、さらに詳細に見ていくと、上記で挙げたような条件に当てはまっても必ずしもアシステッドハッチングが有効となるとは限りませんし、反対に、これらの条件に当て嵌まらなくても有効になる可能性の高いケースというのも当然ながらあります。

アシステッドハッチングを行ったからといって、すべての胚が必ず着床するわけではなく、アシステッドハッチングを行わなくても同様の結果になるケースも数多くあるため、その有効性については十分に理解しておくことが大切です。

重要なのは、過去の経歴や治療歴、バックグラウンドを総合的に検討しながら、医師や胚培養士を交えて実施するか否かを判断していくということです。

胚培養士がお伝えする注意点や想定されるリスク

推奨される適応症例

アシステッドハッチングを実施するか否かの一つの基準を以下にまとめます。

年齢による因子38歳以上(40歳以上では特に強く推奨)
卵巣機能・卵巣年齢による因子卵巣機能が低い、AMHの値が実年齢より高い
胚の形態学的な因子透明帯の厚さが15μm以上、透明帯の形が不整(楕円形や変形)
フラグメンテーション(細胞の破片)が多い胚
治療歴因子良好胚を移植しても着床しなかった方、原因不明の着床不全が認められる方、子宮筋腫などの婦人科系疾患が認められる方
技術的な理由による因子凍結融解胚移植、凍結までに6日以上かかった胚(胚発生のスピードが遅い)、グレードの低い胚(評価にCの入る胚)

考えられるリスクと注意点

アシステッドハッチングは、技術そのものは安全に施行することができますが、どんな医療行為にもリスクは存在します。

一卵性双胎のリスク増加

一卵性双胎となる可能性がわずかに増加することが報告されています。ただし、これは極めて稀なケースですが、双子の妊娠は母体にも胎児にもリスクが顕著に増加するため、あらかじめ理解をしておく必要があります。

流産率が増加する可能性

アシステッドハッチングによって着床できた胚の中には、当然ながらアシステッドハッチングを実施しなければ着床できなかった可能性のある胚も含まれています。そのような胚は着床・妊娠のポテンシャルが低い可能性があり、アシステッドハッチングによって人工的に無理矢理妊娠しやすい状態を作り出しているということも考えられます。ポテンシャルの低い胚では流産率が増加するリスクが高くなります。

クリニックの実績と技術力の差

先述したように、アシステッドハッチングには複数の方法があり、採用している方法によってその効果の有無に施設間での差がある可能性が指摘されています。つまり、極端な例でいえば、施設によっては、アシステッドハッチングの本来の効果を発揮することが出来ていない可能性もあります。

費用と保険適用

2022年4月から不妊治療の保険適用化が開始し、アシステッドハッチングも適用となりましたが、保険診療の場合では年齢制限や回数制限が存在します。年齢によっては保険の適用が受けられず、全体の費用が高額になる可能性も考えられます。

期待した効果が得られない可能性

これは医学的なリスクではありませんが、費用をかけても妊娠に至らない可能性があることは理解しておく必要があります。また、40歳を超える高齢の方では、アシステッドハッチングに関する部分以外が妊娠を妨げているケースも多くあります。アシステッドハッチングそのものは有効であるものの、それだけでは妊娠を目指すことができない症例もあります。

よくある質問に胚培養士がお答えします

Q1.アシステッドハッチングとはどのような方法ですか?

A1.受精卵(胚)は、透明帯と呼ばれる殻に包まれており、殻に包まれたままの状態では子宮内膜と着床することができません。胚は、透明帯から完全にから脱出(孵化)した状態にならないと子宮内膜に着床できないため、アシステッドハッチングによって透明帯に人工的に穴を開けることで胚の孵化を手助けします。

Q2.アシステッドハッチングの費用はどのくらいかかりますか?

A2.2022年4月から不妊治療の保険適用がスタートし、アシステッドハッチングも保険適用となっています。保険で実施する場合は3,000円程度。自費で実施する場合はクリニックによって異なりますが、10,000円~30,000円程度が相場です。

Q3.どんな人がアシステッドハッチングをやったほうがいいですか?

A3. アシステッドハッチングが有効な方法となる可能性のある方は、①高齢の方(加齢によって透明帯が硬くなると考えられているため)、②凍結融解胚移植をされる方(胚を凍結する際の操作によって透明帯が硬くなると考えられているため)、③AMH低値や卵巣機能が下がってきている方(卵子が採れなくなってくる可能性があり、治療回数が限られているため)、④透明帯が厚い場合や形態的な異常が認められる場合、などで実施することで妊娠率を向上させる可能性が高いです。

Q4.アシステッドハッチングをやらなくてもいいケースはありますか? 

A4.年齢が若く、胚のグレードも良好な患者様ではアシステッドハッチングを実施しなくても妊娠を目指すことが出来る可能性が高いです。また、初回の胚移植を受ける患者様では、アシステッドハッチングを実施せずに行うというのを施設の方針としているクリニックもあります。

培養の段階ですでに孵化中の胚や、完全に孵化している胚では、アシステッドハッチングを行う必要はありません。

Q5.アシステッドハッチングで胚がダメージを受けることはありますか?

A5.本コラム内でアシステッドハッチングの方法として、「レーザー照射を行う方法やカッティング用ピペットを使用する方法」を解説してきましたが、これだけ聞くと胚に負荷を与えるのではないか?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、この点についてはご安心ください。アシステッドハッチング自体は基本的には安全に行うことができる技術ですので、胚が死んでしまうといったリスクはほぼありません。

Q6.アシステッドハッチングをしても着床しなかった場合、どんな原因が考えられますか?

A6.日本産科婦人科学会のデータによると、妊娠に至らない場合や流産となる場合の原因のほとんどは、受精卵(胚)・胎児側の染色体異常に由来することが示されています。具体的な数字では、約70%以上が胚の染色体異常に起因すると報告されています。また、胚の状態が良好であっても、年齢的な要因や子宮内の環境(着床を阻害する婦人科系疾患を有する場合など)に問題があれば着床は困難となってしまいます。

まとめ:アシステッドハッチングの価値を正しく理解する

今回のコラムでは、胚培養士としての視点からアシステッドハッチングについて詳しく解説してきました。アシステッドハッチングは「意味ない」という声がある一方で、有効であるとする具体的なデータや、適応となる症例があることをご理解いただけたのではないでしょうか。

アシステッドハッチングは決して万能の技術ではなく、アシステッドハッチングをすれば一律全員が妊娠できるという技術ではありません。しかしながら、アシステッドハッチングをしなければ妊娠が難しいという症例も確実に存在します。

重要なのは、採卵時の年齢や、過去の治療歴、それぞれの胚の透明帯の状態などを総合的に見極め、適応となるかどうかをしっかりと判断していくことです。そのためには是非、医師や胚培養士などの医療スタッフと密に話し合うことが大切です。

もしもあなたが、良好胚を移植しているのに着床しないという経験をお持ちであれば、アシステッドハッチングは積極的に検討される項目です。確かに、体外受精や移植の費用とは別に加算されるため、経済的にも精神的にも大きな負担を伴います。だからこそ、一つ一つの治療やその中身について正しく理解し、納得した上で選択することが大切です。

アシステッドハッチングは「意味がない」というバイアスのかかった情報に惑わされることなく、是非、ご自身の状況に応じた最適な選択をしていただけたらと思います。

アシステッドハッチングについて疑問や不安があれば、医師や胚培養士に、いつでも、遠慮なく質問してください。最善の方法を一緒に考えていけたら幸いです。

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