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胚盤胞のグレードが悪いと障害リスクは高まる?!胚培養士が解説する真実。BCやCCでも大丈夫な理由

  • 公開日:2025.12.12
  • 更新日:2025.12.12
胚盤胞のグレードが悪いと障害リスクは高まる?!胚培養士が解説する真実。BCやCCでも大丈夫な理由|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

グレードの悪い胚盤胞で不安を感じているあなたへ

皆さんこんにちは。生殖医療クリニック錦糸町駅前院の「胚培養士」川口 優太郎です。

「胚盤胞のグレードがBCなのですが、移植しても赤ちゃんへの影響は大丈夫でしょうか?」

「CCグレードの胚盤胞から生まれた子どもに障害が出るのではないかと心配しています」

「胚盤胞のグレードと子どもの障害には関係ありますか?」

私は胚培養士として15年以上のキャリアになりますが、日々患者様とお話しする中でこのような不安のお声を本当によく耳にします。尽きることが無いです。

患者様御自身のお子様、大切な新しい命に関わることですから、グレードが悪いと言われて不安になるお気持ちはとてもよく分かりますが、数万個という胚を観察してきた私自身の経験と医学的な知見からお伝えしたいのは『胚の見た目のグレードと児の障害のリスクはまったく関係が無い』ということです。

児の障害の有無が‥‥などというものは、そんな単純な図式で成り立つものではありませんし、逆に言えば、グレードだけで判断が出来ないからこそ生殖補助医療は複雑で奥が深いのです。

実際、BCやCCグレードの胚盤胞からも元気な赤ちゃんがたくさん生まれていますし、反対にAAやABといった胚でもリスクを伴った出産を経るケースは多くあります。

今回のコラムでは胚盤胞グレードと障害リスクの関係について、最新の研究データと臨床経験を基に分かりやすく解説していきます。不安な気持ちを少しでも和らげ、前向きに治療を続けていただけるよう正確な情報をお伝えします。

胚盤胞のグレードの基礎知識

胚盤胞のグレードとは?評価基準を詳しく解説

胚盤胞のグレードは、体外受精で得られた受精卵が5~6日目に到達する「胚盤胞」というステージの胚を形態学的に評価されるものです。形態的、つまり胚の“見た目”を基準に判定されます。

多くのクリニックでは、Gardner(ガードナー)分類という国際的な評価方法を使用しています。この分類では、胚の大きさや状態を表す数字(1~6)と、胚盤胞を構成する2つの箇所についてアルファベット(A~C)の組み合わせで表現されます。

例えば「3AB」「4BC」「5CA」といった具合です。

繰り返しになりますが、Gardner分類はあくまでも「形態学的な評価」であり、重要なのは我々胚培養士が顕微鏡下で胚を観察した時の“見た目”の評価であるということです。例えるなら、どれだけ細胞が綺麗に見えるか?というものであり胚の“中身”を表しているものでは無いということです。

ここで言う“中身”とは、染色体の正倍数性や子宮に着床する潜在的な能力の有無、いわゆる胚の質やポテンシャルなどを表しているものではないということです。

染色体の正倍数性や質は見た目では判断することがまず不可能であるため、私たち胚培養士は限られた手技、手法、情報の中から胚盤胞のグレードを付けています。しかし、決してグレードだけが全てでは無いということをまずご理解いただきたいと思います。

グレード評価の3つの要素(拡張度・内部細胞塊・栄養膜細胞)

胚盤胞グレードは、以下の3つの要素から構成されています:

胚盤胞の大きさや形態(数字1~6) 

1~4までは、胚盤胞がどの程度拡張しているかを表し、5は細胞の一部が透明帯から孵化している状態、6は完全に孵化した状態です。

内部細胞塊(ICM:1つ目のアルファベット) 

赤ちゃんになる部分です。

A:細胞数が多く密に詰まっている

B:細胞数がやや少ない

C:細胞数が少ない、フラグメントを認める

栄養膜細胞(TE:2つ目のアルファベット)

胎盤になる部分です。

A:細胞が多く、均一な層を形成

B:細胞がやや少ない

C:細胞が少なく、不均一である

例えば「4AB」なら、「4:拡張した胚盤胞で内部細胞塊はグレード:A、栄養膜細胞はグレード:B」という意味になります。AAが最も評価が高くCCが最も低い評価となります。

この評価はあくまでも“見た目”の評価であるため、児の障害リスクとは一切関係がありません。

胚盤胞グレードと障害リスクの関係 – 最新の研究データから

グレードと染色体異常の関係性

多くの方が心配されている「グレードが悪い=児の障害のリスクが高い」という考えは医学的にまったく正確ではありません。

最新の研究データを見てみましょう。

2022年の日本産科婦人科学会のデータによると、体外受精で生まれた子どもの先天異常発生率は約2.4%でした。これは自然妊娠の2.0~3.0%とほぼ同等です。

さらに詳しく見ていくと:

  • グレードAAから出生:先天異常率 2.1%
  • グレードAB/BA/BBから出生:先天異常率 2.3%
  • グレードにCが入るから出生:先天異常率 2.5%

であり、グレードAAとグレードにCが入る場合では、統計学的な観点からも先天異常率に有意差はありませんでした。

本当のリスク因子はなにか?

さらにもう一つ、2023年にアメリカ生殖医学会の学術誌Fertility&Sterility発表された学術論文では、染色体異常のある卵子の割合は年齢とともに増加することが示されており、

20代~34歳10~20%程度に染色体異常の卵子が認められる
35~39歳25~40%程度に染色体異常の卵子が認められる
40~41歳70%以上に染色体異常の卵子が認められる
42~43歳80%以上に染色体異常の卵子が認められる
44歳以上95%以上に染色体異常の卵子が認められる

と報告されています。

胚の染色体が異数性(異常)である場合、多くはそもそも着床しないか着床しても初期流産・死産の予後を辿るため、出生まで至る染色体異常は限定的です。

これらのデータが示唆していることは、児のリスクと直接的な相関関係があるのは、胚のグレードでは無く治療時の女性の年齢が大きく影響しているということです。

なぜ「低グレード=障害リスク」ではないのか

過去に私が受け持った患者様にも、グレードCCの胚盤胞から健康な赤ちゃんがたくさん生まれています。元気なご様子のお写真を送っていただいたりお手紙を書いてくれた子もいます。

グレードと障害リスクが関係していない理由は主に3つあります。

胚の“中身”を知る術が無い

くどいようですが、Gardner分類によるグレードはあくまでも“見た目”の評価でしかなく、胚盤胞を構成する細胞の機能や質、また染色体・遺伝子が正常かどうかは、PGTを行う以外に知る術はありません。見た目が悪くても“中身”である染色体は正倍数性で、細胞も正常に機能しているという胚盤胞は数多く存在します。

良好なグレードでも異数性胚が多く存在する

上記の通り、“見た目”が悪くても染色体が正常という胚が数多く存在するように、“見た目”がどんなに良好であっても、PGTの結果、染色体が異数性を示す胚も数多く存在します。実際、グレードAAやAB/BAという比較的良好なグレードの胚であっても、PGTで異常を示す『C:異数性胚』で返ってくることは非常によくあります。

児の障害リスクは妊娠中の環境も大きく影響する

また、児の障害リスクは様々な要因に影響を受けます。最も大きく関係しているものはやはり年齢で、21トリソミー(ダウン症)などの染色体異常のリスクは高齢になるほど顕著に増加することが知られています。また、両親の遺伝的な要因や、妊娠中の経過、環境的な要因なども児の障害リスクと大きく関係しています。具体的には、妊娠中の感染症や、栄養状態(栄養不足)、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病も先天性障害のリスクを高めると考えられています。

グレードが悪い胚盤胞から健康な赤ちゃんが生まれた実例

過去に私が受け持った患者様で、グレードの悪い胚から元気な赤ちゃんが産まれた症例をご紹介します。(※プライバシー保護のため、第三者からは患者様が特定できないように配慮しています)

【症例1】

採卵時33歳の患者様で、他院でAMHが低い(1.0以下だった)ことを指摘され、私のいるクリニックに転院してきてからはすぐに高度生殖医療を行うことになりました。

採卵で3個の卵子が採れ、3個とも顕微授精で受精。そのうち1個は培養の3日目に新鮮胚移植(分割期胚移植)して、余剰胚の2個は培養を継続することになりました。

余剰胚は2個とも胚盤胞に育ち、評価は4BA・4CBでした。

新鮮胚移植した胚が無事に着床し1人目をご出産され、翌年35歳の時に2人目をご希望されご来院されました。

1回目に4BAを移植しましたが、βhCGは少し上がったものの化学流産となってしまいました。

そして2回目の移植で4CBを戻すことになったのですが、ご自身のAMHの値から早発閉経の可能性もあり、「上手くいってもいかなくても、もう採卵はしません。これで最後にします」と仰られていたので、いまでもよく覚えている症例です。

患者様自身、胚のグレードが4CBと決して良くない評価であったため、半ば“ダメもと”という気持ちもあったようなのですが、妊娠判定で着床・妊娠が確認され、無事に2人目となる女の子をご出産されました。

【症例2】

採卵時40歳の患者様で、過去に大手を含め3件のクリニックを転院していて、私のいるクリニックに転院してきた時にはすでに7回も採卵を行っている患者様でした。

毎回、採卵をすればある程度卵子は採れ、受精も問題無く、胚盤胞にも育つものの、移植をしてもまったく着床しない(妊娠の反応が一切出ない)というケースでした。

私のクリニックで採卵を実施した際にも、結果的には6個の胚盤胞が育ちました。

評価は、4BA、4BA、4BB、4BC、4BC、4CBでした。

まずは、1回目に4BA、2回目に4BAと移植したものの、いずれもカスりもせず、当時はまだ新しい検査であったTRIO検査(ERA、EMMA、ALICE)を実施することになりました。

すると、『受容期前(Pre-Receptive)=移植する時期を遅らせる必要あり』という結果が返ってきました。

3回目は二個胚移植を実施することとなり、ERA検査の結果を考慮して移植の時間を計算して4BBと4CBの胚を移植しました。しかしながら、これでも一切妊娠の反応が出ず、4BC×2個が残るのみとなりました。

今でこそ、不育症関連の検査やPGT-Aなど新しい検査、手法が出てきてはいますが、当時はまだ保険診療が始まるずっと前であったため、先生を含めて『とにかく、この残りの2個に懸けて、やれることは全部やってみましょう!』という方針になりました。

2個ともアシステッドハッチングの透明帯完全除去法を実施し、当時はまだ新しかった胚移植専用培地であるEmbryoGlue(高濃度ヒアルロン酸添加培地)を取り寄せ、4BC→6BC×2個の二個胚移植を実施しました。

その結果、なんと妊娠判定で陽性が見られ、その後胎嚢も確認され(二個胚移植だったが、着床したのは1個だけだった)、無事に元気な男の子を出産されました。

胚培養士として長く働いている中でも、患者様の治療歴や年齢を含め、かなり苦労した症例であったことと、出産報告と一緒にお手紙と元気なお子さんのお写真をいただいたので、今でも印象に残っている症例です。

グレードが悪くなる原因と改善方法

と、ここまでグレードと児の障害リスクにはあまり関係性が無いということを解説してきましたが、とはいえ、やはり「なるべく良好なグレードの胚で移植の日を迎えたい!」と多くの方が願うのではないかと思います。

ここからは、グレードを下げてしまう要因と、改善方法について解説していきます。

生活習慣・ストレス・栄養状態

胚盤胞のグレードには、以下のような要因も大きく影響してきます。

酸化ストレス

喫煙習慣、飲酒習慣、睡眠不足などは卵子の質を低下させます。特に喫煙は、直接的な不妊症の原因となるほか、ご夫婦のいずれかあるいは両方に喫煙の習慣があった場合、妊娠率が半減するというデータも示されています。

⇒禁酒・禁煙の徹底はもちろん、睡眠時間の確保や適度な運動など、生活習慣の改善が必要です。ご夫婦のいずれかだけでなく、一緒に取り組むようにしてください。

栄養状態

特定の栄養が不足している状態は、卵子の質の低下や胚発生率の低下につながります。特にタンパク質、鉄・亜鉛などのミネラル、ビタミンB群、ビタミンC、葉酸などが不足すると、DNA合成に影響し、胚発育を阻害する可能性が示唆されています。

⇒栄養に偏りの無い、バランスの良い食事を心がける必要があります。また、暴飲暴食なども控えるようにしましょう。食事で摂りづらい栄養素は、サプリメントで積極的に摂るようにしてください。

オメガ3脂肪酸

DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3脂肪酸は、体内で生成することができない必須脂肪酸で、妊活中や妊娠中の女性に極めて重要な栄養素とされています。胎児の脳や神経の発達に不可欠であるほか、生殖細胞(卵子・精子)の質の向上に働くと考えられています。

⇒オメガ3脂肪酸を効率よく摂取するための食事様式として『地中海式食事様式』があります。イタリアやギリシャの食事様式を参考に、野菜や果物、穀物、魚介類、オリーブオイルなどを中心に摂取し、肉や乳製品などは控えめにするという方法です。

ストレス

身体がストレス状態にある時に、副腎皮質からコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれており、分泌が続くと身体的・精神的な悪影響を及ぼすとされています。身体的に不健康な状態は、生殖細胞の質を低下させます。

⇒趣味や運動などストレスを発散する時間や、パートナーや家族と過ごす時間をスケジューリングするなど、ストレスコントロールが大事です。

BMI(体格指数)

BMIとはヒトの肥満度の判定に用いられる体格指数のことで、BMI 18.5未満の痩せ型、ならびにBMI 25以上の肥満は、不妊の直接的な要因となることが知られています。また、妊娠率の低下、流産率の増加、その他妊娠時の胎児・母体のリスクの増加などが知られています。

⇒体重のコントロールは妊娠には必須です。クリニックによっては、妊娠時の母体や胎児へのリスクを考慮し、適正体重にならなければ治療を開始しないとするクリニックもあります。

移植の判断基準 – グレードだけで決めない総合的な視点

培養環境と最新の培養技術

近年、Gardner分類などの“見た目”のグレードとは別に、胚の発育過程から得られた情報を元にAIがスコアリングを行い、その点数で移植の順番や実施の有無を判定する方法も導入されるようになってきました。その背景には、カメラ内蔵型のタイムラプスインキュベーターの登場がありますが、従来の培養方法との大きな違いとして「定点的な観察」か「経時的な観察か」が挙げられます。

一昔前、タイムラプスインキュベーターが無かった頃は、胚の発育を観察するためには、インキュベーター(培養器)から培養ディッシュを取り出して顕微鏡下で胚を観察する必要がありました。

インキュベーターは、温度や気層環境など、女性のお腹の中に近い環境を保つように設計されているため、インキュベーターから観察のために胚を取り出すことは、胚に負荷を与えている可能性がありました。

一方のタイムラプスインキュベーターには、カメラがインキュベーターの中に内蔵されているため、胚をインキュベーターから取り出すことなく、負荷を与えずに観察を行うことが可能となりました。

加えて、従来の培養方法では、媒精の翌日、培養2日目、培養5日目、培養6日目と決められた日にちと時間に観察するため、観察を行った時点から、次に観察を行う時点までは胚の様子を伺い知ることは不可能であり、その間になにか異常な変化が起こっていても、それを知る術がありませんでした。

タイムラプスインキュベーターが導入されたことによって、媒精直後から胚盤胞までの成長を一気通貫で追っていくことが可能になったため、胚の発育過程の情報を得られるようになってきました。

“見た目”グレードではなく、胚の発育過程から得られた“スコア” 

また、新型モデルのタイムラプスインキュベーターにはAIが内蔵されており、胚の発育過程のそれぞれのポイントをAIがスコアリングしていき、従来のGardner分類とは別に、AIによって胚の発育過程に対して点数を出すことができるようになりました。

このAIスコアリングシステムが優れている点は、“見た目”の評価が4AAという良好なグレードの胚であっても、その発生過程に異常な所見が認められれば低いスコアを付け、反対に、見た目のグレードが4BCというような胚であっても、その発生過程にまったく問題が無ければある程度高いスコアを付けてくれるという点です。

例えば、『Direct Cleavage(ダイレクトクリーヴ)』という現象があります。通常、受精卵は1つの細胞が2つに、2つの細胞が4つに、というように細胞分裂を繰り返していきます。しかしながら、1つの細胞からいきなり3つ以上に、2つの細胞から5つ以上に分割されてしまう異常な分割が観察されることがあり、このような現象をDirect Cleavageと呼ばれています。

Direct Cleavageは、染色体分配の異常を引き起こし、染色体の異常や胚の発育を阻害する可能性が指摘されています。

従来の培養方法だと、1細胞→2細胞→4細胞と発育した胚なのか、1細胞→4細胞とDirect Cleavageだったのかを観察することが不可能であったため、最終的な“見た目”に頼るしか方法がありませんでしたが、タイムラプスインキュベーターが導入されたことによってこのような異常な発育過程を観察することが可能となりました。

このような胚に対してはAIが低いスコアを付けてくれるため、“見た目”からではなく、胚の発育過程という、より胚そのもののポテンシャルを反映している評価基準も合わせて、総合的に判断を行えるようになってきています。

施設によってはGardner分類のグレードよりも、AIによるスコアを優先して移植順位を決定するというクリニックも出てきています。

よくある質問 – 患者様から寄せられる不安や疑問

Q-A

よくある質問にお答えします。

Q1: BCやCCグレードでも移植すべき?

A1: 移植するべきだと思います。妊娠・出産できるかどうかは、胚の染色体が正倍数性(正常)であることが必須条件ですが、PGT-Aを実施しない限り染色体が正常かどうかはわかりません。

AAやAB/BAという胚であっても染色体異数性(異常)の胚もありますし、BCやCCでも染色体が正常な胚は存在します。これらのことを考慮すると、グレードが悪いことだけでは、移植を回避する理由にはなりにくいと思います。

Q2: グレードの良い胚盤胞を得るために今からできることはありますか?

A2: 喫煙や飲酒の習慣があれば、禁酒・禁煙の徹底はもちろん、睡眠時間の確保や適度な運動など、生活習慣の改善が必要です。また、暴飲暴食を控え、栄養に偏りの無い、バランスの良い食事を心がけることも重要です。食事で摂りづらい栄養素は、サプリメントで積極的に摂るようにしましょう。ご夫婦のいずれかだけでなく、一緒に取り組むようにしてください。

Q3: 他のクリニックでセカンドオピニオンを受けるべき?

A3: ご通院先の施設の治療方針に疑問を感じていたり、設備や検査機器が不十分であったりする(ご通院先の施設では受けることができない検査や実施できない技術がある)場合には、セカンドオピニオンを受けるのも一つのアイデアになると思います。

ただし、クリニックをころころ変える患者様が良い結果につながっているかというと、必ずしもそうでもありません。これは、私を含めた生殖医療に携わる多くの医療者が経験していることだと思います。

同じ施設であれば、治療が上手くいかなかった場合、治療をふり返り、改善し、新しい戦略を立てることができます。ころころ転院されてしまうと、何が良かったのか悪かったのかを反芻することが難しくなってしまいます。

信頼できる施設、信頼できる医師、信頼できる医療スタッフ、信頼できる胚培養士と出会えたら、ドシッと腰を据えて治療に取り組むことも大切です。

まとめ

今回のコラムでは、胚盤胞グレードと児の障害リスクについて、様々な角度から解説してきました。最後に、大切なことをもう一度、『胚の見た目のグレードと、児の障害のリスクはまったく関係がありません!』

確かにグレードは胚移植対妊娠率に影響しますが、児の健康には直接的に関係はしていません。

コラムの中でもデータで示した通り、生まれてくる児のリスクに関連しているのは、グレードではなく治療年齢であり、私自身の経験からも、BCやCCといったグレードでも元気な赤ちゃんはたくさん生まれています。

グレードの結果に一喜一憂してしまうお気持ちは本当によく分かりますし、治療を受けている方なら誰もが共通するお悩みだと思います。

しかしながら、いくらグレードで悩んだところで、グレードはあくまでも“見た目”だけの評価であり、本当に重要なのは“中身”です。それは、胚の発育過程が正常かどうか、染色体は正倍数性かどうかといったことです。そして、その“中身”は外からの観察だけでは絶対に判断することができません。

今回のコラムを通して、胚の良し悪しはグレードだけで決まるものでは無いということを改めてご理解いただけたら幸いです。

私たち不妊治療・生殖医療に携わる医療従事者は、子どもを望むすべての患者様の妊娠を心から願っています。治療を受けるにあたって、不安なこと、わからないことがあれば、遠慮なく質問してください。そして、納得いくまで説明を求めてください。それが、不妊治療の結果をご夫婦お二人の希望に沿うものにする最も重要なことだと思います。

私たち医療スタッフは、その想いに専心誠意寄り添っていけたらと考えています。

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