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初期胚移植の着床時期はいつ?胚培養士が解説する成功率を高める3つのポイント|症状・過ごし方まで完全ガイド

  • 公開日:2025.11.29
  • 更新日:2025.11.29
初期胚移植の着床時期はいつ?胚培養士が解説する成功率を高める3つのポイント|症状・過ごし方まで完全ガイド|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院


初期胚移植を受けられた方やこれから受けられる予定の方では、「移植する胚は無事に着床するだろうか?」「着床時期はいつ頃か?」という不安な気持ちを抱かれる方も多いのではないかと思います。実際に私は、これまで胚培養士として臨床において日々患者様とお話しする中で、移植前後に不安な時期を過ごされている患者様を数多く見てきました。今回のコラムでは、初期胚移植後の着床時期や移植後の過ごし方などについて、臨床の知見を交えながら詳しく解説していきます。

初期胚移植とは?胚培養士が解説する基礎知識

初期胚(分割期胚)の特徴

初期胚とは、受精後2~3日目の胚のことを指します。通常、受精卵(1細胞期)の状態から、2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞分裂を繰り返しながら分割していき、2日目であれば2~4細胞、3日目であれば8細胞くらいに分割しています。この状態のことを、分割期胚と呼ぶこともあります。

初期胚の段階では、細胞が大きく一つ一つの細胞がある程度はっきりと区別できます。胚培養の観察においては、Veeck分類と呼ばれる評価方法に基づいて、

細胞の大きさが均等か

フラグメント(細胞の断片)がないか

分割速度は適切か

などを詳しく評価していきます。培養中の胚が複数あり、初期胚移植を実施する場合には、その中から最も良い状態の胚を移植に選択します。初期胚移植では、胚盤胞移植と比較して、移植後にお腹の中で初期胚がさらに成長を進めていくというプロセスを経るため、自然な着床・妊娠により近い方法とも言えます。

初期胚移植を選択するケース

初期胚移植を選択する理由は患者様によって様々ですが、主には以下のようなケースが挙げられます。

初回の治療の患者様

高度生殖医療(体外受精)の治療が初回の方では、初期胚移植を選択することが多くあります。初回の治療では、詳しい不妊原因が特定できていないことも多くあり、初期胚移植では、胚盤胞移植での治療周期と比較して胚の培養期間も短く費用も安いため、最短でより自然に近い形で妊娠を目指すことが出来るためです。

年齢の若い患者様

年齢の若い患者様では、胚の“発育”に関する部分が不妊原因ではないことが考えられるため、なるべく早い段階で胚をお腹の中に戻すことで、妊娠を目指すことが可能です。一方で、胚の発育不良が不妊の原因となっている場合には、しっかりと胚盤胞まで育ったことを確認してから移植する方が確率は高くなります。

不妊原因が卵管因子の患者様

卵管閉塞や卵管狭窄など不妊原因が卵管にある場合では、精子が卵管を通過することが出来ず、卵子と精子が出会うことができていないことが妊娠のための障害となっています。卵管因子にある患者様では、精子と卵子の受精に関する部分だけを人の手を介して行い、なるべく早い段階でお腹の中に戻していくことで妊娠を目指すことができます。

初期胚移植後の着床時期はいつ?詳しいスケジュール

移植から着床までの具体的な日数

初期胚移植後、子宮に着床するまでには通常5~7日程度かかります。これは、移植した後に胚がお腹の中でさらに成長を続け、胚盤胞になってから着床するためです。

(1)移植当日(0日目)初期胚が子宮内に移植されます。
(2)移植後1~2日目胚は子宮内で分割を続けCompaction期胚、その後に桑実期胚というステージに成長していきます。
(3)移植後3~4日目胚盤胞へと発生し、大きく拡張します。
(4)移植後5~6日目拡張しきった胚盤胞は、透明帯から孵化(ハッチング)し、子宮と着床を始めます。 
(5)移植後7日目以降子宮への完全な着床が完了し、胎盤の形成が始まります。

⑵・⑶は、培養室でも同様の胚の成長過程が観察されます。ただし、子宮内では培養液では再現できない胚側と子宮側の複雑な相互作用が起きており、それが胚の発育や、着床の成立に重要な役割を果たしていると考えられています。

着床の過程で起こる変化

着床という現象は、単に胚が子宮内膜にくっつくだけではなく、実は以下の通り、非常に複雑なプロセスを経ています。

Apposition(アポジション;接近):胚と子宮内膜の間で様々な化学的因子によるやり取り(クロストーク)が行われます。胚側・子宮側がお互いを認識し合います。

Adhesion(アドヒージョン;接着):胚が、子宮内膜のうち最も着床に適した場所を探しながら移動していき、子宮内膜に接着します。

Invasion(インベーション;侵入):接着した胚が、子宮内膜の中に侵入していきます。この時、胚から分泌される酵素によって子宮内膜に根を下ろすように浸潤していきます。

2024年に、アメリカ生殖医学会が発刊する学術誌であるFertility&Sterilityで報告された新しい研究では、この過程で胚と母体の免疫に関わるいくつかの特定因子の相互作用が、着床の成否に大きく関わることが明らかになっています。

hCG値の上昇と妊娠判定時期

着床が始まると、胚(※正確には絨毛組織)からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され始めます。hCGの上昇パターンには個人差がありますが、一般的に、着床開始から2~3日後には血中でhCGが検出可能なレベルに達します。初期胚移植の場合、移植後12~14日目に妊娠判定を行うことが多いです。この時期になると、妊娠が成立している場合はhCG値が20~100 IU/L以上になっていることが期待されます。

ただし、hCG値には個人差があり、低めでも正常に妊娠が継続する方もいれば、高めでも流産となってしまう方もいます。重要となるのは、hCG値は時間の経過(約2日程度で)とともにで約2倍以上に上昇するため、hCG値がどのくらい上昇しているかが正常な妊娠経過を辿っているかどうかの指標となります。

着床の時期に現れる症状と注意すべきポイント

着床のタイミングでよく見られる症状とは?

着床の時期に現れる症状については、患者様からよく質問を受けます。以下に代表的な症状をご紹介しますが、これらはすべての方に現れるわけではなく、着床していなくてもこのような症状を感じる方もいらっしゃいます。

最もよく聞かれる症状は、下腹部の軽い痛みやチクチクした感覚です。これは着床時に子宮内膜に変化が起きることで生じると考えられています。また、少量の出血(着床出血)が見られることもあります。通常、茶色っぽいおりものや、薄いピンク色の出血として現れ、生理とは明らかに異なるごく少量のものです。

その他、胸の張りや痛み、軽い吐き気、味覚の変化、疲労感、基礎体温の高温期の継続なども報告されています。ただし、これらの症状は黄体ホルモンの影響でも起こりうるため、必ずしも着床を意味するわけではありません。

症状が無い場合は着床していない?

ここで強調したいのは、着床症状が全く無くても妊娠は成立している可能性があるということです。実際、臨床でのデータを見てみると、妊娠された方の約半数は特に自覚症状がなかったことが報告されています。症状の有無は、個人の感受性の違いや、ホルモンに対する反応性の差によるものです。症状がないことで「着床していないのでは?」と不安になる方もいらっしゃるかと思いますが、その必要は一切ありません。むしろ、症状を探すあまりストレスを感じることの方が、着床・妊娠の成立に良くない影響を与える可能性があります。最も確実なのは、予定された妊娠判定日に血液検査でhCG値を確認することですので、それまではできるだけリラックスして過ごすことが大切です。

この時期に避けるべきことは?

着床のタイミングは非常にデリケートな時期ではあるものの、多くのクリニックでは、なるべく普段通りに過ごしていただくように指導しています。ただし、激しい運動や重い物を持つことは避けた方がよいでしょう。適度な運動は問題ありませんが、息が上がるような激しい運動は子宮への血流を一時的に減少させる可能性があります。また、高温環境(サウナ、長時間の入浴)も避けた方が良いでしょう。体温の上昇は胚の発育に影響を与える可能性があります。喫煙と飲酒は絶対に避けるようにしてください。これは、体外受精や胚移植に関わらず、妊活・妊娠では禁忌です。受動喫煙でも着床率が半減することが報告されています。カフェインについては、1日200mg以下(コーヒー1~2杯程度)であれば問題無いとされていますが、心配な方は控えていただくことをお勧めします。

胚培養士が教える着床率を高める3つのポイント

移植前の子宮内膜の準備しましょう

着床率を高めるために重要となるのは、子宮内膜の状態を整えることです。移植前の子宮内膜の厚さは10mm以上あることが理想的であるとされています。良好な胚を移植しても着床しない場合、子宮側に問題があることも少なくありません。また、子宮内膜の厚さだけでなく、血流パターンや内膜の構造も重要であることがわかっています。ビタミンD、葉酸、鉄分などの不足しがちな栄養素を適切に摂取することで、子宮内膜の質を改善できる可能性があります。特にビタミンDは、近年の研究で子宮内の環境改善と着床率との強い相関が報告されており、不足している方は補充をお勧めします。

移植後の過ごし方に注意しましょう

移植後の過ごし方について「安静にした方が良いでしょうか?」といった質問をよく受けますが、移植日以降に安静に過ごしても着床率は改善されないことが明らかになっています。安静にし過ぎるよりも、適度に動いて血流を保つことが大切です。軽いウォーキングや家事程度の活動はまったく問題ありませんし、オフィスワークをされている方では普段通りお仕事をしていただいて構いません。ただし、移植当日は無理をせず、ゆったりと過ごすことをお勧めします。

食事については、バランスの良い食事を心がけ、特に葉酸、鉄、ビタミンC、カルシウム、ビタミンDを意識的に摂取してください。これらの栄養素は、胎児の初期の発育に重要であると考えられています。身体を冷やさないよう、温かい飲み物や食べ物を選ぶことも大切です。

ストレス管理の重要性を理解しましょう

身体的・精神的なストレスが着床に与える影響の大きさも理解する必要があります。慢性的なストレスは、コルチゾールというホルモンの分泌を増加させ、着床環境を悪化させる可能性があります。代表的なストレス管理法としては、深呼吸、瞑想、ヨガ、アロマテラピーなどが挙げられますが、個人によって最適な方法は異なります。また睡眠も重要で、睡眠によってヒトの内分泌系はリセットされます。一日7時間程度の睡眠を心がけるようにしましょう。パートナーや信頼できる人と気持ちを共有することも大切です。周囲の方々の理解も得られるとよいかもしれません。

初期胚移植の着床・妊娠率と最新データ

年齢別の着床・妊娠率

初期胚移植の成功率は、年齢によって大きく異なります。日本産科婦人科学会の2023年データを基に、当院での実績も含めてご紹介します。

30歳未満胚移植対着床率/約30~38%
30~34歳胚移植対着床率/約25~33%
35~39歳胚移植対着床率/約18~28%
40~42歳胚移植対着床率/約8~15%
43歳以上胚移植対着床率/約5%以下

初期胚移植の移植対着床率は、胚盤胞移植と比較すると低いです。これは、初期胚移植では、移植後にお腹の中で初期胚がさらに成長を進めて胚盤胞に育つこと、胚盤胞が透明帯から孵化すること、というプロセスを経るためです。また、この数字は着床率のデータであり、出産率まで見るとこの数字よりもさらに低くなります。

胚のグレードと着床の関係

初期胚(分割期胚)は、Veeck分類と呼ばれる国際的な評価方法に基づいてグレードが付けられていきます。主には①細胞のサイズの均等性、②フラグメントの量、によって1(良好)~5(不良)までで評価されます。

Veeckグレード1:細胞の大きさが均等で、フラグメントが認められない。

Veeckグレード2:細胞の大きさが均等で、フラグメントがやや認められる。

Veeckグレード3:細胞の大きさが不均等でフラグメントがやや認められる。

Veeckグレード4:細胞の大きさが不均等でフラグメントが全体の25%以上に認められる。

Veeckグレード5:細胞の大きさが不均等でフラグメントが全体の50%以上に認められる。

グレードの良い胚ほど着床率は高いですが、Veeckグレード1~3の胚では着床率はあまり変わらないというデータも報告されています。

よくある質問(FAQ)

Q1.胚移植のあとはお風呂に入っても大丈夫ですか?

A1.入浴については、移植日の当日はシャワー欲のみにしてください。翌日からは普通に入浴していただいて構いません。ただし、長時間の入浴や熱いお湯は避けるように注意してください。

Q2.移植を受けた後は仕事をしてもいいですか?

A2.お仕事については、デスクワークなど身体的負担の少ない仕事であれば、移植翌日から可能です。立ち仕事や重労働はなるべく控えていただき、業務を軽減することをお勧めします。ストレスを感じすぎないことが非常に重要となるため、仕事をすることで気が紛れるという方は、無理のない範囲で続けていただいて構いません。

Q3.着床出血はいつ起こりますか?

A3.着床出血は、胚が子宮内膜に着床する際に血管が傷付けられることで起こる現象であると考えられています。通常、移植後7~12日目頃に見られることが多いですが、誰にでも必ず起こる現象ではありません。

Q4.着床出血と生理の開始との見分け方はありますか?

A4.着床出血の出血量は一般的にはごく少量で、ティッシュに薄く付く程度から、おりものに混じる程度と報告される患者様がほとんどです。色は茶色っぽいか、または薄いピンク色の場合もあります。持続期間は1~2日程度であり、生理のように出血が続く場合は着床出血ではない可能性が高いです。

Q5.着床時に感じる自覚症状にはどんなものがありますか?

A5.着床前後に表れる症状には、下腹部の軽い痛みやチクチクした感覚、少量の出血(着床出血)、胸の張りや痛み、軽い吐き気、味覚の変化、なども報告されています。ただし、これらの症状は黄体ホルモンの影響でも起こりうるため、必ずしも着床を意味するわけではありません。

また、このような症状が全く無くても妊娠は成立している可能性があります。

まとめ

今回のコラムでは、初期胚移植後の着床時期について、臨床の視点から胚培養士より詳しく解説してきました。初期胚移植での子宮内膜への着床は移植後5~7日目に起こり、その過程は非常に複雑なプロセスを経るものです。

何より大切なのは、症状の有無に一喜一憂せず、適切な生活を心がけるということです。インターネット上の情報に振り回されたり、それによってストレスを感じたりすることは、かえって妊娠の妨げになってしまう可能性もあります。

移植後は、周囲の方々やパートナーとも気持ちを共有しながら、穏やかな気持ちで判定日を迎えていただければと思います。とはいえ不安な気持ちも確かにあるかと思いますので、そんな時はわれわれ医療スタッフにいつでもご相談いただけたらと思います。

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