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体外受精(cIVF)と顕微授精(ICSI)の違いって何?現役胚培養士が選択基準と成功率データを徹底解説【2025年最新】

  • 公開日:2025.11.13
  • 更新日:2025.11.13
体外受精(cIVF)と顕微授精(ICSI)の違いって何?現役胚培養士が選択基準と成功率データを徹底解説【2025年最新】|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

「体外受精と顕微授精って何が違うの?」

「どっちの方がいいの?」

不妊治療、特に将来的に高度生殖医療を検討されているご夫婦の中には、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?媒精方法の選択は、卵子と精子の受精や培養の結果を左右する重要な決断となるため、不安や迷いを感じる場面もあるかと思います。

今回のコラムでは、体外受精と顕微授精の違いから、適応となる症例、受精率、費用まで、胚培養士の視点から詳しく解説していきます。皆さまが納得して治療法を選択できるように、その一助となりましたら幸いです。

体外受精と顕微授精の基本的な違いとは

体外受精(cIVF)の仕組みと特徴

体外受精(cIVF:Conventional In Vitro Fertilization)は、採卵によって採取した卵子に精子を培養液の中で受精させる方法です。シャーレ(培養皿)の中に卵子を置き、その周りに運動性の良好な約10~20万個の精子をふりかけるように媒精します。

このような手法から、クリニックによっては「ふりかけ」と呼ぶ施設もあります。

体外受精の特徴は、体内で起こる受精のプロセスを体外で再現することで、より自然に近い形で受精をさせることにあります。一方で、精子の運動性や濃度(精子の数)が十分でない場合は、受精が起こりにくくなってしまうというデメリットもあります。

顕微授精(ICSI)の仕組みと特徴

顕微授精(ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injection)は、細いガラス針を使って、運動性や形態に優れた精子を1個選び、卵子の中に直接注入する方法です。経験を積んだ胚培養士が、顕微鏡下で精子を約400~1000倍以上に拡大し精子を選別していきます。

顕微授精の特徴は、精子の運動性が低い場合や、数が極端に少ない場合でも受精を可能にすることにあります。

顕微授精は、1992年に初めて成功して以来、特に男性不妊の症例で実施されてきました。現在では、半数以上の症例において顕微授精が選択されています。ただし、卵子に針を刺すという物理的な操作が加わるため、実施者の“技量”が結果に影響することもあります。

媒精方法の違いを理解する

体外受精と顕微授精は、いずれも卵子と精子を受精させる媒精の手法ですが、この2つの方法の大きな違いは、受精のプロセスと、卵子への精子のアプローチにあります。

体外受精では、卵子の周りに精子をふりかけて受精を図るため、卵子と受精する精子は自然選択によって選ばれ、精子が自力で卵子の細胞に侵入します。一方の顕微授精では、胚培養士がそれぞれの目で選んだ1個の精子を、卵子の細胞内に直接注入するため、人の目で精子の選別を行います。

卵子と精子の受精後、受精卵(胚)が育っていく過程には、体外受精でも顕微授精でも違いはありません。

どちらを選ぶべき?適応となる症例の違い

体外受精が適しているケース

体外受精は、以下のような場合に推奨されます。

精液検査の結果が正常範囲内であること

WHO(世界保健機関)の基準値である、精子濃度1600万/ml以上、運動率42%以上、正常形態率4%以上(奇形率96%未満)などを満たしている方では体外受精が推奨されます。

不妊原因が卵管因子にあるケース(卵管閉塞・狭窄、卵管水腫など)

卵管因子によって、そもそも精子と卵子が出会えていないことが不妊の原因となっている患者様では、体外受精が有効な方法となります。

不妊原因が子宮や卵巣などの婦人科系疾患にあるケース

不妊の原因が子宮や卵巣などの婦人科系疾患にあり、卵子と精子の受精には障害が無いことが分かっている場合では、体外受精が有効な方法となります

体外受精のメリットは、自然選択によって受精する精子が選ばれるため、人の目では判断することが出来ない遺伝的に優れた精子が選択される可能性があることです。また、顕微授精と比べて卵子へのダメージが低く、費用も抑えられるという点もメリットとして挙げられます。

顕微授精が推奨される場合

顕微授精が推奨されるのは、主に不妊症の原因が男性側にある男性不妊症例です。

具体的には、WHOの基準値に基づいて、精子濃度が1600万/ml未満(乏精子症、無精子症)、運動率が42%未満(精子無力症)、正常形態率4%未満(奇形精子症)などのケースです。特に、精液中に精子がほとんど認められないといった重度乏精子症や無精子症では、顕微授精が第一選択となります。

また、体外受精によって「受精障害」が認められたケースでも、次回以降の治療周期で顕微授精を選択していくこともあります。目安としては、体外受精による受精率がおおよそ半分以下だった場合、次回以降は顕微授精を提案するか、スプリット媒精(採卵で採れた卵子を2つのグループに分け、それぞれ、体外受精と顕微授精を実施する)を行うことが多いです。

加えて、採卵数が少ない場合でも、顕微授精を選択するケースが多いです。これは、顕微授精では精子を人為的に卵子の細胞内に入れ込むことから、受精率が体外受精と比較して高いためです。

胚培養士が見る選択基準のポイント

体外受精か顕微授精かの選択は、基本的には精液検査の所見や精子精製後のデータを基に判断し、患者様にご提案していきます。ただし、単純なデータだけではなく、治療時の年齢、不妊の期間、治療歴、病歴、採卵数、などを総合的に検討していきます。

例えば、精液データがWHOの基準値内であっても、女性の年齢が40歳以上の場合は、初回から顕微授精を選択することがあります。これは、40歳以上になると保険診療で受けられる治療回数が減るため、限られた回数の中で、より受精卵を得られる可能性の高い方法を選択するという理由からです。

重要なのは、患者様一人一人のバックグラウンドに合わせて最適な方法を選ぶことであり、医師と連携しながら経験とデータを基に最良の提案をさせていただいています。不安な点があれば、遠慮なく質問していただければと思います。

成功率と費用の違いを徹底比較

年齢別の妊娠率データ

日本産科婦人科学会の2022年データ(ARTデータブック)によると、体外受精と顕微授精の妊娠率に大きな差はありません。35歳未満ではいずれの媒精方法でも胚移植一周期あたりの妊娠率は約35~40%と報告されています。35~39歳では両方とも約25~30%、40歳以上では約10~20%となっています。

これは、媒精方法の違いは、受精率や胚発生率には差があるものの、着床・妊娠後の予後には大きく影響しないことを示しています。

ただし、男性因子が重度の場合、媒精方法として顕微授精しか選択肢が無いケースもあり、単純な比較は難しいのが実情です。高度生殖医療によって生まれた子どもの予後については、顕微授精でも体外受精でも差がないことが確認されており、子どもの発達や障害の有無にも違いはなく、自然妊娠と比較しても安全性が証明されています。

治療費用の内訳と保険適用について

2022年4月から不妊治療が保険適用となり、患者様の経済的負担は大幅に軽減されました。

保険診療では、採卵の基本料金は約5万~10万円で採れた個数によって変動し、体外受精の基本料金が約5万円、顕微授精はこちらも個数によって変動しますが約5~12万円となっています(3割負担の場合)。体外受精と顕微授精の金額差は、顕微授精では必要となる機器や培養液に加えて、胚培養士の技術量があるためです。

ただし、これは基本料金のみで、実際には生殖補助医療管理料や胚の培養費用、薬剤費、胚凍結・融解、移植などの費用が加わります。トータルでは、体外受精で1周期約30万円、顕微授精の場合は約40万円程度になることが多いです。保険適用には回数制限があり、40歳未満では6回まで、40~43歳未満では3回までとなっています。

自費診療を選択する場合は、施設により大きく異なりますが、1周期50~80万円程度かかることもあります。一方で、自費診療では最新の培養技術や、保険適用外の薬剤、検査・治療を受けられるメリットもあります。経済面と治療内容のバランスを考えて選択することが大切です。

コストパフォーマンスの考え方

治療の費用対効果を検討する際、単純に1回の治療にかかる費用だけでなく、妊娠・出産までの総合的費用を考慮することが重要です。

例えば、媒精方法は一概にどちらの方法が良いというものではなく、『受精率』で見ると顕微授精の方が高いですが、『胚盤胞発生率』で見ると体外受精の方が高いです。良好な胚盤胞に育たなければ、採卵から移植という次の治療ステップに進むことができないため、いずれかの方法にこだわりすぎると、極端な場合、受精はするが胚盤胞に育たない、あるいはその逆になる可能性もあります。

また、無事に妊娠した後、出産までにも大きな費用が掛かります。不妊治療は決して「妊娠したから終わり」という治療ではないということを、あらかじめ認識しておく必要があります。

加えて、自治体などから受けられる助成金制度も積極的に活用することをお勧めします。

各都道府県・市区町村によって、助成金の制度や中身が大きく異なるため、治療を開始される前に、お住まいの自治体にどのような助成金制度があり、利用できるのか、を確認しておくとよいでしょう。

長期的な視点で、無理のない治療計画を立てることが、結果的に良い結果につながるのではないかと考えています。

治療の流れと培養期間の違い

採卵から移植までのスケジュール

体外受精と顕微授精では、採卵までの過程は同じですが、採卵後の培養室での作業に違いがあります。採卵は通常午前中の早い時間帯に行われ、体外受精では採卵後3~4時間の前培養の後に精子とあわせていきます。一方、顕微授精では採卵後に卵子の成熟度を確認し、卵子の成熟が確認できてから3~4時間の前培養を行い、紡錘体の形成を確認してから顕微授精を行います。

受精の確認は、いずれの方法でも翌日の朝に行います。正常受精が確認できた胚は、初期胚で凍結予定の場合は2~3日、胚盤胞で凍結予定の場合は5~6日間培養を続けます。

移植は、新鮮胚移植の場合では採卵後3日目または5日目、凍結融解胚移植の場合では次周期以降に行います。

培養過程での違いと観察ポイント

培養過程において、体外受精と顕微授精で最も異なるのは受精直後の観察ポイントです。卵子と精子が正常に受精すると、受精卵の細胞の中に2つの前核が確認できるようになります。われわれは、この2つの前核が観察されることを以て正常な受精か否かを判断していますが、体外受精では、まれに多精子受精(※卵子の中に2個以上の精子が侵入すること)が起こることがあります。多精子受精は異常な受精であり、赤ちゃんになることは無いため、体外受精を実施した卵子ではより慎重に受精の確認を行います。

顕微授精では、1個の精子のみを注入するため多精子受精のリスクは低いですが、卵子の活性化不全(受精の反応が起こらない)や、変性(卵子がダメージを受ける)のリスクがあります。

近年では、タイムラプスインキュベーターを使用することで、胚の発育を首尾一貫して連続的に観察できるようになりましたが、より詳細な観察や判断を行うためには、やはり胚培養士の目で観察を行うことがとても重要です。

胚の発育に与える影響

「顕微授精は胚の発育に影響を与えるのか?」という質問をよく受けます。

確かに、データ上では体外受精で受精したものの方が胚盤胞発生率は高いのですが、結論から言えば、差はほとんどないと思います。

私たちの施設では、いずれの方法でも多くの受精卵が良好な胚盤胞に育っており、媒精方法間で数字上の差はあるものの、統計的な“有意差”は認められていません。

付け加えると、われわれの施設のデータや、日本産科婦人科学会が示しているようなデータの中には、年齢的な要因や、重度の男性不妊などによって顕微授精しか選択肢が無かった症例も数多く含まれています。偏った患者様のバックグラウンドによって、すでにバイアスがかかっている可能性もあり、このような症例を除けば数字上の差は確実に縮まります。

重要なのは、受精方法へのこだわりよりも、その前段階として、男女ともにいかに健康状態を整え、質の良い卵子、質の良い精子を得ることができるか?だと思います。

よくある質問と胚培養士からのアドバイス

Q1.顕微授精の方が成功率は高いのですか?

A.「顕微授精の方が成功率は高いから、顕微授精を選びたい」というご要望をいただくことがありますが、この成功率が何を指すか?によって考え方は大きく変わり、そもそもの認識としては正しくありません。

体外受精と顕微授精では、受精率は顕微授精の方が高いですが、胚盤胞発生率は体外受精の方が高い傾向にあります。胚盤胞まで育たなければ、凍結や移植という次の治療ステップに進むことはできないため、どこに重きを置くかによって、どちらの方法が適しているかは変わります。

Q2.顕微授精のリスクやデメリットにはどんなものがありますか?

A.顕微授精は、卵子の細胞にガラス針を穿刺して受精を図る方法であるため、卵子に物理的なストレスやダメージがかかる可能性があります。また、費用的な面でも顕微授精の方が高価であるため、コストを考慮した場合、治療費用が高くなります。

「侵襲的な治療=良い結果」「コストの高い治療=良い結果」では無いということです。

Q3.精子が少なくても体外受精はできますか?

A.精液検査の結果だけでなく、精子精製後のデータも媒精方法の選択には重要なポイントです。例えば、精子濃度が基準値をわずかに下回る程度(1000~1500万/ml)で、運動率が良好な場合、精子精製によって良好な精子が数多く回収出来ることも多くあり、十分に体外受精が選択できるデータになることもあります。

一方、濃度が正常であっても運動率が極端に低い場合や、奇形率が基準値を超える場合は、顕微授精を推奨することが多いです。

精液所見は、日によって変動することも多いため、普段の検査では問題が無くても、採卵日当日にデータが不良ということも臨床ではよくあります。

Q4.精液検査の結果はどのように読み取ったらいいですか?

A.基本的には、WHOが示す基準値に則って正常か否かを判断していきますが、知っておいていただきたいポイントとして、精液データはその時の体調や生活習慣、ストレス、環境などによって大きく変わることがあるということです。

WHOやアメリカ生殖医学会でも、1回の検査結果だけでは判断せず、複数回の検査結果を以て総合的に判断することを推奨しています。われわれは、採卵当日の精液所見によって、治療法を柔軟に変更していきます。

Q5.1回目の治療で上手くいかなかったら、次回以降は治療方法を変えた方がよいのでしょうか?

A.2回目以降の方針をどう考えるかは非常に難しい問題です。基本的には、過去の治療データを詳細に分析して、次回の方針決定に役立てていきます。

例えば、体外受精で受精率が50%未満だった場合には、次回以降は顕微授精で行うか、半分ずつ行うスプリット法を検討します。

逆に、顕微授精で良好な胚盤胞が得られなければ、年齢が高くても一部を体外受精で行うこともあります。1回の結果だけで全てを判断することは極めて難しいため、「1回目でダメだったから次はガラッと変えて!」と、してしまうと、逆に悪い結果になってしまうこともあります。

Q6.治療方針を変えたい場合にはどんなことに注意したらよいでしょうか?

A.治療方針の変更と言っても、媒精方法だけでなく、卵巣刺激法の変更、使用する薬剤、移植のタイミング、ホルモンのコントロールなど、改善可能なポイントは多岐にわたります。中には、特別な検査を要する項目もあるため、医師と相談しながら治療方針を決められるようにしてください。

まとめ

体外受精・顕微授精のそれぞれの媒精方法には、メリット/デメリットがあり、それぞれの方法が適する症例は異なります。重要なのは、画一的な治療ではなく、患者様一人一人のバックグラウンドに合わせた最適な方法を選択していくことです。

私たち胚培養士は、日々の経験と蓄積されたデータをもとに、最良の結果を目指して治療にあたっています。どちらの方法を選ぶべきか迷った場合には、全力でサポートさせていただきます。

不妊治療は時に長い道のりになることもありますが、ご夫婦でともに協力をしながら進められるようにしてください。

ご不明な点があれば、遠慮なく当院のスタッフにご相談ください。

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