「今月も生理が来てしまった」「排卵日に合わせているつもりなのに、なかなか結果が出ない」。そんな思いを抱えながらこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。インターネットには「排卵日当日が一番」「2〜3日前がいい」とさまざまな情報があふれていて何を信じればよいのか迷ってしまいますよね。
私たちのクリニックにも「タイミングは合っていたはずなのに」と悩みを打ち明けてくださる方が毎日のように来院されます。でも、結果が出ないのはあなたの努力が足りないからではありません。妊娠しやすい時期には医学的な根拠があり、それを正しく知るだけで毎月のチャンスをもっと有効に活かせるようになります。
この記事では生殖医療専門医の立場から「妊娠しやすい時期はいつか」という結論にはじまり、排卵日の見つけ方、年齢ごとの妊娠率、受診を考えるタイミングまで、学会や公的機関の情報をもとにわかりやすく解説します。
結論:妊娠しやすい時期は「排卵日の2日前〜前日」
最初に結論をお伝えします。1回の月経周期のなかで最も妊娠しやすいのは、排卵日の2日前から前日です。そして妊娠の可能性がある期間は、排卵日の5日前から排卵日当日までの約6日間に限られます。
「排卵日=一番妊娠しやすい日」と思われがちですが、実は排卵日当日は確率がやや下がり始め、翌日以降はほとんど妊娠しません。この「少し前倒し」の考え方が妊活の結果を左右する大切なポイントです。ここからはなぜそうなるのかを体の仕組みから説明していきます。
これは私たちだけの見解ではありません。日本産科婦人科学会も一般向けの解説の中で、最も妊娠しやすいのは排卵の1〜2日前から排卵当日にかけてだと説明しています。
妊娠できるのは1周期のうち約6日間
女性の卵巣では原則として1周期に1回だけ排卵が起こります。排卵された卵子が卵管で精子と出会い、受精卵となって子宮内膜にたどり着く(着床する)ことで妊娠が成立します。
医学的には、妊娠の可能性がある期間を「妊娠可能期間(ファータイル・ウィンドウ)」と呼びます。1995年に米国で発表された研究(Wilcoxら)では、妊娠が成立した性交はすべて、排卵日とその前の5日間、計6日間に集中していました。妊娠の確率は排卵日に近づくほど上がり、排卵日の2日前〜前日にピークを迎えます。
つまり、1か月(約30日)のうち本当にチャンスがあるのは6日ほど。だからこそ、その6日間をいかに逃さないかが大切になるのです。
排卵日当日より「前」がよい理由
排卵日当日よりも前のほうが妊娠しやすい理由は、卵子と精子の「寿命の違い」にあります。卵子の寿命はとても短く、精子のほうが長生きです。そのため、排卵が起きてから精子を送り込むよりも、あらかじめ精子を卵管で待機させておく「待ち伏せ」のほうが、受精のチャンスが大きくなります。
卵子の寿命は排卵後約24時間
日本生殖医学会の「生殖医療Q&A 2025」によると、排卵された卵子が生きていられるのは排卵後およそ24時間です。さらに、受精に適した状態が保たれる時間はそれより短く排卵後の半日ほどと考えられています。時間がたつほど卵子の質は低下し受精しても育ちにくくなることがわかっています。
排卵日の翌日に性交をしても妊娠しにくいのはこのためです。「排卵したと気づいてから」では、すでにチャンスの大半が過ぎていることも少なくありません。排卵の兆候を感じてから慌てるのではなく、排卵を予測して先回りすることが妊娠への近道になります。
精子の寿命は2〜3日(最大5日程度)
一方、精子の寿命は女性の体内で通常2〜3日、長い場合で5日程度とされています。記事によって「72時間」「5日」と数字が違うのはこのためで、受精する力を十分に保っているのは2〜3日と考えておくとよいでしょう。
また、射精された直後の精子にはまだ受精する力がありません。女性の体内を進むあいだに数時間かけて受精できる状態に変化します(受精能獲得)。精子が卵管の奥にたどり着き、受精できる状態で卵子を待っていられること。これが「排卵日の2日前〜前日」が最も妊娠しやすい理由です。
排卵日はいつ?月経周期別の目安
妊娠しやすい時期を知るには、まず自分の排卵日の見当をつける必要があります。ポイントは、排卵日は「生理が始まってから14日目」ではなく「次の生理予定日のおよそ14日前」と考えることです。排卵後から次の生理までの期間(黄体期)は比較的一定で、人による差が小さいためです。
月経周期が28日の場合
月経周期とは、生理が始まった日を1日目として次の生理が始まる前日までの日数です。日本産科婦人科学会では正常な月経周期を25〜38日としています。
周期が28日で安定している方なら排卵日は生理開始から14日目ごろが目安です。日本産科婦人科学会も、月経が規則的な女性では月経開始から約2週間後に排卵すると説明しています。最も妊娠しやすいのはその2日前〜前日にあたる12〜13日目ごろ、妊娠可能期間は9〜14日目ごろとなります。ただし、同じ人でも体調やストレスで排卵が数日ずれることは珍しくありません。計算で出した日は「中心となる目安」と考え前後に幅をもたせておきましょう。
周期が長い・短い・不規則な場合
周期が35日の方は生理開始から21日目ごろ、25日の方は11日目ごろが排卵日の目安です。周期が長い方ほど排卵は後ろにずれるため「14日目」を基準にするとチャンスを逃してしまいます。
周期が毎月大きく変わる方や、38日を超える方は計算での予測が難しくなります。多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺の病気など、排卵がうまく起きていない原因が隠れていることもあります。周期が不規則な方は、自己流で悩み続ける前に一度婦人科で相談することをおすすめします。
日本産科婦人科学会は月経が不順な場合、生理のような出血があっても実際には排卵していないことがあると注意を促しています。「出血があるから排卵もしている」とは限らない点はぜひ知っておいてください。
排卵日・妊娠しやすい日を知る方法と精度の違い
排卵日を知る方法は、大きく「基礎体温」「排卵検査薬」「おりものの変化」「クリニックでの検査」の4つです。ここで知っておいていただきたいのは、方法によって「事前に予測できるもの」と「あとから確認できるもの」があるということ。妊娠しやすいのは排卵の前なので予測できる方法を組み合わせることが大切です。
| 方法 | わかること | 予測・確認 | 精度の目安 |
|---|---|---|---|
| 基礎体温 | 排卵があったか、周期のリズム | あとから確認 | 低〜中 |
| 排卵検査薬 | 排卵が近いこと(LHの急上昇) | 1〜2日前に予測 | 中〜高 |
| おりものの変化 | 排卵が近づいている兆候 | 数日前に予測 | 低〜中 |
| 生理管理アプリ | 過去の周期からの推定日 | 予想のみ | 周期が不規則だと低い |
| クリニックの超音波・血液検査 | 卵胞の大きさ、ホルモン値、排卵の有無 | 予測と確認の両方 | 高 |
基礎体温:振り返りには有用、予測には不向き
基礎体温とは、朝起きてすぐ体を動かす前に測る体温のことです。排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用で体温が0.3〜0.5℃ほど上がり生理が来るまで高温期が続きます。
基礎体温の弱点は、体温が上がったときにはすでに排卵が終わっていることが多い点です。そのため「今日が排卵日」と当日に判断するのには向きません。一方で、2〜3周期記録を続けると自分の排卵がだいたい何日目に来るのか、きちんと排卵しているのかがわかります。高温期が10日に満たない低温期と高温期の差がはっきりしないといった場合は、ホルモンの働きに問題があるサインかもしれません。受診の際に持参すると医師にとって大切な情報になります。
排卵検査薬(LH検査薬):陽性の日と翌日がチャンス
排卵検査薬は、尿に含まれる「黄体形成ホルモン(LH)」の量を調べる検査薬です。LHは排卵の直前に急激に分泌が増え(LHサージ)、そこからおおむね1日〜1日半以内に排卵が起こります。陽性になった日とその翌日が最も妊娠しやすいタイミングと重なります。
使い始めは予想される排卵日の数日前からが目安です。周期にばらつきがある方は、これまでで一番短い周期を基準に早めに始めましょう。ただし、多嚢胞性卵巣症候群の方などはLHがもともと高く、陽性が続いて判断しにくいことがあります。何周期使っても陽性にならない場合は、排卵が起きていない可能性もあるため医療機関で確認してください。
おりもの(頸管粘液)の変化
排卵が近づくと子宮の入り口(子宮頸管)から分泌される粘液が増え、透明で卵白のようによく伸びる状態に変化します。これは精子が子宮の中へ進みやすくするための体の自然な準備です。
この「よく伸びる透明なおりもの」が見られる時期は妊娠可能期間とおおむね重なります。費用がかからず毎日チェックできるのが利点ですが、体調や感染症の影響でも変化するため単独で判断するのは難しい方法です。基礎体温や排卵検査薬と組み合わせて「そろそろかな」と気づくきっかけとして活用するのがおすすめです。
日本産科婦人科学会によると、この粘液がうまく分泌されないと精子が子宮や卵管まで届きにくくなり、不妊の原因(子宮頸管の異常)になることがあります。排卵期になってもおりものの変化をまったく感じない場合は受診時に医師へ伝えてみてください。
生理管理アプリは「予想」と心得る
生理管理アプリはとても便利ですが、多くは過去の生理開始日から「平均的な排卵日」を計算しているだけです。毎月周期が安定している方なら目安として役立ちますが、周期が数日ずれるだけで予想排卵日もずれてしまいます。
診察室でも「アプリの排卵日に合わせていたのに」というお話をよく伺いますが、実際に超音波で確認すると排卵日が数日ずれていたというケースは少なくありません。アプリは「この前後に妊娠可能期間がありそう」という大まかな見通しとして使い、実際のタイミングは排卵検査薬などで確かめると安心です。基礎体温を連携できるアプリなら受診時の記録としても活用できます。
クリニックの超音波検査が最も確実
最も正確に排卵日を予測できるのは、当院のような婦人科・不妊治療クリニックでの経腟超音波検査(エコー)です。卵子が入っている袋(卵胞)の大きさをミリ単位で測り、子宮内膜の厚さも確認します。卵胞は1日に約2mmずつ大きくなり、16〜17mmを超えるころから排卵が近いと判断できます。必要に応じて血液検査でホルモン値も測定します。
クリニックで調べる価値は排卵日がわかることだけではありません。「そもそも排卵しているか」「子宮や卵巣に妊娠を妨げる病気がないか」も同時に確認できます。自己流で長く続けて結果が出ない場合、原因はタイミングのずれではなく別のところにあるかもしれません。
妊娠しやすいタイミングの取り方【専門医が教えるコツ】
排卵日の見当がついたら次はタイミングの取り方です。ここでは診察室で実際にお伝えしているコツを3つご紹介します。キーワードは「排卵を追いかけるのではなく、先回りして待ち伏せする」です。
排卵の5日前から排卵日まで、1〜2日おきが理想
最も妊娠しやすいのは排卵日の2日前〜前日ですが、排卵日を1日単位で正確に当てるのはクリニックで検査をしていても簡単ではありません。そこでおすすめしているのが、予想される排卵日の5日前から排卵日までのあいだに1〜2日おきにタイミングを持つ方法です。
こうしておけば、排卵が予想より1〜2日ずれても受精できる状態の精子が卵管で待っている状態をつくれます。排卵検査薬が陽性になったらその日と翌日にもう一度タイミングを持てると理想的です。「この1日しかない」と思い詰めず、幅をもたせて考えることが成功への近道です。
「精子をためる」「排卵日に1回だけ」は逆効果
「排卵日まで禁欲して精子をためたほうがいい」と考える方は少なくありませんが、これは誤解です。禁欲期間が長くなると、精子の数は増えても運動率が下がり精子のDNAが傷つきやすくなることがわかっています。
精液の状態がよいのは禁欲期間が2〜3日程度のときといわれています。排卵日前に長く間隔をあけるより、普段から定期的に性生活を持ち、妊娠可能期間には1〜2日おきにタイミングを持つほうが精子の質の面でも有利です。「排卵日に1回だけ」に絞るのはチャンスを自ら狭めることになってしまいます。
プレッシャーを減らす工夫
妊活中は「今日が排卵日だから」という義務感が、夫婦双方の大きな負担になりがちです。特に男性は、プレッシャーから性交がうまくいかなくなる「タイミングED」に悩むことも珍しくありません。
日本産科婦人科学会も、勃起障害や射精障害といった性交の悩みの背景には妊娠への精神的なプレッシャーをはじめとするストレスがあると説明しています。決して珍しいことではなく治療で改善できる場合も多い悩みです。
おすすめなのは、排卵日を「その日」と伝えるのではなく「今週はチャンスの週」くらいの幅で共有することです。妊娠可能期間以外にも自然なスキンシップを大切にし、つらいときは「今周期はお休み」と決める勇気も必要です。気持ちが追いつかないときは一人で抱え込まず、不妊カウンセラー(日本不妊カウンセリング学会が養成・認定する専門職)や臨床心理士に相談するのもひとつの方法です。当院でも臨床心理士がご夫婦の心の負担に寄り添っています。
1周期で妊娠する確率と年齢の関係
妊娠しやすい時期にタイミングを合わせても、1回の周期で妊娠する確率は意外と高くありません。そしてその確率は年齢によって大きく変わります。「タイミングは合っていたのに」と自分を責める前に、まずは正しい数字を知っておきましょう。数字を知ることは不安をあおるためではなく、自分に合ったペースを決めるための材料になります。
年齢別・1周期あたりの妊娠率
健康なカップルが妊娠しやすい時期にタイミングを持った場合でも、1周期で妊娠する確率は一般的に10〜20%程度です。年代別に見ると当院では次のような目安をお伝えしています。
| 女性の年齢 | 1周期あたりの推定妊娠率(目安) |
|---|---|
| 25〜29歳 | 約13% |
| 30〜34歳 | 約10% |
| 35〜39歳 | 約6% |
| 40歳以上 | 約1% |
20代でも1回で妊娠できるとは限らず、何周期か続けて妊娠に至るのが普通です。一方で35歳を過ぎると確率の下がり方が早くなります。これは、卵子の数が減るだけでなく卵子の質(染色体が正常な卵子の割合)が年齢とともに低下するためです。日本産科婦人科学会は、女性の妊娠する力(妊孕性)は30歳を過ぎると低下し始め35歳を過ぎるとその低下が加速すると説明しています。日本生殖医学会も、妊娠・出産に最適な年齢を20代前半から30代前半とし、卵巣に残る卵子の数の目安となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)は30代後半から減り方が急になるとしています。
不妊症になる可能性は35歳で約30%、40歳で約70%
厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で示された生殖医療ガイドラインの資料によると、生殖年齢にあるカップルが不妊症になる可能性は約10%です。ところが、妊娠を希望した時点で女性が35歳以上の場合は約30%、40歳以上では約70%にまで高まるとされています。
また日本産科婦人科学会によると、日本では夫婦の4.4組に1組が不妊に悩んでいるといわれています(国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」)。妊娠に時間がかかることは、決して特別なことではありません。
この数字を見て焦りを感じた方もいるかもしれません。でも裏を返せば、年齢を重ねるほど「早めに動くこと」の価値が大きくなるということです。体外受精などの治療の成績も年齢とともに下がるため、同じ治療を受けるにしても、一日でも早く始めたほうが選択肢は広がります。年齢は変えられませんが、動き出すタイミングは今日から選ぶことができます。
妊娠しやすい体をつくる生活習慣
妊娠しやすい時期を知ることと同じくらい大切なのが毎日の生活習慣です。こども家庭庁は、男女を問わず妊娠・出産を含めた将来を見据えて健康管理を行う「プレコンセプションケア」を推進しています。ここでは、今日から取り組めることを紹介します。
適正体重・禁煙・節酒
体重は排卵に直結します。やせすぎ(BMI18.5未満)でも肥満(BMI25以上)でもホルモンバランスが乱れ、排卵が起こりにくくなります。BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。極端な食事制限ではなく、バランスのよい食事と適度な運動でBMI18.5〜25未満を目指しましょう。
喫煙は卵子の老化を早め妊娠率を下げることがわかっています。本人だけでなくパートナーの喫煙や受動喫煙にも注意が必要です。お酒は妊娠に気づかない時期の胎児への影響も考え妊活中は控えめに。睡眠不足や強いストレスも排卵のリズムを乱す原因になるため休息を意識的にとることも大切な「妊活」のひとつです。
葉酸と風しん抗体(プレコンセプションケア)
葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄の形成にかかわる神経管閉鎖障害のリスクを減らすビタミンです。厚生労働省は、妊娠を計画している女性に対して食事に加えてサプリメントなどから1日400μgの葉酸をとることを勧めています。神経管は妊娠に気づく前の時期につくられるため妊活を始めた時点から摂取しておくことが大切です。
動画で見る葉酸

もうひとつ確認したいのが風しんの抗体です。妊娠中に風しんにかかると赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が起こることがあります。抗体が十分でない場合は妊娠前にワクチンを接種しましょう。接種後は2か月間の避妊が必要なので早めの確認がおすすめです。パートナーの抗体確認もあわせて行いましょう。
男性の生活習慣も同じくらい大切
妊活というと女性側の努力に目が向きがちですが、WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因の約半分(48%)は男性側にもあることがわかっています。しかも男性不妊は自覚症状がほとんどなく、精液検査を受けて初めてわかるケースが大半です。
日本産科婦人科学会も、不妊の原因は男性側と女性側でほぼ半々とし、男性も女性よりゆっくりではあるものの、35歳を過ぎると精子の質が徐々に低下すると説明しています。
精子は約2〜3か月かけてつくられるため、今日の生活習慣が数か月後の精子の質に反映されます。禁煙、節酒、適正体重の維持に加え、精巣を温めすぎないこと(長時間のサウナや膝上でのノートパソコン使用を避ける)も大切です。妊活は二人で取り組むもの。ご夫婦で一緒に生活を見直すことで、精神的な負担も分かち合えます。
動画で見る妊娠しやすい体づくり

こんなときは早めに受診を|受診の目安
「どのくらい様子を見たら病院に行くべき?」というのはとても多いご質問です。日本産科婦人科学会は、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性生活を続けても1年間妊娠しない状態を「不妊症」と定義しています。ただし、年齢や体のサインによっては1年を待たずに相談したほうがよい場合があります。
年齢別「自己流で頑張ってよい期間」
専門医として年齢ごとの受診の目安を次のようにお伝えしています。
| 女性の年齢 | 受診を考える目安 |
|---|---|
| 35歳未満 | 妊娠可能期間にタイミングを持って1年妊娠しなければ受診 |
| 35〜39歳 | 半年妊娠しなければ受診 |
| 40歳以上 | 妊活を始める時点で一度受診 |
日本生殖医学会の「生殖医療Q&A 2025」では、女性が35歳以上で6か月以上妊娠しない場合を不妊症の検査対象とし、30歳を過ぎて妊娠を希望する方には1年を待たずに医療機関で確認することを勧めています。厚生労働省の資料でも35歳以上は1年に満たなくても検査や治療の対象とされています。なお、これは「この期間は待たなければいけない」という意味ではありません。妊活を始める前にブライダルチェックや不妊検査で体の状態を確認しておくのも、とても前向きな選択です。
すぐ相談したい体のサイン
年齢にかかわらず、次のような場合は早めの受診をおすすめします。
- 月経周期が24日以内、または39日以上と極端に短い・長い、毎月バラバラ
- 3か月以上生理が来ない
- 生理痛が年々ひどくなる、性交時や排便時に痛みがある(子宮内膜症の可能性)
- 経血量が極端に多い、または少ない
- クラミジアなど性感染症にかかったことがある、骨盤や子宮の手術を受けたことがある
- パートナーに精巣の病気や手術の経験がある、性交がうまくいかない
日本産科婦人科学会も排卵がない、子宮内膜症がある、過去に骨盤腹膜炎にかかったことがあるといった場合は1年を待たずに検査や治療を始めたほうがよいとしています。
なお、がんなどの治療を控えている方には治療前に卵子や精子を凍結保存しておく「妊孕性(にんようせい)温存」という選択肢もあります。日本がん・生殖医療学会は、がん治療を最優先にすることを大前提に、患者さんが将来子どもをもつことを応援する医療として紹介しています。
これらは排卵の問題や卵管の詰まり、男性不妊などのサインである可能性があります。受診の際は、ぜひパートナーと一緒に検査を受けてください。女性の検査を一通り終えてから男性の検査をすると、それだけで数か月を費やしてしまうことがあるからです。
クリニックのタイミング法と保険適用【2026年最新】
「病院に行くとすぐに体外受精を勧められるのでは」と心配される方もいますが、多くの場合、最初のステップは「タイミング法」です。タイミング法とは、医師が超音波検査やホルモン検査で排卵日を予測し、最も妊娠しやすいタイミングをお伝えする治療法で、自然妊娠に最も近い方法です。2022年4月からは保険適用となり、始めやすくなっています。
タイミング法の流れと通院回数
月経周期28日の方を例にすると、1周期あたりの通院は3〜4回程度が目安です。
- 月経1〜5日目ごろ:血液検査でホルモンの基礎値を調べ、今周期の方針を決めます
- 月経9〜12日目ごろ:超音波で卵胞の大きさと子宮内膜の厚さを確認します
- 月経12〜14日目ごろ:卵胞の成長から排卵日を予測し、「何日と何日にタイミングを」と具体的にお伝えします
- 月経20〜22日目ごろ:排卵が起きたか、黄体ホルモンが十分に出ているかを確認します
自己流との大きな違いは排卵日の精度に加えて「タイミング法で妊娠できる体の状態か」を同時に確かめられる点です。卵管の通り具合や精液検査の結果に問題がないことがタイミング法を続けるうえでの前提になります。
保険適用の条件と費用
2026年10月時点の主な条件は次のとおりです。
| 治療 | 年齢・回数の制限 | 費用の目安(3割負担) |
|---|---|---|
| タイミング法 | 制限なし | 一般不妊治療管理料 750円(3か月に1回)+検査費 |
| 人工授精 | 制限なし | 1回 5,460円 |
| 体外受精・顕微授精 | 治療開始時の女性の年齢が43歳未満。胚移植は40歳未満で通算6回、40歳以上43歳未満で通算3回まで(1子ごと) | 治療内容により異なる |
保険診療になったことで、1か月の自己負担に上限がある「高額療養費制度」も使えるようになりました。費用面の不安が大きい方もまずはお気軽にご相談ください。詳しい金額は当院の料金表でご確認いただけます。
ステップアップの目安
タイミング法で妊娠される方の多くは最初の5周期ほどで妊娠に至ります。そのため、4〜6周期続けても妊娠しない場合は、タイミング以外の原因を考え次のステップへ進むことを検討します。年齢によってかけられる時間も変わります。
日本産科婦人科学会も、治療はタイミング法→排卵誘発→人工授精→体外受精・顕微授精と数周期ごとにステップアップするのが一般的で女性の年齢が高い場合はそのペースを早めると説明しています。
| 女性の年齢 | ステップアップの目安 |
|---|---|
| 34歳以下 | タイミング法4〜6周期 → 人工授精6周期程度 → 体外受精 |
| 35〜39歳 | タイミング法2〜3周期 → 人工授精3周期程度 → 体外受精 |
| 40歳以上 | タイミング法・人工授精は短期間にとどめ、早めに体外受精を検討 |
もちろん、これはあくまで目安です。ご夫婦の希望や検査結果をふまえて一緒に最適なペースを考えていきます。
妊娠しやすい時期に関するよくある質問

Q1. 排卵日を過ぎたら、もう妊娠できませんか?
A1. 排卵から24時間ほどたつと卵子の受精能力はほぼ失われるため、排卵日の翌日以降に妊娠する可能性はかなり低くなります。ただし、自己流の予測では実際の排卵日が数日ずれていることも珍しくありません。「過ぎてしまった」と思っても、実はまだ排卵前だったということもあります。
その周期は無理のない範囲でタイミングを持ちつつ、次の周期では排卵検査薬を早めに使い始めるなど、予測の精度を上げる工夫をしてみましょう。それでも排卵日がつかめない場合は、クリニックでの卵胞チェックが確実です。
Q2. 生理中や生理直後でも妊娠しますか?
A2. 可能性は低いもののゼロではありません。特に月経周期が短い方(例えば22〜24日)は排卵が早く来るため、生理が終わってすぐに妊娠可能期間が始まることがあります。精子が数日生き延びることを考えると生理直後の性交で妊娠することは十分にありえます。
また、排卵期の出血や不正出血を生理と勘違いしているケースもあります。逆に言えば、いわゆる「安全日」は医学的には存在しません。妊娠を望まない時期は確実な方法で避妊することが大切です。
Q3. 妊娠しやすい季節や時間帯はありますか?
A3. 季節によって精子の状態がわずかに変わるという報告はありますが、妊活のタイミングを左右するほどの差はありません。時間帯についても医学的に「朝がよい」「夜がよい」と決まっているわけではありません。
妊娠のしやすさを決めるのは季節や時間帯よりも「排卵日との位置関係」です。お二人がリラックスして過ごせる時間を選ぶことが一番です。「この季節を逃したら」と焦るより、毎月の妊娠可能期間を大切にしてください。
参照・引用元
- 厚生労働省 中医協資料「生殖医療ガイドラインの考え方」(2021年11月)(不妊症の定義、35歳以上の早期精査、不妊症の可能性10%・30%・70%)
- 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会 参考資料(2020年10月)(日本生殖医学会の不妊症の解説)
- こども家庭庁 母子保健・不妊症・不育症など(プレコンセプションケアの定義、2022年4月からの保険適用)
- 厚生労働省 不妊治療と仕事との両立のために(両立に悩む人の割合26.1%。仕事との両立に触れる追記に使用可)
- 神奈川県 女性の年齢と妊娠(日本生殖医学会・日本産科婦人科学会のグラフを引用)
当院について
生殖医療クリニック錦糸町駅前院は、女性医師が多数在籍し、朝8時から夜21時まで土日祝日も診療しています。LINE・WEBから24時間ご予約いただけ、検査だけのご相談も歓迎です。体外受精が必要になった場合も経験豊富な胚培養士が対応します。臨床心理士も在籍していますので、ひとりで悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。あなたのペースで一緒に進んでいきましょう。
松見 泰宇
資格・専門医
- 東京大学医学博士
- 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本抗加齢医学会専門医
- 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
- 難病指定医
- 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
- 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
- 新生児蘇生インストラクターAコース修了
- 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
- 日本臨床免疫学会
- 日本産科婦人科学会
- 日本生殖医学会
- 日本生殖免疫学会
- 日本不育症学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
- 日本産婦人科乳腺医学会
- 日本スポーツ協会
- 産婦人科PRP研究会
経歴
- 東京大学医学部卒業
- 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
- 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
- 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
- 日本学術振興会特別研究員
- スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
- 成育医療研究センター特別研究員
- 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
- 帝京大学溝口病院講師
- 帝京大学非常勤講師
- 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
- 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
- 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務