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胚凍結とは?体外受精における大切な選択肢

受精卵(胚)を凍結保存する技術について

「胚凍結(はいとうけつ)」とは、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)によって育まれた「受精卵(胚)」を、マイナス196℃の超低温(液体窒素)の中で凍結し、大切に保存する医療技術のことです。

ここでポイントとなるのは、凍結するのが「受精卵(胚)」であるという点です。まだ受精していない卵子そのものを凍結する「未受精卵凍結(卵子凍結)」とは明確に区別されます。

胚凍結は、すでに受精して発育が確認された「胚」を保存するため、未受精卵凍結と比較して、融解後の生存率やその後の妊娠に至る確率が高いとされています。不妊治療をお考えの方にとって、治療の成功率を高めるための非常に重要な選択肢といえるでしょう。

なぜ今、胚凍結が標準的な治療になりつつあるのでしょうか?

かつての体外受精では、採卵した周期にそのまま胚を子宮に戻す「新鮮胚移植」が主流でした。しかし、この方法には課題がありました。採卵のために排卵誘発剤を使用すると、女性の体内はホルモンの影響を強く受け、子宮内の環境が着床にベストとは言えない状態になることがあったのです。また、多数の卵胞が育つことで卵巣が腫れてしまう「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)」という副作用のリスクもありました。

近年、「ガラス化法」という凍結技術が飛躍的に進歩したことで、胚へのダメージを抑え、高い生存率で凍結・融解できるようになりました。これにより、「採卵(胚を育てること)」と「移植(子宮に戻すこと)」を切り離して考えられるようになったのです。採卵周期は「良い胚を育てること」に集中してすべて凍結し、改めて子宮環境が整ったベストなタイミングで移植する。これが、現在において胚凍結が「標準的」な治療と位置づけられている理由です。

胚凍結の2つの種類:「全胚凍結」と「余剰胚凍結」

治療の進め方によって、胚凍結には大きく分けて2つの種類があります。

1. 全胚凍結:採卵した周期には戻さず、すべてを凍結する方法

「全胚凍結(ぜんはいとうけつ)」とは、その名の通り、採卵で得られた良好な胚をその周期には戻さず、「すべて」凍結保存する方法です。

ホルモン環境が着床に適していない場合や、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高い場合などに、患者様の安全を最優先するために選ばれます。また、着床前診断(PGT-A)を行う場合も、検査結果を待つためにこの方法がとられます。治療成績の向上と安全性を両立するための、戦略的な方法と言えます。

2. 余剰胚凍結:新鮮胚移植をして、残った胚を保存する方法

「余剰胚凍結(よじょうはいとうけつ)」とは、採卵した周期に「新鮮胚移植」を行い、そこで使わなかった(余った)良好な胚を凍結保存する方法です。

例えば、5個の胚が得られ、1個を新鮮胚移植した場合、残りの4個を将来のために保存します。

もし今回の移植で妊娠に至らなくても、次からはこの凍結胚を使って治療できますし、無事に出産された場合は、第二子・第三子のために活用することも可能です。

なぜ選ばれるの?胚凍結の6つのメリット

胚凍結、特に全胚凍結を選ぶことには、患者さまにとって多くのメリットがあります。

メリット1:着床に適した子宮環境で移植できる

採卵周期はホルモン値が高くなりすぎて、子宮内膜が着床に適さない状態になることがあります。一度凍結し、ホルモンバランスが落ち着いた翌周期以降に移植することで、子宮環境を「着床にベストな状態」に整えることができます。その結果、妊娠率が高まり、流産率が低くなる傾向があります。

メリット2:副作用(OHSS)の重症化を防げる

卵巣が腫れるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)は、妊娠が成立すると重症化しやすい特徴があります。全胚凍結を選んでその周期の移植を見送ることで、もしOHSSの兆候が出ても、妊娠による重症化を確実に回避できます。

メリット3:1回の採卵で複数回のチャンスが作れる

一度の採卵で複数の胚を凍結できれば、もし1回目の移植がうまくいかなくても、次は採卵のステップを飛ばして「移植」から再開できます。身体的・精神的・金銭的な負担の大きい「採卵」の回数を減らすことにつながります。

メリット4:第二子以降の治療に活用できる

35歳の時に凍結した胚は、時間が経っても「35歳の状態」のまま保存されます。例えば数年後に第二子を希望された際、年齢を重ねた卵子で一から採卵するのではなく、若く妊娠力の高い「過去の自分」の胚を移植することができるのです。

メリット5:スケジュール調整がしやすくなる

凍結胚移植(特にホルモン補充周期)では、薬でコントロールしながら移植日を決めるため、お仕事やご家庭の都合に合わせやすくなります。多忙な方にとって大きな利点です。

メリット6:着床前診断(PGT-A)の時間が確保できる

胚の染色体を調べる検査(PGT-A)を行う場合、結果が出るまで数週間かかります。その間、胚を安全に待機させておくために凍結技術が役立ちます。

知っておきたいデメリットとリスク

メリットの多い胚凍結ですが、リスクについても正しく理解しておきましょう。

リスク1:凍結・融解のダメージ

凍結や融解の過程で胚がダメージを受ける可能性はゼロではありません。しかし、後述する「ガラス化法」により、現在では95%〜99%以上という非常に高い生存率が報告されており、過度に心配する必要のないレベルになっています。

リスク2:移植まで期間が空く

採卵してから移植するまで、最低でも1〜2ヶ月の期間が必要になります。「すぐに移植したい」という方には長く感じられるかもしれませんが、妊娠への近道となる「準備期間」と捉えていただければと思います。

リスク3:維持費用がかかる

胚を保存し続けるためには、1年ごとに更新料(保管料)がかかります。将来のために長期保存を考える場合は、ランニングコストも考慮する必要があります。

胚凍結の具体的な手順と最新技術

凍結のタイミング:初期胚と胚盤胞

凍結は主に2つの段階で行われます。

  • 初期胚(しょきはい):採卵から2〜3日目の状態。
  • 胚盤胞(はいばんほう):5〜6日目まで培養し、着床直前まで育った状態。

一般的には、生命力の強い胚を選別できる「胚盤胞」での凍結が高い妊娠率を期待できますが、患者様の状況に合わせて最適な段階を選ばせていただいております。

最新技術「ガラス化法」とは?

現在、日本のほとんどの施設で採用されているのが「急速ガラス化法(Vitrification)」です。この方法は、浸透圧変化による細胞の脱水と高濃度の凍結保護剤を使用することによって、液体窒素により超短時間で-196℃まで冷却することで、細胞内の水分が氷の結晶を作らずにガラス状に凍結する技術です。

凍結胚移植の方法:どうやって戻すの?

凍結した胚を戻す方法には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1. ホルモン補充周期(薬でコントロール)

お薬を使って子宮内膜を厚くし、移植日を調整する方法です。

  • メリット:移植日のスケジュールが立てやすく、キャンセルになりにくい。
  • デメリット:妊娠後もしばらくお薬を続ける必要があります。

2. 自然周期(自分の排卵に合わせる)

ご自身の自然な排卵のタイミングに合わせて移植する方法です。

  • メリット:お薬が最小限で済み、身体への負担が少ない。
  • デメリット:排卵日によって移植日が決まるため、スケジュールの調整が難しく、排卵の状態によってはキャンセルになることもあります。

費用について(保険と自費)

保険適用の場合

2022年4月から不妊治療が保険適用となり、条件(年齢や回数)を満たせば3割負担で受けられるようになりました。

  • 胚凍結管理料:個数によって変わります(例:15,000円〜39,000円程度)。
  • 保存維持管理料(更新料):1年ごとに約10,500円程度です。

自費診療の場合

胚の保存期間と更新手続き

技術的には半永久的に保存可能ですが、当院では「1年ごとの更新制」をとらせていただいております。更新の時期が近づいたら、患者様ご自身で手続きを行い、更新料をお支払いいただく必要があります。手続きを忘れて一定期間をすぎると廃棄させていただくしかないので期限の管理には十分ご注意ください。

胚凍結と卵子凍結の違いは?

IMSI
胚凍結(受精卵凍結)パートナーの精子と受精させた「受精卵」を凍結します。融解後はそのまま移植できるため、妊娠に近い状態といえます。
未受精卵凍結(卵子凍結)まだ受精していない「卵子」を凍結します。融解後に精子と受精させ、さらに培養して胚に育てる必要があるため、胚凍結に比べると最終的に移植・妊娠できる確率は低くなります。

すでにパートナーがいらっしゃる場合は、より成功率の高い「胚凍結」が推奨されます。

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