月経不順とは?まずは基本を理解しましょう
正常な月経周期について
月経周期とは、月経が始まった日から次の月経が始まる前日までの日数のことを指します。正常な月経周期は25~38日とされており、この期間内で規則的に月経がくる場合は問題ありません。また、月経期間は3~7日間、経血量は20~140mlが正常範囲とされています。女性の身体は非常にデリケートで、ちょっとしたストレスや環境の変化でも月経周期に影響を受けることがありますが、数日程度のずれは心配する必要はありません。
月経不順の定義と判断基準
月経不順とは、月経周期が正常範囲から外れている状態を指します。具体的には月経周期が24日以内と短すぎる場合、39日以上と長すぎる場合、毎月の周期が不規則でばらつきがある場合などが該当します。また、月経期間が2日以内で終わってしまう、8日以上続く、経血量が極端に少ないまたは多いといった状態も月経不順に含まれます。これらの症状が3ヶ月以上続く場合は、何らかの原因が隠れている可能性があるためまずはご相談ください。
月経不順の種類と特徴
頻発月経(月経周期が24日以内)
頻発月経は、月経周期が24日以内と短く月に2回以上月経がくることもある状態です。思春期や更年期に多く見られ、排卵を伴わない無排卵性月経であることが多いのが特徴です。頻繁に月経があることで貧血になりやすく、日常生活に支障をきたすこともあります。また、黄体機能不全や卵胞期短縮などホルモンバランスの乱れが原因となることが多く、不妊の原因にもなりえるため早めの検査と治療が大切です。
希発月経(月経周期が39日以上)
希発月経は、月経周期が39日以上3ヶ月以内の状態を指します。2~3ヶ月に1回しか月経がこないという方も珍しくありません。主な原因として、精神的ストレス、急激な体重の増減、過度な運動などによるホルモンバランスの乱れが挙げられます。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という病気が原因となっていることもあり、この場合は排卵障害を伴うことが多いため妊娠を希望する場合は適切な治療が必要になります。
無月経(3ヶ月以上月経がない)
無月経は、妊娠や授乳期間を除いて3ヶ月以上月経がない状態です。18歳を過ぎても初経がこない原発性無月経と、これまであった月経が止まってしまう続発性無月経に分けられます。続発性無月経の原因として最も多いのは、過度なダイエットやストレスや激しい運動によるものです。無月経の状態が長く続くと、女性ホルモンの分泌が低下し、骨粗しょう症のリスクが高まったり将来的に不妊の原因になることもあるため早期の治療開始が重要です。
月経不順を引き起こす主な原因
ストレスや生活習慣の影響
月経不順の最も一般的な原因は日常生活におけるストレスや生活習慣の乱れです。仕事や人間関係のストレス、睡眠不足、不規則な食生活などは、脳の視床下部に影響を与え、ホルモン分泌の司令塔である部分の働きを乱してしまいます。また、過度なダイエットによる急激な体重減少は身体が生命維持を優先するため月経を止めてしまうことがあります。BMIが18.5以下、体脂肪率が17%以下になると月経不順のリスクが高まるため健康的な体重管理が大切です。
ホルモンバランスの乱れ
女性の月経は、脳の視床下部・下垂体と卵巣が連携して分泌される女性ホルモンによってコントロールされています。エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンのバランスが崩れると、月経不順が起こります。年齢的な要因として、思春期はホルモン分泌が安定していないため月経不順になりやすく、40歳以降は更年期に向けてホルモン分泌が低下し始めるため月経周期が乱れやすくなります。また、授乳中に分泌されるプロラクチンというホルモンが過剰に分泌される高プロラクチン血症も月経不順の原因となります。
病気が原因となる場合
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣に小さな卵胞がたくさんできるものの排卵がうまくいかない病気です。月経不順の女性の約20~30%に見られる比較的頻度の高い疾患で、男性ホルモンの値が高くなることでにきびや多毛などの症状を伴うこともあります。インスリン抵抗性との関連も指摘されており肥満がある場合は体重管理も重要になります。適切な治療により排卵を促すことができるため妊娠希望の有無に応じた治療方針を立てることが大切です。
甲状腺機能の異常
甲状腺はのどぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、全身の代謝を調整するホルモンを分泌しています。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)などの甲状腺疾患があると、月経不順を引き起こすことがあります。甲状腺ホルモンの異常は、動悸、倦怠感、体重の増減、むくみなど全身にさまざまな症状を引き起こすため、月経不順とともにこれらの症状がある場合は甲状腺機能の検査も必要です。
月経不順の症状と身体への影響
日常生活で感じる症状
月経不順があると、いつ月経がくるか予測できないため大切な予定が立てづらくなります。頻発月経の場合は月に何度も月経があることで貧血になりやすく、めまい、動悸、疲れやすさなどの症状が現れることがあります。また、月経前症候群(PMS)の症状が不規則に現れるためイライラや気分の落ち込み、頭痛、腹痛などに悩まされることもあります。無排卵性月経の場合には月経痛が軽い傾向がありますが、子宮内膜が厚くなりすぎて大量出血を起こすこともあるため注意が必要です。
将来的な健康リスク
月経不順を放置すると将来的にさまざまな健康リスクが高まります。最も懸念されるのは不妊症のリスクです。排卵がない、または不規則な場合には自然妊娠が困難になります。また、女性ホルモンの分泌が長期間低下すると、骨密度が低下し若い年齢でも骨粗しょう症になるリスクが高まります。さらに、子宮内膜が定期的に剥がれ落ちないことで、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクが上昇する可能性もあるため定期的な婦人科検診が重要です。
婦人科での検査と診断方法

問診と内診
婦人科を受診すると、まず詳しい問診が行われます。最終月経日、月経周期、経血量、月経痛の有無、既往歴、家族歴、生活習慣、ストレスの有無などを確認します。基礎体温表を記録している場合は持参すると診断の参考になります。内診では、子宮や卵巣の大きさ、形、位置などを確認し、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの器質的な異常がないかをチェックします。性交経験がない方や内診に抵抗がある方は、お腹の上からの超音波検査で代用することも可能ですので、遠慮なく相談しましょう。
血液検査(ホルモン検査)
血液検査では、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどを測定します。これらのホルモン値を調べることで、月経不順の原因が卵巣機能の低下なのか、脳下垂体の異常なのか、甲状腺疾患なのかを判断できます。月経周期のどの時期に検査を行うかによって基準値が異なるため、医師の指示に従って適切なタイミングで検査を受けることが大切です。
超音波検査
経腟超音波検査は、膣内に細い超音波プローブを挿入して子宮や卵巣を詳しく観察する検査です。子宮内膜の厚さ、卵胞の発育状況、排卵の有無などを確認できます。多嚢胞性卵巣症候群の場合は、卵巣に小さな卵胞がネックレスのように連なって見える特徴的な所見が確認されます。また、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などの器質的疾患の有無も同時に確認できるため、月経不順の原因を総合的に判断する上で重要な検査です。
月経不順の治療法
ホルモン療法
ホルモン療法は、不足している女性ホルモンを補充したり、ホルモンバランスを整えたりする治療法です。妊娠を希望しない場合は、黄体ホルモン製剤を定期的に服用することで月経周期を整えます。より積極的な治療が必要な場合は、エストロゲンとプロゲステロンを周期的に投与するカウフマン療法を行います。妊娠を希望する場合は、クロミフェンなどの排卵誘発剤を使用して排卵を促します。治療期間は原因や症状の程度により異なりますが、3~6ヶ月程度継続することが一般的です。
漢方薬による治療
漢方医学では、月経不順を「血」の巡りの問題として捉え、体質に応じた漢方薬を処方します。当帰芍薬散は冷え性で貧血傾向のある方に、加味逍遙散はストレスが強くイライラしやすい方に、桂枝茯苓丸は血行不良がある方に適しています。漢方薬は即効性は期待できませんが、体質改善を目指す治療として副作用が少なく、長期間服用できるメリットがあります。西洋医学的治療と併用することも可能で、総合的なアプローチで月経不順の改善を図ることができます。
低用量ピルの活用
低用量ピルは避妊薬として知られていますが月経不順の治療にも効果的です。規則正しく服用することで、確実に28日周期で月経がくるようになり、経血量も減少するため貧血の改善にもつながります。また、月経前症候群(PMS)の症状軽減、にきびの改善、卵巣がんや子宮体がんのリスク低下などの副効果も期待できます。血栓症のリスクがわずかに上昇するため、喫煙者や35歳以上の方は注意が必要ですが、定期的な検診を受けながら安全に使用することができます。
月経不順と妊娠への影響
妊娠しにくくなる理由
月経不順があると妊娠しにくくなる主な理由は、排卵が不規則または起こっていないことです。排卵がなければ受精することができず、自然妊娠は不可能になります。また、排卵があっても周期が不規則だと、妊娠しやすいタイミングを予測することが困難になります。さらに、黄体機能不全がある場合は、受精卵が着床しにくくなったり、着床しても妊娠を維持できなかったりすることがあります。月経不順の背景にある多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺疾患なども、妊娠率の低下や流産率の上昇と関連することが知られています。
妊娠を希望する場合の対策
妊娠を希望する場合は、まず基礎体温を3ヶ月以上記録して排卵の有無を確認しましょう。排卵がある場合は、排卵検査薬を併用してタイミングを図ることができます。排卵がない、または不規則な場合は、婦人科で排卵誘発剤による治療を受けることができます。クロミフェンなどの内服薬から始め、効果が不十分な場合は注射薬を使用することもあります。同時に、生活習慣の改善も重要で、適正体重の維持、禁煙、ストレス管理、葉酸の摂取などを心がけましょう。パートナーの精液検査も並行して行い、総合的に不妊原因を検索することが大切です。
婦人科を受診するタイミング
こんな症状があったら早めの受診を
月経が3ヶ月以上来ない、月経周期が極端に短いまたは長い状態が3周期以上続く、経血量が多すぎて貧血症状がある、不正出血が続くなどの症状がある場合は早めにご相談ください。また、妊娠を希望しているのに1年以上妊娠しない、35歳以上で妊娠を希望している、月経不順とともに多毛やにきびが悪化している、急激な体重変化があったなどの場合も受診をおすすめします。思春期の方でも、18歳を過ぎても初経がこない、初経から3年以上経っても月経周期が安定しない場合は、一度相談してみることが大切です。婦人科受診は緊張するかもしれませんが早期の診断と治療が将来の健康を守ることにつながります。