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流産絨毛染色体(POC)検査

流産絨毛染色体(POC)検査の基本知識

POC検査とは何か

流産絨毛染色体検査(POC検査)は、流産や死産の際に採取された胎児の絨毛(じゅうもう)組織を用いて、染色体の異常を調べる検査です。POCとは「Product of Conception」の略で、流産した胎児および絨毛組織を意味します。この検査により、流産の原因が胎児の染色体異常によるものか、母体側の要因によるものかを明確にすることができます。

染色体は、赤ちゃんの成長や発達に必要な遺伝情報(DNA)が収められた、いわば身体の設計図のようなものです。POC検査では、この染色体の数や構造を詳細に分析することで、流産の医学的な原因を特定し、今後の妊娠計画や治療方針を立てるための重要な情報を得ることができます。特に不育症(反復流産)の方にとっては、適切な治療方針を決定するために欠かせない検査となっています。

流産と染色体異常の関係性

妊娠された方の約15%が流産を経験し、その割合は年齢とともに上昇します。40歳では約40%の方が流産するといわれています。初期流産の60〜80%は胎児の染色体異常が原因とされ、SNPマイクロアレイ法などの精密な検査ではさらに高い頻度で染色体異常が確認されます。

染色体異常の多くは偶発的に起こるもので、両親の遺伝や生活習慣とは関係ありません。高年齢の女性ほど流産率が高くなる理由は、卵子の老化に伴い胚の染色体異常頻度が上昇することに起因すると考えられています。3回流産(習慣流産)を繰り返した方でも、約50%は赤ちゃんの染色体異常が流産の原因である可能性があります。このような背景から、POC検査は流産の原因を科学的に解明し、不必要な自責の念から解放される手段としても重要な役割を果たしています。

POC検査を受けるタイミングと対象者

POC検査は、流産手術時に絨毛組織を採取して行うのが一般的です。胎嚢(赤ちゃんのお部屋)が確認された後の流産で、特に反復流産(2回以上の流産)を経験された方に推奨されます。初回の流産でも、今後の妊娠計画のために原因を明らかにしたいと希望される方は検査を受けることができます。

検査のタイミングとしては、子宮内胎児死亡(IUFD)後、心停止から子宮内滞在時間が短いほど染色体を獲得できる可能性が高まります。自然排出を待つよりも、流産手術により清潔に採取することで、より確実な検査結果を得ることができます。ただし、自然排出された組織でもNGS法であれば検査可能な場合があります。不育症の方や、原因不明の流産を繰り返している方は、医師と相談の上、POC検査の実施を検討することをおすすめします。

POC検査の種類と検査方法

G分染法(細胞染色体検査)の特徴

G分染法は、採取した絨毛組織から生きた細胞を約10日〜4週間培養し、分裂中の細胞から染色体を取り出して特殊な染色を行い、顕微鏡で観察する検査方法です。染色体の数や比較的大きな構造異常(転座、大きな欠失・重複など)を目視で確認し、診断することができます。

この検査の特徴は、染色体全体の構造を直接観察できることです。例えるなら「本棚に並んだ本の数や大きな本の破損を目視で確認する」ようなイメージです。流産手術により清潔に採取された新鮮な組織が必要で、細胞が正常に増殖することが検査成功の条件となります。培養期間が必要なため、結果が出るまでに2〜4週間程度かかりますが、染色体の全体像を把握するのに適した検査方法です。

NGS法(次世代シーケンサー)による検査

NGS法(次世代シーケンサー)は、採取した組織から直接DNAを抽出して解析する最新の検査方法です。細胞を培養する必要がないため、組織の状態が悪い場合や自然排出された組織でも検査が可能です。DNAの配列情報を高速かつ大量に読み取り、すべての染色体上の微細な変化を高解像度で検出できます。

この検査は「本棚の各棚にある本の総ページ数をすべて数え、標準と比較することで本の数の違いや、ページの増減を確認する」ようなイメージです。G分染法では検出困難な微細な欠失や重複も発見できる一方で、複雑な転座などの構造そのものを正確に捉えることには向いていない場合があります。検査期間は約2週間程度で、培養不要なため検査成功率が高いことが特徴です。

各検査方法のメリット・デメリット比較

G分染法

メリットは、染色体の全体構造を直接観察できること、大きな構造異常の詳細な解析が可能なこと、従来から行われている標準的な検査であることです。

デメリットは、新鮮で清潔な組織が必要なこと、培養に失敗すると検査不能となること、微細な異常は検出できないことが挙げられます。

NGS法

メリットは、培養不要で検査成功率が高いこと、微細な染色体異常も検出可能なこと、自然排出された組織でも検査可能なことです。

デメリットは、複雑な構造異常の詳細な解析には不向きなこと、比較的新しい検査方法であること、費用がやや高額になる傾向があることです。

POC検査の結果からわかること

染色体が正常だった場合の対応

POC検査で染色体が正常と判定された場合、流産の原因は胎児側ではなく、母体側の要因である可能性が高いと考えられます。この場合、不育症の観点から詳細な検査を行うことが推奨されます。具体的には、子宮の形態異常(子宮奇形、筋腫、ポリープなど)、内分泌異常(甲状腺機能異常、黄体機能不全など)、自己免疫異常(抗リン脂質抗体症候群など)、血液凝固異常などの検査を検討します。

また、すでに不育症スクリーニング検査を実施している方は、現在の治療方針の見直しや、追加の検査が必要かどうかを検討する機会となります。子宮内膜受容能検査(ERA)や子宮内フローラ検査など、より詳細な検査を追加することで、流産の原因を特定し、適切な治療につなげることができます。母体側の原因が特定されれば、それに対する治療を行うことで、次回妊娠の成功率を高めることが期待できます。

染色体の数的異常があった場合

染色体の数的異常(トリソミー、モノソミーなど)が確認された場合、流産の原因は偶発的な胎児の染色体異常であった可能性が高いと判断されます。このような異常の多くは、両親の遺伝とは無関係に偶然起こるもので、次回の妊娠で同じ異常が起こる確率は年齢に応じた一般的なリスクと同程度です。

この結果が得られた場合、母体側の不育症検査の優先順位は低くなり、特別な治療を行わずに次の妊娠に進むことができます。ただし、年齢が高い方や、同じ染色体異常による流産を繰り返している場合は、着床前診断(PGT-A)の適応について医師と相談することも選択肢となります。染色体の数的異常による流産は「偶然の出来事」であることを理解し、自責の念から解放されることも、精神的な回復において重要な意味を持ちます。

染色体の構造異常(転座など)が見つかった場合

染色体の数は正常でも、構造異常(転座、逆位、欠失など)が見つかった場合は、より詳細な検討が必要です。特に「不均衡型転座」が確認された場合、ご夫婦のいずれかが「均衡型転座」の保因者である可能性があります。均衡型転座保因者は本人に症状はありませんが、妊娠時に不均衡型転座を持つ胚が形成されやすく、流産を繰り返す原因となることがあります。

このような結果が出た場合、ご夫婦両方の染色体検査を行い、どちらかに均衡型転座があるかを確認します。もし均衡型転座が確認されれば、遺伝カウンセリングを受けて今後の妊娠計画を立てることが重要です。着床前診断(PGT-SR)の適応となり、正常な染色体を持つ胚を選択して移植することで、流産リスクを減らすことができます。一方、ご夫婦に異常がなければ、胎児の構造異常は偶発的なもので、次回妊娠での再発リスクは低いと考えられます。

結果に基づく今後の治療方針

POC検査の結果は、今後の不妊治療や妊娠計画の方向性を決定する重要な指標となります。染色体が正常の場合は、不育症検査を進めて母体側の原因を特定し、それに対する治療(ホルモン補充、免疫療法、抗凝固療法など)を行います。数的異常の場合は、特別な治療なしに次の妊娠に進むか、高齢の方は着床前診断を検討します。

構造異常が見つかった場合は、ご夫婦の染色体検査後、必要に応じて着床前診断を実施します。2回以上の流産既往がある方は、POC検査の結果に関わらずPGT-Aの適応となる場合もあります。また、検査結果の解釈には専門的知識が必要なため、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受けることで、結果を正しく理解し、最適な治療方針を選択することができます。

POC検査の費用と保険適用

検査費用

2022年4月からの保険適用条件

2022年4月より、POC検査が条件付きで保険適用となりました。保険適用の主な条件は、不育症の診断・治療目的であること、過去に流産経験がある方(2回目以降の流産)であること、厚生労働省の施設認定を受けた医療機関で実施することです。初回の流産では原則として保険適用外となり、自費診療となります。

保険適用となる場合、検査費用の3割負担で済むため、患者負担は大幅に軽減されます。ただし、保険適用には細かい条件があり、流産の回数、検査実施のタイミング、他の不育症検査との組み合わせなど、個別の状況により適用可否が異なります。また、保険適用で実施する場合、検査方法が限定される場合もあるため、詳しくはお問い合わせください。

POC検査の注意点とリスク

検査の限界と検出できない異常

POC検査は有用な検査ですが、すべての染色体異常を検出できるわけではありません。G分染法では、微細な欠失や重複、一部のモザイク(正常細胞と異常細胞の混在)、単一遺伝子の異常などは検出困難です。NGS法でも、複雑な構造異常の詳細な解析や、低頻度のモザイク、エピジェネティックな異常(遺伝子の働き方の異常)は検出できません。

また、検査結果が「正常」であっても、検出限界以下の異常が存在する可能性や、染色体以外の原因(胎児の臓器形成異常、母体の免疫異常など)による流産の可能性は否定できません。さらに、培養過程で生じた人工的な変化を本来の異常と誤認する可能性もあります。これらの限界を理解した上で、検査結果を一つの参考情報として捉え、総合的な判断を行うことが重要です。

母体細胞混入のリスク

POC検査における重要な注意点の一つが、母体細胞の混入リスクです。絨毛組織を採取する際、脱落膜や母体血などの母体由来の細胞が混入すると、胎児ではなく母体の染色体を解析してしまう可能性があります。特に自然排出された組織や、流産から時間が経過した組織では混入リスクが高くなります。

母体細胞混入が疑われる場合、検査結果が「46,XX(正常女性型)」となることが多く、実際の胎児の染色体状態を反映していない可能性があります。このリスクを回避するため、流産手術時に胎児面に近い絨毛部分を選択的に採取すること、必要に応じて母体混入検査を追加実施することが推奨されます。混入の可能性がある結果が出た場合は、慎重な解釈が必要となります。

検査不能となるケース

POC検査が実施できない、または結果が得られないケースも約10%程度存在します。G分染法では、組織の劣化、細菌汚染、採取量不足、細胞の増殖不良などにより検査不能となることがあります。特に、流産から時間が経過した組織、凍結された組織、絨毛以外の組織(胎児皮膚、臍帯など)では成功率が低下します。

NGS法は比較的検査成功率が高いものの、DNAの劣化が激しい場合や、採取量が極端に少ない場合は検査困難となります。検査不能となった場合、再検査が必要になることもありますが、同じ組織での再検査は困難なことが多く、次回妊娠での流産時に改めて検査を検討することになります。このようなリスクを最小限にするため、適切なタイミングでの組織採取と、適切な保存・輸送が重要となります。

POC検査に関するよくある質問

Q-A

Q1: 検査結果が出るまでの期間は?

A1: POC検査の結果が出るまでの期間は、検査方法により異なります。G分染法の場合、細胞培養に約10日〜4週間必要で、その後の染色体解析を含めると、結果報告まで2〜4週間程度かかります。培養がうまくいかない場合は、さらに時間がかかることもあります。NGS法の場合は、培養が不要なため比較的早く、通常2週間程度で結果が得られます。

Q2: 自然排出された場合でも検査可能?

A2: 自然排出された組織でもPOC検査は可能ですが、いくつかの条件と注意点があります。NGS法であれば、培養不要なため自然排出組織でも検査可能な確率が高くなります。ただし、組織を清潔な容器に保存し、なるべく早く(24時間以内が理想)クリニックに持参する必要があります。長時間経過したり、不適切な保存をすると、細菌汚染や組織の劣化により検査不能となるリスクが高まります。

G分染法での検査を希望する場合、自然排出組織では細胞の生存率が低下しているため、培養成功率が著しく低くなります。また、自然排出の場合、絨毛組織と母体組織の判別が困難で、母体細胞混入のリスクも高くなります。可能であれば、流産手術により清潔に採取することが、確実な検査結果を得るために推奨されます。事前にご相談ください。

Q3: 遺伝カウンセリングは必要?

A3: POC検査の結果によっては、遺伝カウンセリングを受けることが推奨される場合があります。特に、染色体の構造異常が見つかった場合、ご夫婦の染色体検査で異常が確認された場合、複雑な検査結果で解釈が困難な場合、今後の妊娠に関する不安が強い場合などは、専門的なカウンセリングが有益です。

遺伝カウンセリングでは、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが、検査結果の意味を分かりやすく説明し、今後の妊娠における再発リスク、利用可能な選択肢(着床前診断、出生前診断など)、家族への影響などについて詳しく情報提供を行います。また、検査結果に対する心理的なサポートも受けられます。遺伝カウンセリングは、検査結果を正しく理解し、十分な情報に基づいて今後の方針を決定するために重要な機会となります。

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