AMH検査とは?基礎知識と重要性を理解しよう
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の基本メカニズム
AMHとは「Anti-Müllerian Hormone(抗ミュラー管ホルモン)」の略称で、卵巣内の前胞状卵胞や小胞状卵胞から分泌されるホルモンです。女性は生まれたときから卵子の数が決まっており、その数は年齢とともに確実に減少していきます。
| 出生時 | 約200万個 |
| 思春期 | 20~30万個 |
| 37歳頃 | 約2万個 |
| 閉経時 | 約1,000個 |
AMH検査は、血液中のこのホルモン濃度を測定することで、現在の「卵巣予備能(Ovarian Reserve)」、つまり今後どれくらいの期間、排卵を続けられる可能性があるかを推測できる唯一の検査です。
なぜAMH検査が妊活の必須項目なのか
AMH検査が重要な理由は、以下の3つの決定的な情報を提供してくれるからです
- 妊活のタイムリミットの可視化
- 「今すぐ始めるべきか」「まだ余裕があるか」の判断材料
- キャリアプランと妊娠計画のバランスを考える指標
- 治療方針の最適化
- 体外受精での卵巣刺激法の選択
- 排卵誘発剤の投与量の調整
- タイミング法から体外受精への移行時期の判断
- 隠れた疾患の早期発見
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のスクリーニング
- 早発卵巣不全のリスク評価
AMH検査と他の不妊検査との決定的な違い
| 検査項目 | 検査時期 | 測定対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| AMH検査 | いつでも可能 | 卵巣予備能(卵子の数) | 月経周期に影響されない、客観的数値 |
| FSH・LH・E2 | 月経3日目 | 排卵機能 | 月経周期の特定時期のみ |
| 胞状卵胞数(AFC) | 月経初期 | 見える卵胞数 | 検査者の技術に依存 |
| 子宮卵管造影 | 月経終了後 | 卵管の通過性 | 痛みを伴う場合あり |
最大の利点:AMH検査は月経周期に関係なくいつでも測定可能で、採血のみで完了する簡便さが特徴です。
AMH検査でわかること・わからないこと
✓ わかること:卵巣予備能と治療戦略
AMH検査で明確にわかることは以下の通りです:
- 卵巣内の卵子の推定残数
- 発育段階にある卵胞の数を反映
- 今後の排卵継続期間の予測
- 体外受精での採卵数予測
- AMH値が高い→多数の卵子採取が期待できる
- AMH値が低い→採卵数は少ない傾向
- 病気のリスク評価
- 高値(6.0ng/ml以上)→PCOSの可能性
- 極低値(0.5ng/ml未満)→早発卵巣不全のリスク
✗ わからないこと:卵子の質と妊娠率
ここが最も重要:AMH検査でわからないことを正しく理解してください
- 卵子の質
- 卵子の質は主に年齢と相関(AMH値とは無関係)
- 32歳でAMH低値>45歳でAMH高値(質の観点から)
- 妊娠のしやすさ(妊娠率)
- AMH値が低い≠妊娠できない
- 質の良い卵子が1つでもあれば妊娠可能
- 実際の妊娠成功率
- AMH 0.5以下でも多数の妊娠例あり
- 重要なのは「在庫の量」ではなく「商品の品質」
よくある4つの誤解を完全解消
| 誤解 | 真実 |
| 「AMH値が低い=妊娠できない」 | AMH値0.69で4回の採卵後に妊娠成功した実例あり。質の良い卵子が1つでもあれば十分。 |
| 「AMH値が高い=妊娠しやすい」 | 高すぎる場合はPCOSで排卵障害の可能性。 適切な治療が必要。 |
| 「AMH値を上げれば妊娠できる」 | 一度減少した卵子数を増やす方法は存在しない。サプリメントも科学的根拠なし。 |
| 「AMH検査だけで治療方針が決まる」 | 年齢、不妊期間、他の検査結果を総合的に判断する必要あり。 |
AMH値の見方と年齢別基準値
年齢別AMH値中央値(詳細データ)
2019年の大規模研究に基づく、不妊治療患者の年齢別AMH値中央値

AMH値による治療方針の判断基準
AMH値が低い場合(2.0ng/ml未満)の対応
意味:卵巣内の卵子在庫が少なく、時間的猶予が限られている
推奨される行動:
- 即座の妊活開始(妊娠希望がある場合)
- 3~6ヶ月で結果が出なければ専門医受診
- 体外受精への早期ステップアップを検討
- 0.5ng/ml未満:早発卵巣不全の可能性
AMH値が高い場合(6.0ng/ml以上)の注意点
意味:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性
必要な対応:
- 超音波検査での確認
- 排卵誘発時のOHSSリスク管理
- 体重管理と運動療法
- 慎重な排卵誘発剤の調整
測定誤差と再検査のタイミング
- 測定誤差:約±15%(AMH 2.0なら実際は1.7~2.3の範囲)
- 再検査が推奨される場合:
- 基準値境界付近(2.0前後、6.0前後)
- 低用量ピル服用中(1ヶ月以上休薬後に再検査)
- 前回検査から1年以上経過
年代別・状況別の具体的アドバイス
20代後半(AMH中央値:4.0~4.5)
特徴:卵子の質・数ともに最も充実した時期
アクション:
- ライフプラン設計の材料として活用
- 低値でも慌てず、具体的な妊娠時期を検討
- パートナーとの将来設計の話し合い材料に
30代前半(AMH中央値:3.5~4.0)
特徴:妊娠適齢期だが35歳から急速低下の転換期
アクション:
- AMH 2.0未満なら妊活タイミングの前倒し検討
- 半年で妊娠なければ専門医相談
- キャリアと妊活のバランス再考
35歳以上(AMH中央値:2.62以下)
特徴:卵子の質・数ともに低下が加速
アクション:
- 3~6ヶ月で妊娠なければ即専門医受診
- 体外受精への早期ステップアップ検討
- 二人目不妊の場合も早急な対応必要
結婚前・ブライダルチェック
意義:将来の家族計画の重要な判断材料
活用法:
- 結婚後の妊活開始時期の決定
- パートナーとの価値観共有
- 不妊治療の可能性について事前協議
実際の検査の流れと費用詳細
検査の具体的な流れ
検査前の準備
- 特別な準備不要(月経周期不問、空腹不要)
- 注意点:ピル服用中は1ヶ月以上休薬推奨
- 持ち物:保険証(マイナンバー)、お薬手帳、費用
検査当日
- 受付・問診票記入
- 医師による問診・説明
- 採血
- 会計・次回予約
結果受け取り
- 結果判明
- 説明内容
AMH検査の費用と保険適用
費用体系
費用を抑える方法
- 自治体の助成制度(東京都:不妊検査等助成事業など)
- 初診セット料金の活用
- 人間ドックのオプションとして追加
- 医療費控除の対象(領収書保管必須)
実際のケース紹介と成功事例
ケース1:AMH値0.69で妊娠成功(25歳Aさん)
経過:
- ブライダルチェックでAMH 0.69判明
- タイミング法をスキップし即体外受精
- 採卵2回、移植2回で妊娠に変更成功
成功要因:
- 若さゆえの卵子の質を最大活用
- パートナーの協力(自己注射サポート、家事分担)
- 両親からの精神的・経済的支援
- 職場の福利厚生活用
メッセージ:「低AMHは妊娠できないことではなく、早く行動すべきというサイン」
ケース2:AMH値1.2、二人目不妊克服(38歳Bさん)
経過:
- 一人目自然妊娠後、二人目希望で2年経過
- AMH 0.8と判明し即体外受精
- 採卵数は少ないが質の良い胚盤胞獲得
- 1回目の移植で妊娠成功
ポイント:「一人目が自然妊娠でも油断は禁物。年齢とAMH値の複合リスクを認識」
ケース3:AMH値8.5、PCOS治療で妊娠(29歳Cさん)
経過:
- 月経不順(40~60日周期)でAMH検査
- AMH 8.5でPCOS診断
- 排卵誘発剤(クロミフェン)使用
- 4回目のタイミング法で妊娠
学び:「AMH高値≠妊娠しやすい。適切な治療で妊娠可能」
よくある質問Q&A

Q1: AMH検査は痛いですか?
A1: 通常の採血と同程度。5~10mlの採血のみで特別な痛みなし。
Q2: 生理中でも検査できますか?
A2: はい、月経周期に関係なくいつでも可能。これがAMH検査の最大の利点。
Q3: ピル服用中の検査は可能ですか?
A3: できれば、正確な値のためには1ヶ月以上休薬後を推奨。
Q4: AMH値0.5以下でも妊娠できますか?
A4: 可能。実際に多数の妊娠例あり。ただし時間的猶予は限定的なので早期の専門医相談を。
Q5: AMH値を上げる方法は?
A5: 残念ながら存在しない。サプリメントも科学的根拠なし。今ある卵子の質を高めることに注力。
Q6: 再検査は必要?
A6: 基準値境界付近なら3~6ヶ月後、通常は年1回程度で十分。
Q7: AMH検査だけで十分?
A7: 不十分。他のホルモン検査、超音波検査、パートナーの精液検査も必須。
Q8: 保険適用の条件は?
A8: 卵巣の機能評価および治療方針の決定時
Q9: AMH高値の場合の注意点は?
A9: 6.0以上はPCOSの可能性。排卵誘発時のOHSSリスクに注意。
Q10: 二人目不妊でも必要?
A10: 必要。一人目出産後の卵巣予備能低下を確認すべき。
Q11: 35歳以上の注意点は?
A11: 卵子の質も低下するため、AMH値に関わらず早期の行動が重要。
Q12: 20代でAMH低値の場合は?
A12: 卵子の質は良好な可能性高い。計画的な妊活開始を検討。
Q13: 閉経時期の予測は可能?
A13: ある程度の目安にはなるが、正確な予測は困難。個人差大。
Q14: 男性のAMH検査は?
A14: 女性特有のホルモンのため意味なし。男性は精液検査を。
Q15: 検査結果の有効期限は?
A15: AMH値は徐々に低下するため、1~2年ごとの再検査を推奨。