予約24時間受付可)

なぜクラミジアが不妊の大きな原因になるのか?

不妊症の検査で必ずと言っていいほどクラミジア検査が含まれているのには、明確な理由があります。それは、クラミジアが女性の生殖器官、特に「卵管」に対して深刻なダメージを与える主要な原因だからです。ここでは、ウイルスがどのように体に侵入し、妊娠機能を阻害してしまうのか、そのメカニズムを詳しく解説します。

静かなる脅威!卵管閉塞・癒着を引き起こすメカニズム

クラミジア・トラコマティスという細菌が膣から侵入すると、まず子宮の入り口(子宮頸管)に感染します。ここで治療されずに放置されると、菌は子宮内膜を通り抜け、卵管へと上行感染を起こします。

卵管は、卵子が通り、精子と出会って受精するための非常に細く繊細なパイプです。クラミジアによる炎症が卵管に達すると、身体の防御反応として炎症組織が修復される過程で「癒着(ゆちゃく)」が起こります。これにより、卵管が狭くなったり(狭窄)、完全に塞がったり(閉塞)してしまいます。

さらに炎症が広がると、卵管の先にある「卵管采(らんかんさい)」という、排卵された卵子をキャッチする組織まで癒着し、卵子を取り込めなくなってしまいます(ピックアップ障害)。これらはすべて自然妊娠を困難にする「卵管因子」と呼ばれる不妊の直接的な原因となります。

命に関わることも…子宮外妊娠(異所性妊娠)のリスク増大

クラミジア感染による卵管のダメージは、単に妊娠しにくくなるだけではありません。受精卵が子宮に辿り着くのを妨げることで、「子宮外妊娠(異所性妊娠)」のリスクを高めます。

通常、卵管内で受精した卵(受精卵)は、細胞分裂を繰り返しながら子宮へと移動し着床します。しかし、クラミジアの影響で卵管内部のヒダが癒着して通り道が狭くなっていると、受精卵が途中で引っかかり、卵管の中で着床してしまうことがあります。

卵管は子宮のように胎児を育てるスペースがないため、胎嚢が大きくなると卵管が破裂し、腹腔内で大出血を起こす危険性があります。これは母体の命に関わる緊急事態であり、手術による卵管切除が必要になるケースも少なくありません。

不妊治療の成功率を下げる子宮内環境の悪化

卵管へのダメージに加え、子宮内部の環境悪化も懸念されます。近年、慢性子宮内膜炎と不妊の関係が注目されていますが、クラミジアなどの感染が持続することで子宮内膜に慢性的な炎症が起きている可能性があります。

炎症がある状態の子宮内膜は、受精卵を受け入れる準備(着床の窓)が整いにくく、着床障害や初期流産の原因になり得ると考えられています。体外受精などの高度な不妊治療を行う場合でも、まずは子宮内の感染症を完治させ、万全の状態に整えることが治療成績を上げるための第一歩となります。

【セルフチェック】気づかないのが一番怖いクラミジアの症状

クラミジア感染症の最大の特徴であり、最も恐ろしい点は「自覚症状の乏しさ」です。感染していても日常生活に支障がないため、数ヶ月〜数年にわたって放置され、その間に不妊の原因となる炎症が静かに進行してしまいます。少しでも違和感があれば、すぐに検査を受けることが大切です。

女性の症状:約8割が「無症状」という事実

女性がクラミジアに感染した場合、約80%の方は無症状であると言われています。これが感染拡大と不妊化の最大の要因です。症状が出る場合でも、非常に軽微であることが多く、生理痛や体調不良と勘違いされがちです。

主な自覚症状としては以下のようなものが挙げられます。

おりものの量が増える

おりものの色やにおいが気になる(黄色っぽい膿のようなおりもの)

下腹部の軽い痛みや重苦しさ

性交時の痛み

不正出血(生理以外の出血)

これらの症状は、クラミジア以外の原因でも起こりうるため、自己判断は危険です。「なんとなくおかしい」と感じたら、迷わず婦人科を受診しましょう。

おりものの変化や下腹部痛などのサイン

進行すると、菌はお腹の中(腹腔内)へと広がります。子宮頸管炎から子宮内膜炎、卵管炎へと進み、さらに進行すると「骨盤内炎症性疾患(PID)」を引き起こします。

ここまで進行すると、発熱や激しい下腹部痛、吐き気などを伴うことがあり、救急搬送されるケースもあります。また、肝臓の周囲にまで炎症が広がる「フィッツ・ヒュー・カーティス症候群」を発症すると、右上腹部(右のあばら骨の下あたり)に激痛が走ることがあります。こうなる前に発見することが重要ですが、まずは日常の小さなお利口の変化を見逃さないようにしてください。

男性(パートナー)の症状から感染に気づくケース

女性が無症状である一方、男性は比較的症状が出やすい傾向にあります(それでも約5割は無症状と言われます)。パートナーに以下のような症状がある場合、あなたも感染している可能性が非常に高いです。

排尿時の痛み(おしっこをするとしみる、痛い)

尿道から膿が出る

尿道のかゆみ、不快感

精巣(睾丸)の腫れや痛み

パートナーが「尿道炎」と診断された場合、女性側には全く症状がなくても、必ず同時に検査を受けてください。カップルのどちらか一方だけが治療しても、もう一方が感染していれば、性行為を通じて再び感染させてしまうからです。

不妊治療前に行う「クラミジア検査」の種類と内容

不妊治療クリニックや婦人科で行うクラミジア検査には、大きく分けて「今、感染しているか」を調べる検査と、「過去に感染したことがあるか」を調べる検査の2種類があります。それぞれの検査目的と方法を正しく理解しておきましょう。

知っておきたい「抗原検査」と「抗体検査」の違い

クラミジア検査を理解する上で重要なのが、「抗原検査」と「抗体検査」の違いです。

抗原検査(PCR法など)子宮の入り口などに「今、クラミジアの菌がいるかどうか」を直接調べる検査です。現在進行形の感染を発見するために行います。陽性であれば、即座に抗生物質による治療が必要です。
抗体検査(血液検査)血液の中に「クラミジアに対する抗体があるか」を調べる検査です。抗体は過去に感染した履歴のようなものです。
IgA抗体最近の感染や、現在活動中の感染を示唆します。
IgG抗体過去に感染したことがあることを示します(現在は治癒していても陽性に出続けます)。

不妊治療のスクリーニング(初期検査)では、血液検査(抗体検査)を行うことが一般的です。これは、過去の感染によって卵管にダメージが残っている可能性(卵管因子)を推測するためです。抗体検査が陽性の場合、現在は菌がいなくても、卵管造影検査などで卵管の通気性を詳しく調べる必要性が高まります。

検査の流れと痛みについて(内診・採血)

具体的な検査方法は以下の通りです。

内診(抗原検査)内診台に上がり、膣鏡を使って子宮の入り口(子宮頸管)を綿棒で軽くこすって粘液を採取します。痛みはほとんどありませんが、わずかに出血することがあります。生理中は検査精度が落ちるため、避けるのが一般的です。
採血(抗体検査)腕から少量の血液を採取します。通常の健康診断の採血と同じです。生理周期に関係なくいつでも受けられます。
尿検査(主に男性)男性の場合は尿検査で診断が可能です。女性の場合は、膣分泌物の方が精度が高いため、尿検査はあまり行われません。

検査にかかる費用と結果が出るまでの期間

検査費用は、症状があって保険適用になる場合と、ブライダルチェックや不妊ドックなどの自費診療の場合で異なります。

検査結果が出るまでの期間は、医療機関や検査方法によりますが、通常3日〜1週間程度です。

もし陽性だったら?治療法と妊活再開のタイミング

検査の結果「陽性」と診断されても、過度に恐れる必要はありません。クラミジアは薬で完治できる病気です。重要なのは、医師の指示通りに薬を飲みきること、そしてパートナーと足並みを揃えて治療することです。

基本的な治療は「抗生物質の内服」のみ

治療は、クラミジアに効果のある抗生物質(抗菌薬)を服用することが基本です。 一般的には、アジスロマイシン(一度飲むだけで効果が続く薬)や、ドキシサイクリン、クラリスロマイシン(1週間程度飲み続ける薬)などが処方されます。

症状が消えたからといって、自己判断で薬を中断するのは絶対にやめてください。菌が体内に残り、耐性菌となって薬が効きにくくなる恐れがあります。処方された分は必ず最後まで飲み切りましょう。

絶対に守るべきルール!パートナーとの同時治療とピンポン感染防止

ご自身が陽性だった場合、必ずパートナー(夫・彼氏)にも検査と治療を受けてもらう必要があります。これが最も重要なポイントです。

もしあなただけが治療して治っても、パートナーが感染したままであれば、性交渉によって再びあなたが感染してしまいます。これを「ピンポン感染」と呼びます。 「彼には症状がないから」は通用しません。男性の約半数は無症状です。不妊治療をスムーズに進めるためにも、二人の問題として捉え、同時に治療を行いましょう。治療期間中は、性交渉(コンドーム着用を含む)を控えるのが原則です。

治療期間と再検査で陰性を確認するまでの流れ

薬を飲み終わったからといって、その瞬間に菌が消滅しているわけではありません。また、薬が効かずに菌が残っているケースも稀にあります。そのため、「治癒確認検査(再検査)」が必須です。

通常、薬の服用終了から2〜3週間以上あけて再検査を行います。あまり早く検査しすぎると、死んだ菌の反応を拾ってしまい「偽陽性(本当は治っているのに陽性と出る)」になることがあるからです。 この再検査で「陰性」が確認できて初めて、治療完了となります。ここから安心して妊活や不妊治療を再開することができます。

妊娠中のクラミジア感染と赤ちゃんへの影響

もし、クラミジアに感染していることに気づかず妊娠した場合、あるいは妊娠中に感染してしまった場合、お腹の赤ちゃんにはどのような影響があるのでしょうか。妊娠初期の妊婦健診で必ずクラミジア検査が行われるのには、大きな理由があります。

分娩時の母子感染(産道感染)のリスク

妊娠中のクラミジア感染が赤ちゃんに影響を与える最大のリスクは、出産時(経腟分娩)です。産道(膣)にクラミジアがいる状態で赤ちゃんがそこを通ると、目や口、鼻などから菌が入り込み、赤ちゃんに感染してしまいます。これを「産道感染」と言います。

感染したままでの経腟分娩による新生児への感染率は、30〜50%と非常に高い確率であることがわかっています。また、妊娠中の感染は絨毛膜羊膜炎を引き起こし、早産や前期破水の原因になることもあります。

新生児結膜炎や肺炎を引き起こす可能性

産道感染によって赤ちゃんがクラミジアに感染すると、以下のような病気を発症するリスクがあります。

新生児結膜炎: 生後1週間〜2週間頃に発症します。まぶたが腫れ、大量の目やにが出ます。適切な治療を行わないと、最悪の場合は視力障害が残ることもあります。

新生児肺炎: 生後1ヶ月〜3ヶ月頃に発症することがあります。咳や多呼吸などの症状が現れ、重症化すると入院治療が必要になります。

こうしたリスクを防ぐため、妊婦健診で陽性が判明した場合は、妊娠中でも服用できる安全な抗生物質を使って治療を行います。出産までに完治していれば、通常通り経腟分娩が可能であり、赤ちゃんへの影響も防げます。

よくある質問(Q&A)

Q-A

Q1: 検査結果が陽性でも妊娠は可能?

A1: クラミジア検査が陽性でも、適切な治療を受ければ妊娠は十分可能です。重要なのは、感染が判明した時点での迅速な対応です。現在の感染(抗原陽性)の場合は、まず抗生物質による治療を完了させ、治癒を確認してから妊娠を計画します。過去の感染(抗体陽性、抗原陰性)の場合は、卵管造影検査などで卵管の状態を評価します。卵管に問題がなければ自然妊娠が期待でき、軽度の癒着であれば腹腔鏡手術後の妊娠も可能です。高度の卵管障害がある場合でも、体外受精により妊娠・出産している方は多数います。クラミジア陽性は決して妊娠を諦める理由にはなりません。むしろ、早期に問題を発見できたことで、適切な治療方針を立てられると前向きに考えることが大切です。

Q2: 過去の感染が不妊の原因になる?

A2: 過去のクラミジア感染が現在の不妊の原因となっている可能性はあります。特に、過去に感染に気づかず長期間放置していた場合や、不完全な治療で再感染を繰り返した場合は、卵管への影響が残存している可能性が高くなります。IgG抗体が陽性の場合、過去の感染を示していますが、これだけで不妊の原因と断定はできません。子宮卵管造影検査や腹腔鏡検査により、実際の卵管の状態を評価する必要があります。検査で卵管の通過性が確認できれば、過去の感染の影響は軽微と考えられ、自然妊娠も期待できます。一方、癒着や閉塞が確認された場合は、それが不妊の一因となっている可能性が高く、適切な治療選択が必要です。過去の感染歴があっても、現在の状態を正確に把握し、適切な治療を受けることで、多くの方が妊娠に成功しています。

CONTACT

ご予約・お問い合わせ