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妊娠初期の腹痛の原因は?これって大丈夫?原因と見分け方を生殖医療専門医が徹底解説。

  • 公開日:2025.12.24
  • 更新日:2025.12.25
妊娠初期の腹痛の原因は?これって大丈夫?原因と見分け方を生殖医療専門医が徹底解説。|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院


妊娠が分かった喜びと同時に、腹痛を感じて不安になっていませんか?特に、長い不妊治療を経てようやく授かった命だからこそ、些細な変化にも敏感になってしまうお気持ち、本当によく分かります。生殖医療専門医として多くの患者様の不安に寄り添ってきましたが、妊娠初期の腹痛は実は多くの妊婦さんが経験するもので、心配いらないものがほとんどです。しかし、中には注意が必要なケースもあります。この記事では、妊娠初期の腹痛について医学的な視点から分かりやすく、そして皆様の不安に寄り添いながら解説していきます。

妊娠初期の腹痛は多くの妊婦さんが経験します

妊娠初期腹痛の発生頻度と特徴

妊娠初期、つまり妊娠4週から15週頃までの期間に、何らかの腹痛を経験する妊婦さんは実に約7割にも上ります。腹痛の特徴として最も多いのは、下腹部の軽い引っ張られるような痛みや、生理痛に似た鈍い痛みです。

これらの痛みは、一日の中でも強弱があり、特に疲れた時や長時間立っていた後に感じやすくなります。また、妊娠週数が進むにつれて痛みの場所が変化することもあり、最初は下腹部中央だった痛みが、徐々に左右どちらかに偏ることもあります。重要なのは、これらの痛みの多くは生理的なもので、赤ちゃんが順調に成長している証でもあるということです。

ただし、痛みの感じ方には個人差が大きく、同じような子宮の変化でもほとんど痛みを感じない方もいれば、かなり強く感じる方もいらっしゃいます。これは痛みに対する感受性の違いや、子宮の位置、体型なども関係しています。

不妊治療後の妊娠で腹痛が心配になる理由

不妊治療を経て妊娠された方は、一般的な自然妊娠の方と比べて、腹痛への不安が大きくなる傾向があります。これには明確な理由があります。まず、長期間の治療を経てようやく授かった命だからこそ、「この妊娠を絶対に守りたい」という思いが強くなります。また、治療中に経験した様々な身体の変化や、時には流産などの辛い経験をされた方もいらっしゃるでしょう。

さらに、体外受精などの高度生殖医療を受けた場合、胚移植後のホルモン補充療法により、通常の妊娠とは異なる身体の変化を感じることもあります。例えば、プロゲステロン製剤の影響で腸の動きが鈍くなり、それが腹痛として感じられることもあります。

診療経験上、不妊治療後の妊娠では、患者様ご自身が自分の体の変化に非常に敏感になっていることが多く、軽い痛みであっても強く意識してしまう印象があります。これは決して悪いことではなく、大切な命を守ろうとする自然な反応です。ただ、過度な不安はストレスとなり、かえって妊娠経過に影響することもあるため、正しい知識を持って必要以上に不安に思わず、適切に対処することが大切です。

心配のいらない妊娠初期の腹痛

着床時期の軽い痛み

着床痛と呼ばれる痛みについても触れておきましょう。受精卵が子宮内膜に着床する際(妊娠3~4週頃)に、軽い痛みや違和感を感じる方がいらっしゃいます。ただし、医学的には着床そのものが痛みを引き起こすかどうかは議論があり、全ての方が感じるわけではありません。

着床時期の痛みとして報告されるのは、下腹部の軽いチクチクした痛みや、生理前のような鈍い痛みです。また、少量の出血(着床出血)を伴うこともあります。これらの症状は数日で自然に治まり、その後は妊娠が順調に継続することがほとんどです。

2024年の最新の研究では、着床時期に子宮内膜から分泌される様々なサイトカイン(細胞間の情報伝達物質)が、局所的な炎症反応を引き起こし、それが軽い痛みとして感じられる可能性が示唆されています。いずれにしても、この時期の軽い痛みは妊娠成立の過程で起こる自然な現象と考えられています。

子宮が大きくなることによる腹痛

妊娠すると、子宮は急速に大きくなり始めます。妊娠前は鶏卵大だった子宮が、妊娠12週頃には握りこぶし大まで成長します。この急激な変化により、子宮周囲の組織が引き伸ばされ、それが腹痛として感じられるのです。この痛みの特徴は、下腹部全体に広がる鈍い痛みで、特に立ち上がる時や体位を変える時に感じやすくなります。

痛みの程度は軽度から中等度で、安静にしていると自然に軽快することがほとんどです。また、温かいお茶を飲んだり、ゆっくりと深呼吸をすることで楽になることも多いです。この種の痛みは妊娠6週頃から始まり、12週頃にピークを迎え、その後は子宮の成長速度が緩やかになるため、徐々に感じにくくなっていきます。

最新の超音波検査技術により、子宮の成長過程を詳細に観察できるようになり、痛みを感じている時期と子宮の急成長期が一致することが確認されています。つまり、この痛みは赤ちゃんが順調に成長しているから起こるものとも言えるのです。

靭帯が伸びることによる痛み

子宮を支える靭帯、特に子宮を前側から支えている円靭帯(えんじんたい)が伸びることによる痛みも、妊娠初期によく見られます。円靭帯は子宮の両側から鼠径部(そけいぶ)に向かって伸びている靭帯で、子宮が大きくなるにつれて引き伸ばされます。この痛みは「牽引痛」などと呼ばれ、特徴的な症状があります。

痛みは下腹部の左右どちらか、または両側に現れ、突然ズキッとした鋭い痛みとして感じられることが多いです。くしゃみや咳をした時、急に立ち上がった時、寝返りを打った時などに起こりやすく、数秒から数分で治まります。痛みの部位は、おへその横から足の付け根にかけての範囲で、時には太ももの内側まで響くこともあります。

この痛みは妊娠8週頃から始まり、16週頃まで続くことが多いですが、個人差があります。対処法としては、ゆっくりと動作すること、痛みを感じたら軽く前かがみになって靭帯の緊張を和らげること、就寝時は抱き枕を使って楽な姿勢を取ることなどが効果的です。

注意が必要な妊娠初期の腹痛

流産の可能性がある腹痛の特徴

残念ながら、妊娠初期の腹痛の中には流産の兆候である場合もあります。しかし、過度に心配する必要はありません。適切な知識を持って、必要な時に速やかに受診することが大切です。流産の可能性を示唆する腹痛には、いくつかの特徴があります。

出血を伴う腹痛

最も注意が必要なのは、腹痛と同時に膣からの出血がある場合です。特に、鮮血(真っ赤な血)が続く場合や、生理の時のような出血量がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。ただし、少量の茶色っぽいおりものや、ピンク色のおりもの程度であれば、必ずしも流産を意味するわけではありません。

出血を伴う腹痛の場合、痛みの性質も重要です。規則的に繰り返す痛み(陣痛様の痛み)や、徐々に強くなっていく痛みは要注意です。一般的には、「生理痛の最も重い時以上の痛み」と表現される方が多く、これは子宮が収縮している可能性を示唆します。このような症状がある場合は、安静にして様子を見るのではなく、速やかに受診することをおすすめします。

持続的な強い痛み

休んでも改善しない持続的な強い腹痛も、注意が必要なサインです。特に、痛みが数時間以上続く場合や鎮痛剤を服用しても改善しない場合は、何らかの異常が起きている可能性があります。この場合の痛みは、下腹部全体に広がる強い痛みであることが多く、時には腰痛も伴います。

また、痛みと共につわりが急に軽くなったり、基礎体温が下がったりする場合も要注意です。これらは妊娠を維持するホルモンが低下している可能性を示唆します。ただし、つわりの軽減は妊娠12週頃から自然に起こることもあるため、他の症状と合わせて総合的に判断することが大切です。

子宮外妊娠の可能性

子宮外妊娠(異所性妊娠)は、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまう状態で、その約9割は卵管に起こります。妊娠初期の重要な鑑別疾患の一つで、放置すると卵管破裂などの重篤な状態になる可能性があるため、早期発見が極めて重要です。

子宮外妊娠の特徴的な症状は、下腹部の片側に偏った強い痛みです。最初は軽い痛みから始まり、徐々に強くなっていくことが多いです。また、不正出血を伴うことも多く、少量の暗赤色の出血が持続することがあります。進行すると、突然の激しい腹痛、冷や汗、めまい、失神などのショック症状が現れることもあります。

リスク因子として、過去の骨盤内感染症、子宮内膜症、卵管手術の既往、不妊治療(特に体外受精)などがあります。ただし、体外受精の場合でも子宮外妊娠の発生率は2-3%程度で、過度に心配する必要はありません。妊娠5-6週で超音波検査により子宮内に胎嚢が確認できれば、子宮外妊娠は否定できます。

その他の注意すべき症状

妊娠初期の腹痛に伴って、以下のような症状がある場合も注意が必要です。まず、38度以上の発熱を伴う腹痛は、感染症の可能性があります。尿路感染症や虫垂炎など、妊娠とは直接関係のない疾患でも、妊娠中は重症化しやすいため早めの対応が必要です。

激しい嘔吐を伴う腹痛も要注意です。つわりによる嘔吐とは異なり、腹痛と同時に起こる激しい嘔吐は、腸閉塞や急性胃腸炎などの可能性があります。また、排尿時の痛みや頻尿を伴う腹痛は、膀胱炎や腎盂腎炎の可能性を示唆します。妊娠中は免疫力が低下し、尿路感染症にかかりやすくなるため、これらの症状がある場合は婦人科だけではなく総合的な検査も必要です。

さらに、腹部の張りが強く、お腹がカチカチに硬くなるような場合も注意が必要です。これは子宮収縮が起きている可能性があり、切迫流産の兆候かもしれません。安静にしても改善しない場合は、医療機関での評価が必要です。

妊娠初期の腹痛への対処法

安静にする際のポイント

腹痛を感じた時、まず大切なのは慌てずに安静にすることです。ただし、「安静」といっても、ただ横になっているだけではありません。効果的な安静の取り方にはコツがあります。

まず、楽な姿勢を見つけることが重要です。多くの妊婦さんにとって、左側を下にした横向きの姿勢(左側臥位)が最も楽に感じられます。これは、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫するのを防ぎ、血液循環を良好に保つためです。膝の間にクッションを挟んだり、抱き枕を使用したりすると、より楽な姿勢が保てます。

安静時は、深呼吸を心がけましょう。ゆっくりと鼻から息を吸い、口から吐く腹式呼吸は、自律神経を整え、子宮の緊張を和らげる効果があります。また、好きな音楽を聴いたり、アロマテラピー(妊娠中でも安全なラベンダーやカモミールなど)を活用したりすることで、リラックス効果を高めることができます。

安静の目安は痛みが軽減するまでですが、一般的には30分から1時間程度で改善することが多いです。それ以上続く場合や、安静にしても改善しない場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

日常生活での注意点

妊娠初期の腹痛を予防・軽減するために、日常生活で気をつけるべきポイントがいくつかあります。まず、急激な動作は避けることです。立ち上がる時はゆっくりと、重い物を持つ時は膝を曲げて腰に負担をかけないようにしましょう。

適度な運動も大切です。安定期に入るまでは激しい運動は控えるべきですが、軽いウォーキングやマタニティヨガなどは血液循環を改善し、腹痛の予防に役立ちます。ただし、医師から安静を指示されている場合は、その指示に従ってください。

食生活も重要です。便秘は腹痛を悪化させる要因となるため、食物繊維を多く含む野菜や果物を積極的に摂取し、水分も十分に取るようにしましょう。また、カフェインは子宮収縮を促す可能性があるため、コーヒーや紅茶は1日1-2杯程度に留めることをおすすめします。

ストレス管理も忘れてはいけません。過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、腹痛を引き起こしやすくなります。仕事や家事で無理をせず、周囲の協力を得ながら、ゆとりのある生活を心がけましょう。

受診のタイミングと準備

どのような時に受診すべきか、明確な基準を知っておくことは大切です。以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 生理用ナプキンが必要なほどの出血
  • 数時間以上続く強い腹痛
  • 痛みが徐々に強くなる場合
  • 発熱、激しい嘔吐、排尿痛などを伴う場合
  • 意識が朦朧とする、冷や汗が出るなどのショック症状

受診時には、以下の情報を準備しておくとスムーズです。

  • 最終月経開始日と妊娠週数
  • 痛みの始まった時期と経過
  • 痛みの部位と性質(鈍痛、鋭い痛み、間欠的など)
  • 出血の有無と量
  • その他の随伴症状
  • 使用中の薬剤(不妊治療薬を含む)

また、母子手帳、保険証、診察券は常に持ち歩くようにしましょう。パートナーや家族にも、緊急時の連絡先や受診する医療機関を共有しておくことが大切です。

生殖医療専門医からのアドバイス

不妊治療後の妊娠における心構え

不妊治療を経て妊娠された方は、喜びと同時に大きな不安を抱えていることと思います。「やっと授かった命をなんとか守りたい」という思いから、些細な体の変化にも敏感になってしまうのは当然のことです。しかし、過度な不安はかえってストレスとなり、妊娠経過に影響することもあります。

まず知っていただきたいのは、不妊治療後の妊娠だからといって、流産リスクが特別に高いというわけではないということです。年齢や基礎疾患など個別の要因はありますが、妊娠が成立した時点でその妊娠の予後は自然妊娠と大きく変わりません。

また、妊娠中の腹痛や出血は、不妊治療をしているから多いということではなく、自然妊娠をされる方も同じように現れる症状だということも知っておいていただくといいと思います。心配し過ぎるのではなく、今お腹にいる赤ちゃんと過ごせる一日一日を大切にしてください。定期的な健診をきちんと受け、異常があれば速やかに相談する。この基本を守っていれば、多くの場合、無事に出産を迎えることができます。

パートナーとのコミュニケーション

妊娠初期の不安な時期を乗り越えるには、パートナーの理解と協力が不可欠です。特に腹痛などの症状は、本人にしか分からない部分が多く、パートナーに理解してもらうことが難しい場合もあります。

具体的な痛みの程度を10段階で表現したり、「生理痛の○日目くらいの痛み」など、相手がイメージしやすい表現を使うことで、より理解を得やすくなります。また、「心配だから一緒に病院に来てほしい」「家事を手伝ってほしい」など、具体的なサポートをお願いすることも大切です。

パートナーも同じように不安を感じていることを忘れないでください。男性は女性と違って、妊娠を身体で実感することができないため、どのように関わればよいか分からずに戸惑っていることも多いのです。一緒に妊婦健診に行く、エコー写真を見る、妊娠・出産に関する本を一緒に読むなど、妊娠を二人の体験として共有することで、絆はより深まります。

不妊治療を一緒に乗り越えてきたカップルは、既に強い絆で結ばれています。その絆を大切にしながら、新しい家族を迎える準備を進めていってください。

よくある質問と回答

Q-A

Q1: 腹痛があっても仕事は続けて大丈夫ですか?

A1: 軽い腹痛で、安静にすれば改善する程度であれば、仕事を続けても問題ありません。ただし、立ち仕事や重労働の場合は、上司に相談して業務内容の調整を検討しましょう。母性健康管理指導事項連絡カードや診断書などを活用することで、医師の指示を職場に伝えることができます。

Q2: 腹痛がある時に市販の鎮痛剤を飲んでも良いですか?

A2: 妊娠中の薬の使用は慎重になる必要があります。アセトアミノフェンは比較的安全とされていますが、自己判断での使用は避け、必ず医師に相談してください。特に、アスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsは妊娠中には避けるべきです。

Q3: 腹痛予防のためのサプリメントはありますか?

A3: 特定のサプリメントが腹痛を予防するという医学的根拠はありません。ただし、葉酸は神経管閉鎖障害の予防に重要なので、妊娠前から妊娠初期にかけて摂取することが推奨されています。その他のサプリメントについては、医師に相談の上で使用してください。

Q4: 性行為は腹痛の原因になりますか?

A4: 通常の性行為が流産の原因になることはありませんが、性行為に伴う子宮収縮で一時的に腹痛を感じることがあります。出血や腹痛がある場合や、医師から安静を指示されている場合は控えましょう。不安な場合はパートナーと相談し、スキンシップを大切にしながら、お互いが安心できる方法を見つけてください。

まとめ

妊娠初期の腹痛は多くの妊婦さんが経験する症状です。その多くは赤ちゃんが順調に成長している証であり、過度に心配する必要はありません。しかし、中には注意が必要な腹痛もあるため、正しい知識を持って適切に対処することが大切です。

特に不妊治療を経て妊娠された方は、これまでの経験から不安が大きくなりがちですが、一人で抱え込まず、医療者やパートナー、家族のサポートを受けながら、この大切な時期を過ごしていただきたいと思います。

何か心配なことがあれば、遠慮なく医療機関に相談してください。私たち生殖医療専門医は、皆様が安心して妊娠生活を送れるよう、全力でサポートいたします。新しい命との出会いまで、一日一日を大切に過ごしていきましょう。

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