「会議中なのに、まぶたが重くて仕方ない」「しっかり寝たはずなのに、朝から体が鉛のよう」。生理前や生理中こんな眠気に悩まされていませんか。周りに理由を言いづらく「気合いが足りないのかな」と自分を責めてしまう方も少なくありません。妊活中の方であれば「この眠気は妊娠のサイン?それともいつもの生理前?」と、毎月気持ちが揺れ動くこともあるでしょう。
まずお伝えしたいのは、生理にともなう眠気の多くは女性ホルモンの働きによる自然な反応だということです。あなたの頑張りが足りないわけではありません。
この記事では、生殖医療専門医の立場から生理で眠くなる仕組みと今日からできる対処法、受診を考えたほうがよいサイン、そして妊活中・不妊治療中の方にこそ知ってほしい眠気との付き合い方を、学会や国の情報をもとにわかりやすく解説します。
生理で眠くなるのはなぜ?主な5つの原因
生理の前後に眠くなる理由はひとつではありません。ホルモン、体温、鉄、自律神経、痛みといった複数の要因が重なり合って起こります。日本産科婦人科学会も、月経前症候群(PMS)の症状のひとつとして「不眠・眠気」を挙げています。
黄体ホルモン(プロゲステロン)の眠気を誘う作用
排卵が終わると卵巣に残った卵胞は「黄体」に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。黄体ホルモンは、受精卵が着床しやすいように子宮内膜をふかふかに整え妊娠を維持するための大切なホルモンです。
一方で、黄体ホルモンにはからだを休ませ、エネルギーを蓄えようとする方向に働く性質もあります。分泌量は排卵後から増え、排卵のおよそ1週間後にピークを迎えます。この時期に「なんだか眠い」「だるい」と感じやすいのはそのためです。妊娠に備えて「無理をせず休んでね」とからだがサインを出していると考えるとイメージしやすいかもしれません。
脳の「ブレーキ役」アロプレグナノロンとは
黄体ホルモンが眠気につながる仕組みとして注目されているのが「アロプレグナノロン」という物質です。これは黄体ホルモンが体内で分解されるときにできる代謝物で、脳の興奮をしずめる神経伝達物質「GABA(ギャバ)」の受け取り口(GABA-A受容体)に作用します。
GABAは、いわば脳のブレーキ役です。アロプレグナノロンはこのブレーキの効きを強めるため、気持ちが落ち着く一方で眠気やぼんやり感が出やすくなると考えられています。
このブレーキへの反応のしかたには個人差が大きく、同じホルモン量でも強く眠くなる人とそうでない人がいることが研究でわかっています。「私だけこんなに眠いのはなぜ?」と感じる方は、体質による感受性の違いが関係しているのかもしれません。
高温期の体温変化で夜の眠りが浅くなる
黄体ホルモンには体温を上げる作用もあり、排卵後は基礎体温が0.3〜0.5℃ほど上がる「高温期」に入ります。
人は、夜に深部体温(からだの内部の温度)が下がることで自然な眠りに入ります。ところが高温期は体温が下がりにくく、昼と夜の体温差も小さくなるため、寝つきが悪くなったり眠りが浅く途中で目が覚めたりしやすくなります。その結果、夜にしっかり眠れた感覚が得られず翌日の日中に眠気が持ち越されるのです。
「夜は眠れないのに昼間は眠い」というちぐはぐな状態は、この体温リズムの変化で説明できることが多くあります。
経血による鉄不足(貧血・隠れ貧血)
生理中の眠気やだるさで見逃せないのが、経血によって鉄が失われることで起こる鉄不足です。鉄は、全身に酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビンの材料です。不足すると脳やからだに十分な酸素が届かず、眠気、疲れやすさ、集中力の低下、動悸、息切れなどが起こります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人女性の鉄の推奨量を、月経がない場合は1日6.0mgとしているのに対し、月経がある場合は10.0〜10.5mgと大きく上乗せしています。
また、血液検査のヘモグロビン値は正常でも、からだに蓄えられた鉄(フェリチン)が減っている「隠れ貧血」の方も珍しくありません。経血量が多い方ほど注意が必要です。
PMS(月経前症候群)と自律神経の乱れ
月経前症候群(PMS)は、生理の3〜10日ほど前から心やからだに不調が現れ、生理が始まると自然に軽くなるものです。日本産科婦人科学会によると、日本人女性の70〜80%が生理前に何らかの不調を感じ、約5%は日常生活に困難を感じるほど症状が重いとされています。
原因ははっきりわかっていませんが、黄体期の後半に女性ホルモンが急に下がることで、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることが関係すると考えられています。自律神経も乱れやすく、昼間の強い眠気と夜の不眠が同時に起こる方もいます。
眠気に加えてイライラ、落ち込み、むくみ、頭痛などが毎月同じ時期にくり返すなら、PMSが背景にあるかもしれません。
生理痛とプロスタグランジンによる消耗
生理が始まると、子宮内膜から「プロスタグランジン」という物質が分泌されます。子宮を収縮させて経血を外に押し出す働きをもちますが、量が多いと強い下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気の原因になります。
痛みが続くと心身は大きなストレスを受け夜もぐっすり眠れなくなりがちです。さらに痛みをこらえることで体力を消耗し日中の倦怠感や眠気につながります。また、市販の鎮痛薬の中には眠気を起こしやすい鎮静成分を含むものもあります。薬を飲んだ後に急に眠くなる場合は、成分表示を確認してみてください。
毎回鎮痛薬が手放せないほど痛みが強い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもあります。妊娠のしやすさに関わる病気でもあるため一度婦人科で相談しましょう。
眠気が強くなる時期は?月経周期と眠気のリズム
眠気の出方は月経周期のどの時期かによって変わります。自分の周期のどこで眠くなるのかを知っておくと予定の立て方や心構えがぐっと楽になります。
4つの時期で変わるホルモンと眠気
月経周期は大きく4つの時期に分けられます。28日周期の場合の目安は次のとおりです。
| 時期 | 目安(28日周期) | 主なホルモンの動き | 基礎体温 | 眠気の傾向 |
|---|---|---|---|---|
| 月経期 | 1〜5日目 | エストロゲン・黄体ホルモンともに低い | 低温期 | 鉄不足や痛みで、だるさ・眠気が出やすい |
| 卵胞期 | 6〜13日目頃 | エストロゲンが増える | 低温期 | 心身が安定しやすく、眠気は比較的少ない |
| 排卵期 | 14日目頃 | エストロゲンがピーク、排卵を促すホルモン(LH)が急増 | 低温期から高温期へ | 眠気やだるさを感じ始める人も |
| 黄体期 | 15〜28日目頃 | 黄体ホルモンが増え、後半に急低下 | 高温期 | 眠気が最も出やすい。後半はPMSも重なる |
周期の長さは人によって異なり、25〜38日の範囲であれば正常とされています。排卵日も月ごとに前後しますが、排卵から次の生理までの黄体期は約14日と比較的一定です。そのため「生理予定日のおよそ2週間前から生理2日目ごろまで」が眠気の出やすい時期の目安になります。
基礎体温で「眠くなる日」を予測する
自分の眠気のリズムを知るためにおすすめなのが基礎体温の記録です。朝目が覚めたら、起き上がる前に婦人体温計を舌の下に入れて測ります。グラフにすると低温期と高温期の二相に分かれ、高温期に入るタイミングと眠気が強くなる時期が重なっていることに気づく方が多いはずです。
あわせて眠気の強さを「0〜3」の数字でメモしておくと、日本産科婦人科学会がPMSの診断で勧めている「症状日誌」の代わりにもなり受診時に医師へ伝える情報としてとても役立ちます。
妊活中の方にとっては、排卵の有無や高温期の長さを確認できるという大きなメリットもあります。
生理で眠いときは寝た方がいい?
「眠いときは寝てしまっていいの?」これは診察室でも多くいただく質問のひとつです。
結論:休めるなら休んでOK、ただし昼寝は短めに
結論からお伝えすると、休める状況なら無理に我慢せず休んでかまいません。生理前後の眠気はホルモンによる自然な反応で、からだが休息を求めているサインでもあるからです。
ただし長い昼寝には注意が必要です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は個人差があるものの6時間以上の睡眠を目安とすることが示され、長い昼寝が夜の良い眠りを妨げることにも触れられています。
高温期はもともと夜の眠りが浅くなりやすい時期です。日中に長く寝てしまうと夜に寝つけなくなり、翌日さらに眠くなるという悪循環に陥りかねません。休日に横になるなら、だらだらと寝続けるより「短く休んで、夜はいつもより早めに布団に入る」を意識しましょう。
上手な仮眠のとり方
仕事や家事の合間に仮眠をとるときは、次のポイントを押さえると目覚めた後もすっきり過ごせます。
- 時間は15〜20分程度にとどめる(深い眠りに入る前に起きると、ぼんやり感が残りにくい)
- できれば15時までにとる(夕方以降の仮眠は夜の寝つきを悪くします)
- 横になれなくても、椅子に座ったまま机に伏せる、背もたれに寄りかかるだけで効果があります
- 仮眠の直前にコーヒーや緑茶を飲む(カフェインが効き始める20〜30分後に目覚めやすくなります)
- アラームをかけて寝過ごしを防ぐ
生理の1〜2日目など痛みや出血が多くつらい日は、思い切って予定を減らすことも立派なセルフケアです。労働基準法第68条では生理日の就業が著しく困難な場合に休暇を請求できる「生理休暇」も定められています。最近は名称を工夫するなどして取りやすくしている企業も増えてきました。
仕事中・外出先でもできる眠気対策と予防
実際には「眠くても休めない」という場面のほうが多いかもしれません。ここでは、仕事中や外出先でもできる対処法と日頃からの予防策を紹介します。
今すぐできる対処法
- 明るい光を浴びる:光は脳を目覚めさせるスイッチです。窓際に移動する、昼休みに5分でも外を歩くだけで違います。
- からだを少し動かす:席を立って階段を使う、肩を回す、ふくらはぎを曲げ伸ばしするなど。血のめぐりがよくなり、頭がすっきりします。
- 首元を冷やす・ガムを噛む:冷たいおしぼりを首にあてる、ミント系のガムを噛むといった刺激も、眠気のリセットに役立ちます。
- カフェインは時間と量を意識する:コーヒーや緑茶は眠気覚ましに有効ですが、夕方以降は夜の眠りを妨げます。妊娠を希望している方は、海外の食品安全機関が妊娠中の目安としている「1日200mg(コーヒーでマグカップ約2杯)まで」を参考にしましょう。
- 甘いもののドカ食いを避ける:血糖値が急に上がって急に下がると、かえって眠気やだるさが強まります。
日頃からできる予防(睡眠・食事・運動)
眠気の波を小さくするには、夜の眠りの質を上げることが一番の近道です。
- 生理予定日の2週間前からは、いつもより30分早く布団に入る
- 寝る1〜2時間前に、38〜40℃程度のぬるめのお湯に浸かる(いったん上がった深部体温が下がるタイミングで眠気が訪れ、高温期の寝つきの悪さを和らげます)
- 朝は日光を浴び、寝室にはスマートフォンを持ち込まない
- ウォーキングなど、無理のない運動を習慣にする
- 寝酒は控える(寝つきはよくなっても眠りが浅くなります)
厚生労働省の検討会資料でも、日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」をもとに、PMSの第一選択はカウンセリング・生活指導・運動療法であると紹介されています。食事では、玄米や全粒粉パンなどの食物繊維が多い炭水化物、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6を意識してとり、精製された砂糖、アルコール、喫煙を控えることが勧められています。
鉄分を補う食事のポイント
食品に含まれる鉄には、吸収されやすい「ヘム鉄」(赤身の肉や魚、かつお、あさりなど)と、吸収されにくい「非ヘム鉄」(小松菜、ほうれん草、大豆製品、ひじきなど)があります。
非ヘム鉄は、ビタミンCを多く含む野菜や果物、肉や魚などの動物性たんぱく質と一緒にとると吸収率が上がります。反対に、食事中や食後すぐの緑茶・コーヒー・紅茶は、タンニンが鉄の吸収を妨げるため、少し時間をずらすのがコツです。
なお、レバーは鉄が豊富ですがビタミンAも多いため、妊娠を考えている方や妊娠初期の方は食べ過ぎに注意しましょう。鉄のサプリメントも推奨量を大きく超える量を自己判断で長く続けるのは避け、気になる方は血液検査で鉄の状態を確認してから補うのが安心です。また、妊娠を計画している方には厚生労働省が妊娠の1か月以上前からの葉酸サプリメント(1日400µg)を勧めています。
動画で見る葉酸

生殖医療専門医が伝えたい「妊活中・不妊治療中」の眠気
ここからは、妊活中・不妊治療中の方にぜひ知っていただきたい内容です。生殖医療専門医としてよくご相談いただくポイントをまとめました。
生理前の眠気は「排卵できているサイン」のことも
生理前の眠気はつらいものですが、見方を変えると「排卵がきちんと起きて、黄体ホルモンが分泌されている」ことを示すサインのひとつでもあります。黄体ホルモンは排卵後にしか十分に分泌されないため、排卵がない周期(無排卵周期)では高温期が現れず、典型的な生理前の眠気も起こりにくくなります。
一方で、「以前は感じていた生理前の眠気を最近まったく感じない」「高温期が短い」「高温期の途中で体温が下がる」という場合は、排卵障害や黄体機能不全が隠れていることがあります。黄体機能不全とは、黄体ホルモンの分泌が不十分で子宮内膜が着床に適した状態に整いにくい状態です。一般に、基礎体温の高温期が10日未満、黄体期中期の血中プロゲステロン値が10ng/mL未満などを目安に判断されます。
ただし、眠気の有無だけで排卵や黄体機能を判断することはできません。気になる方は基礎体温の記録を持参し、超音波検査やホルモン検査で確認しましょう。
妊娠初期の眠気とPMSの見分け方
妊娠が成立すると黄体ホルモンは減らずに分泌が続くため、妊娠初期にも強い眠気が出ることがよくあります。だるさや胸の張り下腹部の違和感なども共通するため、症状だけで生理前と妊娠初期を見分けるのは専門医でも困難です。見分けるヒントは次のとおりです。
| 見分けのポイント | 生理前(PMS) | 妊娠初期 |
|---|---|---|
| 基礎体温 | 生理予定日ごろに下がり、低温期へ | 高温期が下がらず、いつもより長く続く |
| 眠気の続き方 | 生理が始まると軽くなる | 生理予定日を過ぎても続く |
| 出血 | 予定日ごろに生理が始まる | 少量の出血がみられることもある |
| 確認方法 | 生理の開始 | 生理予定日の1週間後以降に妊娠検査薬 |
市販の妊娠検査薬は一般に生理予定日の1週間後から使用できます。早すぎると妊娠していても陰性になることがあります。また、排卵を促すためにhCG注射を使った周期では、薬の成分に反応して妊娠していなくても陽性に出ることがあります。不妊治療中の方は、自己判断で検査薬を使う前にクリニックから伝えられた判定日の指示に従いましょう。
不妊治療の黄体ホルモン補充中の眠気
体外受精や凍結胚移植などの不妊治療では、着床と妊娠の維持を助けるために、黄体ホルモンを薬で補う「黄体補充」がよく行われます。腟に入れる腟剤、飲み薬、注射など、いくつかの方法があります。
薬で補った黄体ホルモンも体内でアロプレグナノロンに変換されるため、治療中に「いつもの生理前より眠い」「頭がぼーっとする」と感じる方は少なくありません。
この眠気は、治療に異常があるというサインではありません。大切なのは、つらくても自己判断で中止したり量を減らしたりしないことです。日常生活に支障があるほど眠い場合は、主治医に相談しましょう。使う時間帯を夜にする、別の製剤に変更するなど、調整できる場合があります。眠気が強いときは車の運転や危険を伴う作業も控えてください。
妊活中はピルが使えない 選べる対策は?
PMSの治療として低用量ピルはとても有効な方法です。日本産科婦人科学会も排卵を止めて女性ホルモンの変動を小さくすることで症状が軽くなると説明しています。服用をやめれば排卵は速やかに戻り、その後の妊娠にも影響しないとされています。
ただし、ピルは排卵を抑える薬のため服用中は妊娠できません。「今すぐ妊娠を目指したい」方には選びにくい方法です。妊活中に検討できる主な対策は次のとおりです。
- 症状日誌をつけ、眠気の出る時期に合わせて予定や働き方を調整する
- 体質や症状に合わせた漢方薬(加味逍遥散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など)
- 血液検査で鉄不足を確認し、必要に応じて鉄剤で補う
- 甲状腺機能などの検査で、眠気の原因になる病気がないか確かめる
- 心のつらさが強い場合は、カウンセリングや心療内科と連携した治療
市販薬やサプリメントも含め、妊活中に使ってよいものかどうかは必ず医師や薬剤師に確認してください。
病院を受診すべき眠気のサイン
生理にともなう眠気の多くは心配のないものですが、なかには治療が必要な病気が隠れていることもあります。
受診の目安チェックリスト
次のような項目に当てはまる場合は、婦人科での相談をおすすめします。
- □ 眠気のせいで、仕事や学業、家事に支障が出ている
- □ 居眠りで、仕事のミスや事故につながりそうになったことがある
- □ 生理と関係なく、一年中強い眠気が続いている
- □ 夜用ナプキンが1〜2時間もたない、レバーのような血の塊が出る、生理が8日以上続く
- □ 動悸、息切れ、めまいがある、顔色が悪いと言われる
- □ 鎮痛薬が効かないほど生理痛が強い
- □ 生理前の気分の落ち込みやイライラで、人間関係や仕事に支障が出る
- □ 月経周期が24日以内または39日以上、あるいは不規則
- □ 妊娠を望んで1年以上(35歳以上なら半年以上)たっても妊娠しない
「このくらいで受診していいのかな」と遠慮する必要はありません。日本医療政策機構の調査では、PMSや月経にともなう症状で仕事のパフォーマンスが元気なときの半分以下になる人が45%にのぼる一方、症状があっても「何もしていない」人が最も多いと報告されています。我慢を続ける必要はないのです。
眠気の陰に隠れていることがある病気
- 鉄欠乏性貧血・過多月経:1周期の経血量が140mLを超える状態を過多月経といい、子宮筋腫や子宮腺筋症が原因のこともあります。
- 甲状腺機能低下症:だるさ、むくみ、寒がり、体重増加とともに眠気が出ます。甲状腺は排卵や妊娠にも関わるため、不妊検査でも調べる項目です。
- 月経関連過眠症:月経周期に一致して、ほぼ一日中眠り続けるような強い眠気が数日くり返す、まれな睡眠障害です。睡眠の専門医との連携が必要になります。
- PMDD(月経前不快気分障害)・うつ病:PMDDはPMSのうち心の症状が特に重いタイプです。生理が来ても気分の落ち込みが続く場合は、うつ病との見分けも大切です。
- 睡眠時無呼吸症候群・ナルコレプシーなどの過眠症:いびきや呼吸の停止を指摘される、生理に関係なく日中に耐えがたい眠気がある場合は、睡眠外来での検査が勧められます。
生理と眠気のよくある質問

Q1. 生理中に一日中寝てしまうのは異常?
A1. 生理の1〜2日目にいつもより長く眠ってしまうこと自体は珍しくありません。痛みや出血で体力を消耗しからだが休息を求めているためです。休日であれば無理に起きていなくても大丈夫です。
ただし、毎回のように一日中起きられず日常生活が送れない、生理以外の時期も眠気が続く、という場合は、貧血や甲状腺の病気、月経関連過眠症などが隠れていることがあります。また、一日中寝ていると体内時計が乱れ、生理が終わった後も眠気やだるさが残りやすくなります。朝はいったんカーテンを開けて日光を浴び、食事をとってから横になるなど生活のリズムを保つ工夫をしてみてください。
Q2. 眠気が強い月と弱い月があるのはなぜ?
A2. 排卵の時期や黄体ホルモンの分泌量は毎周期まったく同じではありません。さらに、仕事の忙しさや睡眠不足、ストレス、季節、食生活、体調などの影響も受けるため、眠気の強さが月によって変わるのは自然なことです。
ただ、もともと生理前の眠気を感じていた方がある時期から眠気も高温期も感じなくなった場合は、排卵が起きていない周期の可能性もあります。妊活中の方は、基礎体温と眠気の記録を2〜3周期分つけてみると自分のパターンや変化に気づきやすくなります。
Q3. 眠気を我慢して仕事を続けても大丈夫?
A3. 短時間の眠気であれば、この記事で紹介した仮眠や光を浴びるといった方法でやり過ごせることも多いでしょう。ただし、強い眠気を無理に我慢し続けると集中力の低下によるミスや、通勤中・業務中の事故につながるおそれがあります。車の運転や機械の操作を伴うお仕事の方は特に注意が必要です。
厚生労働省も働く女性の健康課題への職場の理解と配慮を呼びかけており、体調に応じてテレワークや時差出勤を活用できる職場も増えています。周りに伝えにくいと感じるかもしれませんが、信頼できる上司や産業医、保健師に相談するのもひとつの方法です。
出典と引用元
- 日本産科婦人科学会「月経前症候群(PMS)」:定義(月経前3〜10日)、70〜80%・5%、症状に不眠・眠気、食事指導、低用量ピル・SSRI・漢方
- 厚生労働省 雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会 資料4(2024年3月):PMS治療の第一選択(産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020)、パフォーマンス半分以下45%、「何もしていない」が最多
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(三重県による紹介ページ):成人6時間以上、長い昼寝を避ける
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄」:日本人の食事摂取基準(2025年版)の鉄推奨量
- こども家庭庁成育局母子保健課「プレコンセプションケアの推進の現状と今後の方向性について」(保健医療科学 2026):2025年5月策定の5か年計画、定義
- 日本医事新報「黄体機能不全[私の治療]」:高温相10日未満、黄体中期プロゲステロン10ng/mL未満
- PMDA ウトロゲスタン腟用カプセル 再審査報告書:生殖補助医療における黄体補充の効能
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松見 泰宇
資格・専門医
- 東京大学医学博士
- 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本抗加齢医学会専門医
- 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
- 難病指定医
- 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
- 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
- 新生児蘇生インストラクターAコース修了
- 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
- 日本臨床免疫学会
- 日本産科婦人科学会
- 日本生殖医学会
- 日本生殖免疫学会
- 日本不育症学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
- 日本産婦人科乳腺医学会
- 日本スポーツ協会
- 産婦人科PRP研究会
経歴
- 東京大学医学部卒業
- 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
- 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
- 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
- 日本学術振興会特別研究員
- スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
- 成育医療研究センター特別研究員
- 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
- 帝京大学溝口病院講師
- 帝京大学非常勤講師
- 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
- 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
- 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務