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採卵の卵胞の大きさは何mmが目安?年齢別の判断基準を生殖医療専門医が解説

  • 公開日:2026.09.28
  • 更新日:2026.09.28
採卵の卵胞の大きさは何mmが目安?年齢別の判断基準を生殖医療専門医が解説|不妊治療・体外受精・卵子凍結なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院
この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
松見 泰宇学術顧問(医師)

生殖医療クリニック錦糸町駅前院の学術顧問を拝命いたしました、松見泰宇(まつみ ひろたか)と申します。

わたくしはこれまで、東京大学関連の大学病院や基幹病院において、尊敬する同窓の諸先輩方のもとで研鑽を積んでまいりました。その一方で、著名なプライベートクリニックに勤務する機会にも恵まれ、クリニックならではの、身近できめ細やかな診療も学んでまいりました。

これまでに培った知見が、当クリニックの患者さまのお役に少しでも立てば幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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「今日の卵胞は14mmでした」「まだ小さいので、また明後日来てください」。

採卵に向けた通院のたびに告げられる数字に、一喜一憂していませんか。仕事の予定を調整しながら何度もクリニックに通い、自己注射を続け、それでも「私の卵胞はちゃんと育っているのだろうか」と夜にスマートフォンで検索してしまう。診察室で、そんな思いを打ち明けてくださる方は少なくありません。

卵胞の大きさは、採卵の日を決めるうえで確かに大切な指標です。けれども、数字だけがひとり歩きすると、必要以上に不安がふくらんでしまいます。「18mmに届かなかったからダメ」「大きくなりすぎたから失敗」といった単純な話ではないからです。

この記事では、生殖医療専門医の視点で卵胞の大きさの目安と、その数字が持つ本当の意味を解説します。最新の研究や学会の資料も交えながら、年齢や体質によって考え方がどう変わるのか、「卵胞はあったのに卵がとれなかった」ときに何が起きているのかまで、できるだけやさしくお伝えします。読み終えたとき、次の診察で医師に聞きたいことが一つでも見つかれば幸いです。

採卵のときの卵胞の大きさは何mmが目安?【結論】

主席卵胞が18〜20mm前後に育ったらトリガーの目安

結論からお伝えすると、体外受精の採卵では「いちばん大きい卵胞(主席卵胞)が18〜20mm前後に育ったタイミング」で、卵子の最終成熟を促す薬(トリガー)を使うのが一般的な目安です。トリガーから採卵まではおよそ34〜37時間あけるため、採卵日は卵胞の成長をみながら逆算して決まります。

自然な排卵のときの卵胞は、おおむね18〜22mmとされています。複数の卵胞を育てる体外受精では、たとえば「18mm以上の卵胞が2個以上」をひとつの基準にし、そこにホルモン値や卵胞の数を加味してトリガー日を決める施設もあります。

ただし、この数字は「合格ライン」ではなく「判断のスタート地点」です。16mmでトリガーをかけるほうがよい方もいれば、20mmを超えるまで待つほうがよい方もいます。その理由を、この先で順に説明していきます。

「卵胞」と「卵子」は別物。超音波で見ているのは“袋”の大きさ

まず押さえておきたいのは、卵胞と卵子は別のものだということです。卵胞は、卵子を包んで育てる液体で満たされた小さな袋です。経腟超音波(腟から細いプローブを入れて卵巣を映す検査)で黒い丸として見えているのはこの袋で、卵子そのものは直径約0.1mmと小さく、超音波では見えません。

つまり「卵胞が20mm」というのは、卵子を育てる“部屋”の広さを測っているということです。部屋が十分に広がっていれば、中の卵子も成熟している可能性が高い。けれども、部屋の大きさと中の卵子の状態が必ず一致するわけではありません。

また、卵胞はきれいな球形とは限らず、楕円や多角形につぶれていることもよくあります。そのため多くの施設では縦横2方向を測って平均をとります。測る角度や医師によって1〜2mm程度の誤差が出るのは珍しくないので、1mmの違いに一喜一憂しすぎなくて大丈夫です。

卵胞はどう育つ?大きさの変化と成長スピード

月経開始から排卵までの卵胞サイズの推移

卵胞は、生まれたときから卵巣の中に「原始卵胞」という眠った状態で数多く存在しています。その一部が数か月かけて目を覚まし、超音波で見える2〜9mmほどの「胞状卵胞(ほうじょうらんぽう)」まで育ってきます。

自然な月経周期では、月経3日目ごろに2〜5mm程度の胞状卵胞がいくつか見え、8日目ごろには10mm前後に達します。その中からひとつだけが「主席卵胞」として選ばれて育ち続け、18〜22mm前後で脳からのLHサージ(排卵の合図となるホルモンの急上昇)を受けて排卵します。ほかの卵胞は途中で成長を止め、自然に消えていきます。

体外受精の卵巣刺激では、注射の排卵誘発剤を使って「本来なら消えていくはずだった卵胞」も一緒に育てます。月経開始時に見える胞状卵胞の数(AFC)が、その周期に育てられる卵胞の数のおおよその上限になります。

1日あたりの成長は約1〜2mm。数日で計画が変わる理由

卵胞が10mmを超えると、1日あたりおよそ1〜2mmのペースで大きくなります。たとえば診察日に14mmなら、2〜3日後に18mm前後に届く計算です。次の受診日が「中1日」「中2日」と細かく指定されるのはこのためです。

ただし、成長スピードには個人差があり、同じ方でも周期によって変わります。注射への反応がゆっくりな方、ある日を境にぐっと伸びる方、左右の卵巣でペースが違う方もいます。前回の周期と同じ日程にならないのは、決して珍しいことではありません。

「予定より採卵日が延びた」と聞くと不安になりますが、卵胞が育つのを待って日程を調整するのは、成熟卵を一つでも多く得るための大切な判断です。仕事の調整が大変な時期でもありますので、あらかじめ職場に「前後数日ずれる可能性がある」と伝えておくと、気持ちが少し楽になります。

採卵日(トリガー)は卵胞の大きさだけで決まらない

大きい卵胞の「数」と卵胞群全体のサイズ分布

専門医がトリガー日を決めるとき、実は「いちばん大きい卵胞」だけを見ているわけではありません。むしろ大切なのは、育っている卵胞の“群れ全体”がどんなサイズ分布になっているかです。

たとえば、20mmの卵胞が1個と10mm前後が10個ある方の場合、20mmに合わせて採卵すると、小さな卵胞の卵子の多くはまだ未熟です。反対に、小さい卵胞に合わせて待ちすぎると、先頭の卵胞が排卵してしまったり、卵子が成熟しすぎたりするリスクが出てきます。

そこで私たちは「先頭集団が18mm前後に何個そろっているか」「14〜17mmの“2番手グループ”がどれくらい控えているか」を見比べながら、成熟卵が最も多くとれそうな日を探します。卵胞のサイズ表を見せてもらえる施設なら、ぜひ「一番大きい数字」だけでなく、全体のばらつきにも目を向けてみてください。

血液検査のホルモン値(E2・LH・P4)

超音波と並んでトリガー判断の材料になるのが血液検査です。主に次の3つを確認します。

  • E2(エストラジオール):育っている卵胞から分泌される女性ホルモン。成熟した卵胞1個あたりおおよそ200〜300pg/mLが目安とされ、卵胞の数とE2値のバランスから「中身の育ち具合」を推測します
  • LH(黄体形成ホルモン):急上昇していれば、自然な排卵が近いサイン。予定より早く採卵日を決める理由になります
  • P4(プロゲステロン):卵胞が成熟に近づくと上がり始めます。高すぎる場合は、新鮮胚移植を見送り全胚凍結を選ぶ判断材料になることがあります

日本生殖医学会がまとめた知識でも、自然周期ではE2が200〜300pg/mL以上の状態が2〜3日続くとLHサージが起こるとされています。超音波で見える「袋の大きさ」と、血液でわかる「ホルモンの勢い」を組み合わせることで、判断の精度が上がるのです。

卵巣刺激法による違い

自然周期・低刺激法の場合

自然周期やクロミフェン・レトロゾールなどの飲み薬を中心とした低刺激法では、育つ卵胞は1〜3個程度です。一つひとつの卵胞がとても貴重なので、先頭卵胞が18〜20mm前後に育ち、E2値やLHの動きから成熟が確認できた時点でトリガーをかけます。

この方法ではLHサージを薬で強く抑えていないことが多いため、「待ちすぎによる排卵」が最大のリスクです。そのため、卵胞が十分な大きさに届く少し前に採卵日を決めることもあります。

動画でみる自然周期・低刺激法
卵巣刺激法の種類と方法 自然周期と低刺激法

アンタゴニスト法・PPOS法など調節卵巣刺激の場合

注射で多くの卵胞を育てる調節卵巣刺激では、GnRHアンタゴニストや黄体ホルモン(PPOS法)で排卵を抑えているため、先頭卵胞が20mmを少し超えるまで待って、2番手グループを育てる余裕があります。

動画でみるアンタゴニスト法
卵巣刺激法の種類と方法-アンタゴニスト法
動画でみるPPOS法
卵巣刺激法の種類と方法-PPOS法

トリガーの薬の選び方も大切です。日本生殖医学会の『生殖医療ガイドライン』では、受精率が低かったり未熟卵が多かったりした経験がある場合、hCG製剤とGnRHアゴニストを併用する方法(ダブルトリガー)を選択できるとしています。また、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い方には全胚凍結が推奨されています(生殖医療ガイドライン)。同じ卵胞サイズでも、刺激法によって最適なトリガー日や薬が変わることを覚えておいてください。

【最新研究】どの大きさの卵胞から成熟卵・良好胚がとれる?

トリガー日に12〜19mmの卵胞が成熟卵に最も貢献する

2018年に英国・ベトナムの研究グループが発表した研究では、hCG、GnRHアゴニスト、キスペプチンという3種類のトリガーを使った体外受精のデータを解析し、「トリガー当日の朝に12〜19mmだった卵胞」が成熟卵の数に最も貢献していたと報告しました。

さらに、この大きさの卵胞の割合が多い患者さんのグループは、少ないグループに比べて成熟卵が約5個多く得られていました。卵胞が20個ある方を想定したシミュレーションでは、サイズ分布の違いだけで採卵数が平均約10個から約15個へ増える可能性が示されています。

ここから読み取れるのは、「先頭の卵胞を大きくすること」よりも「中くらいの卵胞をたくさんそろえること」が成熟卵を増やすカギだということです。トリガー当日に18〜20mmの卵胞だけでなく、その少し後ろを走る卵胞群を見て判断するのは、こうした根拠に基づいています。

採卵時に19〜24.5mmの卵胞で良好胚盤胞率が高い

2022年に米国の研究グループが報告した研究では、採卵時に穿刺(針を刺して卵胞液を吸う操作)した卵胞一つひとつの大きさと、その後の胚の育ちを追跡しました。その結果、良好な胚盤胞(移植に適した段階まで育った胚)が得られる割合は卵胞が大きくなるほど上がり、19〜24.5mmで最も高くなっていました。25mm以上でも成績は大きく落ちず安定していた一方、9.5mm以下の卵胞では良好胚盤胞率が約2%とかなり低かったと報告されています。

一見、先ほどの「12〜19mm」と矛盾するように見えますが、そうではありません。トリガーから採卵までの約36時間で卵胞はさらに数mm大きくなります。つまり「トリガー日に12〜19mm」の卵胞が「採卵日に19〜24mm」前後になって穿刺される、と考えると両者はきれいにつながります。

小さすぎる卵胞・大きすぎる卵胞からも卵子がとれることはある

研究結果はあくまで「確率の高い範囲」を示したものです。実際の採卵では、14mm程度の卵胞から成熟卵がとれることもありますし、30mm近くまで大きくなった卵胞から成熟卵が回収されることもあります。

そのため多くの施設では、目安より小さな卵胞でも、安全に届く範囲であれば一緒に穿刺します。小さな卵胞から得た未熟な卵子を体外で成熟させる方法(IVM:体外成熟培養)を組み合わせることもあります。

「卵胞が大きすぎると言われた」「小さい卵胞ばかりだった」と落ち込む必要はありません。大切なのは、その周期でとれた卵子の状態を担当医と振り返り、次の周期の刺激法やトリガーのタイミングに生かしていくことです。

年齢・卵巣予備能によって「卵胞の大きさ」の意味は変わる

20代後半〜30代前半:卵胞の数が多い分、サイズのそろい方が大切

20代後半から30代前半の方は、一般に卵巣に残っている卵胞の数(卵巣予備能)が比較的多く、刺激に対して複数の卵胞が同時に育ちやすい年代です。この場合の課題は「大きさ」そのものより「そろい方」です。

先頭の卵胞だけが突出して大きくなり、後続の卵胞が追いつかないと、採卵数のわりに成熟卵が少ない結果になりがちです。反対に、卵胞がそろって育つよう注射の量や種類を調整できれば、同じ採卵1回でも得られる成熟卵の数が大きく変わります。

日本産科婦人科学会のARTデータでも、胚移植あたりの妊娠率は30代前半までおおむね50%前後を保っています。この年代では、1回の採卵で複数の良好胚を確保し、凍結しておくことが、第2子以降も見据えた大きな財産になります。

30代後半〜40代前半:一つひとつの卵胞を大切にする判断

30代後半からは、卵胞の数が減り、刺激をしても育つ卵胞が数個にとどまることが増えてきます。同じデータで、胚移植あたりの妊娠率は34歳ごろから緩やかに下がり、40歳を境に大きく低下し、44歳では15.4%と報告されています。

この年代では、先頭卵胞に合わせて早めにトリガーをかけるか、後続の卵胞を待つかの判断がより繊細になります。卵胞が少ない分、待ちすぎて先頭卵胞が排卵してしまうと、その周期の採卵そのものが成り立たなくなるからです。

また、年齢とともに卵子の染色体の数の異常が増えるため、「成熟卵がとれた=妊娠できる」とは限りません。卵胞の大きさで卵子の“成熟”はある程度予測できますが、“質”までは決められない。この違いを知っておくことが、結果を受け止めるうえで心の支えになります。

AMHが高い方・PCOSの方:OHSSへの配慮

AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣に残る卵胞の数を反映する血液検査の値)が高い方や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は、刺激に強く反応して20個以上の卵胞が一度に育つことがあります。

このとき注意したいのが卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。卵巣が腫れてお腹に水がたまり、重症になると血栓症などを起こすことがあります。こうした方では、卵胞が十分な大きさになる前に、あえて少し早めにトリガーをかけることもあります。

日本生殖医学会のガイドラインでは、OHSSのハイリスクの方には全胚凍結が推奨され、GnRHアゴニストによるトリガーがhCGよりOHSSの予防に有効とされています(生殖医療ガイドライン Q15)。「卵胞が多い=有利」とは限らず、安全とのバランスで大きさの判断が変わることを知っておいてください。

「卵胞は育ったのに卵がとれない」ときに考えられること

空胞(卵胞の中に卵子が見つからない)

十分な大きさの卵胞を穿刺したのに、卵胞液の中に卵子が見つからないことがあります。これを「空胞(くうほう)」と呼びます。

原因として多いのは、トリガーの薬がうまく効かなかった場合です。注射の時刻がずれた、点鼻薬の吸収が不十分だった、薬への反応が弱い体質だった、などが考えられます。卵子が卵胞の壁から十分にはがれず、吸引できなかったというケースもあります。

一部の卵胞が空胞になるのは珍しいことではなく、採卵に慣れた医師でも一定の割合で経験します。すべての卵胞が空胞になった場合は、トリガー後に血液検査で薬の効き具合を確認したり、次の周期でダブルトリガーに変更したりと、原因に応じた対策が取れます。「自分の体に問題があったのでは」と責めないでください。

未熟卵・変性卵

卵子がとれても、顕微授精(ICSI)に使える成熟卵(MII卵)ではなく、まだ成熟途中の「未熟卵」や、形が崩れた「変性卵」だったということもあります。

未熟卵が多い場合は、トリガーのタイミングが早すぎた、卵胞のサイズがそろっていなかった、トリガーからの時間が短かった、などが考えられます。変性卵が多い場合は、卵胞が育ちすぎた可能性や、卵子そのものの質が関係していることがあります。

こうした結果は、次の周期の刺激法やトリガーの判断を見直すための大切な手がかりです。成熟卵の割合を担当医に確認し、「次は何を変えるか」を一緒に話し合ってみてください。

採卵前に排卵してしまった

採卵当日に超音波で見ると、前日まであった大きな卵胞が消えている。自然周期や低刺激法でときどき起こる「採卵前の排卵」です。LHサージが予想より早く来たことが主な原因です。

低刺激では排卵を抑える薬を最小限にしていることが多いため、どうしても一定の確率で起こりえます。排卵を抑える薬の追加、トリガーを1日早める、採卵時刻を早めるといった工夫で頻度を下げることができます。

とても悔しい経験ですが、「その周期でどれくらい育つか」「LHがいつ上がりやすいか」という情報が得られた周期でもあります。次の計画に生かしていきましょう。

卵胞の育ちを支えるために、今日からできること

通院日・注射・トリガーの時刻を守る

卵胞の大きさを最終的に「成熟卵」につなげるうえで、患者さんご自身にできる最も確実なことは、指定された通院日と注射・トリガーの時刻を守ることです。

特にトリガーは、採卵時刻から逆算して分単位で指定されます。卵子の成熟はトリガーを起点に進むため、時刻が大きくずれると、未熟卵や採卵前の排卵につながりかねません。スマートフォンのアラームを2つ設定する、パートナーにも時刻を共有しておくなど、うっかりを防ぐ工夫をおすすめします。点鼻薬タイプの場合は、使用前に鼻をかんでおくと吸収が安定しやすくなります。

もし注射を打ち忘れた、時刻を間違えたと気づいたら自己判断で追加せずにすぐにクリニックへ連絡してください。早めに連絡をいただければ、採卵時刻の調整などで対応できることもあります。

体調と生活習慣を整える

残念ながら「これを食べれば卵胞が大きくなる」という食品やサプリメントは、現時点で確立されていません。卵胞のサイズは主に薬の量と卵巣の反応で決まり、数日の生活の工夫で大きく変わるものではないからです。

それでも、卵胞が数か月かけて育つことを考えると、日々の体調管理には意味があります。喫煙は卵巣機能を低下させることが知られているため、禁煙はパートナーも含めてぜひ取り組んでいただきたいことです。極端な体重の増減を避け、睡眠をとり、バランスのよい食事を心がける。基本的なことですが、治療の土台になります。

こども家庭庁のサイト「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと」では、治療や保険診療に関する情報がわかりやすく整理されています。情報に振り回されそうなときは、公的な情報源に立ち返るのもひとつの方法です。

保険診療のルールを知って計画的に進める

2022年4月から、体外受精などの生殖補助医療は保険診療で受けられるようになりました。こども家庭庁の案内によると、初めて胚移植の治療計画を立てた日の年齢が40歳未満なら通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回までが保険適用の上限です(こども家庭庁)。

回数は採卵ではなく胚移植でカウントされます。つまり、1回の採卵で成熟卵を多く得て、良好胚を複数凍結できれば、限られた保険の回数を有効に使いやすくなります。卵胞のサイズをそろえてトリガーの日を見極めることは、医学的な意味だけでなく、経済的な意味でも大切なのです。

40歳の誕生日や43歳の誕生日が近い方は、治療計画を立てる時期によって使える回数が変わります。気になる方は早めに担当医に相談してください。

よくある質問(Q&A)

質問と回答

Q1. 左右の卵巣で卵胞の大きさが違っても大丈夫?

A1. まったく問題ありません。左右の卵巣で卵胞の数や育つスピードが違うのはよくあることです。手術の既往や子宮内膜症、卵巣の位置などによって、片側だけ育ちが遅いこともあります。

トリガーのタイミングは、左右を合わせた卵胞群全体を見て判断します。片側の卵胞が小さくても、安全に届く範囲であれば採卵時に一緒に穿刺しますので、「片方しか育っていない」と心配しすぎなくて大丈夫です。

Q2. 卵胞の数と採れる卵子の数は同じ?

A2. 同じにはなりません。一般に、穿刺した卵胞の数に対して卵子が回収できるのは7〜8割程度で、さらにその中で顕微授精に使える成熟卵はその一部です。空胞や未熟卵があるためです。

「卵胞が10個あったのに、成熟卵は5個だった」ということは十分に起こりえます。事前に担当医から「今回は成熟卵何個くらいを見込んでいるか」を聞いておくと、結果を落ち着いて受け止めやすくなります。

Q3. 卵胞が1つだけでも採卵する?

A3. 卵胞が1つだけでも、その卵胞が十分な大きさに育ち、ホルモン値からも成熟が見込めるなら、採卵する価値は十分にあります。特に30代後半以降や卵巣予備能が低めの方にとって、1個の卵子はかけがえのないチャンスです。

一方で、1個しか育たない周期が続く場合は、刺激法や薬の量を見直すきっかけにもなります。「1個でも採卵するか、この周期は見送るか」は、年齢・これまでの結果・保険の回数なども含めて、担当医とよく話し合って決めていきましょう。

参考文献・引用元

学会・公的機関

  • 日本生殖医学会 編『生殖医療ガイドライン』(トリガー、OHSS予防の推奨)— こども家庭庁サイト掲載PDF
  • 生殖医療ガイドライン 患者向け解説 Q15「OHSSの予防とリスク」— PDF
  • 日本産科婦人科学会「2024年体外受精・胚移植等の臨床実施成績(ARTデータブック)」— PDF
  • こども家庭庁「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと:保険診療の基礎知識」— ページ
  • 厚生労働省「不妊治療の保険適用について」— PDF
  • 日本産婦人科医会「生殖補助医療」(PPOS法とトリガーの選択)— ページ

論文

  • Abbara A, et al. Follicle Size on Day of Trigger Most Likely to Yield a Mature Oocyte. Front Endocrinol. 2018;9:193 — PMC
  • Shapiro BS, et al. The effect of ovarian follicle size on oocyte and embryology outcomes. Fertil Steril. 2022 — ScienceDirect
この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
学術顧問(医師)
HIROTAKA MATSUMI

資格・専門医

  • 東京大学医学博士
  • 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
  • 日本生殖医学会生殖医療専門医
  • 日本抗加齢医学会専門医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 難病指定医
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
  • 新生児蘇生インストラクターAコース修了
  • 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
  • 日本臨床免疫学会
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本生殖医学会
  • 日本生殖免疫学会
  • 日本不育症学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本再生医療学会
  • 日本産婦人科乳腺医学会
  • 日本スポーツ協会
  • 産婦人科PRP研究会

経歴

  • 東京大学医学部卒業
  • 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
  • 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
  • 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
  • 日本学術振興会特別研究員
  • スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
  • 成育医療研究センター特別研究員
  • 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
  • 帝京大学溝口病院講師
  • 帝京大学非常勤講師
  • 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
  • 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
  • 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務
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