「生理前になると、ささいなことでイライラしてしまう」「気分が沈んで、パートナーにきつく当たってしまった」。そんな自分を責めながら「このままで妊娠できるのかな」と不安を抱えていませんか。
妊活中は生理が来るたびに気持ちが大きく揺れます。そこにPMSの不調が重なると心も体もぐったりしてしまうのは当然のことです。「この胸の張りは生理前のせい?それとも妊娠のサイン?」と、毎月のように検索をくり返している方も少なくありません。
この記事では不妊治療に日々携わる生殖医療専門医の立場から、PMSと妊活の関係、妊娠超初期症状との見分け方、妊活中でも選べる治療やセルフケアを学会や公的機関の情報をもとにお伝えします。
月経前症候群(PMS)とは?妊活前に知っておきたい基礎知識
まずはPMSがどのような状態を指すのかを整理しましょう。「自分の不調には名前がある」と知るだけでも、気持ちが少し楽になる方は多いものです。
PMSの定義と主な症状
月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は、日本産科婦人科学会の用語解説で「月経前3~10日の間に続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」と定義されています。
いちばんの特徴は、生理が始まると症状が軽くなる(消える)ことです。反対に、生理中や生理後も同じように不調が続く場合はうつ病や甲状腺の病気、月経困難症など、別の原因を考える必要があります。症状は大きく「こころ」と「からだ」に分けられ人によって出方も強さもさまざまです。
こころの症状
イライラする、怒りっぽくなる、気分が落ち込む、不安になる、涙もろくなる、集中力が続かない、といった症状が代表的です。強い眠気や不眠、甘いものが無性に食べたくなるなどの食欲の変化もよくみられます。「性格が変わったようで自分が嫌になる」という声も多いのですが、これはホルモンの変化による体の反応であり、あなたの性格のせいではありません。
からだの症状
乳房の張りや痛み、下腹部の張りや痛み、頭痛、腰痛、手足のむくみ、体重の増加、肩こり、肌荒れやニキビ、便秘、だるさなどがあります。排卵後に増える黄体ホルモン(プロゲステロン)には、体に水分をためこむ働きや、腸の動きをゆるやかにする働きがあります。むくみや便秘が生理前に集中するのはこのためです。体温が高めに保たれることで夜の眠りが浅くなり、日中に眠くなることもあります。
どのくらいの女性がPMSに悩んでいる?
日本では、生理のある女性の約70~80%が生理前になんらかの不調を感じているといわれます。そのうち、仕事や家庭生活に支障が出る中等度以上のPMSは約5.4%、こころの症状が特に重いPMDD(後述)は約1.2%と報告されています。
働く女性約1,000人を対象にした東京労災病院の調査では84.0%がPMSを自覚しており、多かった症状は「イライラ」(45.7%)、「胸のはり」(42.6%)、「食欲増加」(40.4%)でした。つまりPMSは「一部の人だけの特別な悩み」ではなく、多くの女性が抱えている身近な体の不調なのです。
また、日本産科婦人科学会の女性ヘルスケア委員会が2021年に行った調査(産婦人科医1,312人が回答)では、91.4%の医師が「PMSは産婦人科医が治療を担当すべき」と答えています。PMSは婦人科で遠慮なく相談してよい病気です。
PMSとPMDD(月経前不快気分障害)の違い
PMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)は、PMSのなかでもこころの症状が中心で、特に重いタイプです。強い抑うつ感や絶望感、押さえられない怒りや不安が生理前にくり返し現れ、仕事や人間関係に大きな支障が出ます。米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では、うつ病などと同じ「抑うつ障害」の仲間に分類されています。
PMSは婦人科での治療が基本ですが、PMDDでは心療内科や精神科と連携して治療を進めることが大切です。「毎月、生理前になると消えてしまいたい気持ちになる」「仕事を休まざるを得ない」という場合は、一人で抱え込まずその月のうちに医療機関へ相談してください。妊活中でも選べる治療はあります。
PMSはなぜ起こる?女性ホルモンと排卵の関係
PMSの仕組みを知ると妊活とのつながりが見えてきます。カギになるのは「排卵」です。
排卵後の「黄体期」に起こるホルモンの波
月経周期は、卵胞が育つ「卵胞期」、卵子が飛び出す「排卵」、排卵後の「黄体期」、そして「月経期」をくり返しています。排卵したあとの卵胞は「黄体」に変わり、妊娠に備えて黄体ホルモンと卵胞ホルモン(エストロゲン)をたくさん分泌します。妊娠が成立しなければ黄体は約2週間で役目を終え、両方のホルモンが急に下がって生理が始まります。
PMSの原因はまだ完全にはわかっていません。ただ、現在有力なのはホルモンの量そのものの異常ではなく、黄体期のホルモンの大きな変動に脳が敏感に反応してしまうという考え方です。気分を安定させる脳内の物質(セロトニンなど)の働きがこの変動の影響を受けると考えられています。ストレスや睡眠不足、生活習慣も症状の強さに影響します。
生殖医療専門医の視点:PMSは「排卵しているサイン」でもある
PMSは基本的に排卵が起きた周期に現れます。低用量ピルなどで排卵を止めるとPMSが軽くなるのはこのためです。つまり、毎月同じような時期にPMSがやってくることは「きちんと排卵が起きている」ことを示す目安のひとつになるのです。つらい症状ではありますが妊活(不妊治療)の観点では悪いことばかりではありません。
ただし、症状だけで排卵を断定することはできません。確かめるには基礎体温が便利です。低温期と高温期の二つに分かれていれば排卵の可能性が高く、高温期は通常12~14日ほど続きます。高温期が10日未満と短い場合は、黄体の働きが弱い「黄体機能不全」の可能性があり、着床に影響することもあるため一度検査を受けてみましょう。また40代に入ると卵巣の働きの揺らぎからPMSが強くなる方もいます。
PMSは妊活・妊娠しやすさに影響する?
「PMSがひどいと妊娠しにくいのでは?」というご質問は、クリニックでもよくいただきます。結論と気をつけたいポイントを分けてお伝えします。
PMSそのものが不妊の直接の原因になる根拠はない
現時点でPMSそのものが妊娠しにくさの原因になるという確かな根拠はありません。前述したとおりPMSは排卵のある周期に起こるものです。不妊の主な原因は排卵障害、卵管の詰まり、子宮の病気、男性側の原因、そして年齢による卵子の変化などで「PMSがあるから不妊」とはいえません。
一方で新しい知見も出てきています。令和7年度の厚生労働科学研究では、PMSと診断されたことのある18~49歳の女性は、そうでない女性に比べて高血圧・糖尿病・脂質異常症と診断されるリスクが高いことが報告されました。これらは妊娠中の合併症にも関わる病気です。PMSを「我慢するもの」ではなく、妊娠前に体を整えるきっかけとして捉えてみてください。
間接的に妊活へ影響しうる3つのこと
PMSが直接の原因にならなくても、強い症状が続くと次のような形で妊活に影響することがあります。
パートナーとの関係やタイミングへの影響
生理前にイライラしてケンカが増えると気まずさが次の排卵期まで尾を引くことがあります。「今月はタイミングをとる気持ちになれなかった」という声も少なくありません。排卵期は本来PMSの時期とはずれていますが、関係のぎくしゃくが続くと周期全体に影響してしまうのです。
ストレスと睡眠不足
強いストレスや慢性的な睡眠不足は、ホルモンの司令塔である脳の「視床下部」に影響し、排卵のリズムを乱すことがあります。PMSのつらさがストレスを生み、そのストレスがPMSを強めるという悪循環に陥ることもあります。
「2週間待ち」と重なるつらさ
排卵から生理予定日までの約2週間は妊娠したかどうかを待つ期間であり、ちょうどPMSの時期と重なります。体の変化ひとつひとつに一喜一憂し生理が来た瞬間に落ち込む。このつらさはあなたの心が弱いからではありません。日本不妊カウンセリング学会が認定する不妊カウンセラーや心理士など心のつらさを相談できる専門職もいます。当院にも不妊治療に特化した心理士が在籍していますので一人で抱えずいつでも相談ください。
PMSと間違えやすい・合併しやすい病気
「ただのPMS」と思っていたら妊活に関わる病気が隠れていた。ということもあります。次のような場合は一度検査を受けましょう。
- 黄体機能不全:高温期が短い、生理前に少量の出血が続く。着床に影響することがあります。
- 甲状腺の病気:イライラ、だるさ、むくみ、生理不順などPMSに似た症状が出ます。排卵や流産にも関わるため、妊活では大切なチェック項目です。
- 子宮内膜症:生理の前から下腹部痛があり、生理痛が年々強くなる場合は注意。不妊の原因になることがあります。
- うつ病・不安障害:生理が始まっても気分の落ち込みが続く場合は、PMSとは別の対応が必要です。
- 更年期の始まり:40代でほてりや生理周期の変化が加わった場合は、卵巣の働きもあわせて確認します。
PMSと妊娠超初期症状の違い・見分け方
妊活中の方が最も気になるのが「この症状はPMS?それとも妊娠?」という点でしょう。先にお伝えすると症状だけで見分けることは専門医でも困難です。どちらも黄体ホルモンの働きで起こるためです。
【H3】よく似ている症状と違う点
| 症状・サイン | PMS | 妊娠超初期 |
|---|---|---|
| 乳房の張り・痛み | ある。生理が来ると引く | ある。生理予定日を過ぎても続く |
| 眠気・だるさ | ある | ある(より強く感じることが多い) |
| 下腹部の張り・痛み | ある | ある(軽いことが多い) |
| イライラ・気分の変化 | ある | ある |
| 吐き気・においに敏感 | まれ | つわりの始まりとして現れることがある |
| 少量の出血 | ほぼない | 着床のころにみられることがある |
| 基礎体温 | 生理前に下がる | 高温期が続く |
| 生理 | 予定どおり来る | 来ない |
表のとおり多くの症状が重なります。「いつものPMSと違う」と感じても、それだけで妊娠を判断することはできません。
見分けのカギは「基礎体温」と「検査のタイミング」
いちばん頼りになるのは基礎体温です。妊娠していなければ高温期は約2週間で終わり、体温が下がって生理が来ます。高温期がいつもより長く、16日以上続いている場合は妊娠の可能性が高くなります。
市販の妊娠検査薬は生理予定日の約1週間後から使うのが一般的です。それより早いと妊娠していても陰性が出ることがあり、かえって不安が増えてしまいます。陽性が出たら、生理予定日から約1~2週間後(妊娠5~6週ごろ)を目安に受診し、超音波で子宮の中に妊娠しているかを確認しましょう。「症状を調べ続けるより、検査できる日をカレンダーに書いて待つ」ことが心を守るコツです。
不妊治療中の方が注意したい「薬によるPMSに似た症状」
不妊治療中は使う薬によってPMSや妊娠超初期にそっくりな症状が出ることがあります。
- 黄体ホルモンの補充(黄体補充):腟剤・飲み薬・注射で黄体ホルモンを補うと、眠気、乳房の張り、むくみ、便秘、気分の落ち込みなどが出やすくなります。使用中は基礎体温が高いまま保たれ、生理が遅れることもあるため、体温や症状では妊娠を判断できません。
- hCG注射:排卵を促すためや黄体補充のためにhCGを注射した場合、その成分が体に残っているあいだは、妊娠していなくても妊娠検査薬が陽性になることがあります。
- 排卵誘発剤:飲み薬の排卵誘発剤で頭痛やほてり、気分の変化が出る方もいます。
治療中の方は自己判断で早めに検査薬を使ったり薬をやめたりせず、クリニックが指定した判定日の血液検査を待ちましょう。つらい症状があるときは、薬の種類や量を調整できることもあるので、遠慮なく伝えてください。
妊活中のPMS治療と薬の選び方
PMSの治療は生活指導や運動、認知行動療法などの「薬を使わない方法」と、薬物療法を組み合わせて行います。薬物療法の中心は低用量ピルによる排卵の抑制と抗うつ薬の一種であるSSRIです。ただし妊活中は「その周期に妊娠の可能性があるか」を基準に治療を選ぶ必要があります。
低用量ピル(OC・LEP)は妊活中には使えない
低用量ピルは、排卵を止めてホルモンの波を小さくすることでPMSを和らげます。保険適用のあるものは「LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)」と呼ばれます。ただし排卵を止める薬なので妊娠を目指している周期には使えません。
一方で「これから妊活を始める」段階の方にとっては心強い選択肢です。服用をやめると多くの場合1~3か月ほどで排卵が戻ります。長く飲んでいたことで妊娠しにくくなる心配はありません。また体外受精では採卵の周期を整えるために、あえて事前にピルを使うこともあります。「いつから妊活を始めるか」を医師と相談しながらピルのやめどきを決めるのがおすすめです。
漢方薬は体質と時期に合わせて選ぶ
漢方薬は妊活中のPMS治療でよく使われる選択肢です。イライラや不安、のぼせには加味逍遙散(かみしょうようさん)、冷えやむくみ、貧血傾向には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、怒りっぽさには抑肝散(よくかんさん)などが体質に合わせて選ばれます。
注意したいのは生薬の中に妊娠中は慎重に使うべきものが含まれる場合があることです。たとえば桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に含まれる桃仁(とうにん)や牡丹皮(ぼたんぴ)、便秘薬にも使われる大黄(だいおう)などです。処方を受けるときは必ず「妊活中です」と伝え妊娠が分かったら続けてよいかを確認しましょう。効果を判断するには2~3か月ほど続けるのが目安です。
抗うつ薬(SSRI)は専門医と相談しながら
こころの症状が強い場合やPMDDではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効です。毎日飲む方法のほか症状が出る黄体期だけ飲む方法もあります。
妊娠初期の安全性については薬の種類ごとに情報が異なります。妊活中に使う場合は、婦人科の医師と必要に応じて精神科・心療内科の医師が連携しメリットとリスクをていねいに比べて決めていきます。すでに服用中の方が自己判断で急にやめると気分の悪化やめまいなどの離脱症状が出ることがあるため、やめる前に必ず相談してください。
市販薬(プレフェミン・鎮痛薬)の注意点
ドラッグストアで買えるPMSの薬に「プレフェミン」があります。西洋ハーブのチェストベリーを成分とする薬で、乳房の張りやイライラなどを和らげます。ただし添付文書では妊婦または妊娠していると思われる人が服用する薬ではないとされ、月経不順の人や医師の治療を受けている人は服用前に相談するよう記載されています。副作用として月経周期の変化が起こることもあるため、妊活中・不妊治療中は自己判断で使わず医師に相談してください。
頭痛や下腹部痛に使う鎮痛薬にも注意点があります。イブプロフェンやロキソプロフェンなどの解熱鎮痛薬(NSAIDs)を排卵の時期に続けて飲むと、卵胞が破れにくくなり排卵に影響する可能性が報告されています。タイミングをとる周期は使う時期や薬の種類を医師・薬剤師に確認しておくと安心です。ハーブ系のサプリメントも同様に妊娠の可能性がある時期に続けてよいか確認しましょう。
【H3】【一覧表】妊活中にPMSの薬は使える?
| 治療・薬 | PMSへの効果 | 妊娠の可能性がある周期 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 低用量ピル(OC・LEP) | 高い | × 使えない | 妊活を始める前の準備期間に。やめると多くは1~3か月で排卵再開 |
| 漢方薬 | 体質に合えば期待できる | △ 種類による | 「妊活中」と伝えて処方を。妊娠判明後の継続は医師に確認 |
| SSRI(抗うつ薬) | こころの症状に高い | △ 医師と相談 | 自己判断で中止しない。精神科との連携も |
| プレフェミン(市販薬) | 乳房の張り・イライラなど | × 自己判断では使わない | 添付文書上、妊婦向けの薬ではない |
| 鎮痛薬(NSAIDs) | 頭痛・下腹部痛 | △ 時期に注意 | 排卵期の連用は避け、医師・薬剤師に相談 |
| 生活習慣の改善 | 軽症~中等症に有効 | ◎ いつでも | 妊活そのものにもプラス |
※この表は一般的な目安です。実際の治療は症状の強さや治療内容に合わせて医師と決めてください。
今日からできるPMSセルフケア(妊活にもプラス)
セルフケアは妊娠の可能性がある時期でも安心して続けられるいちばんの土台です。しかもPMS対策と妊活の体づくりはほとんどが重なっています。
まずは「症状日記」で2~3周期記録する
PMSの診断でも治療でもいちばん役に立つのが症状の記録です。米国産婦人科学会の診断基準でも、複数の周期にわたって毎日の症状を記録することが重視されています。
記録するのは「日付」「基礎体温」「症状とその強さ(0~3の4段階)」「生理日」「タイミングをとった日」の5つで十分です。アプリを使えば手軽に続けられます。2~3周期分たまると「排卵の何日後からつらくなるか」という自分のパターンが見えてきます。「今のイライラはホルモンのせい」と客観的に受け止められるようになるだけでも、気持ちはずいぶん楽になります。受診時に持参すれば診断や治療の大きな手がかりにもなります。
食事と栄養:葉酸もあわせて意識を
主食・主菜・副菜をそろえた食事を基本に、次の点を意識してみましょう。
- カルシウムとビタミンB6:PMSの症状を和らげる可能性が報告されています(乳製品、小魚、カツオ、バナナなど)。
- 塩分を控えめに:生理前のむくみ対策になります。
- 甘いもののドカ食いを避ける:血糖値の急な上げ下げは気分の波を大きくします。間食はナッツやヨーグルトがおすすめです。
- 葉酸:妊娠を計画している女性には、食事に加えてサプリメントなどで1日400μgの葉酸をとることが勧められています。赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げるためです。
また、やせすぎも太りすぎも排卵に影響します。BMI18.5~25を目安に無理な食事制限は避けましょう。こども家庭庁が推進する「プレコンセプションケア」でも食事や適正体重など妊娠前からの健康管理が大切にされています。
運動・睡眠・嗜好品の見直し
ウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動はPMSの症状を和らげる効果が期待できます。まずは1回20~30分、週3回ほどを目安に「気持ちよい」と感じる強さで続けましょう。
睡眠は、平日と休日で起きる時間をできるだけそろえるのがコツです。カフェインやアルコールはPMSのイライラや乳房痛、眠りの質を悪化させることがあります。妊活中はもともと控えたいものなのでよい機会として見直してみてください。喫煙している場合は卵子への影響もあるため、パートナーと一緒に禁煙を始めましょう。
PMSの時期は大事な予定を詰め込まず「自分を甘やかす期間」と決めておくのも立派なセルフケアです。
パートナーと「体のカレンダー」を共有する
妊活は二人で取り組むものです。症状日記やアプリのカレンダーをパートナーと共有し「この時期はイライラしやすいけれど、あなたのせいじゃない」と元気なうちに伝えておきましょう。
「家事を少し代わってほしい」「一人の時間がほしい」など、してほしいことを具体的に伝えると相手も動きやすくなります。こども家庭庁は男性向けに「メンズプレコン検定」も公開しています。二人で試してみると、生理や妊活について話すきっかけになるでしょう。
こんなときは受診を:生殖医療専門医に相談するメリット
PMSは「この程度で受診していいのかな」と迷いやすい症状です。でも、つらさの感じ方に正解はありません。あなたが「つらい」と感じていることが受診の理由になります。
受診の目安チェックリスト
次のうちひとつでも当てはまれば婦人科や不妊治療クリニックに相談してみましょう。
- 生理前の症状で、仕事や家事、人間関係に支障が出ている
- 気分が落ち込み、「消えてしまいたい」と感じることがある(この場合はすぐに相談を)
- セルフケアを続けても2~3か月改善しない
- 生理が始まっても症状が続く
- 高温期が10日未満、または生理前に茶色い出血が続く
- 生理痛が年々強くなっている
- 生理周期が24日以内、または39日以上と不規則
- 35歳未満で1年、35歳以上で半年たっても妊娠しない
特に年齢を重ねるほど卵子の数や質は低下していくため「PMSが落ち着いてから妊活を」と先延ばしにせず、両方を並行して相談するのがおすすめです。
婦人科・不妊治療クリニックで行う検査
受診すると症状日記をもとにした問診に加え、次のような検査で他の病気がないかを確認します。
- 超音波検査:子宮内膜症、子宮筋腫、卵巣の状態を確認
- 血液検査:女性ホルモン、黄体期の黄体ホルモン値、甲状腺ホルモン、プロラクチン、貧血など
- AMH検査:卵巣に残っている卵子の数の目安を知る検査
PMSの相談をきっかけに排卵や黄体の働き、卵巣の状態までまとめて確認できるのが生殖医療専門医に相談する大きなメリットです。なお、不妊治療は2022年4月から保険適用となっています(体外受精などは、治療開始時に女性が43歳未満であること、胚移植は40歳未満で6回まで、40歳以上43歳未満で3回までなどの条件があります)。
当院でのサポート
生殖医療クリニック錦糸町駅前院では、PMSのご相談から不妊の検査・治療まで、一貫してサポートしています。
- 女性医師が多数在籍し、生理前のつらさも話しやすい環境です。
- 不妊治療に特化した心理士による心理カウンセリングで、妊活中の不安や気持ちの揺れにも寄り添います。
- 妊活を始める前の体づくりを支える妊活サポートや、甲状腺検査・AMH検査などの各種検査に対応しています。
- 錦糸町駅から徒歩4分。土日祝も診療しており(8~21時、曜日により時間帯が異なります)、お仕事との両立もしやすい環境です。ご予約はLINE・WEBで24時間受け付けています。
「こんなことで相談していいのかな」と思うような小さな悩みでも、どうぞお気軽にお話しください。
よくある質問(Q&A)

Q1. ピルを長く飲んでいたら妊娠しにくくなる?
A1. いいえ、ピルの服用歴や服用期間が将来の妊娠しやすさを下げることはありません。服用をやめると多くの場合1~3か月で自然な排卵が戻ります。ただし、ピルを飲む前から生理不順だった方は、もとの排卵のリズムに戻るだけなのでやめてから3か月以上生理が来ない場合は受診してください。
Q2. PMSが軽い月は妊娠している可能性が高い?
A2. 「PMSが軽い=妊娠」、あるいは「症状が強い=妊娠していない」という関係はありません。PMSの強さは睡眠やストレス、体調によって月ごとに変わります。体の変化に一喜一憂するよりも、基礎体温と適切な時期の妊娠検査で確かめるのが心にもやさしい方法です。
Q3. 妊娠したらPMSはなくなる?産後は?
A3. 妊娠中は排卵も月経も止まるためPMSは起こりません。ただし、妊娠初期にはつわりや眠気など別の体調の変化があります。産後に月経が再開するとPMSも再び現れることがあります。PMSが重かった方は産後に気分が落ち込みやすいという報告もあるため、妊娠中から家族や医療者に相談できる体制をつくっておくと安心です。
参考文献・出典
- 日本産科婦人科学会『産科婦人科用語集・用語解説集』月経前症候群の定義(引用元の解説)
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会「PMS・PMDDの診断・治療実態調査」(2021年)(近畿大学プレスリリース)
- 今日の臨床サポート「月経前症候群」(有病率)
- 労働者健康安全機構「働く女性を悩ませるPMS」(産業保健21 第103号)
- 厚生労働科学研究 令和7年度「月経随伴症状の社会的影響に関する研究報告書」(PMSと生活習慣病)
- 臨床婦人科産科 79巻4号「月経前症候群」(京都大学)、同78巻8号「月経前症候群・月経前不快気分障害」(ホルモン療法)
- こども家庭庁「母子保健」(プレコンセプションケア・メンズプレコン検定・不妊治療の保険適用)、国立保健医療科学院「プレコンセプションケアの推進の現状と今後の方向性」
- 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立について」、生命保険文化センター「不妊治療の保険適用」(年齢・回数要件)
松見 泰宇
資格・専門医
- 東京大学医学博士
- 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本抗加齢医学会専門医
- 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
- 難病指定医
- 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
- 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
- 新生児蘇生インストラクターAコース修了
- 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
- 日本臨床免疫学会
- 日本産科婦人科学会
- 日本生殖医学会
- 日本生殖免疫学会
- 日本不育症学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
- 日本産婦人科乳腺医学会
- 日本スポーツ協会
- 産婦人科PRP研究会
経歴
- 東京大学医学部卒業
- 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
- 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
- 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
- 日本学術振興会特別研究員
- スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
- 成育医療研究センター特別研究員
- 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
- 帝京大学溝口病院講師
- 帝京大学非常勤講師
- 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
- 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
- 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務