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流産後妊娠しやすいって本当?!生殖医療専門医が教える次の妊娠に向けて知っておきたいこと。

  • 公開日:2025.12.24
  • 更新日:2025.12.25
流産後妊娠しやすいって本当?!生殖医療専門医が教える次の妊娠に向けて知っておきたいこと。|不妊治療なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院

流産を経験されたあなたへ。今、どんなお気持ちでしょうか。悲しみ、喪失感、そして「なぜ自分が」という自責の念に苛まれているかもしれません。特に、長い不妊治療を経てやっと授かった命を失った方の悲しみは、計り知れないものがあると思います。

診察室でよく聞かれるのが「流産後は妊娠しやすいって本当ですか?」「次の妊娠はいつから可能ですか?」という質問です。インターネットやSNSでは様々な情報が飛び交い、何を信じればいいのか分からなくなっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、「流産後は妊娠しやすい」という噂の医学的真実、次の妊娠に向けた適切な準備、そして30-40代女性特有の注意点まで、医学的根拠に基づいた正確な情報をお届けします。あなたの不安を少しでも和らげ、次の妊娠への希望を持っていただけることを願っています。

流産後は妊娠しやすいの?医学的真実を解説

「妊娠しやすい」説の根拠と医学的見解

「流産後は妊娠しやすい」という話を耳にしたことがある方は多いでしょう。実際、SNSや口コミでは「流産後すぐに妊娠できた」という体験談も見られます。しかし、正直に申し上げると、「流産後に妊娠しやすくなる」という明確な医学的根拠は現時点では存在しません。

この説が広まった背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、流産処置や自然排出により子宮内容物が完全に排出されることで、「子宮がきれいになる」という考え方です。確かに子宮内膜はリセットされますが、これが直接的に妊娠率を向上させるというエビデンスはありません。

また、流産後早期に排卵が再開することがあり、その結果「流産後すぐに妊娠した」というケースが報告されていますが、これは「妊娠しやすくなった」のではなく、単に「排卵が早く戻った」という生理的な現象です。

2016年の研究(Schliep et al.)では、流産後すぐに妊娠を試みたグループと一定期間待ったグループを比較したところ、妊娠率や妊娠予後に有意な差は認められませんでした。つまり、流産後だからといって特別に妊娠しやすくなるわけではないのです。

一度妊娠できた意味とは

ただし、ここで強調したいのは、「一度妊娠できたという事実は、非常にポジティブな意味を持つ」ということです。流産は悲しい出来事ですが、医学的には「妊娠が成立する能力がある」ことの証明でもあります。

妊娠が成立するためには、精子と卵子が出会い、受精し、受精卵が子宮内膜に着床するという複雑なプロセスが必要です。一度でもこのプロセスを完遂できたということは、基本的な妊娠能力があることを示しています。

初めての妊娠が流産だった方は、「もう妊娠できないのでは」と不安になりがちですが、統計的には流産経験者の約85%が次の妊娠で無事に出産しています。

流産の多くは受精卵の染色体異常が原因であり、偶発的なものです。次の妊娠では正常な受精卵が着床すれば、妊娠は順調に継続する可能性が高いのです。「一度妊娠できた」という事実を、ぜひ前向きに捉えていただきたいと思います。

流産後の体に起こる変化|医学的メカニズム

ホルモンバランスの変化と回復過程

流産後、女性の体は大きなホルモン変化を経験します。妊娠を維持していたhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、エストロゲン、プロゲステロンといったホルモンが急激に低下し、体は妊娠前の状態に戻ろうとします。

妊娠中に胎盤から分泌されていたhCGは、流産後急速に減少します。通常、流産後1-2週間でほぼ検出されないレベルまで下がりますが、個人差があります。hCGが十分に低下しないと、次の排卵が起こりにくくなるため、流産後の経過観察では血中hCG値の推移を確認する場合があります。また、エストロゲンとプロゲステロンも妊娠中は高値を維持していましたが、流産後は急激に低下します。その後、視床下部-下垂体-卵巣系が再び機能し始め、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が増加し、卵胞の発育が始まります。

通常、流産後4-6週間で最初の月経が来ますが、これは個人差が大きく、早い方では3週間、遅い方では8週間程度かかることもあります。最初の1-2回の月経は、周期が不規則だったり、出血量が通常と異なったりすることがあり、これは正常な回復過程の一環です。

子宮内膜の回復メカニズム

流産後の子宮内膜は、妊娠による変化から通常の状態へと回復していきます。

子宮内膜の脱落と再生:流産後、妊娠により厚くなっていた子宮内膜(脱落膜)は剥離・排出されます。自然流産の場合も流産手術を行った場合も、子宮内膜は基底層から再生を始めます。この再生には通常2-3週間かかり、その後最初の月経で一度完全にリセットされます。

着床環境の整備:子宮内膜の再生だけでなく、内膜の血流や厚さ、受容能(着床しやすさ)が回復するには、最低でも1-2回の月経周期が必要です。最近の研究では、子宮内膜の微小血管系が完全に回復するには2-3ヶ月かかることが示唆されています。

子宮内膜の厚さの変化:流産後最初の月経周期では、子宮内膜が通常より薄いことがあります。1-2回の月経を経ることで、着床に適した内膜の厚さに回復していきます。

次の妊娠はいつから?適切なタイミングの見極め方

医学的に推奨される待機期間

次の妊娠をいつから目指すべきかは、流産を経験された多くの方が最も知りたい情報の一つでしょう。

一般的な推奨:日本産科婦人科学会を含む多くの医療機関では、流産後1-2回の月経を待ってから次の妊娠を試みることを推奨しています。これは、子宮の回復とホルモンバランスの安定を待つための期間です。

以前は、流産後6ヶ月の待機期間を推奨していたこともありますが、その後の研究により、流産後すぐに妊娠を試みても妊娠率や流産率に有意な差がないことが示されました。現在では、身体的な回復が確認されれば、長期間待つ必要はないという見解が主流になっています。

流産の種類による違い:

化学流産身体への負担が最小限のため、次の月経後すぐに妊活再開が可能です
初期流産(妊娠12週未満)1-2回の月経を待つことを推奨します
進行流産で手術を行った場合子宮への侵襲を考慮し、2-3回の月経を待つことが望ましいです
後期流産(妊娠12以降、22週未満)より長い回復期間が必要で、3-6ヶ月程度待つことを推奨します

年齢別の考え方(30代前半・後半・40代)

年齢は妊娠において非常に重要な因子であり、流産後の妊活再開のタイミングも年齢によって考え方が変わります。

30代前半(30-34): この年代はまだ卵子の質が比較的保たれており、時間的余裕もあります。流産後は焦らず、2-3回の月経を待って心身を十分に回復させてから妊活を再開することをお勧めします。

30代後半(35-39): 35歳を過ぎると卵子の質の低下が始まり、特に37歳以降はその速度が加速します。時間的な制約も意識する必要がありますが、だからといって無理に急ぐべきではありません。推奨される待機期間(1-2回の月経)は守りつつ、その間に体調を整え、必要な検査を受けることで、効率的に次の妊娠を目指すことができます。待機期間中に卵巣機能などの再評価を行い、今後の治療方針を相談することをお勧めしています。

40(40歳以上): 40代では卵子の質の低下が顕著で、1周期1周期が貴重です。しかし、それでも最低限の回復期間(1-2回の月経)は必要です。

40代の方には、待機期間を有効活用していただくことをお勧めしています。場合によっては、流産の原因検査(染色体検査など)、不育症のスクリーニング検査、卵巣予備能の評価などを行い、次の妊娠に向けた最適な戦略を立てることです。また、この年代では体外受精を選択肢として積極的に検討することが、妊娠成功への近道となることが多いです。

不妊治療後の流産の場合

不妊治療を経て妊娠し、その後流産された方は、心理的なダメージが特に大きいことを、多くの患者様から伺っています。長い治療の末にやっと授かった命を失う悲しみは、計り知れないものがあると思います。

治療再開のタイミング: 不妊治療後の流産の場合も、基本的には一般的な推奨と同じで、1-2回の月経を待つことが望ましいです。ただし、治療再開については、身体的な回復だけでなく、精神的な準備も重要です。

流産後の治療方針: 流産の原因によっては、次回の治療方針を変更することもあります。例えば、着床前染色体検査(PGT-A)の導入や、子宮内環境の改善治療、免疫学的検査などを検討します。これらは流産の原因が何だったのかを考慮しながら、個別に判断していきます。

不妊治療を行っている方は、主治医と密にコミュニケーションを取りながら、次の治療再開時期と方針を決めていくことが重要です。焦る気持ちは十分理解できますが、一歩立ち止まって計画を立て直すことが、結果的に妊娠への近道となることも多いのです。

30-40代女性の流産後|特に注意すべきポイント

年齢による体の回復の違い

30-40代女性の流産後の回復は、20代の方に比べて、生理機能の変化によりいくつかの特徴があります。

ホルモンバランスの回復: 年齢が上がるにつれて、視床下部-下垂体-卵巣系の反応性が低下するため、流産後のホルモンバランスの回復に時間がかかることがあります。特に、FSHの基礎値が高い方や、AMH値が低い方は、流産後の排卵再開が遅れる傾向にあります。

30代後半以降の方で、流産後8週間以上経っても月経が再開しない場合は、ホルモン検査を受けることをお勧めします。場合によっては、ホルモン補充療法で月経を起こし、周期をリセットすることも検討します。

子宮内膜の回復: 年齢とともに子宮内膜の血流も低下する傾向があり、内膜の回復に若干時間がかかることがあります。特に、過去に複数回の流産手術を受けている方は、内膜が薄くなっている可能性もあるため、超音波検査で内膜の状態を確認することもおすすめします。

全身の回復: 30-40代は仕事や家事、育児(第二子以降の流産の場合)などで忙しく、十分な休養が取れないことも多いです。しかし、心身の回復には適切な休息が不可欠です。流産後少なくとも1-2週間は、意識的に休養を取ることをお勧めします。

卵巣機能と妊娠への影響

流産後の妊活を考える上で、卵巣機能の評価は非常に重要です。特に35歳以上の方は、流産後の回復期間を利用して、卵巣予備能を再評価をすることをお勧めします。

卵子の質: 残念ながら、卵子の質は年齢とともに低下し、これを根本的に改善する方法は現在のところありません。しかし、生活習慣の改善やサプリメント摂取により、卵子の質の低下を遅らせることは可能です。

流産後の回復期間は、生活習慣を見直す良い機会でもあります。禁煙、適正体重の維持、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、基本的なことを見直すことで、次の妊娠に向けて体を整えることができます。

時間との向き合い方

30-40代、特に37歳以上の方にとって、「時間」は大きなプレッシャーとなります。流産後、「早く次の妊娠を」と焦る気持ちは十分理解できます。しかし、ここで一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。

焦りは禁物: 焦って十分な回復期間を取らずに妊活を再開することはおすすめしません。また、精神的に不安定な状態では、ストレスが妊娠に悪影響を及ぼすこともあります。「急がば回れ」という言葉の通り、しっかりと心身を回復させることが、結果的に妊娠への近道となります。

時間を有効に使う: 1-2ヶ月の待機期間を「失われた時間」と考えるのではなく、「次の妊娠の成功率を高めるための準備期間」と捉えてください。この間に、必要な検査を受ける、生活習慣を改善する、サプリメントを開始する、心理的サポートを受けるなど、できることはたくさんあります。

柔軟な治療計画: 年齢を考慮すると、流産後の治療方針を見直すことも重要です。例えば、これまでタイミング法や人工授精を行っていた場合、体外受精へのステップアップを検討する、あるいは着床前染色体検査(PGT-A)の導入を考えるなど、より効率的な方法を選択することも一つの戦略です。

流産後の回復期間は、長期的な視点で妊活プランを見直す良い機会でもあります。主治医とよく相談しながら、年齢や体の状態に合わせた最適な治療計画を立てましょう。

流産後の心身のケア|次の妊娠への準備

体の回復を促す生活習慣

流産後の体の回復を促し、次の妊娠に向けて体を整えるための具体的な生活習慣についてお伝えします。

栄養バランスの整った食事: 流産後は出血により鉄分が失われていることが多いため、鉄分を多く含む食品(赤身肉、レバー、ほうれん草、小松菜など)を積極的に摂取しましょう。また、葉酸(400-800μg/日)は妊娠前から摂取することが推奨されています。

タンパク質も重要で、良質なタンパク質(魚、卵、大豆製品など)をバランスよく摂取してください。

適度な運動: 流産後1-2週間は激しい運動を避けていただいた方がいいと思いますが、その後は適度な運動を再開することが推奨されます。ウォーキング、ヨガ、軽いストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、血流が改善し、ストレス軽減にもつながります。

ただし、過度な運動は逆効果です。BMI18.5-25の適正体重を維持することを目標に、週3-4回、30分程度の運動が理想的です。

十分な睡眠: 睡眠はホルモンバランスを整える上で非常に重要です。できれば22時-2時の間に深い睡眠を取るようにしましょう。睡眠不足は卵子の質にも影響するため、1日7-8時間の睡眠を確保してください。

サプリメントの活用: 基本的なサプリメントとして、葉酸に加えて、ビタミンD、オメガ3脂肪酸(DHA/EPA)、コエンザイムQ10などの摂取を検討してください。ただし、過剰摂取は逆効果となることもあるため、医師や薬剤師に相談しながら適切な量を摂取することが大切です。

心理的サポートの重要性

流産後の心のケアは、体の回復と同じくらい、いえ、それ以上に重要です。多くの方が、流産後に悲しみ、喪失感、罪悪感、怒り、不安など、様々な感情を経験します。これらはすべて正常な反応であり、決して自分を責める必要はありません。

グリーフケア: 流産は大切な存在を失う経験です。この悲しみを認め、受け入れるプロセスが必要です。「早く立ち直らなければ」と無理に気持ちを切り替えようとせず、自分の感情に正直に向き合うことが大切です。

泣きたい時は泣く、話したい時は話す、一人になりたい時は一人になる。自分の気持ちに従って過ごしてください。時間が経てば、徐々に心は回復していきます。

専門家のサポート: 悲しみが強く日常生活に支障が出る場合、不眠や食欲不振が続く場合、「もう妊娠できない」という強い不安にとらわれる場合などは、専門家のサポートを受けることをお勧めします。

多くの医療機関では、不妊カウンセラーや臨床心理士によるカウンセリングを受けることができます。話を聞いてもらうだけでも、心が軽くなることがあります。また、同じ経験をした方々のサポートグループに参加することも、孤独感を和らげる助けとなります。

自分を責めない: 流産の多くは受精卵の染色体異常が原因であり、母体側の要因ではありません。「あの時無理をしたから」「仕事をしていたから」と自分を責める方が多いですが、通常の日常生活で流産が起こることはありません。

パートナーとの関係性

流産はカップル双方にとってつらい経験です。しかし、悲しみの表現の仕方は人それぞれ異なります。女性は涙を流して悲しむことが多い一方、男性は感情を内に秘めたり、仕事に没頭することで対処したりすることがあります。

お互いの悲しみ方を尊重する: パートナーが自分と同じように悲しんでいないように見えても、それは悲しんでいないわけではありません。表現方法が違うだけです。お互いの悲しみ方を尊重し、責めないことが大切です。

コミュニケーションを大切に:自分の気持ちを言葉で伝えることも重要です。「今は話を聞いてほしい」「一人にしてほしい」など、具体的に伝えることで、パートナーも行動しやすくなります。

二人で前を向く: 流産という悲しい経験を共に乗り越えることで、カップルの絆はより深まることがあります。「二人で乗り越えよう」「一緒に次の妊娠を目指そう」という気持ちを共有することが、前に進む力となります。

次の妊娠の成功率を高めるために

流産原因の検査について

一度の流産であれば、多くの場合は偶発的なものであり、特別な検査は必要ありません。しかし、以下のような場合は、流産の原因を調べることで、次の妊娠の成功率を高めることができます。

検査が推奨されるケース:

2回以上連続して流産している(反復流産)

35歳以上で流産を経験した

不妊治療を経ての流産

流産が妊娠12週以降だった

主な検査:

  1. 染色体検査:流産組織(絨毛や胎児)の染色体検査を行うことで、今回の流産が染色体異常によるものかを確認できます。もし染色体異常が原因だった場合、それは偶発的なものであり、次の妊娠では正常な受精卵が着床する可能性が高いと言えます。
  2. 夫婦の染色体検査:反復流産の場合、両親のいずれかに染色体の構造異常(転座など)がある可能性があります。この場合、体外受精と着床前診断を組み合わせることで、正常な胚を選んで移植することができます。
  3. 不育症検査:反復流産の方には、以下のような検査を行います。
    • 血液凝固系検査(抗リン脂質抗体症候群など)
    • 甲状腺機能検査
    • 糖尿病検査
    • 子宮形態異常の検査(超音波、MRI、子宮鏡など)
    • 免疫学的検査

これらの検査で原因が特定できれば、適切な治療(抗凝固療法、甲状腺ホルモン補充、子宮形成術など)により、次の妊娠の成功率を大幅に向上させることができます。

サプリメントや栄養管理

次の妊娠に向けて、適切なサプリメント摂取と栄養管理は重要です。ただし、サプリメントはあくまで補助的なものであり、基本はバランスの取れた食事です。

推奨されるサプリメント

葉酸(400-800μg/日)妊娠前から摂取することで、神経管閉鎖障害のリスクを減らすだけでなく、卵子の質の向上にも寄与します。流産後、次の妊娠を目指す時点から摂取を開始してください。
ビタミンD(1000-2000IU/日)日本人女性の約70%がビタミンD不足と言われています。ビタミンDは卵子の質、着床率、妊娠継続率に関係することが示されています。血中濃度が30ng/ml以上になるよう、必要に応じて補充します。
オメガ3脂肪酸(DHA/EPA)抗炎症作用があり、子宮内膜の環境改善に寄与します。魚を週2-3回食べるか、サプリメントで補充してください。
コエンザイムQ10(100-300mg/日)卵子のミトコンドリア機能を改善し、特に35歳以上の方に推奨されます。ただし、効果が現れるまでに3ヶ月程度かかるため、継続的な摂取が必要です。
鉄分流産後は貧血になっていることが多いため、鉄分の補充も重要です。ただし、過剰摂取は便秘などの副作用があるため、血液検査で貧血の有無を確認してから摂取してください。

栄養管理のポイント:

タンパク質:体重1kgあたり1-1.2gを目標に

抗酸化物質:色の濃い野菜や果物を1日350g以上

良質な脂質:オリーブオイル、ナッツ、青魚

精製された糖質を控えめに:玄米や全粒粉パンを選ぶ

カフェイン:1日200mg(コーヒー2杯程度)まで

アルコール:妊活中は控える

反復流産・習慣流産の方へ

不育症の可能性と検査

2回以上連続して流産している場合を「反復流産」、3回以上連続している場合を「習慣流産」と呼び、これらを総称して「不育症」と言います。不育症の頻度は、妊娠経験のある女性の約5%と報告されています。

不育症の主な原因:

抗リン脂質抗体症候群(15-20%):血液が固まりやすくなり、胎盤への血流が障害されます。抗凝固療法(低用量アスピリン、ヘパリン注射)により、妊娠継続率が大幅に向上します。

染色体構造異常(4-5%):夫婦のいずれかに染色体の転座などがある場合です。着床前診断により、正常な胚を選択することができます。

子宮形態異常(10-15%):中隔子宮や双角子宮などの先天的な形態異常や、子宮筋腫、内膜ポリープなどの後天的な異常があります。手術により改善が期待できることがあります。

内分泌異常:甲状腺機能異常や糖尿病など。適切なホルモン補充や血糖コントロールにより改善します。

原因不明(約50%):検査で明らかな異常が見つからない場合も多いですが、これは「治療法がない」という意味ではありません。一般的な妊娠管理と心理的サポートにより、次回妊娠継続率は60-70%と報告されています。

専門的治療のアプローチ

不育症と診断された場合、原因に応じた専門的な治療を行います。

抗リン脂質抗体症候群の治療:低用量アスピリン(100mg/日)やヘパリン注射により治療を行います。これにより妊娠継続率は約70-80%まで向上します。治療は妊娠中期まで継続します。

免疫療法: 原因不明の反復流産に対して、夫リンパ球免疫療法やタクロリムス療法などが試みられることがあります。ただし、これらの有効性については議論があり、慎重な適応判断が必要です。

着床前診断: 反復流産の方で、特に35歳以上の場合、体外受精と着床前染色体検査を組み合わせることで、染色体正常な胚を選んで移植することができます。これにより流産率の低下が期待できます。

心理的サポート: 不育症外来では、医学的治療だけでなく、心理的サポートも重要視しています。カウンセリングや、定期的な妊娠経過のフォローにより、不安を軽減し、ストレスを減らすことで、妊娠継続率の向上につながります。

反復流産を経験している方は、一人で悩まず、ぜひ不育症専門外来を受診してください。原因が特定できれば適切な治療により、多くの方が無事に出産されています。

よくある質問|生殖医療専門医が答えます

質問と回答

Q1. 流産後すぐに排卵することはありますか?

A1. はい、あります。流産後、hCGが十分に低下すれば排卵が起こる可能性があります。早い方では流産後2-3週間で排卵することもあります。ただし、子宮の回復が不十分な時期での妊娠は推奨されないため、少なくとも次の月経を待つことをお勧めします。妊娠を希望しない場合は、必ず避妊をしてください。

Q2. 流産後の基礎体温はどうなりますか?

A2. 流産後、hCGが低下するとプロゲステロンも低下し、高温期が終了します。その後、FSHが分泌され始めると卵胞が発育し、排卵が起これば再び高温期が訪れます。通常は二相性のパターンに戻りますが、最初の1-2周期は不安定なこともあります。基礎体温を測定することで、体の回復状況を把握できますので、次の妊娠を考えている方は測定をお勧めします。

Q3. 流産後の出血はいつまで続きますか?

A3. 個人差がありますが、通常は1-2週間で出血は止まります。2週間以上出血が続く場合、量が増える場合、強い腹痛がある場合は、子宮内に残留物などの可能性もあるため、受診してください。

Q4. 流産後、いつから仕事に復帰できますか?

A4. 身体的には数日で日常生活が可能になりますが、できれば1週間程度は休養を取ることをお勧めします。ただし、精神的なダメージは人それぞれです。無理せず、自分のペースで復帰してください。

Q5. 流産を繰り返さないために何かできることはありますか?

A5. 一度の流産の多くは偶発的なもので、予防は困難です。しかし、生活習慣の改善(禁煙、適正体重の維持、バランスの取れた食事、ストレス管理)は次の妊娠の成功率を高めます。2回以上流産している場合は、検査を受けることで、原因が特定できれば治療により妊娠継続率を向上させることができます。

Q6. 流産後、妊娠検査薬が陽性のままです。大丈夫でしょうか?

A6. 流産後もhCGが体内に残っているため、しばらくは妊娠検査薬が陽性を示すことがあります。通常1-2週間で陰性になりますが、4週間以上陽性が続く場合は、子宮内に残留物がある、または稀に絨毛性疾患の可能性もあるため、受診してください。血中hCG値を測定し、適切に低下しているか確認します。

Q7. 流産後の夫婦生活はいつから可能ですか?

A7. 医学的には、出血が完全に止まり、子宮口が閉じるまで(通常2週間程度)は性交渉を控えることが推奨されます。これは感染予防のためです。ただし、精神的にも準備が整ってから再開してください。焦る必要はありません。

Q8. 40代ですが、流産後の妊娠は可能ですか?

A8. 可能です。ただし、40代では卵子の質の低下により、妊娠率は低下し、流産率は上昇します。流産後は適切な待機期間を経て、卵巣機能の評価を行い、必要に応じて体外受精などの積極的な治療を検討することをお勧めします。時間は貴重ですが、焦らず計画的に進めることが大切です。

まとめ|希望を持って前に進むために

流産という悲しい経験をされた皆様へ。今はどんなに辛くても、時間とともに心は必ず回復していきます。そして、多くの方が次の妊娠で無事に出産されています。

この記事でお伝えしたかったことをまとめます。

流産後の妊娠について:

  • 「流産後は妊娠しやすい」という明確な医学的根拠はありませんが、一度妊娠できたことは、妊娠能力があることの証明です
  • 次の妊娠は、1-2回の月経を待ってから目指すことが推奨されます
  • 年齢によって治療戦略は異なりますが、焦らず計画的に進めることが大切です

心身のケア:

  • 体の回復だけでなく、心の回復にも十分な時間をかけてください
  • 自分を責めないでください。流産の多くは防ぐことができません
  • パートナーや専門家のサポートを活用してください

次の妊娠に向けて:

  • 生活習慣の改善とサプリメント摂取で体を整えましょう
  • 必要な検査を受け、原因があれば治療することで成功率が高まります
  • 反復流産の場合は、不育症専門外来を受診してください

最後に:

「流産は悲しい経験ですが、終わりではありません。一度妊娠できたということは、体には妊娠する力があるのです。今は心と体を休めて、準備が整ったら、また一緒に頑張りましょう。諦めないでください。」

今は辛くても、希望を持ち続けてください。そして、一人で抱え込まず、私たち医療者、そして大切な人たちに頼ってください。どうか、希望を持って前に進んでください。

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