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着床はいつ?排卵後何日・胚移植後何日かを生殖医療専門医が解説【2026年最新】

  • 公開日:2026.10.26
  • 更新日:2026.10.26
着床はいつ?排卵後何日・胚移植後何日かを生殖医療専門医が解説【2026年最新】|不妊治療・体外受精・卵子凍結なら生殖医療クリニック錦糸町駅前院
この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
松見 泰宇学術顧問(医師)

生殖医療クリニック錦糸町駅前院の学術顧問を拝命いたしました、松見泰宇(まつみ ひろたか)と申します。

わたくしはこれまで、東京大学関連の大学病院や基幹病院において、尊敬する同窓の諸先輩方のもとで研鑽を積んでまいりました。その一方で、著名なプライベートクリニックに勤務する機会にも恵まれ、クリニックならではの、身近できめ細やかな診療も学んでまいりました。

これまでに培った知見が、当クリニックの患者さまのお役に少しでも立てば幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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「今ごろ、受精卵は着床してくれているのかな」。排卵日や移植日を過ぎると、ついカレンダーを何度も見返してしまう方は少なくありません。少しの腹痛やおりものの変化にも「これはサイン?」と一喜一憂し、ネットで調べるほど情報がバラバラでかえって不安になることもあるでしょう。

不妊治療の診察室でも、「着床はいつ起こるんですか」「何日目に検査すればいいですか」というご質問をいただきます。それだけこの時期は期待と不安が入り混じる、心が揺れやすい時間なのだと思います。

この記事では生殖医療専門医の立場から、自然妊娠と体外受精それぞれの着床の時期を日本生殖医学会や日本産科婦人科学会の資料、国際的な研究データをもとに整理しました。着床のサインや妊娠検査のタイミング、なかなか着床しないときの考え方まで、できるだけやさしい言葉でお伝えします。

【結論】着床はいつ?自然妊娠と体外受精の目安を一覧で

最初に結論をお伝えします。着床の時期は自然妊娠では「排卵日」から、体外受精では「胚移植日」から数えるとわかりやすくなります。

妊娠の方法着床が始まる目安着床が完了する目安妊娠がわかる目安
自然妊娠排卵後6〜7日頃排卵後10〜12日頃生理予定日の約1週間後(市販検査薬)
胚盤胞移植(5〜6日目胚)移植後1〜2日移植後5日頃移植後9〜14日(当院の判定日)
初期胚移植(2〜3日目胚)移植後3〜4日頃移植後7日頃移植後11〜16日(当院の判定日)

※日数には個人差があります。判定日は施設によって異なります。

自然妊娠の着床は「排卵後6〜12日」、多くは8〜10日

日本生殖医学会の「生殖医療Q&A 2025」では、排卵後およそ6日目に胚盤胞が子宮に到達し、7日目前後に子宮内膜にもぐり込んで着床すると説明されています。また、米国で221人の女性の尿を毎日調べた研究(Wilcoxら、1999年)では、妊娠が続いた例の着床は排卵後6〜12日に起こり、そのうち84%が8〜10日目に集中していました。つまり「排卵から1週間ほどで着床が始まり、10日前後までに起こることが多い」と覚えておくとよいでしょう。

体外受精では「移植した胚の日数」で着床時期が変わる

体外受精では、胚(受精卵)がどこまで育った段階で子宮に戻すかによって着床までの日数が変わります。採卵から5〜6日育てた胚盤胞は、すでに着床できる段階にあるため移植の翌日から2日後には着床が始まります。一方、採卵後2〜3日目の初期胚は子宮の中で胚盤胞まで育つ時間が必要なため、着床開始は移植後3〜4日頃になります。どちらも「受精から約1週間で着床する」という体のリズムは自然妊娠と同じです。

そもそも「着床」とは?妊娠が成立するまでの流れ

着床とは、受精卵が子宮内膜にくっつき内膜の中に入り込んで母体とつながる現象のことです。着床して初めて「妊娠が成立した」といえます。ここでは排卵から着床までの流れを順番に見ていきましょう。

排卵から受精まで

月経周期が28日の方では、おおよそ14日目に卵巣から卵子が排卵されます。排卵された卵子は、卵管の先端(卵管采)に取り込まれ卵管膨大部という場所で精子を待ちます。卵子の寿命は約24時間と短く、一方で精子は女性の体内で通常2〜3日、長いと5日ほど生きられるといわれています。この限られた時間に卵子と精子が出会い、1つの精子だけが卵子の中に入ることで「受精」が成立します。受精卵には、両親から受け継いだ遺伝情報がひとつにまとまっています。

受精卵は約6日かけて子宮へ向かう

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管の中をゆっくりと子宮へ移動します。2個、4個、8個と細胞が増え、受精後4日目頃には桑の実のような「桑実胚(そうじつはい)」に、5〜6日目には100個ほどの細胞からなる「胚盤胞(はいばんほう)」になります。胚盤胞の中には、将来赤ちゃんになる部分(内細胞塊)と、胎盤になる部分(栄養外胚葉)がすでに分かれています。この間に子宮内膜は、黄体ホルモンの働きでふかふかのベッドのように整えられていきます。

着床は「接着・付着・侵入」の3ステップで進む

子宮に到達した胚盤胞は、まず殻のような膜(透明帯)を破って外に出ます。これを「孵化(ハッチング)」と呼びます。その後、①胚が子宮内膜の表面にゆるく近づく「接着」②しっかりくっつく「付着」③内膜の奥へ入り込む「侵入」という3つのステップで着床が進みます。侵入が進むと、胎盤のもとになる細胞からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが出始めます。妊娠検査薬はこのhCGを検出する仕組みです。

自然妊娠の場合、着床はいつ?日数と妊娠週数で解説

排卵日を起点に数えると予測しやすい

自然妊娠で着床の時期を知りたいときは「排卵日」を0日目として数えるのがいちばん確実です。排卵した卵子は24時間ほどしか生きられないため、受精日は排卵日とほぼ同じ日と考えられます。そこから数えて6〜7日目に着床が始まり、10〜12日目頃までに完了するのが一般的な流れです。

排卵日は、基礎体温が低温期から高温期に移るタイミングや市販の排卵検査薬(LHの急上昇を調べる検査)で推測できます。LHが急上昇してから排卵まではおよそ24〜36時間かかるため、検査薬が陽性になった日の翌日前後を排卵日と考えるとよいでしょう。不妊治療中であれば、超音波検査で卵胞の大きさを測りより正確に排卵日を予測できます。

性交日が「受精日」とは限らない理由

「タイミングをとった日から1週間で着床する」と考える方がいますが、これは正確ではありません。精子は女性の体内で2〜3日、長いと5日ほど生き続けるため、排卵の数日前に性交渉があった場合は排卵日になってから受精が起こります。つまり、性交日から数えると着床までの日数が人によって大きくずれてしまうのです。着床の時期を考えるときは必ず排卵日を基準にしましょう。

妊娠週数でいうと「妊娠3週」にあたる

妊娠週数は、受精した日ではなく「最終月経の開始日」を妊娠0週0日として数えます。月経周期が28日の方では排卵・受精が起こるのが妊娠2週0日頃です。そこから約1週間後の妊娠3週に着床が始まり、妊娠3週の終わり頃までに完了します。

次の生理予定日は妊娠4週0日にあたります。まだ受精も着床もしていない時期から「妊娠2週」と数えるのは不思議に感じるかもしれませんが、出産予定日を全員同じ基準で計算するための決まりです。なお、月経周期が長い方や不規則な方は排卵が遅れるため着床の時期も後ろにずれます。

専門医の視点:着床のタイミングは妊娠継続にも関係する

先ほど紹介したWilcoxらの研究にはあまり知られていない大切な結果があります。それは「着床が遅いほど早期流産の割合が高くなる」という点です。排卵後9日目までに着床した場合の早期流産は13%でしたが、10日目では26%、11日目では52%、12日目以降では82%まで上がっていました。

これは、胚の発育が順調でないと子宮への到着や着床が遅れやすいことを示していると考えられます。早期流産の多くは胚の染色体の偶発的な変化によるものでお母さんの行動が原因ではありません。「何かしてしまったから」とご自身を責める必要はまったくないことを知っておいてください。

体外受精(胚移植)の場合、着床はいつ?

胚盤胞移植は移植後1〜2日で着床が始まる

胚盤胞移植とは、採卵から5〜6日間培養して胚盤胞まで育った胚を子宮に戻す方法です。自然妊娠でいえば、胚盤胞が子宮にたどり着いたのと同じ段階にあたるため、移植の翌日から2日後には着床が始まり、移植後5日頃までに完了すると考えられています。

胚盤胞移植には長い培養を乗り越えた生命力のある胚を選べるため、1回あたりの妊娠率が高いというメリットがあります。一方で、培養の途中で発育が止まり移植できる胚が得られない場合もあります。当院では、ご年齢や胚の数、これまでの経過をふまえて、初期胚と胚盤胞のどちらを移植するかを医師・培養士と一緒に決めていきます。

初期胚移植は移植後3〜4日頃から

初期胚移植は、採卵後2〜3日目の4〜8細胞ほどの胚を子宮に戻す方法です。自然妊娠ではまだ卵管の中にいる段階のため、子宮の中で胚盤胞まで育つ時間が必要です。そのため、着床が始まるのは移植後3〜4日頃で着床の進行は移植後5〜7日頃まで続きます。

初期胚移植には、「体外では育たなくても子宮の中なら育つ胚」を活かせるという利点があります。採れる胚の数が少ない方や、培養を長く続けると発育が止まりやすい方では、初期胚移植が選ばれることもあります。どちらが良い悪いではなくご自身に合った方法を選ぶことが大切です。

いまは凍結融解胚移植が主流

日本産科婦人科学会が2026年9月に公表した「2024年ARTデータブック」によると、2024年に体外受精などの生殖補助医療で生まれた赤ちゃんは86,473人で、そのうち約96%にあたる83,088人が凍結した胚(卵)を用いた治療で生まれています。

凍結融解胚移植では、採卵した周期とは別の周期に自然周期またはホルモン補充周期で子宮内膜を整えてから移植できます。卵巣刺激の影響を受けない落ち着いた子宮環境で移植でき、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)も避けやすくなります。また、ホルモン補充周期では黄体ホルモンを使い始めた日を基準に移植日を決めるため、着床の窓に合わせたスケジュールを組みやすいのも特徴です。

動画で知る卵巣過剰刺激症候群

不妊治療の副作用、卵巣過剰刺激症候群とは?

専門医が重視する「着床の窓」とは

着床の窓は排卵から1週間前後に開く

子宮内膜はいつでも胚を受け入れられるわけではありません。胚を受け入れられる期間は数日間に限られていて、この期間を「着床の窓(インプランテーション・ウィンドウ)」と呼びます。自然周期ではおおよそ排卵から1週間前後、28日周期でいえば月経開始から20〜24日目頃が目安とされています。

体外受精のホルモン補充周期では、黄体ホルモンの投与を始めた日から5日目(P+5)に胚盤胞を移植するのが一般的です。胚の発育と子宮内膜の準備のタイミングがぴったり合ったときに、着床は成立しやすくなります。胚が良好でも内膜の準備とずれていると着床しにくいことがわかっています。

着床の窓がずれる人もいる:ERA・ERPeak検査

着床の窓の時期には個人差があり、一般的なタイミングより早い方や遅い方もいます。良好な胚を移植しても着床しないことが続く場合、着床の窓のずれが原因になっている可能性があります。

これを調べるのが「子宮内膜受容能検査」です。移植予定のタイミングに合わせて子宮内膜の組織をごく少量採取し、遺伝子の働き方から着床の窓が開いているかを調べます。代表的な検査にERA(Igenomix社)とERPeak(CooperSurgical社)があり、こども家庭庁が公表している不妊治療の先進医療一覧にも、子宮内膜受容能検査(ERA・ERPeak)法が掲載されています。先進医療のため検査費用は自己負担ですが、保険診療の胚移植と併用できます。当院でもERPeakの検査に対応しています。

着床のサイン・症状はある?

着床出血の特徴と生理との違い

着床出血とは、受精卵が子宮内膜に入り込むときに内膜の細い血管が傷ついて起こる少量の出血のことです。時期としては排卵後7〜12日頃、つまり生理予定日の数日前から予定日あたりに見られることが多いため、「生理が早めに来たのかな」と勘違いされやすい特徴があります。

生理との違いの目安は、量・色・期間です。着床出血はおりものに少し血が混じる程度で、色はピンクや茶色が多く、1〜3日ほどで自然に止まります。一方、生理はだんだん量が増え、鮮やかな赤色の出血が数日間続きます。ただし、見た目だけで確実に見分けることはできません。生理のような量の出血や強い腹痛がある場合は、異所性妊娠(子宮外妊娠)などの可能性もあるため、早めに受診してください。

着床痛やそのほかの体の変化

着床の時期に下腹部のチクチクとした痛みや、引っ張られるような違和感を覚える方もいます。これは「着床痛」と呼ばれることがありますが、医学的に着床そのものが痛みを起こすかどうかははっきりわかっていません。

そのほか、眠気やだるさ、胸の張り、微熱っぽさ、おりものの変化などを感じる方もいます。これらは主に、排卵後に増える黄体ホルモンの影響によるもので妊娠していなくても生理前にも起こる症状です。体外受精で黄体ホルモン剤を使っている場合はなおさら薬の作用と区別がつきません。体の変化に気づいたら記録しておき判定日に医師へ伝える程度に考えておくと安心です。

「症状がない=着床していない」ではない

着床出血は、妊娠した方のうち一部の方にしか見られません。着床の時期に何も症状を感じないまま、無事に妊娠が続いている方はたくさんいらっしゃいます。反対に、症状があっても妊娠していないこともあります。

移植後や排卵後の10日間ほどはどうしても体のささいな変化に意識が向きがちです。「今日は何も感じないからダメだったのかも」と気持ちが沈む日もあるでしょう。しかし、症状の有無で着床を判断することはできません。答えがわかるのはhCGを調べる検査だけです。この時期は、症状探しよりも好きなことや心が落ち着くことに時間を使ってみてください。

着床したかはいつわかる?妊娠検査のタイミング

市販の妊娠検査薬は生理予定日の約1週間後から

市販の妊娠検査薬は尿の中のhCGを調べて妊娠を判定します。hCGは着床が始まってから分泌され日ごとに増えていきますが、検査薬で正しく判定できる量になるまでには時間がかかります。そのため、一般的な妊娠検査薬は「生理予定日の約1週間後」から使うよう決められています。

生理予定日から使える早期妊娠検査薬もありますが薬剤師がいる店舗でしか購入できず、早い時期ほど陰性に出てしまう可能性があります。陽性が出たら妊娠5〜6週頃に産婦人科を受診し、超音波で子宮の中に胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が見えるかを確認しましょう。異所性妊娠(子宮外妊娠)でないことを確かめるためにも受診はとても大切です。

体外受精の判定日は移植後9〜16日

体外受精では、血液検査でhCGの値を測って妊娠を判定します。尿検査よりも少ない量のhCGを数値で正確に測れるため着床の進み具合を詳しく確認できます。

判定日は施設によって多少異なりますが、当院では移植日を0日目として、胚盤胞移植の場合は9〜14日目、初期胚移植の場合は11〜16日目に採血を行っています。hCGが基準値を超えていれば妊娠反応陽性と判断し、黄体ホルモン剤を続けながら胎嚢と心拍の確認へと進みます。判定日までは、処方された黄体ホルモン剤を自己判断でやめずに続けることが何より大切です。

フライング検査をおすすめしない理由

判定日を待ちきれず、市販の検査薬で早めに調べる「フライング検査」をする方も少なくありません。気持ちはとてもよくわかります。ただし、早すぎる時期の検査では着床していても陰性になることがあります。また、排卵を起こすためにhCG注射を使った場合は、注射の成分が体に残っていて妊娠していなくても陽性に出ることがあります。

結果に一喜一憂して心が疲れてしまうのはとてももったいないことです。判定日に病院で数値を確認するまではできるだけ検査薬に頼らず過ごすことをおすすめします。

化学流産(生化学的妊娠)とは

化学流産とは、hCGが検出されて妊娠反応が出たものの超音波で胎嚢が確認される前に妊娠が終わってしまう状態のことです。医学的には「生化学的妊娠」と呼ばれます。日本産科婦人科学会のARTデータブックでも、「妊娠」は胎嚢が確認された周期として数えられており、化学流産は臨床的な流産とは区別されています。

化学流産は決して珍しいことではありません。Wilcoxらの研究グループは、hCGが検出された妊娠のうち、約4分の1は臨床的に妊娠と確認される前に終わると報告しています。多くは胚の染色体の偶発的な変化が原因です。つらい経験ですが、「着床する力はあった」という前向きな情報でもあります。気持ちが落ち着いたら次の治療方針を医師と一緒に考えていきましょう。

着床しやすい体づくりのためにできること

毎日の生活習慣で見直したいこと

着床を確実にする特別な食べ物やサプリメントはありません。それでも毎日の生活を整えることは妊娠しやすい体づくりにつながります。

まず大切なのは禁煙です。喫煙は卵子の質や子宮内膜の血流に悪影響を与えることがわかっています。パートナーの喫煙も同じように見直しましょう。お酒は妊娠を考え始めた時点から控えるのが理想です。体重は、やせすぎも太りすぎも排卵やホルモンのバランスを乱すため、適正な範囲を目指します。また、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすため、妊娠前から1日400μgの葉酸をサプリメントでとることが勧められています。睡眠をしっかりとり、適度に体を動かすことも、心と体の両方を支えてくれます。

動画で見る妊娠しやすい体の

妊娠しやすい体づくり、6つの柱

胚移植後の過ごし方

「移植後は動かないほうがいいのでは」と心配される方は多いのですが、寝たきりのような過度な安静は必要ありません。かえって血流が悪くなるため当院でも過度な安静はおすすめしていません。

移植当日はシャワー程度にしてゆったりと過ごし、翌日以降は家事やデスクワークなど、普段どおりの生活で構いません。判定日までは、ランニングや筋力トレーニングなどの激しい運動、重い物を持つこと、性交渉は控えましょう。そして最も大切なのは、処方された黄体ホルモン剤を指示どおり続けることです。飲み忘れや貼り忘れが心配な方はスマートフォンのアラームなどを活用してください。

なかなか着床しないとき:着床不全の原因と検査

反復着床不全とは

体外受精で良好な胚を何度か移植しても妊娠に至らない状態を「反復着床不全(RIF)」といいます。定義は学会や研究によって少しずつ異なりますが、当院では「良好な胚を3回以上移植しても、一度も妊娠反応が得られない場合」を目安に着床不全の検査をご提案しています。

日本産科婦人科学会の2024年ARTデータブックでは、移植1回あたりの妊娠率は35歳で47.6%、40歳で35.2%でした。若い方でも1回の移植で妊娠する確率は半分ほどです。1〜2回うまくいかなかったからといって、すぐに「着床不全」と決めつける必要はありません。ただ、回数を重ねてもうまくいかない場合は原因を調べることで次の一手が見えてくることがあります。

主な原因は「胚」と「子宮」の2つ

着床不全の原因は、大きく「胚の要因」と「子宮の要因」に分けられます。

胚の要因で最も多いのは胚の染色体の数の変化です。見た目(形態)が良好な胚でも、染色体の数に変化があると着床しにくく着床しても流産しやすくなります。この割合は年齢とともに高くなります。

子宮の要因には、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮内の癒着、子宮の形の違いなどの「形の問題」があります。卵管に水がたまる卵管水腫もその液体が子宮内に流れ込むことで着床を妨げます。さらに、慢性子宮内膜炎や子宮内の細菌バランスの乱れ、着床の窓のずれといった「機能の問題」が見つかることもあります。甲状腺の働きや血液の固まりやすさなど全身の状態が関係する場合もあります。

検査・治療の選択肢と保険・先進医療

着床不全が疑われる場合は子宮鏡検査や超音波検査で子宮の形を確認するほか、次のような検査を必要に応じて組み合わせます。

  • 子宮内膜受容能検査(ERA・ERPeak):着床の窓の時期を調べる
  • 子宮内細菌叢検査(EMMA・ALICEなど):子宮内の善玉菌(ラクトバチルス)の割合や、慢性子宮内膜炎の原因菌を調べる
  • 慢性子宮内膜炎の検査(CD138):子宮内膜の炎症の有無を調べる
  • 着床前胚染色体異数性検査(PGT-A):移植前に胚の染色体の数を調べる(日本産科婦人科学会の指針にもとづき、対象となる方に限って実施)

体外受精や胚移植は2022年4月から保険適用となりました。治療開始時に女性が43歳未満であることが条件で、胚移植の回数は40歳未満の方は通算6回まで、40歳以上43歳未満の方は通算3回までです。ERA・ERPeakや子宮内細菌叢検査は先進医療にあたり費用は自己負担ですが、保険診療と併用できます。お住まいの自治体によっては先進医療の費用に助成がある場合もあります。

着床に関するよくある質問

質問と回答

Q1. 着床の時期にお酒を飲んでしまいました

A1. 妊娠に気づく前に飲酒してしまい不安になる方は少なくありません。受精から着床の頃までの時期は、まだ胎盤ができておらず、お母さんの血液を通して赤ちゃんが直接影響を受けることは少ないと考えられています。ここでの影響は「全か無か」といわれ、影響があれば妊娠が続かず妊娠が続いていれば影響は残りにくいとされています。

過去の飲酒を責めすぎず妊娠の可能性がわかった時点から飲酒をやめれば大丈夫です。心配が続く場合は受診の際に遠慮なく医師へご相談ください。

Q2. 移植後は安静にしたほうがいいですか?

A2. 過度な安静は必要ありません。移植後に寝て過ごしても妊娠率が上がるわけではないことがわかっています。移植当日はゆっくり過ごし、翌日からは仕事や家事など普段どおりの生活で問題ありません。

ただし、激しい運動や重い物を持つこと、長時間の入浴やサウナなど体温が大きく上がることは、判定日までは控えておくと安心です。「動いてしまったから着床しなかったのでは」と後から自分を責めないためにも、無理のない範囲でいつもどおり過ごすことを心がけましょう。

Q3. 着床出血がなければ妊娠していませんか?

A3. 着床出血がなくてもまったく問題ありません。着床出血が起こるのは一部の方だけで、出血がないまま妊娠している方のほうがむしろ多数派です。

反対に、出血があっても着床出血とは限らず、生理や、ホルモンの変化による不正出血のこともあります。出血の有無で妊娠を判断することはできないため、自然妊娠の場合は生理予定日の1週間後に妊娠検査薬で、体外受精の場合は判定日の血液検査で確認しましょう。出血量が多い、強い腹痛を伴うなどの場合はすぐに受診してください。

参考文献

出典本文で使った内容
日本生殖医学会「生殖医療Q&A 2025 Q1 妊娠はどのように成立するのですか?」排卵後約6日で胚盤胞が子宮へ、7日目前後に着床。卵子の寿命約24時間、精子2〜3日(最長5日程度)
日本産科婦人科学会「2024年ARTデータブック」(2026年9月3日掲載)ART出生児86,473人、凍結胚(卵)由来83,088人。移植あたり妊娠率35歳47.6%・40歳35.2%。妊娠=胎嚢確認周期の定義
こども家庭庁「不妊治療における先進医療の状況」子宮内膜受容能検査(ERA・ERPeak)法、子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE法)が先進医療A
Wilcox AJ, et al. Time of implantation of the conceptus and loss of pregnancy. N Engl J Med. 1999;340:1796-9着床は排卵後6〜12日、84%が8〜10日目。着床日別の早期流産率13%・26%・52%・82%
Wilcox AJ, et al. Preimplantation loss of fertilized human ova. Hum Reprod. 2020hCG検出後の妊娠の約4分の1が臨床的確認前に終わる(化学流産の頻度)

この記事の監修者
松見 泰宇 学術顧問(医師)
学術顧問(医師)
HIROTAKA MATSUMI

資格・専門医

  • 東京大学医学博士
  • 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
  • 日本生殖医学会生殖医療専門医
  • 日本抗加齢医学会専門医
  • 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
  • 難病指定医
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
  • 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
  • 新生児蘇生インストラクターAコース修了
  • 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
  • 日本臨床免疫学会
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本生殖医学会
  • 日本生殖免疫学会
  • 日本不育症学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本再生医療学会
  • 日本産婦人科乳腺医学会
  • 日本スポーツ協会
  • 産婦人科PRP研究会

経歴

  • 東京大学医学部卒業
  • 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
  • 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
  • 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
  • 日本学術振興会特別研究員
  • スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
  • 成育医療研究センター特別研究員
  • 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
  • 帝京大学溝口病院講師
  • 帝京大学非常勤講師
  • 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
  • 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
  • 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務
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