長い不妊治療を経てようやく迎えた陽性判定。うれしいはずなのに「この吐き気はつわり?それとも薬のせい?」「つわりが全然ないけれど、赤ちゃんは大丈夫?」と、毎日の小さな体の変化に一喜一憂していませんか。
何度も判定日を経験してきた方ほど「今度こそ」という願いと「またダメだったら」という怖さが同居しているのはごく自然なことです。
さらに体外受精での妊娠は、妊娠週数の数え方や黄体ホルモン補充の薬など一般的なつわりの情報がそのまま当てはまらない部分があります。ネットで調べるほどかえって混乱してしまう方も少なくありません。
この記事では生殖医療専門医の立場から、不妊治療で妊娠した場合のつわりが「いつから」「いつまで」続くのかを、移植日から数える週数の早見表とあわせて解説します。受診が必要なサインや、クリニックを卒業する時期との関係、つらい気持ちとの向き合い方まで、学会や公的機関の情報をもとにお伝えします。
つわりはいつから・いつまで?まず押さえたい基本
つわりとは?妊婦さんの約50〜80%が経験する体の変化
つわりとは、妊娠によって起こる吐き気(悪心)や嘔吐、食欲不振などの消化器症状を中心とした体調の変化です。日本産科婦人科学会の『産科婦人科用語集・用語解説集』でも、悪心・嘔吐・食欲不振などを主な症状とする妊娠によって起こる症候とされています。
経験する人の割合は報告によって幅があり、妊婦さんの約50〜80%、海外の研究では70〜80%程度とされています。多くの方が何らかの症状を感じる一方で、ほとんど症状がないまま出産を迎える方もいるということです。
英語では「morning sickness(朝の吐き気)」と呼ばれますが、実際には朝の空腹時だけでなく、夕方以降に強くなる方や一日中気分が悪い方もいます。症状の出方や強さは同じ人でも妊娠ごとに異なることがあり「前回は軽かったのに今回はつらい」ということも珍しくありません。まずは「つわりには大きな個人差がある」ということを心の片隅に置いておいてください。
一般的な時期の目安:妊娠5〜6週に始まり、12〜16週ごろに落ち着く
一般的につわりは妊娠5〜6週ごろに始まり、hCGの分泌が最も多くなる妊娠8〜10週ごろにピークを迎え、妊娠12〜16週ごろに自然と落ち着いていく方が多いとされています。早い方では妊娠4週台、つまり生理予定日のころから体調の変化を感じることもあります。
ここでいう「妊娠週数」は最終月経の開始日を妊娠0週0日として数えます。28日周期の方なら排卵・受精が妊娠2週ごろ、次の生理予定日が妊娠4週0日にあたります。
終わる時期にも個人差があります。海外の調査では症状が続く期間は平均35日ほどで、約半数が妊娠14週までに約9割が妊娠22週までに改善したと報告されています。ただし、妊娠16週以降に新たに強い吐き気が始まった場合や、妊娠20週を過ぎても強い症状が続く場合は、つわり以外の病気が隠れていないか確認が必要なこともあります。妊婦健診で遠慮なく相談してください。
つわりが起こる原因:hCGだけでなく、新たに注目される「GDF15」
つわりの原因は、実はまだ完全には解明されていません。これまでは、胎盤のもととなる細胞から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:妊娠判定で測るホルモン)や、エストロゲン・プロゲステロンといった女性ホルモンの急増、胃腸の動きの低下、心理的・社会的な要因などが複合的に関わると考えられてきました。
そうしたなか、2023年12月に英国ケンブリッジ大学などの研究チームが科学誌『Nature』に発表した研究が注目を集めました。GDF15(成長分化因子15)というホルモンの血中濃度が高いほど吐き気や嘔吐が強いこと、そして母体の血中のGDF15の大部分が胎児由来であることが示されたのです。さらに、妊娠前のGDF15値が低い人ほど妊娠中の上昇に敏感で重症化しやすい可能性も報告されています。
つわりは「気の持ちよう」ではなく体のなかで実際に起きている変化によるものです。つらさを我慢しすぎる必要はありません。
不妊治療で妊娠した時の「つわり」はいつから?【週数の数え方がカギ】
体外受精の妊娠週数は「移植日」から計算する
タイミング法や人工授精で妊娠した場合は、自然妊娠と同じく最終月経開始日や排卵日から週数を計算します。一方、体外受精・顕微授精で妊娠した場合は、胚を移植した日と胚の培養日数から妊娠週数をより正確に割り出すことができます。
考え方はシンプルです。受精した日(採卵日)を妊娠2週0日とみなし、そこに胚の日齢を足します。培養5日目の胚盤胞を移植した日は妊娠2週5日、培養3日目の初期胚を移植した日は妊娠2週3日にあたります。凍結胚移植の場合も、凍結したときの胚の日齢で同じように計算します。
「移植してまだ2週間なのに、もう妊娠4週?」と驚かれる方もいますが、妊娠週数は最終月経を起点とする約束ごとなので移植日の時点ですでに妊娠2週台になっているのです。この数え方を知っておくと、つわりの時期の見通しがぐっと立てやすくなります。
胚盤胞移植・初期胚移植の週数早見表
| タイミング | 胚盤胞(5日目胚)移植 | 初期胚(3日目胚)移植 | つわりの目安 |
|---|---|---|---|
| 移植日 | 妊娠2週5日 | 妊娠2週3日 | まだつわりは起こらない時期 |
| 妊娠判定(血液検査) | 移植後9〜14日(妊娠4週0日〜4週5日) | 移植後11〜16日(妊娠4週0日〜4週5日) | 早い方は変化を感じ始める |
| 胎嚢確認 | 判定の約1週間後(妊娠5週台) | 判定の約1週間後(妊娠5週台) | 始まる方が増える |
| 心拍確認 | 妊娠6〜7週ごろ | 妊娠6〜7週ごろ | 症状がはっきりしてくる |
| 卒業(転院) | 妊娠8〜10週前後 | 妊娠8〜10週前後 | ピークと重なりやすい |
| 落ち着く時期 | 妊娠12〜16週ごろ | 妊娠12〜16週ごろ | 徐々に楽になる方が多い |
※判定日・胎嚢確認日は当院の目安です。卒業の時期は妊娠の経過や分娩施設によって異なります。
判定日〜妊娠5週ごろから始まる方が多い
早見表のとおり体外受精で妊娠した場合、妊娠判定の日はおおむね妊娠4週台にあたります。つわりが始まりやすい妊娠5〜6週は、判定日から1〜2週間後、ちょうど胎嚢確認の前後です。そのため「判定日には何も感じなかったのに、胎嚢確認のころから急に気持ち悪くなってきた」という経過をたどる方が多くみられます。
大切なのはつわりの始まる時期や強さが自然妊娠か体外受精かによって大きく変わるわけではないという点です。妊娠が成立すれば体のなかで起こるホルモンの変化は基本的に同じです。違うのは「週数の数え方」と「正確にわかること」だけだと考えてください。
ただし、不妊治療中の方は判定日を強く意識しているぶん、わずかな体調の変化にも敏感になりがちです。症状の有無で妊娠の成否を判断することはできないので、判定日の血液検査、その後の超音波検査と一つずつ確認していきましょう。
判定日前の吐き気・眠気は「黄体ホルモン補充」の影響のことも
「移植から数日しか経っていないのにもう吐き気がある。これはつわり?」というご質問をよくいただきます。実は、妊娠判定前に感じる吐き気や眠気、お腹の張りなどは、つわりではなく黄体補充の薬の影響であることも少なくありません。
黄体補充とは、着床と妊娠の維持に欠かせない黄体ホルモン(プロゲステロン)を腟剤や内服薬、注射などで補う治療です。特にホルモン補充周期での凍結胚移植では排卵をしていないため黄体ホルモンがほとんど作られず、薬での補充が欠かせません。
黄体ホルモン製剤の添付文書には、副作用として悪心・嘔吐や腹部膨満感、眠気(傾眠)などが記載されています。つまり、妊娠初期症状とよく似た症状が薬によって起こりうるのです。症状があるから妊娠している、ないから妊娠していないとは判断できません。結果は判定日の血液検査で確かめましょう。
不妊治療後の妊娠はつわりが重い?専門医が答えるよくある疑問
「体外受精だからつわりが重くなる」という明確な根拠はない
インターネット上には「ホルモン補充をした妊娠はつわりが早く・重く出る」といった情報も見かけますが、体外受精という方法そのものがつわりを重くするという明確な医学的根拠は現時点ではありません。
つわりの重さに関係すると考えられているのは、hCGやGDF15といった妊娠に伴って増えるホルモンの量と、それに対する体の感受性です。妊娠悪阻(重症のつわり)の重症度や続く期間には遺伝的な体質が関わる可能性も指摘されています。前回の妊娠でつわりが重かった方は次の妊娠でも似た経過をたどることがあります。
一方で、不妊治療を経た方は長い治療期間の疲れや「絶対に失敗したくない」という緊張を抱えていることが多いものです。心身の疲労はつわりのつらさをより強く感じさせる一因になります。「体外受精だから」ではなく「頑張ってきた体と心だからこそ、いたわりが必要」と考えてください。
双子(多胎)妊娠ではつわりが強く出やすい
不妊治療と関わりが深いのが双子などの多胎妊娠です。多胎妊娠ではhCGの分泌量が多くなるため、つわりが強く出やすいことが知られています。
日本産科婦人科学会は2008年に体外受精で一度に移植する胚を原則、1個とする見解を示しています(35歳以上の方や、2回以上移植しても妊娠に至らなかった方は2個まで認められています)。しかし2026年5月に報じられた東邦大学などの研究では保険適用後に多胎の割合が増え、2023年の生殖補助医療による多胎妊娠は過去最多の4,354例だったとされています。
2個の胚を移植した方や一般不妊治療で排卵誘発剤を使った方は、つわりが強いときに多胎の可能性も念頭に置きましょう。多胎妊娠は早産や妊娠高血圧症候群などのリスクも高くなるため、分娩施設選びにも影響します。
黄体補充の薬は、つわりがつらくても自己判断でやめないで
吐き気が強いと「この薬のせいかも」と黄体補充の腟剤や内服薬をやめたくなることがあるかもしれません。しかし妊娠初期の黄体補充は、胎盤が自分でホルモンを十分に作れるようになるまでの妊娠を支える大切な役割を担っています。
使用期間は薬剤や治療方針によって異なります。たとえば添付文書では、腟用カプセルの「ウトロゲスタン」は妊娠が確認できた場合に胚移植後9週(妊娠11週)まで、腟錠の「ルティナス」は最長10週間(または妊娠12週まで)の投与と定められています。
内服薬を吐いてしまう、腟剤を入れると気分が悪くなるといった場合は、我慢したり中断したりせず必ず処方したクリニックに連絡してください。使い方を工夫する、別の剤形に切り替えるなど続けやすい方法を一緒に考えることができます。
つわりの症状タイプと今日からできる対処法
吐きつわり・食べつわり・においつわり・よだれつわり・眠りつわり
つわりの症状は吐き気だけではありません。代表的なタイプは次のとおりで複数が重なることもあります。
- 吐きつわり:吐き気や嘔吐が中心。食べても吐いてしまう
- 食べつわり:空腹になると気持ち悪くなり、何か食べていないと落ち着かない
- においつわり:炊きたてのご飯、香水、柔軟剤などのにおいで吐き気がする
- よだれつわり(唾液過多):唾液が増えて飲み込めず、常に吐き出したくなる
- 眠りつわり:日中も強い眠気やだるさが続く
なかでもよだれつわりは、妊娠中期以降まで長引くことがあると報告されています。ほかにも、頭痛、便秘、胸やけ、気分の落ち込みなどを伴う方もいます。自分のタイプを知っておくと「空腹を作らない」「においを避ける」など自分に合った対策を立てやすくなります。
食事と水分のとり方のコツ
つわりの時期は「栄養バランスのよい食事を」と気負う必要はありません。食べられるものを、食べられるときに、少しずつ口にすることを優先しましょう。
- 空腹を避けるため、食事を1日5〜6回の少量に分ける
- 枕元にクラッカーや一口サイズのおにぎりを置き、起き上がる前に口にする
- 温かい料理のにおいがつらいときは、冷ましたものや冷たい麺、果物などにする
- 水分は一度にたくさん飲まず、氷や経口補水液、スポーツドリンクなどを少量ずつ
- 炭酸水やレモン、梅干しなど、さっぱりした味が口に合う方も多い
脱水は吐き気をさらに悪化させる悪循環を招きます。食事がとれない日も水分だけは意識してとるようにしてください。
葉酸はつわり中も意識したい栄養素
こども家庭庁・厚生労働省の『妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針』では、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(脳や脊髄のもとになる部分がうまく閉じない先天性の病気)のリスクを減らすため、妊娠前から妊娠初期にかけて、食事に加えてサプリメントなどから1日400μgの葉酸をとることが勧められています。
妊娠初期は赤ちゃんの脳や内臓がつくられる大切な時期ですが、ちょうどつわりと重なります。食事が偏りがちな時期こそサプリメントを上手に活用しましょう。錠剤で気持ち悪くなる方は飲む時間帯を変える、小粒やグミタイプに変えるなどの工夫も有効です。ただし、とりすぎには注意が必要なので用量を守ってください。
動画で葉酸を知る

仕事を続けている方は「母健連絡カード」を活用
不妊治療と仕事を両立してきた方にとってつわりの時期の働き方も大きな悩みです。まだ職場に妊娠を伝えていない時期と重なることも多いでしょう。
男女雇用機会均等法では、妊娠中の女性が医師などから指導を受けて事業主に申し出た場合、事業主はその指導を守れるよう必要な措置を講じることが義務付けられています。その指導内容を職場に正確に伝えるためのツールが、厚生労働省の「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です。
このカードでは、「つわり(症状が著しい場合)」の標準措置として勤務時間の短縮、「妊娠悪阻」では休業(入院加療)が示されています。カードの様式は多くの母子健康手帳にも掲載されています。つらいときは一人で抱え込まず、主治医に記入を相談してください。
受診が必要な「妊娠悪阻」のサイン
つわりと妊娠悪阻の違い
つわりは妊娠に伴う生理的な変化ですが、症状が悪化して食事や水分がとれなくなり体に影響が出てしまった状態を「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼びます。妊娠悪阻は治療が必要な病気で妊婦さん全体の0.5〜2%程度にみられるとされています。
診断の目安となるのは妊娠前と比べて5%以上(体重50kgの方なら2.5kg以上)の体重減少、脱水、尿中ケトン体(体がエネルギー不足で脂肪を分解しているサイン)の検出、血液検査での電解質異常などです。
特に注意したいのがビタミンB1(チアミン)の不足です。嘔吐が続いてビタミンB1が欠乏すると、ウェルニッケ脳症という、意識の混乱やふらつき、目の動きの異常などを起こす重い病気につながることがあります。また、脱水によって血栓症のリスクも高まります。「つわりだから仕方ない」と我慢しすぎないことが大切です。
こんな症状があれば、早めにクリニックへ連絡を
次のような症状があるときは、次の診察日を待たずに連絡してください。
- 水分をとってもすぐに吐いてしまい、1日中ほとんど飲めない
- 尿の量が明らかに少ない、半日以上トイレに行っていない、尿の色が濃い
- 妊娠前より体重が5%以上減った
- めまいやふらつきで立っていられない、ぼんやりする
- 吐いたものに血が混じる、強い腹痛や出血がある
多胎妊娠や、まれに胞状奇胎(胎盤のもとになる組織が異常に増える病気)で強い嘔吐が起こることもあります。また、出血や強い腹痛を伴う場合は異所性妊娠(子宮外妊娠)などとの区別も必要です。不妊治療クリニックに通院中の方はまず通院先に卒業後の方は分娩予定の産婦人科に連絡しましょう。
妊娠悪阻の治療と最新の動向
日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会がまとめる『産婦人科診療ガイドライン―産科編』では、妊娠悪阻の治療として、心身の安静、水分の補給(点滴)、ビタミンB群や吐き気止め(制吐薬)の投与などが示されています。点滴を行う際にはビタミンB1を加えることが重要で、重症の場合は入院して栄養と水分の管理を行います。
かつて日本では「妊娠中は薬を使わず我慢するもの」という風潮が強くありましたが、吐き気が続く場合には制吐薬の使用を考慮するという考え方がガイドラインにも明記されるようになりました。
また海外では、ビタミンB6とドキシラミン(抗ヒスタミン薬)の配合薬がつわりの治療薬として承認されていますが、日本ではつわり・妊娠悪阻の適応で承認された薬はまだありません。2026年6月にはこの配合薬の国内治験が行われる見込みと報じられました。日本産科婦人科学会の要望を受けた開発であり今後の動向が期待されます。
つわりがない・急に軽くなったときの不安について
つわりがなくても、妊娠経過に問題があるとは限らない
「つわりがほとんどないけれど赤ちゃんはちゃんと育っているの?」という不安は、不妊治療を経て妊娠した方から特に多く寄せられるご相談です。
前述のとおりつわりを経験するのは妊婦さんの50〜80%程度です。裏を返せば、2〜5割の方は症状がほとんどないかごく軽いまま過ごしています。つわりが軽い、あるいはないことだけで胎嚢の発育や妊娠の経過に問題があるとはいえません。
また、つわりの症状は日によって波があるのが普通です。「昨日はつらかったのに今日は楽」という変化もよくあることです。症状の有無を毎日確かめて不安になるよりも、決められた超音波検査で赤ちゃんの成長を確かめることを大切にしましょう。
心配なときは次の診察を待たずに相談してよい
それまで強かったつわりが急になくなり「流産のサインでは」と心配になる方もいます。たしかに流産によってホルモンが減り症状が軽くなることはありますが、つわりの変化だけで流産かどうかを判断することはできません。
不妊治療を経験された方はこれまでのつらい経験から不安が大きくなりやすいものです。次の超音波検査まで不安で眠れない、仕事が手につかないという場合は遠慮せずクリニックに相談してください。不安を言葉にするだけでも気持ちが少し軽くなることがあります。
なお、出血が続く、生理痛のような強い腹痛があるといった症状を伴う場合は、つわりの有無にかかわらず早めに連絡してください。
不妊治療クリニックの「卒業」とつわりのピークは重なりやすい
卒業(転院)は妊娠8〜10週前後が一般的
不妊治療で妊娠した場合、胎嚢や心拍を確認し、妊娠経過が順調であることを確かめたうえで、出産を予定する産婦人科へ紹介となります。これを「卒業(卒院)」と呼びます。時期は施設によって異なりますが、一般的には妊娠8〜10週前後が多くなっています。
ここで知っておいていただきたいのが、卒業の時期がつわりのピーク(妊娠8〜10週ごろ)とちょうど重なりやすいという点です。体調が最もつらい時期に分娩施設の予約や初診、母子健康手帳の交付手続きなどが重なるため「こんなに大変だとは思わなかった」という声も少なくありません。
また、黄体補充などの薬を卒業後もしばらく続ける場合があります。いつまで使うのかは卒業の際に必ず確認しておきましょう。
つらい時期の転院をスムーズにする3つの準備
つわりのピークに慌てないよう、心拍が確認できたころから次の準備を始めておくのがおすすめです。
- 分娩施設を早めに決める:人気の施設や無痛分娩を行う施設は、早い時期に予約が埋まることがあります。多胎妊娠の場合は、NICU(新生児集中治療室)のある施設が勧められることもあります。
- 紹介状と治療情報を受け取る:移植日や胚の日齢、使用中の薬は、出産予定日の計算や今後の診療に欠かせない情報です。
- 手続きは家族と分担する:自治体への妊娠届けや母子健康手帳の受け取り、分娩施設の情報集めなどパートナーに任せられる部分は任せましょう。
体調が悪い日に無理に予定を詰め込まず「今日はここまで」と区切ることも大切です。
「やっと授かったのに弱音を吐けない」気持ちとの向き合い方
不妊治療を経て妊娠した方から「あんなに望んでいた妊娠なのに、つらいと言ったらバチが当たりそう」「治療中の友人には相談できない」という声をよく伺います。
けれど望んでいた妊娠であることと、つわりがつらいことはまったく矛盾しません。つらいと感じるのは体が赤ちゃんを育てるために大きく変化しているからです。妊娠悪阻の治療においても、つらさに共感して耳を傾ける心理面のサポートが重要だとされています。
当院には臨床心理士や助産師が在籍しており、妊娠後の不安や気持ちの揺らぎについてもご相談いただけます。パートナーには「どこがどうつらいのか」「何をしてほしいのか」を具体的に伝えるとサポートを受けやすくなります。どうか一人で抱え込まないでください。
生殖医療クリニック錦糸町駅前院は朝8時から夜21時まで(曜日による)、土日祝日も診療しています。妊娠判定から卒業まで皆さまの体と心に寄り添いながらサポートします。ご予約はLINE・WEBから24時間受け付けています。
参考文献・引用元
学会・省庁
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン―産科編』(Minds掲載ページ)。→ 妊娠悪阻の治療の記述は、参考とした解説記事が2014・2020年版を参照。Mindsでは2023
- 日本産科婦人科学会「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」(2008年)。秋田魁新報(共同通信、2026年5月25日)
- 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」(三重労働局リーフレット、様式を含む資料)
- こども家庭庁・厚生労働省『妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針』(厚生労働省の公表ページ、葉酸400μgの記載は神戸市の解説)
医学文献・添付文書
松見 泰宇
資格・専門医
- 東京大学医学博士
- 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本抗加齢医学会専門医
- 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
- 難病指定医
- 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
- 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
- 新生児蘇生インストラクターAコース修了
- 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
- 日本臨床免疫学会
- 日本産科婦人科学会
- 日本生殖医学会
- 日本生殖免疫学会
- 日本不育症学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
- 日本産婦人科乳腺医学会
- 日本スポーツ協会
- 産婦人科PRP研究会
経歴
- 東京大学医学部卒業
- 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
- 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
- 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
- 日本学術振興会特別研究員
- スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
- 成育医療研究センター特別研究員
- 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
- 帝京大学溝口病院講師
- 帝京大学非常勤講師
- 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
- 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
- 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務