妊娠がわかってうれしい気持ちと同時に「そういえば先週、飲み会でお酒を飲んでしまった……」と不安で胸がいっぱいになっている方もいるのではないでしょうか。不妊治療を続けてこられた方ほど「やっと授かった命に何かあったら」とご自身を責めてしまいがちです。
まず知っていただきたいのは、妊娠に気づく前にお酒を飲んでいた方は決して少なくないということです。国の大規模調査では妊娠に気づく前に飲酒していた妊婦さんは約半数にのぼります。大切なのは正しい知識をもとに「これからどうするか」を考えることです。
この記事では、日々不妊治療に携わる生殖医療専門医の立場から妊娠初期のアルコールが赤ちゃんに与える影響、週数ごとの考え方、飲んでしまったときの対処法、そして妊活・不妊治療中のお酒との付き合い方まで公的機関のデータをもとにやさしく解説します。
妊娠初期とはいつ?まず知っておきたい「週数」の数え方
妊娠週数は「最終月経の初日」から数える
アルコールの影響を正しく理解するには、まず妊娠週数の数え方を知っておく必要があります。
妊娠週数は受精した日ではなく「最終月経が始まった日」を妊娠0週0日として数えます。月経周期が28日の方なら、排卵・受精が起こるのは妊娠2週ごろ、受精卵が子宮内膜にもぐり込む「着床」は妊娠3週ごろです。そして次の月経予定日が妊娠4週0日にあたります。
市販の妊娠検査薬は月経予定日の1週間後ごろから使うものが多いため、陽性を確認するころにはすでに妊娠5週前後になっています。「気づいたときには1か月以上たっていた」と感じるのはこのためです。
なお、体外受精で胚移植をした場合は移植日から週数を計算します。たとえば胚盤胞(受精から5日ほど育った胚)を移植した日は妊娠2週5日にあたります。
「妊娠超初期」と「妊娠初期」の違い
医学的には妊娠初期とは妊娠13週6日までを指します。一方「妊娠超初期」は正式な医学用語ではなく、一般に妊娠0〜4週ごろ、つまり妊娠に気づく前後の時期を指す言葉として使われています。
この「超初期〜初期」は赤ちゃんの脳や心臓、手足など、体の大切な器官がつくられる時期と重なります。そのため薬やアルコールの影響を最も受けやすい時期として注意が呼びかけられています。
一方で、ご本人が妊娠に気づきにくい時期でもあります。「知らずに飲んでしまった」というご相談が多いのはこの時期ならではの特徴です。次の章では、アルコールが赤ちゃんにどう影響するのかを見ていきましょう。
妊娠初期のアルコールが赤ちゃんに与える影響
アルコールは胎盤を通って赤ちゃんに届く
お母さんが飲んだアルコールは、血液に乗って胎盤を通過し赤ちゃんの体に入ります。アルコールは分子がとても小さいため胎盤でほとんど防ぐことができず、赤ちゃんの血中アルコール濃度はお母さんとほぼ同じ水準まで上がるとされています。
さらに、赤ちゃんの肝臓は未熟でアルコールを分解する力がほとんどありません。お母さんが「ほろ酔い」程度と感じる量でも赤ちゃんにとっては長い時間アルコールにさらされる状態になってしまいます。
アルコールやその分解途中でできるアセトアルデヒドなどの物質は、細胞の増殖や神経の発達を妨げることがわかっています。とくに体の器官がつくられる妊娠初期は、顔つきや臓器の「かたち」への影響が出やすい時期です。
胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)とは
妊娠中の飲酒によって赤ちゃんに起こる障害をまとめて「胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)」と呼びます。そのうち、特徴的な顔つき(小さな目、薄い上唇など)、発育の遅れ、脳の障害がそろったものを「胎児性アルコール症候群(FAS)」といいます。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、FASDには治療法がなく唯一の対策は予防であること、少量の飲酒でも妊娠のどの時期でも影響しうることから妊娠中は完全にお酒をやめるよう呼びかけています。
国の資料では、日本のFASの発生は1〜2万出生に1人と推定され純アルコールで1日約50g(ビール中瓶約2.5本分)以上の飲酒で多くみられると報告されています。ただしFASに至らない軽い発達面の影響まで含めると「この量なら安全」という線は引けないのが現状です。
流産との関係
妊娠初期の飲酒は赤ちゃんのかたちへの影響だけでなく、流産のリスクとも関係すると考えられています。
生殖医療の分野の総説では、流産率を1.5〜2倍に高める生活習慣として喫煙、カフェインのとりすぎ、肥満とならび「週2回以上のアルコール摂取」が挙げられています。
ただし、妊娠初期の流産の多くは受精卵の染色体に偶然起こる変化が原因でお母さんの行動によるものではありません。「お酒を飲んだから流産した」と単純に結びつけてご自身を責める必要はありません。
そのうえで防げるリスクは減らしておくことが安心につながります。妊娠の可能性がある時期からお酒を控えることは赤ちゃんを守るためにご自身ができる確実な方法のひとつです。
【週数別】飲酒した時期と影響の考え方
赤ちゃんへの影響の出方は飲んだ時期によって異なります。まず全体像を表で確認しましょう。
| 妊娠週数 | 赤ちゃんの状態 | 影響の考え方 |
|---|---|---|
| 0〜3週ごろ(受精後約2週間) | 受精卵が分裂し、着床する | all or none:影響がなければ正常に育ち、強い影響なら妊娠が続かない |
| 4〜7週 | 脳・心臓・目・手足など主要な器官がつくられる | 絶対過敏期:かたちへの影響を最も受けやすい |
| 8〜15週 | 上あご(口蓋)や外性器などの形成が続く | 相対過敏期:影響は小さくなるが注意が必要 |
| 16週以降 | 体が大きくなり、脳が発達する | 発育の遅れや中枢神経への影響 |
妊娠3週ごろまで:「all or none(全か無か)」の時期
受精から約2週間(妊娠3週末ごろ)までは「all or none(全か無か)の法則」が働く時期といわれます。この時期の受精卵の細胞はまだどの臓器になるか決まっておらず、一部が傷ついてもほかの細胞が補います。影響が小さければ修復されて正常に育ち、大きければ妊娠そのものが続かない(ごく早期の流産になる)という考え方です。
そのため、この時期の飲酒が形態異常につながる可能性は低いと考えられています。「月経予定日前なら飲んでも問題ない」という情報はこの法則を根拠にしたものです。
ただし注意点が2つあります。ひとつは、排卵日がずれれば週数もずれるため「まだ大丈夫な時期」をご自身で正確に判断するのは難しいこと。もうひとつは、マウスの実験でごく早い時期の飲酒が胎児の遺伝子の働き方(エピゲノム)を変える可能性が報告されていることです。「法則があるから飲んでよい」ではなく「飲んでしまっていても過度に心配しなくてよい」と受け止めてください。
妊娠4〜7週:器官がつくられる「絶対過敏期」
妊娠4〜7週は脳や脊髄、心臓、目、手足といった主要な器官が急速につくられる時期で「絶対過敏期」と呼ばれます。日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の診療ガイドラインでも、薬の影響を考えるうえで特に注意が必要な時期とされています。
アルコールも同様で、FASにみられる特徴的な顔つきは妊娠初期の飲酒と関係が深いと考えられています。米国カリフォルニア大学の研究では、妊娠7〜12週の飲酒が顔の変化や発育不全と関連していたと報告されています。
妊娠4週は「月経予定日」にあたります。つまり、生理が遅れていると気づいた時点がもっとも大切な時期のスタートです。妊娠の可能性が少しでもあるのであれば、この時点でお酒を完全にやめましょう。
妊娠8週以降:影響が続く時期
妊娠8〜15週ごろは「相対過敏期」と呼ばれます。主要な器官はほぼできあがりますが、上あごや外性器などの形成はまだ続いており影響が小さくなるだけでゼロにはなりません。
妊娠16週以降は、赤ちゃんの体が大きくなり脳の神経のネットワークが複雑に発達していく時期です。この時期の飲酒は、発育の遅れや、学習・注意・行動など中枢神経への影響と関係するとされています。厚生労働省の資料でも、奇形は妊娠初期の飲酒と発達の遅れや中枢神経の機能不全は妊娠後期の飲酒と関連があるとまとめられています。
つまりアルコールに「安全な時期」はありません。妊娠初期を過ぎても出産まで、そして授乳中もお酒を控えることが基本です。
妊娠に気づかずお酒を飲んでしまったときの対処法
今日からやめることがいちばんの対策
妊娠がわかったらその日からお酒をやめましょう。過去に飲んだ分は取り消せませんが、これからの飲酒をやめれば赤ちゃんがアルコールにさらされる時間を確実に減らせます。それが今できるいちばんの対策です。
妊娠に気づくのは多くの場合妊娠5〜6週ごろで、まさに絶対過敏期の最中です。だからこそ「もう飲んでしまったから同じ」と考えず、今日からの禁酒に大きな意味があると考えてください。
なお、水をたくさん飲む、汗をかくといった方法でではすでに飲んだアルコールの影響を打ち消すことはできません。特別なことをする必要はなくバランスのよい食事、十分な睡眠、葉酸サプリメント(妊娠前から妊娠初期に1日400µgが推奨)など、妊娠初期の基本的な過ごし方を続けましょう。
データで見る「気づく前の飲酒」自分を責めすぎないで
環境省の「エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)」では、約9万2千人の妊婦さんのうち、妊娠に気づく前に飲酒していた方は約50%、気づいた後も飲酒していた方は2.8%でした。半数の方が「知らずに飲んでいた」経験をしており、ほとんどの方は妊娠に気づいた時点でやめているのです。
同じ調査では、気づく前に飲酒していた方の大半は飲酒量が多くなかったことも報告されています。FASは、多量の飲酒を習慣的に続けた場合に起こりやすいものです。妊娠に気づく前に、時々の飲み会で飲んだ程度の飲酒で赤ちゃんに大きな影響が出る可能性は高くありません。
「あのときの一杯のせいで」と思い詰めることは、お母さんの心にも体にも負担になります。正しい情報を知り気になることは医師に相談して前を向いていただきたいと思います。
健診・受診で医師に伝えること
妊娠初期の健診や不妊治療クリニックの受診時には、飲酒したことを遠慮なく医師に伝えてください。「責められるのでは」と心配される方もいますが、医師は経過を見守るための大切な情報としてお聞きしています。
伝えるとよい3つの情報(時期・量・頻度)
- 時期:いつ飲んだか(最終月経から何日目ごろか、移植日の前か後か)
- 量:何をどれくらい飲んだか(例:ビール350ml缶を2本、ワイングラス3杯)
- 頻度:1回だけか、毎日の晩酌か、週に何回か
メモにしておくとスムーズです。なお、妊娠初期に飲酒の影響だけを調べる特別な検査はありません。お話を伺ったうえで、超音波検査による赤ちゃんの成長確認など通常の健診の流れの中で経過を見ていきます。
「少しだけなら大丈夫?」安全な飲酒量はあるのか
国の目標は「妊娠中の飲酒ゼロ」
「一杯くらいなら」「ワインを少しなら」と考える方もいるかもしれません。しかし、妊娠中の飲酒に「ここまでなら安全」という量は確認されていません。そのため、国民健康づくり運動「健康日本21」や母子保健の計画「健やか親子21」で一貫して「妊娠中の飲酒をなくす(0%)」ことを目標に掲げています。
その成果もあり、妊娠中に飲酒した人の割合は健康日本21(第二次)では2010年の8.7%から2019年に1.0%へ、健やか親子21(第2次)では2013年度の4.3%から2020年度に0.8%へと減っています。今では妊婦さんの99%以上がお酒を控えて過ごしているのです。
海外でも米国の公衆衛生局長官などが妊娠中や妊娠の可能性がある女性に飲酒を控えるよう勧めています。「少しだけ」と迷ったら「飲まない」を選ぶのが答えです。
純アルコール量で考える
飲酒量はお酒の種類や杯数ではなく「純アルコール量(g)」でとらえるのが基本です。厚生労働省が2024年に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では次の式が示されています。
純アルコール量(g)=飲んだ量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8
| お酒(度数) | 量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 500ml(ロング缶1本) | 20g |
| ストロング系チューハイ(9%) | 350ml(1缶) | 約25g |
| 日本酒(15%) | 180ml(1合) | 約22g |
| ワイン(12%) | 120ml(グラス1杯) | 約12g |
ストロング系チューハイは、350ml缶1本でビールのロング缶より多くのアルコールを含みます。なお、ガイドラインにある「女性は1日20g以上で生活習慣病のリスクが高まる」という目安は妊娠していない成人女性向けのものです。妊娠中・妊娠の可能性がある時期の目安は「0g」と考えてください。
見落としがちなアルコール:ノンアル・料理・お菓子
ノンアルコール飲料は「0.00%」表示を選ぶ
お酒の代わりにノンアルコール飲料を楽しむのはよい工夫です。ただし日本の酒税法では「アルコール分1%以上」の飲料を酒類としているため、1%未満の微量のアルコールを含む飲料も「ノンアルコール」として売られていることがあります。最近は0.5%前後の「微アルコール」商品も増えています。
妊娠中・妊活中は、パッケージに「アルコール0.00%」と明記されたものを選びましょう。
また、ノンアルコール飲料の中にはお酒らしい味を出すために糖分や甘味料、添加物を多く使っている商品もあります。妊娠中は体重管理や妊娠糖尿病への配慮も大切です。毎日何本もではなく気分転換の楽しみとしてほどほどに取り入れましょう。
みりん・料理酒・洋酒入りスイーツ・甘酒
みりんや料理酒はしっかり加熱すればアルコールの大部分が飛ぶため、ふだんの家庭料理で使う程度なら心配いりません。煮物は煮立ててから数分以上加熱するとよいでしょう。ただし、加熱が短い料理や仕上げに加えるお酒、和え物に使う煮切っていないみりんには注意が必要です。
洋酒をたっぷり使ったケーキ(サバラン、ブランデーケーキなど)やウイスキーボンボン、洋酒漬けのフルーツは、焼いた後に洋酒をしみ込ませているものも多く、アルコールが残っています。表示を確認し避けるのが安心です。
甘酒には、米麹からつくる「米麹甘酒」と酒粕からつくる「酒粕甘酒」があります。米麹甘酒はアルコールを含みませんが、酒粕甘酒は微量のアルコールを含むことがあるため妊娠中は米麹タイプを選びましょう。栄養ドリンクにもごく少量のアルコールを含む商品があるので、成分表示を見る習慣をつけると安心です。
【生殖医療専門医の視点】妊活・不妊治療中のアルコール
体外受精の成績と飲酒の関係
アルコールは妊娠中だけでなく「妊娠するまで」にも影響すると考えられています。米国ハーバード大学関連施設の研究(Rossi et al., 2011)では、初めて体外受精を受ける約2,500組のカップルを調べたところ、週4杯以上飲む女性は、4杯未満の女性に比べて出産に至る確率(生児獲得率)が16%低くなっていました。夫婦ともに週4杯以上の場合は21%低かったと報告されています。
週4杯は決して「大酒飲み」とはいえない量です。この研究だけでアルコールが原因と断定はできませんが、治療の成果を少しでも高めたいなら控えるに越したことはありません。
不妊治療では、年齢や卵巣の状態などご自身では変えられない要素がたくさんあります。その中で飲酒は「自分でコントロールできる数少ない要素」のひとつです。治療を始めるタイミングでお酒との付き合い方を見直してみましょう。
移植後・判定待ちの期間はどう過ごす?
体外受精では胚移植の日がすでに妊娠2〜3週にあたります。胚盤胞を移植した場合、移植から数日で着床が始まり、血液中のhCG(妊娠すると分泌されるホルモン)を測る妊娠判定は移植から10日前後に行うのが一般的です。判定日はおよそ妊娠4週、つまり絶対過敏期の入り口です。
そのため生殖補助医療の現場では、移植日から判定が出るまではお酒を控えるようお伝えしています。タイミング法や人工授精の場合も排卵から次の月経予定日までは同じ考え方です。具体的な期間は主治医に確認してください。
一方で、採卵や移植のたびに禁酒が続き「飲める時期がほとんどない」とつらさを感じる方も少なくありません。その気持ちはとても自然なものです。妊娠が成立しなかったと確認できた後の考え方はよくある質問のQ3でお答えします。
パートナーの飲酒も見直しを
不妊の原因の約半数には男性側の要因が関わるといわれています。男性の多量の飲酒は、男性ホルモン(テストステロン)の低下や、精子の数・運動率の低下と関係することが知られています。前述の体外受精の研究でも夫婦ともに飲酒している場合に成績が最も下がっていました。
また、エコチル調査ではパートナーが飲酒している女性ほど、妊娠に気づく前も後もご自身も飲酒している割合が高いことがわかっています。妻だけが我慢するのではなく夫婦で一緒に控えることが、治療の後押しにも心の支えにもなります。
精子は約3か月かけてつくられるため、男性の生活習慣の改善は早めに始めるほど効果的です。
夫婦で取り組むプレコンセプションケア
こども家庭庁は、性別を問わず妊娠・出産を含めた将来設計を考えて健康管理を行う「プレコンセプションケア」を推進しています。飲酒の見直しはその代表的なテーマのひとつです。
- 妊娠を考え始めたら、夫婦で飲酒の量と頻度を話し合う
- 「休肝日」ではなく「飲まない期間」を決める(例:治療周期中は禁酒)
- 喫煙、睡眠、体重、葉酸の摂取もあわせて見直す
当院でも、生活習慣のアドバイスを含む妊活サポートや泌尿器科専門医と生殖医療専門医の資格をもつ医師による男性不妊外来を行っています。
お酒をやめるのがつらいときの工夫と相談先
「飲みたい気持ち」を置き換える工夫
晩酌が習慣になっていた方にとって、急にお酒をやめるのは簡単ではありません。「我慢」ではなく「置き換え」と考えると少し楽になります。
- 炭酸水にレモンやライムを搾る、ハーブティーやデカフェのコーヒーを楽しむ
- 「アルコール0.00%」のノンアル飲料を、お気に入りのグラスで飲む
- 晩酌の時間を、入浴やストレッチ、パートナーとの散歩に変える
- 飲み会では最初に「今日はノンアルで」と伝え、ソフトドリンクを頼む
妊活中や妊娠初期は、周りに事情を話しにくいこともあるでしょう。「体調管理中なので」など、無理のない断り方を用意しておくと気持ちが楽になります。
不安やストレスは一人で抱えないで
エコチル調査では、妊娠に気づいた後も飲酒を続けていた方は心理的なストレスが大きい傾向があったと報告されています。お酒をやめられない背景には、不安や孤独が隠れていることも少なくありません。
不妊治療中は、結果を待つ緊張や思うようにいかない悔しさから「お酒で発散したい」と感じることもあるはずです。それは決して弱さではありません。
当院には臨床心理士・助産師が常駐し、心理カウンセリングで治療中の不安やご夫婦の悩みに寄り添っています。自治体の「性と健康の相談センター」でも相談できます。「どうしてもやめられない」と感じたら早めに医師や専門家に相談してください。
妊娠初期のアルコールに関するよくある質問

Q1. 飲んでしまった影響は検査でわかりますか?
A1. 妊娠初期にアルコールの影響の有無だけを調べる検査はありません。超音波検査では妊娠5〜6週ごろに胎嚢(赤ちゃんを包む袋)、6〜7週ごろに心拍を確認でき、その後の健診で成長を見守ります。妊娠中期以降は発育や体のつくりをより詳しく確認できます。
当院でも、妊娠判定から胎嚢・心拍の確認まで妊娠初期の経過を見守り、安心して出産施設へ移れるようサポートしています。気になることは受診のたびに遠慮なくご質問ください。
Q2. 一度だけたくさん飲んでしまいました
A2. 結婚式や送別会などで、妊娠に気づかず一度に多く飲んでしまったというご相談はよくあります。短時間の多量飲酒は血中アルコール濃度が急に上がるため、少量の飲酒より影響が大きいと考えられています。
ただし、飲んだのが妊娠3週ごろまでであれば all or none の時期にあたる可能性が高く、1回の飲酒で必ず障害が起こるわけでもありません。大切なのはそれ以降お酒をやめること、そして時期と量を医師に正確に伝えることです。
Q3. 不妊治療中、生理が来たら飲んでもいい?
A3. 月経が来て、その周期の妊娠が成立していないと確認できた後、次の排卵までの期間は、赤ちゃんへの直接の影響を考える必要はありません。禁酒が続いてつらい方はこの時期に少しだけ楽しむのも選択肢のひとつです。
ただし前述の研究のように日常的な飲酒そのものが治療成績に影響する可能性があります。飲む場合も少量にとどめ、週に何度も飲む習慣は避けましょう(研究では週4杯以上で成績の低下がみられました)。採卵周期・移植周期の過ごし方は治療内容で異なるため主治医に確認してください。
生殖医療クリニック錦糸町駅前院は、女性医師が多数在籍し、朝8時から夜21時まで土日祝も診療しています。妊活中の生活習慣のご相談から不妊検査、体外受精、妊娠初期の経過観察まで、臨床心理士・助産師とともにお一人おひとりに寄り添います。
出典・引用元
| 本文の記載 | 出典 |
|---|---|
| FASDは治療法がなく予防のみ。少量・どの時期でも影響しうる | e-ヘルスネット(厚生労働省) |
| 妊娠中の飲酒 8.7%(2010年)→1.0%(2019年)、目標0% | e-ヘルスネット「健康日本21(第二次)におけるアルコール対策」 |
| 妊娠中の飲酒率 4.3%(2013年度)→0.8%(2020年度) | 健やか親子21(第2次)指標(こども家庭庁) |
| 気づく前 約50%・気づいた後 2.8%が飲酒、パートナー飲酒・心理的ストレスとの関連 | エコチル調査 論文概要(環境省) |
| 日本のFASは1〜2万出生に1人、純アルコール約50g/日以上で高頻度。奇形は初期、発達遅延は後期の飲酒と関連 | 妊産婦のための食生活指針 解説(厚生労働省) |
| 純アルコール量の計算式、ビール500ml=20g | 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省) |
| プレコンセプションケアの定義 | 母子保健・不妊症・不育症など(こども家庭庁) |
| 週4杯以上で生児獲得率16%低下、夫婦とも21%低下 | Rossi BV et al. Obstet Gynecol 2011(Harvard DASH) |
| 週2回以上の飲酒で流産率1.5〜2倍(総説) | 黒田恵司「ライフスタイルと妊孕能」臨床婦人科産科 2021 |
| all or none(受精後約2週間) | メディカルノート(東京慈恵会医科大学 青木医師) |
| 絶対過敏期 4〜7週末・相対過敏期 8〜15週末(産科ガイドライン準拠) | 日本医事新報社 Q&A |
| 妊娠7〜12週の飲酒とFAS所見の関連 | AFPBB(UCサンディエゴ研究) |
| 早期飲酒によるエピゲノム変化(マウス) | OVO(ヘルシンキ大学研究) |
| 酒税法上、酒類は1%以上 | 週刊女性PRIME(アルコール健康医学協会) |
松見 泰宇
資格・専門医
- 東京大学医学博士
- 日本産婦人科学会産婦人科指導医・専門医
- 日本生殖医学会生殖医療専門医
- 日本抗加齢医学会専門医
- 日本スポーツ協会認定スポーツドクター
- 難病指定医
- 日本産科婦人科遺伝診療学会生殖領域遺伝カウンセリング研修会(反復流産(PGT-A)における遺伝カウンセリング)修了
- 日本産科婦人科遺伝診療学会周産期領域遺伝カウンセリング研修会(胎児の染色体異常を中心とした出生前遺伝カウンセリング)修了
- 新生児蘇生インストラクターAコース修了
- 日本産婦人科乳腺医学会講習会修了
- 日本臨床免疫学会
- 日本産科婦人科学会
- 日本生殖医学会
- 日本生殖免疫学会
- 日本不育症学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本再生医療学会
- 日本産婦人科乳腺医学会
- 日本スポーツ協会
- 産婦人科PRP研究会
経歴
- 東京大学医学部卒業
- 東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了
- 博士論文「A possible role of nitric oxide in the regulation of developmental status of rat ovarian follicles(卵胞発育・閉鎖における一酸化窒素(NO)の関与)」
- 国立がん研究センター東病院 がん治療開発部
- 日本学術振興会特別研究員
- スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー
- 成育医療研究センター特別研究員
- 東京大学大学院医学系研究科文部教官助手
- 帝京大学溝口病院講師
- 帝京大学非常勤講師
- 焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務
- 秋葉原ARTクリニック、花みずきウィメンズクリニック吉祥寺、両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務
- 愛育病院、きりんウィメンズクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務